声明 「大学の教員等の任期に関する法律案」の閣議決定に強く抗議する

1997年4月8日
京滋地区私立大学教職員組合連合四役

1.政府は、4月8日の閣議において、「大学の教員等の任期に関する法律案」を国会に上程することを決定した。昨年10月の大学審議会答申以降、今国会に提案するとされながら、政府は、大学関係者や国民には法案の内容を一向に明らかにしてこなかった。大学教員に任期を設けることについて、国民全体だけでなく大学人の間ですらまだ十分に論議がなされていない。こうした時点で法案を直ちに上程し、短期間の国会審議で可決成立させようとする政府の決定は立法手続きとしてあまりにも性急なものである。

2.法案は、大学における「教育研究の活性化」「多様な人材の受け入れ」の名のもとに、次の3つに該当する教員に対して任期制を導入するとしている。その3つとは、「多様な人材の確保が必要な教育研究組織の教員」「自ら研究目標を定めて研究を行う助手」「特定の計画に基づき期間を定めて教育研究を行う職」ということである。法案はこのように、すべての大学教員ではなく、「特定の教員」について任期制を導入することを謳ったものであるが、その規定は極めて抽象的であり、解釈によりすべての大学教員がその対象になりうるものである。法案は、大学教員全体への任期制導入を求めた大学審議会答申を前提したものである。
 大学教員の身分保障は、憲法23条の「学問の自由」を根拠にしており、教育基本法や教育公務員特例法によってより具体的に保障されており、国公立大学教員は公務員法の身分保障からも任期付任用は原則としてできない。大学関係者の間では、任期制法制化が憲法をはじめとする大学教員の身分保障に抵触するのではないかという問題が広く指摘されてきた。今回の法案と法案要綱は、憲法等との抵触という根本的な疑問について何ら答えようとしていない。

3.大学教員の身分保障は国際的にも認められた基本原則となっており、教授を含めて大学教員全体に任期を設けようとする国はほとんどない。ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)は、現在、「高等教育教職員の地位に関する勧告」の採択に向けて討議をしており、今秋の総会で勧告を採択すると予想されている。勧告案では学問の自由にとって教職員の「終身在職権(テニュア)」等の雇用継続が重要であると指摘している。政府は、このユネスコでの論議を熟知しているはずであるのに、広く国民全体には知らせようとしてこなかった。大学審議会は、憲法23条やこのユネスコの勧告案についての審議すらなかったと伝えられている。大学教員の雇用保障を求めるユネスコ勧告の採択直前に、それに逆行する法律制定を急ぐことは、国際社会とともに国民世論を欺く不公正な立法制定手続きである。

4.大学における教育研究の活性化は、決して教員任期制導入によってもたらされるものではない。われわれは、大学の現場で教育研究を支える教職員として、教員の流動化によって教育研究に大きな弊害が生じると考える。
 諸外国に比べて日本では、高等教育への公的負担はあまりにも貧弱である。とくに私立大学では教育研究条件が劣悪であり、学生数に比べて教員数が少ないなかで充実した教育を目指して教員は努力を重ねている。教育研究の活性化のためには、教職員自身の改革の努力を尊重すること、そして、大学をめぐる貧困な状況を根本的に改善することこそが必要である。任期制を導入すれば、教員の激しい入れ替わりによって教育改革は困難になり、研究も視野の狭い短期的なものが主流になりかねない。
 また、われわれは私立大学における民主的な大学運営を求めているが、現状では教授会自治さえ確立していない大学が少なくない。こうしたなかで大学教員任期制の導入が進められれば、理事者による権威主義的な大学運営をもたらし、教員にたいする管理強化に任期制が利用される危険が大きくなる。

5.われわれ京滋地区私立大学教職員組合連合は、以上の理由で、今回の「大学の教員等の任期に関する法律案」上程に抗議し、政府にたいしては上程案の撤回を求めるとともに、国会にたいしては慎重審議によって同案を廃案とするように強く求めるものである。

以上