1997年4月10日第23号
(c)1995-97 桐谷 育雄

MUST BUY

メトロポリタン・オペラ

カルメンを無料で!


 僕も大好きなメトだけど、来日公演は大人にも高すぎて、全公演を四万九千円の席で見るならニューヨークに行った方が安い。
 でも、高校生でよかったね。リハーサル(本番と同じだよ)を無料で見ることが出来るんだ。
 ホームページ版の注:名古屋公演の話です。ローカルな話題で申し訳ありません。


 高校生の頃、オペラは、庶民の芸術には見えなくて、鼻持ちならない芸術の筆頭だった。そもそも集団の芸術に反感があって、室内楽は許せたけれど、オーケストラが嫌だった。当時は、個人が大合奏の中に埋没してしまうように思えたんだね。
 そんな僕も、日本のオペラや、画面での欧米の公演を見るうちに、世界のオペラ座を渡り歩くようになった。
 欧米では信じられないくらい安い料金で、見えにくい席や立ち見で楽しめるから、若者も大勢見に来る。僕も行列して数百円で感動を味わったものだ。三十代になってからは、最高の席で味わうようになったけれど、それでも一万円前後からだ。
 国家や企業や市民が芸術をサポートする欧米と比べると、はるかに日本は高いけれど、来日公演では、キャスト、オーケストラ、合唱、セット、スタッフ等の日本までの移動の費用を考えると、こんな料金になるのだろう。
 メトロポリタン・オペラには、毎年十公演くらい通っている。もちろん名古屋公演の『トスカ』、『道化師』、『カヴァレリア・ルスティカーナ』も、ニューヨークでこの前見てきたばかりだ。キャストが豪華だし、各座席にMet Titlesという液晶の字幕があって、英語訳が出るので、安心して楽しめる。
 今シーズンは、9月30日から5月10日まで、日曜休みで土曜日は二回、28のレパートリーを日替わりで公演して、シーズン終了後、日本に来るわけだ。
 いつもミュージカルの合間にチケットを受け取りに行くとき、ニューヨークの小学生たちが先生に引率されて、リハーサルを見に来る。本当にうらやましい限りだ。
 リハーサルと言っても、本番と全く同じに行われて、小さな頃から本物のオペラが体験出来るから、きっとオペラを愛する人が、あんなに多く生まれるのだろう。
 名古屋でも、中学生・高校生九百人を無料でリハーサルに招待すると聞いて、僕がどんなに喜んだか想像できるだろうか?
 おまけに、題目は、今シーズン五作の新作(衣装・セット・解釈を新しくする)中一番の注目の『カルメン』だという。Anna Anniの衣装デザイン画が今シーズンの豪華カラーパンフレットの表紙を飾っているほどの作品なんだ。
 86年から十年続いた前のものに続いて、もう九回目のプロダクションになる。ストーリーは知ってるね? たぶんオペラに全く興味がない人でも、ビゼーが作曲したことは知っているだろうし、いくつかの名曲も、一緒に口ずさむことだろう。オペラ入門にふさわしい作品だと思う。
 詳しいことは、図書館でオペラ入門の本を読めば、おもしろいことがたくさん書いてある。奧が深いよ。
 今回の指揮は、何と三大テノールの一人、プラシド・ドミンゴ。カルメンのホセも、ドミンゴが大好きだけど、84年に「ラ・ボエーム」で指揮デビューして以来、指揮も素晴らしい。歌える人の指揮は、タイミングも、歌が生かされる伴奏も、聞きごたえがある。当日は、指揮者登場の拍手が、なかなか止まないことだろう。
 さて、日時は、五月二十六日午後五時から。場所は、名古屋の栄の愛知県芸術劇場大ホール(何故愛知県は「オペラ座」と名づけなかったのだろう? 宣伝効果もインパクトもあったのにね)。音響は別として、舞台装置の素晴らしさは世界有数のものだよ。
 心配なのは、帰りの運送費節約の為に、セットだけ旧作のものを持ってきて日本で処分してしまうこと。でも、そんなことはしないよね。


見逃せない!

HaleBopp

 今、毎晩少しずつ遠ざかっていくヘールボップ彗星を見続けている。
 インターネットでも、世界のあちこちで撮影された画像があふれているけれど、やはり肉眼で見ておきたいね。
 彗星が好きで、百武彗星はもちろん、ハレー彗星も何度も見に行った。今回は、こんなにも大きくなるとは思わなかったので、冬の終わりから、楽しみに見ていた。三月中旬の明け方の感動なんて、言葉じゃ言えないね。
 四月一日の夜は、顧問をしているトレッキング部の生徒たちと一緒に、琵琶湖の西の比良山系で見た。ものすごく明るくて、大きくて、満天の星空の中で一際輝いていた。
 思い出してみると、流星群も、ハレー彗星も山で生徒たちと見たのだった。いい部活の顧問をしているなあと思う。
 もともと星を見るのは大好きで、若い頃から、頂や峠や人里離れた所のテントから頭だけ出して、一晩中眺めていたものだ。どんなに苦しい悩みでも、宇宙の前ではちっぽけなものになった。
 みんなも毎晩見ているか? 四月の第二週になって、ほとんど毎晩見えている。
 第一週は、雨ばかり降って、せっかく晴れが続いているのに、我が家の近くの動植物園のスカイタワーは照明をつけているし、サーチライト全開のお店まであって、光害は深刻だ。
 名古屋では七時少し前から西北の高さ30度位の所に見えてくる。九時近くでも見えている。
 視野には入っているはずなのに、それが彗星であることに気がつかない人も多いそうだ。
 ヘールボップ彗星だけが星の大きさが大きくて、尾がぼーっとしているから、すぐに見つかると思うけれど、手を正面にまっすぐ伸ばして拳骨を立てた長さ分が約十度だから、拳骨三つ分位の高さを探すとよい。
 もちろん、下旬になっても見ることは出来るけれど、今どんどん月が大きくなってきている。少しでも暗い方が、もちろん尾も見えやすい。
 十一年前のハレー彗星も昨日のように思い出す。ヘールボップ彗星が、この次に帰ってくるのは、二千五百年後。その頃の宇宙はどうなっているのだろう?



