回折格子を用いた光の実験


            北 村 俊 樹
           東京都立高島高等学校
 

[要約]ヤングや回折格子の実験では干渉・回折が装置の光路差を利用するが、生徒は光路差が実感できず光が波であることがわかりにくい。この解消のために、レーザープリンタで格子が大きく見える格子を作製した。ダブルスリット、直交格子など24種類の格子をOHPシート上に作った。これと市販の回折シート、自作ホログラムを組み合わせ光の干渉・回折を実験で理解していく授業を試みたところ、干渉・回折について理解を深められることがわかった。
[キーワード]回折格子、ホログラム、ゾーンプレート、光の干渉、光の回折、コンピュータ

 1.はじめに
光の波の性質を示すのにヤングの実験や回折格子の実験を行う。これらでは干渉・回折が装置の光路差を利用している。しかし生徒は目で見ても光路差が実感できず、光が波であること
がわかりにくい。この解消のために、様々な回折格子を一連の実験に組み合わせ光の干渉・回折を理解していく授業を試みた。

2.スリット、回折格子の制作および特性
 2−1 格子定数の大きい格子の製作
 市販のスリットや回折格子は格子の幅が小さく目に見えない。パソコンを使い格子定数を大きく見えるようにした格子を作製する。
 PaintShopPro等の描画ソフトで、画面の解像度を最大にし、黒の背景で白で線や格子を引く。線幅は1〜2dotとする。モノスリット、ダブルスリット、縦格子、直交格子で、格子定数やパターンを変えた24種類の格子を1枚のOHP シート内に8組分を作る。(図1〜5)これをレーザープリンタ(EPSON-LP8400解像度600dot/inch=0.04233mm/dot)でOHPシートに実寸で印刷する。印刷は解像度に注意し、モアレが出ないよう印刷ページの設定で1dotが0.04233または0.08467mmとする。格子間隔が2dotの時は2m離れたスクリーン上で回折光の間隔は16mm程である。

図1−1 パターン例1(回折格子2dotの白線、1dotの黒線)



図1−2 パターン例2(4タイプの格子例)


画像ソフトでパターンを作る。これをコピー用OHPシートにレーザープリンタで印刷する。
左から1)ダブルスリット、2)多重スリット、3)回折格子、4)直交格子の例

図1−3:作製したOHPシート回折格子1枚分


格子定数の異なる @ダブルスリット7種 A1〜7本の多重スリット B回折格子6種 C直交回折格子6種
 1組のシートの大きさは10cm×4cmである。これをA4版のOHPシート上に8組分を作る

実際のシートの画像ファイルと印刷法は「OHP回折格子の印刷法」をクリック。


図1−4 作製したダブルスリットの顕微鏡写真


図1−5 作製したマルチスリットの顕微鏡写真


図1−6 作製した回折格子の顕微鏡写真    


図1−7 作製した直交回折格子の顕微鏡写真


2−2 市販の回折格子 
@透過型直交回折格子:
 スペクトラーを使用。格子定数d=5.2×10-6mmの直交型の回折格子である。


A反射型直光回折格子
 ホログラムシートSP-4を使用。格子定数d= 8.9×10-7mmのアルミ蒸着シートである。


B反射型ランダム回折格子
 直径数mmの直交格子をランダムに配置したホログラムシートダストを使用。(図6)直交格子自体はd=8.8×10-7mmである。


図 顕微鏡による格子の拡大図



 @〜Bは東急ハンズ池袋店で購入でき、幅60cmで長さ1mあたり2500円、800円、1200円である。

3.授業の展開例
 まずOHPシートと市販の透過型直交回折格子、虫めがねを生徒に配る。次に、光の回折を理解させるため、以下の@〜Jの演示実験を行う。その後でA〜D、H〜JのOHP シートと透過型回折格子を用いた生徒実験を行う。演示実験でスクリーンに投影する際の光源は主にレーザー光を、生徒実験の際の光源は豆球やスリット付きの蛍光灯を使う。


@回折像の観察
 「光は回折する」ことを見せる。カッターの刃やピンホールに、対物レンズを装着したレーザー光を当て光の回折を見せるか、2本の指をそろえ間をすかして見る。

図 レーザー光に対物レンズをつけ光を広げる


図 光をカッターの刃先に当てる


図 投影するスクリーン(白い柱で代用)


図 光の回折の様子。刃先付近に回折像が見える



Aモノスリットの回折
 モノスリットにレーザー光を当て回折を観る。生徒実験では豆球をシートを通し見る。
(写真はうまくとれなかったので割愛)

Bヤングの実験
 ダブルスリットにレーザー光を当て像を観察する。水波の2波源の干渉が光でも起きることを見せる。次にスリット間隔dを変える。(OHPによる透過光の写真はうまくとれなかったので割愛)

