事務局だより 第68号
   

The Miyazawa kenji Association Iihatobu Center

事務局だより 第68号
2003,09,01
Office Kenji

宮沢賢治学会
- トップのページへ -
 
事務局だより
- 元のページに戻る -

事務局だより 第68号
 *第14回定期大会プログラムについて


 北東北は梅雨明けなしのサムサの夏。 実りの秋へ、どうか天候の回復を。 さて、来る9月22日23日の二日間は第14回定期大会の開催です。 会員外の方も参加できますので、どうぞお誘いあわせの上、おいでください。

 9月22日(月)
会場 NAHAN(ナハン)プラザ
       (東北線花巻駅前)
▼第13回宮沢賢治賞、イーハトーブ賞贈呈式
 主催 花巻市     10:00〜12:00
 選考経過報告、主催者あいさつ、受賞者あいさつ、本賞受賞者記念講演
▼定期総会       13:30〜14:15
 議事 (1)二〇〇二年度事業報告及び収支決算の承認について
    (2)二〇〇三年度事業計画及び収支予算について
    (3)役員の改選について
▼賢治研究リレー講演  14:30〜15:30
 (1)力丸光雄(岩手県)「林間に幻の洋館を見た」
 (2)中地文(宮城県)「小学校国技教科書の宮沢賢治」
 (3)「富山英俊(東京都)「一九二七、六、一三、」の日付について」
▼イーハトーブサロン  15:15〜16:15
 −私と賢治−
 「私と賢治」というテーマで参会者が、5分間の中にそれぞれの思いを気軽に述べ合うコーナー。 ただし、「宣伝」や「行事案内」だけの内容のものは、ご遠慮いただくことといたしましたので、了解願います。 なお、発表者への記念品として、ちょっと気になる「イーハトーブ館図書券」(5百円券2枚)を用意いたしますので、どうぞ皆様ふるってご参加ください。 当日会場にて申し込みを受け付けます。
▼参加者交流・懇親会  16:30〜18:30
 1日目の行事終了後、同会場にて、参加者交流・懇親会を開催いたします。 会費千円、当日会場にて受付いたします。
 なお、この会を連続企画第3回「宮沢賢治をたべる会」として、現在イーハトーブ館で開催中の企画展「ごちそう博覧会」のアンケートより、リクエストの多かったイーハトーブに関する料理を味わう予定ですので、お楽しみに。

 9月23日(火・祝日)
会場 宮沢賢治イーハトーブ館
▼研究発表       10:00〜12:30
1松本隆「童話「銀河鉄道の夜」と藤原健次郎・南昌山
 賢治の親友藤原健次郎は野球選手であったが、明治43年の夏、秋田の大館中学校への野球遠征に参加し、帰り、雨に濡れたことから腸チフスに罹り急逝した。
 賢治は、健次郎を失った悲しみが大きく、のちに健次郎を偲び、童話藤原健次郎村堂三部作を遺している。 私は、童話「銀河鉄道の夜」も、次に掲げる根拠からモデルの中に健次郎と南昌山が含まれている様に思われる。
1、カムパネルラは背が高く雨に濡れた様な服を着ている。(発病の原因を連想させる。)
2、賢治は南昌山を岩鐘と呼んだ、釣鐘草の学名を健次郎に充てたと思われる。
3、天気輪の柱は南昌山頂上に奉納されている、天気を祈願した石柱だと思われる。 4、南昌山で水晶を拾った情景が描かれている。
5、寄宿舎でのランプ掃除の情景が連想される。
6、烏ウリ流しはキンカ流しの発想ではないか。

2村瀬甲治「〈書き手〉の神出、〈声〉の鬼没−宮澤賢治「風〔の〕又三郎試論−」
 詩人宮澤賢治の誕生を告げる1924年に成立した「風野又三郎」から晩年の「風〔の〕又三郎」への成立に影を落とす「種山ヶ原」「さいかちの淵」両作品の転生は、高原状の設定(9/4の章)に穿たれた淵の深み(9/7−8の章)において、1925/7/19「三六八 種山ヶ原」系詩群と通低する書記行為の彷徨を同作品に孕ませるものであった。 同詩作品下書稿一部発展形の「若き耕地課技手のIrisに対するレシタティブ」下書稿裏面メモ「民間に於る稲作豊凶考照」が掲げる項目の「栗の花」のあわいには、三浦祐之らの指摘にある二百十日の風の又三郎信仰に先立つもうひとつの「(土用)三郎」の所在が見え隠れしているのである。 栗及び、どんぐり筴・合歓、山椒等の作品の植生に留意し、七月下旬から九月上旬をめぐる書記行為の彷徨が、同作品の9/7−8に跨ってテクストの界面に姿を現すその様態を、〈書き手〉と〈声〉の所在をめぐる問題として考察したい。

