10W級低温度差スターリングエンジン


English

研究開発の目的

 スターリングエンジンは理論上、たった1℃の非常に小さい温度差であっても駆動することのできます。この特徴を生かして、自然エネルギ(地熱、温泉熱など)などを利用してエンジンを駆動することができます。ここで紹介する10W級低温度差スターリングエンジンは、地熱などの比較的温度の低い熱源を利用することを目的として、設計・試作されました。


研究開発の経過

 10W級低温度差スターリングエンジンは、主に低温度差スターリングエンジンの基本的な特性について研究開発を行いました。以下にその主な成果について示します。

1.温度比による影響
  温度比を小さくすると出力が上がることを確認しました。
2.熱交換器(加熱器、再生器、冷却器)の形式がエンジン性能に及ぼす影響
  加熱器:プレートフィン式、シェルアンドチューブ式、フィンチューブ式のそれぞれについてその特性を調べました。
  再生器:金網の材質及びメッシュ数を変えてその特性を調べました。
  冷却器:シェルアンドチューブ式、フィンチューブ式のそれぞれについてその特性を調べました。
3.バッファ圧力による影響
  バッファ圧力を高くすると出力が上がることを確認しました。
4.平均圧力による影響
  エンジン内平均圧力に最適値があることを確認しました。
5.位相角による影響
  位相角に最適値があることを確認しました。
6.圧縮比による影響
  ストロークを変化させて実験を行い、圧縮比に最適値があることを確認しました。



エンジンの構造

 10W級低温度差スターリングエンジンは、パワーピストンとディスプレーサピストンを持つγ形スターリングエンジンです。γ形スターリングエンジンは、その構造上加熱面を大きくとることができるので比較的温度の低い熱源を用いる場合に適しています。ディスプレーサピストンは長方形となっています。熱交換器は研究開発に伴って、プレートフィン式(加熱器のみ)、シェルアンドチューブ式、フィンチューブ式と、変更していきました。加熱源については、プレートフィン式では電熱線、またシェルアンドチューブ式及びフィンチューブ式では約100℃に加熱したエチレングリコールを用いています。冷却熱源には水道水を用いています。また圧縮比を変化させた場合の出力の変化を調べるために、パワーピストン径を100mmから200mmに、パワーピストンのストロークを無段階可変方式のクランク機構を用いて変化させています。


エンジン仕様

エンジン形式 γ型
パワーピストン ボア径200(mm)
ストローク20〜70(mm)
行程容積628.32〜2199.11(cc)
ディスプレーサピストン 縦*横296(mm)*276(mm)
ストローク40(mm)
行程容積3267.84(cc)
加熱器及び冷却器 形式シェルアンドチューブ式(フィン付き)
管径10(mm)
管長276(mm)
管数16*2
再生器 形式金網積層式(黄銅)
縦*横10(mm)*276(mm)
枚数30*2



エンジン性能

 右図は10W級低温度差スターリングエンジンにおける圧縮比と軸出力の関係を示したものです。この図における実験値は各条件における最高軸出力を示すものです。加熱源であるエチレングリコールの温度を130℃に設定した場合、圧縮比1.224で最高軸出力12.6Wが得られました。また、軸出力を最大とする最適圧縮比が存在することが確認されます。最適圧縮比は温度比の変化に伴い放物線状に変化していくことも確認できます。このことから低温度差スターリングエンジンを設計する際には圧縮比と温度比の最適化を行うことが重要となります。

Return to Stirling Engines of Saitama University

Return to Stirling Engiene Home Page Academic Edition