図 作製したOHPシートにレーザー光を当てスクリーンに投影したもの


Cダブルスリットから回折格子へ
 スリットの個数を1から7個まで次々と増やし回折像を見せる。最後に回折格子を使う。
図 OHPシートで干渉・回折像を見る様子
豆球の点光源の光を、目にシートを当てて観察する。


図 豆球


図 シートを通過した光で回折の度合いを観察する


図 格子間隔dが大きい場合の回折像(回折格子使用)
 回折の度合いが少ないことがわかる


図 格子間隔dが小さい場合の回折像(回折格子使用)
 回折の度合いが大きいことがわかる


図 格子間隔dがさらに小さい場合の回折像(回折格子使用)
 回折の度合いがさらに大きいことがわかる



D直交およびパターンを持つ回折格子
 直交格子を使い回折像を見る。次に2枚の格子を回転させ結晶のX線回折像に触れる。

図 格子間隔dが大きい場合


図 格子間隔dが小さい場合


Eフレネルゾーンプレート1)
 同心円状の明暗の円環で透過光の光路差が波長の整数倍で強めあう原理を説明する。
フレネルゾーンプレートに平行光を当てると干渉により透過光が一点で集まる。これは凸レンズと同じ働きである。また、これは一つの光源が一つの焦点に集まることとなる。

図 ゾーンプレートの例


図 使用したゾーンプレート


図 左からレーザー光、対物レンズ、ゾーンプレート、
凸レンズとなっている。


図 フレネルゾーンプレートを入れると、異なるいくつかの焦点に光が集まる。
図では赤、白、黄の3本のチョークの位置が焦点の位置である。




Fコンピュータホログラム2)
 ゾーンプレートで一点の光源がスクリーン上の一点に結像できることから、点図形をパソコンで多数のゾーンプレートとして重ねて OHPシートに描く。対物レンズで広げたレーザー光をあて、透過光を凸レンズでスクリーンに投影すると像が再生できる。(図8,9)

図:中村理科のハート型の見えるホログラフィめがね


図:中村理科のハート型の見えるホログラフィめがねの表面拡大図


図 めがねにレーザー光を当てるとスクリーンにハート型が浮きである。


図 ハート型の拡大図


図 ホログラフィーに変換する図形(三角形)


図:コンピュータで作製したホログラフィ(三角形)


図 左からレーザー光、ホログラフィシート、凸レンズ、そしてスクリーン


図 スクリーン上のホログラフィ像(三角形)


図 像の拡大のため、ホログラフィーの結像位置に凹レンズを置き、
像をスクリーンに拡大する


図 スクリーン(教室の白い柱)上のホログラフィ像



A透過型回折格子による大きな回折光3)
 1m四方のシートを生徒に持たせ、裏側から豆球、スリット付き蛍光灯、Naランプを照らし大きな透過光を見る。生徒実験では20cm程に切って渡し直接自分で観察させる。
図 豆球の透過光をみたもの



H反射型直交回折格子による大きな回折光4)
 壁に貼り豆球、鉛直にしたスリット付蛍光灯を見る。明るい中で大きな回折像が見える。

図 豆球の反射光をみたもの


図 3波長タイプの蛍光灯に、黒紙を巻き3mmのスリットを入れたものを線光源とする。


図 光源を縦にたてた回折像


図 黒紙の上に赤いセロファンと青いセロファンをそれぞれ貼って
光源とする。実験で見やすいよう赤色側を短くする。


図 赤いセロファンと青いセロファンを巻く


図 供託の前の蛍光灯から回折格子に斜めに光が入った場合の
回折像


図 教室のライトの様子




Iランダム方向回折格子による虹状回折光
 レーザーポインタで光を当てると格子の方向がランダムなので円状の回折光が観察される。次に豆球で照らすと円形虹が見える。

図 ランダム回折格子 


図2 虹状の回折像が見える



4.おわりに
 この方法の特徴は以下の点である。
@コンピュータで任意の格子が簡単に作れる
A格子間隔が見えるので回折を実感できる
B一連の実験を通じて、さまざまな回折現象を知り干渉、回折について理解を深められる
 今後は時間の関係上できなかった薄膜やくさび形、ニュートンリング等の干渉も取り入れたい。


参 考 文 献
1)飼沼:「干渉及び干渉性」(共立出版、1981)
2)宮沢、吉川他:物理教育37-4(1989)p.278
3)福岡他:理化学協会研究紀要27(1995)p.31
4)小塚政典:理化学協会論文集22(2000)P.82
 詳しい実験方法やOHP用画像ファイルは
ソフト登録先:たまきち's HomePage
  http://www.bekkoame.ne.jp/~kitamula/

この文章は、2001年日本理化学協会 全国理科教育大会(徳島)で8月3日に発表した内容に加筆し、また画像ファイルを追加したものである。



実際のシートの画像ファイルと印刷法は「OHP回折格子の印刷法」をクリック。