フライホイルの設計
模型スターリングエンジンのフライホイルの大きさを決定するために計算方法について説明する。図1に示すエンジン1サイクルのトルク線図を考える。同図において平均トルクTqmより大きいトルクが発生している場合にエンジンは加速され、平均トルクTqmより小さい場合にエンジンは減速される。ここで、1サイクル中の最高速度(回転数)をωmax(rad/s)、最低速度(回転数)をωmin(rad/s)とすると、ωminからωmaxまで加速する際に必要なエネルギ△E(J)はフライホイルの慣性モーメントI(Nms2)を用いて次式で表される。
図1 トルク線図
(1)
ここで平均速度(回転数)ωm(rad/s)、速度変動率δを式(2)、(3)により定義する。
(2)
(3)
よって、式(1)、(2)、(3)より次式が得られる。
(4)
一方、加速エネルギ△Eは図1の塗りつぶし部の面積であり、得られたトルク線図から次式あるいは図式的に求めることができる。
(5)
すなわち、平均回転数ωm及び速度変動率δを適宜設定することで、式(4)を用いて必要なフライホイルの慣性モーメントを算出することができる。
実際にエンジンでは摩擦損失が存在するため、トルク線図の正確な予測は困難であるが、エンジンの1次設計の場合にはシュミット理論等により求まる瞬時ガス圧力を用いてトルクを算出して差し支えない。その場合、平均トルクTqmはシュミット理論等により求まる図示仕事Wi(J)を用いて次式で表される。
(6)
また、速度変動率δは舶用ディーゼルエンジンの場合1/15〜1/40、一般動力用機械の場合1/25〜1/50に採られるが、特にエンジンの大きさや重量に制限を受けない模型スターリングエンジンの場合にはエンジン回転数の安定性を考慮して1/200程度に設定するとよい。
参考文献
(1)高橋 和、太田安彦:ディーゼルエンジンの設計、パワー社、 p62-64(1974)など