2000年12月01日(金)

若い人への手紙:本物 その1「何が本物か」



若い人たちを励ましたい

 人生では、ライフワークをたくさん持つ欲張りな人間ですが、そのうちの一つに、若い人たちの人生を励ますことがあります。若い人は、同じ出来事に出会っても、長い人生の経験を持つ人とくらべて、鮮やかに受け止めるので、つらい思いをすることは、一層強くなることでしょう。

 僕自身は、社会で、年よりはるかに若く見られることが多いように、様々な出来事を深刻に受け止めて、つらい思いに満たされていることが多いのですが、誰かに励まされたいとは考えていません。それでも、様々な書物を通じて、大きな励ましを受けることが多いので、僕も、そろそろ、若い人たちを励ます、恩返しをするべき年になったのかなと考えています。さらに詳しい事情は、11/28 「若い人への手紙」に書いてありますが、今回は、とても大切なことを書こうと考えています。

 テーマは、本物の人間になることについて。自分自身が「本物の人間」であるなどと、傲慢なことを書くつもりはありませんが、普遍的な、時代の流行で変わることがないものを見つめ続けてきました。今回は、桐谷の本物論を書こうと思います。まずは、卒業生からの手紙の一部分を読んで下さい。これを読んで、とてもうれしくなりました。現代でも、本物志向の人が、若い人の中に、少数ながら、いるということは、未来への大きな希望です。数回に分けて、この問題を扱う予定です。

 最近、すごく本物の人間になりたいという願望が強いんです。社会のうわっつらに流され、それに満足して生きるのではなく、もっと深いなにか本当のもの、不変の真実みたいなものを見据えることのできる人間になりたいんです。

 情報があふれている現代社会で、それらに振り回されずに生きていくには真実を見据える力が必要だと思うんです。それにはどうしたらいいのか、と悩んでいます。なにかアドバイスがあればお願いします。


 良貨を駆逐する

 以前に書いたことですが、僕は人よりも様々なものを安く買う才能があるので、TVモニタを選ぶ方に、付き合ってあげたことがあります。数十台が並んでいる量販店で、少しだけ高いけれど、圧倒的に画質がよく目が痛まない、違いそのものをまずわかって欲しかったのですが、その方が、画質がいいねと誉めたのは、コントラストが高く派手めに調整してある品質の悪いモニタでした。

 良質の塩しか使っていないポテトチップスがあって、ちょっとしたパーティーの時に出したのですが、不評で、味が足りないと言われてしまいました。もちろん、その時受けていたのは、酸味料たっぷりの合成の味だったのは言うまでもないでしょう。

 日本は、本物を大切にする文化が残されていましたが、最近は、醤油、酢、味噌、日本酒、何一つ取っても、本物の作り方で作られているものを見つけるのが、難しくなってしまいました。本物の作り方の中で省略されてしまった行程は、熟成です。伝統的な製法で、熟するのを待つために時間をかけて、文字通り手間暇をかけて製造することは、利潤の追求を最優先する現代の企業にとっては、難しいのでしょう。

 それでも、一番の原因は、人々の感覚が本物を見分けることが出来なくなって、本物であることに価値を置かなくなったことではないかと考えています。たとえば、僕たちが何か製品を買うときに、自分にとって必要ない性能なら、その機能がなくてもよいから安い製品を選ぶように、本物の製法で作られた最高に美味しいものよりは、よく似た味に仕上がっている、はるかに安いものを選ぶ場合もあり得るのかもしれません。

 実は、ここ数年ちりめん山椒に凝っていて、本当に美味しいものを求めて、京都に出かけるたびに、必ず一つずつ買って帰って、味をチェックしているのですが、酸味料で味を整えたものは、本当に美味しくありません。でも、たとえば、タバコを吸われる方にとっては、きっと味の区別はつかないだろうし、生まれた時からインスタント食品を食べ続けて、そのようなものが食べ物だと考えている人にとっては、酸味料で味付けされていても、全く気にならないのかもしれません。

 価格破壊は素晴らしいことですが、その結果、本物ではないものがあふれてしまうのは、悲しいことです。

 でも、実は、人々は、本物ではないことを承知の上で、そちらに流れているのではなく、自分が流れている方向が本物ではないという意識もなく、そちらに流れています。場合によっては、そちらの方が本物なのだと考えている場合もあるのでしょう。表示には、無農薬、有機栽培とあっても、食べてみると、農薬をたっぷりと使っていることは一目瞭然、ということも時々ありますが、安心して買い続ける方も多いようです。大切なのは、まさに、「真実を見据える力」ですね。その話は、また明日。

 今日の画像は、定点観測地点、愛知県奥三河の香嵐渓の一番の名所である、赤い橋のライトアップです。



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11/27 「PCBその後」を読む
11/26 「いよいよBSデジタル」を読む
11/25 "Smokey Joe's Cafe"を読む
11/24「PCB汚染!」を読む
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