吾妻小舎で星を見よう!

 吾妻小舎(あづまごや)のある吾妻山は、標高が高く光害の少ない場所です。 つまり、夜空の空気が澄んでいて、星を見るにはとても適した場所なのです。 この吾妻小舎の標高は1585メートルもあります。 ですから、淡い天の川を美しく見ることができる場所です。
 すぐそばの兎平駐車場では、1970年代から、1980年代にかけ『星空への招待』という天文イベントが10年間開催され、全国から何千人ものアマチュア天文家が集いました。 浄土平に天文台が建設されたのも、星の美しさだけでなく、星好きの人たちにとっては、憧れの場所であったという理由もあるのです。
 また、今から100年以上も前の1993年、パーシヴァル・ローエルという一人のアメリカ人科学者がこの地を訪れたいたという事実があります。 彼は、当時大爆発を起こした一切経山を観測するためにやってきました。 実は彼は天文学者で、すぐアメリカに戻ると、アリゾナに天文台を建設し、火星の観測を精力的に行いました。 火星を望遠鏡で見たときに観測される細いすじ模様を、イタリアの天文学者スキャパレリによって「カナリ」(水路の意)と名づけられたのですが、ローエルはこれ「運河」と解釈し、高度な文化を持つ火星人が存在すると発表し、後に火星人騒動の原因ともなりました。 火星人のイメージが、頭の大きなタコ型なのは、きわめて高い科学を持つのだから、「頭が特に発達しているに違いない」と考えられた結果です。 そんな有名な科学者もここを訪れていました。
 それから、山好きな方にはあまりにも有名ですが、「日本百名山」という本を書いた、深田久弥氏も、1939年1月6日にこの山小屋を訪れ、玄関先で満月を眺めたという記録が残されています。



今夜の星空をシミュレート

 コンピュータで、今夜(2000年7月29日)の夜空を表示させてみました。




今夜の星空の見どころは?

 月のない夜ですから、月あかりにじゃまされることなく天の川を見ることができます。 星空の方は、夏の有名な星座がたくさん見えています。
 頭の上の方には「夏の大三角」と呼ばれる、3つの星が見えるはずです。 その中で一番明るいのは「こと座」のベガと呼ばれる星で、七夕の織姫星です。 次に明るいのは南側に見える赤い星、「わし座」のアルタイルです。 こちらは、七夕の彦星です。 そして最後は、「はくちょう座」のデネブです。 はくちょう座のちょうどお尻の星で、頭のくちばしはアルビレオという2等星の星です。 望遠鏡で見ると美しい二重星で、宮沢賢治も童話「銀河鉄道の夜」の中で、「アルビレオの観測所」と名づけています。 オレンジ色と薄い紫色でしょうか、賢治のいう「トパーズ」と「サファイア」の輝きがぴったりです。 ぜひ望遠鏡で楽しみたい星です。
 天の川を南へとたどってみましょう。 南の地平線に近い場所は、いちだんと濃い天の川を見ることができます。 ちょうど私たちの住む太陽系のある銀河系の、中心方向を見ているためです。 星座は「いて座」「さそり座」付近です。 この辺りには星雲や星団が多数存在しますので、望遠鏡や双眼鏡で観察したい場所です。



今夜明るい惑星は見えるの??

 夜半前には見ることができません。深夜、日付も変わり、30日になってから明るい外惑星が相次いで昇ります。 「おうし座」付近に見える木星と土星です。



 土星望遠鏡で拡大して見ると、次の図のようになります。 輪があるユニークな姿は小型の望遠鏡でも楽しむことができます。 明るさは、0等星で、ちょうど「こと座」のベガと同じ明るさです。 今の時期は輪が大きく傾いて見えます。
 木星は、さらに明るく−2.2等星です。 ガリレオ衛星という「木星の月」を4つ見つけることができます。 地球との距離は5.4AU(天文単位)で、地球〜太陽間の距離の5.4倍、遥か彼方にあるわけです。




天文最新ニュースより

 さそり座のδ星(デルタ星)の増光が報告されています。 約6割増光して、1.8等星になっています。 新聞などでも報道されましたから、ご存知の方も多いことでしょう。 普段は目立たない星ですが、「さそり座」を見慣れた人にとっては、ちょっと違和感を感じるほどかもしれません。 このような明るい星が増光することは非常に珍しいことです。




天文の基礎データ

■月齢:27.3
■日の入:18時57分
■天文薄明終了:20時34分
■天文薄明開始:2時57分(30日)


 吾妻小舎の星見資料(2000年7月29日)
ホームページ: http://www.bekkoame.ne.jp/~kakurai/mount/azuma/nature/guide20000729/index.html