 春のおすすめTV情報

新日曜美術館
 日曜日9〜10AM 再放送8〜9PM NHK教育
 信じられないことだけど、第9号33ページで紹介した『日曜美術館』が新しくなった。僕が高校を卒業した頃から、ずっと同じ古いスタイルで続いてきた、あの番組がと思うと、不思議でたまらない。
 まず、毎回永遠の名画を一作扱って、様々な謎を解きあかすコーナーが中心になる。第一回の四月六日は、ボッティチェリの『春』で、左端にいるヘルメスの意味付けには、感心した。
 四月十二日は『モナリザ』だし、十九日には、光琳の『紅白梅図屏風』を扱うそうだ。楽しみだね。
 最新のコンピュータ・グラフィックスが大活躍するけれど、もちろんAppleの Power Macintosh 9500を使っていて、番組の初めと終わりに本体も大きく写る。今の新製品Power Macなら一番安いものでも9500と同じ速さだから、同じことが出来るね。
 もう一つのコーナーでは、十九日は、赤瀬川原平に代表される路上観察学会の、東海道五十三次を一年がかりで歩く活動を紹介するという。
 ゲストも、佐藤しのぶや、カールスモーキー石井や、様々な分野の美術愛好家が出てくるので、おもしろいと思う。
 もちろん、最新の展覧会を紹介するコーナーも残っているから、大丈夫。
 秋の正倉院展も、今まで通りの時間で扱ってくれるだろうか?

平成古寺巡礼
 今まで、TBS系(名古屋は日曜夜11:30CBC)の『世界遺産』と放送時間が一部重なっていたけれど、四月から、毎週日曜日の朝八時三十分から(BS11)になった。日曜の朝が楽しみだね。

源氏物語の女性たち
 月曜日夜10:45〜11:15 再放送火曜日午後三時〜
 いつも見応えたっぷりのNHK人間大学で、源氏の現代語訳に取り組んでいる瀬戸内寂聴が担当する。特に、出家する女性の立場からの視点は新鮮だね。
 テキストも売れていて、大人気。今年は、翻訳でいいから、源氏を読んでみたらどうだろう?

おすすめ講演会

第7回ホスピス講演会  

『人間らしく生きるとは』
―死と向き合う―
アルフォンス・デーケン教授

5月4日(日)1:00開場/ 1:30開演/ 4:30終了予定
ウイルあいちホール(愛知女性総合センター)にて
名古屋・地下鉄名城線市役所下車東へ五分
参加費 会員千円 一般千五百円
主催 あいちホスピス研究会 TEL/FAX05617 (2) 5145

 この春卒業した、ある生徒のお母さんは、「あいちホスピス研究会」で活動していて、講演会のポスターと参加券を下さった。「高校生、大学生など若い人達にも参加を呼びかけています」というメッセージも戴いた。
 ウイルあいちは、いつか扱うつもりだけど、明和高校から南に歩いて二、三分の所にある、とても便利な施設なんだ。拘置所の裏の市政資料館のすぐ南と言えばわかるかな?
 現代の高校生でホスピスを知らない人はいないのに、死と向き合って豊かに深く人生を生きる人は少ないのではないだろうか?
 日本でのターミナル・ケアはまだまだお粗末で、人生でたった一度しか体験できない「死」に豊かに取り組むことは、難しい
 デーケン先生は、上智の文学部の先生で、「生と死を考える会」の会長。新聞やTVで扱われることも多く、1991年全米死生財団賞や第39回菊池寛賞の受賞でも話題になった。彼の世界的なベストセラーの『第三の人生』を読んだ人もいるかもしれない。
 一言で言うと、死に備えること(「死の準備教育」)に真正面から取り組むことによって、いま生きていることをより豊かなにする生き方を提唱されている方だ。
 もちろんローマ・カトリックの神父さまでもあって、ユーモアたっぷりの方だ。マザー・テレサの話に元気が出るように、彼の話は高校生の心に響くことだろう。
 この講演会のお知らせは、是非、親にも見せてほしいんだ。もしかすると、今誰かを看取っている人もいるかもしれないし。
 参加を希望する人は、定員制なので、必ず電話で申し込みをすること。
 最後に、恒例の読者プレゼント。参加券を一名に。希望者が複数の時は、一番熱意のある人に。


編集後記
 あんなに寒かったのに、すっかり暖かく、春になった。今年の春山の比良山系は、スキー場の営業も、とっくに終わり、福寿草やかたくりの花が顔を出していた。
 希望に燃える春。いいことがたくさんあるね、きっと。
 三月に卒業した生徒たちから、続々とE-Mailが届き始めた。大学のコンピュータからインターネットで桐谷と結ばれるのには、卒業生たちもわくわくするだろうけど、もちろん桐谷だってうれしくなる。
 今回は、様々な見るものの紹介ばかりになってしまったけれど、次回からは、また連載を復活させたい。新連載のプランも、たくさんあるんだ。
 今年度は、"Kirium"のビデオ版も、充実させて、マルチメディア化をはかっていきたい。
 次号のSpeaker's Cornerで、紹介する文章もまだ決まっていないので、是非、現役高校生の文章を載せたいから、投稿してほしい。
 この印刷版の入手が難しい方には、郵送サービスもある。希望者は89ページの住所の"Kirium"宛に、申し込んでほしい。



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