3宇佐美怜子「「なめとこ山の熊」−ひきざくら考−
 ひくざくら、とは一度読んだら忘れられない美しさと巷間いわれる母子熊の場面に於る、母子の会話に登場する花である。 こぶしの方言で、せきざくら、とも呼ばれるという。
 賢治はなぜ、ひくざくら、を使ったか。
 この場面には月、光、銀、雪、霜、さくら等の言葉は散在する。 「雪だ。いいえ、さくら。」 という。 まるで古今和歌集の世界である。 南部叢書目録所収の本を検討すると、ひきざくら、は明治、江戸、平安に遡る言葉である。 さくらは稲の豊穣を祈る花。 農業実践者としての決心をも秘め、心願成就の為に冬眠明けの無垢は母子熊と、平安言葉に比する美しい光景を要したのである。 賢治は古代から受け継ぐ雅な言葉を、深山を舞台のさくらものがたりのキーワードとして意図して選び取ったと考える。

4白木健一「お月さまの姿と賢治童話群」
 賢治作品の中で、月は月齢を付して登場する場合の多いことが注目されてきた。 今回は童話に現れる月の月齢について調べた。 (1)二十の童話の中に20種類の月齢の月が現れ、これが全月齢1〜29日の中に一様に散りばめられている。
(2)月齢を付した月は三十の場面に現れ、四分の一の七場面では月齢10日迄の西の月が、また別の七場面では月齢15以降の当方の月が現れる。
(3)物語の進行につれ月齢の進む童話に「オツベルと象」他がある。
(4)月齢5日と15日の月は夫々二つの童話に登場し、この月齢の童話には共通の背景がある。
(5)終りにちかい月齢の月が現れる「二十六夜」「フランドン農学校の豚」ではいずれも主人公にとって理不尽な死が結末となり、その際前者で月は阿弥陀の来芸を思わせる重要な役を果たす。
 前記の結果等から賢治は月齢を主とした多様な月の姿夫々に趣きを感じ、その童話や場面にふさわしい月を登場させたと考えられる。

5谷暎子「占領期の検閲と賢治童話」
 占領下のGHQ/SCAPは、占領政策の一環としてあらゆるメディアの検閲を実施。 出版物は検閲は、1945年9月から1949年10月まで行われた。 検閲で問題ありと判断されると、出版禁止、削除などの処分を受けた。 賢治童話のなかに削除処分を受けた作品があることは、これまで知られていない。
 戦後史資料の宝庫である米国の州立メリーランド大学・プランゲ文庫には、検閲済の出版物が保存されている。 文庫の所蔵児童書と検閲資料の調査の結果、事前検閲で『やまなし』(社稜書院)に収録予定の「蟻とキノコ」、『注文の多い料理店』(社稜書院)の「烏の北斗七星」が全文削除、『宮沢賢治名作選』上(社稜書院)の「注文の多い料理店」が全文削除を明示られていたことが判明。 これらの削除理由を探り、検閲終了後の復元・出版などを含めて賢治童話の検閲実態を解明したい。

6大島丈志「賢治作品に見られる「農」の思想−「農民芸術概論綱要」を中心として−」
 従来、賢治作品の中で理想的に描かれている農業は商業に対する嫌悪から生まれた古く閉鎖的な自給自足経済とされてきた。 だが、この問題に関しては十分議論がなされておらず、当時の農業状況からの考察が必要である。
 昭和初期の農村は飢餓こそないものの、農民は自ら生産したものを口に出来ない状況にあった。 この状況にあっては農民が自ら生産したものを食べるという自給自足経済の構想と同時に、肥料の近代化と都市部への販売という開放的な商品経済の構想が描かれている。
 「農民芸術概論綱要」を代表とする賢治の作品の「農」の思想は、農民が自主的に付加価値の高い商品を生産・販売することによって労働を芸術にまで高め、利益と同時に精神的「富」を獲得することが構想されていたのである。


▼宿泊のご案内
 花巻観光センターをご利用下さい。 市内すべての宿泊施設をご案内いたします。
      電話 0198-31-2244


 *賢治祭関連行事のご案内


 9月20日(土)
 ◆花巻農業高校「賢治先生を偲ぶ会」
  ○板谷英紀さんの講演、花巻農学校生による合唱
   演劇、鹿踊りほか
   午前9時から 会場・花巻農業高校

 9月21日(日)
 ◆賢治祭
  ○午後5時 献花
   午後5時30分 鹿踊り、詩の朗読、合唱、
   野外劇、座談会など
   会場 桜町雨ニモマケズ詩碑前(雨天の場合、南城小学校体育館)

 ◆宮沢賢治記念館開館記念行事
  ○9月21日(日)
   午前9時から胡四王神楽会場 宮沢賢治記念館 前庭


 *会費納入のお願い


 本会の会費は、毎年4月から翌年3月までが年会費となっております。 今年度の会費未納の方には、今回事務局だよりとともに郵便振替の用紙を同封いたしました。 同時に、会費の受納は随時受け付けておりますので、イーハトーブ館への来館のおり、郵便局、銀行へお立ち寄りの際納めてくださっても結構です。
 なお、すでに納入されているにもかかわらず振込用紙が同封されている場合は、お手数ですがご一方いただければ幸いです。 また、このお知らせと行き違いにお支払い済みの場合は、何卒ご容赦願います。

郵便振替口座02330=7=26637
岩手銀行花巻支店普通口座0480908
名義 宮沢賢治学会イーハトーブセンター
会費年額 一般・3,000円 学生・1,500円
     賛助会員・30,000円

 なお、昨年度会費未納の方で、本年9月末日までにお納めいただけない場合は、やむなく退会扱いとさせていただいておりますので、どうかお早めにご納付ください。


 *図書・資料受入れ報告(2003年3月10日〜4月30日)


【寄贈図書】
〔配列は受入れ日順で、記載項目は、寄贈者(出版社)・書名・発行所(寄贈者・寄贈出版社が同じ場合は略)の順〕
・佐藤竜一『街もりおか03年3月号』(コピー)
・大和田茂『小田切秀雄研究』(菁柿堂・刊)
・日本大学芸術学部文芸学科研究室『ようこそ「ケンジ童話の授業」へ』&DVD
・田口昭典『北域55号』(北域社・刊)
・田口昭典『あるびれお通信』676〜681号
・東海学園大学日本文化学会『言語・文学・文化』2号
・グエン・ニエン『ベトナム語訳「銀河への鉄道」』(Nha xuat ban Tre・刊)
・上智大学国文学会『国文学論集』36号、『紀要』20号
・佐野幸雄『市民文芸ふじのみや優秀賞』(コピー)(富士宮市教育委員会・刊)
・路傍舎『銀河地人通信』33号
・梅花女子大学大学院『梅花日文論集』11号
・花巻市教育委員会文化課『ビデオ花巻地方の今昔のこども遊び、遊び歌』
・金城学院大学国文学会『金城国文』79号
・同志社女子大学大学院文学研究科『紀要』3号
・実践国文学会『実践國文学』63号
・ダ・ダ・スコ編集室『ダ・ダ・スコ』62・63号
・高橋悌子『「賢治童話」に表出するオノマトペの英訳手法に関する研究』
・偕成社『チュウリップの幻術』(田原田鶴子・絵)
・筑摩書房『ちくま』385号
・岩手郷土文学研究会『岩手郷土文学の研究』4号
・大橋和夫『版画 セロ弾きのゴーシュ』
・田口昭典『風土59号宮沢賢治の学生時代(五)』(コピー)
・ぎんどろの会『栃木・宮沢賢治の会通信』62号
・釧路宮沢賢治を語る会『マグノリア』96号
・山猫通信編集室『山猫通信』118号
・文京女子大学短期大学部現代文化学科『文芸論叢』39号
・工藤哲夫「永捨から転捨へ」(『国語国文』3号抜刷)
・宇佐美眞『解釈1月号』574集、『解釈2月号』575集(解釈学会・刊)
・国立国会図書館国際子ども図書館『国際子ども図書館の窓』3号
・真世界社『真世界』6168・6169号
・歴程社『歴程』497・498号
・新見南吉記念館『研究紀要』9号
・志村正雄『神秘主義とアメリカ文学』(研究社出版・刊)
・鎌倉・賢治の会『かま猫通信』69号
・日本図書館協会『図書館雑誌』97巻4号
・跡見学園女子大学人文学フォーラム『フォーラム』1号
・香川熊谷印刷『報道にみる出版部50年の歩み』
・創元社『宮沢賢治「銀河鉄道の夜」を読む』(西田良子・著)
・香川大学教育学部『研究報告』I部117号
・白石工業高校『宮沢賢治と私』(高橋愛・著)
・島根大学教育学部『《春と修羅第二集》改稿過程に見る詩歌観の展開』(木村東吉・著)
・書森舎『佐々木隆二写真集・風の又三郎』
・CHaGの会『「ぼくらの理由」通信』10号
・岡山哲夫『詩誌ONL』65、66号(山本衛・刊)、『ビデオ&シナリオ四万十川の詩人−正木聖夫の生涯−』(柴岡香・刊)
・大沢正善『文学の力×教育の力』(コピー)(教育出版・刊)
・二松学舎大学大学院文学研究科『紀要二松』17集、二松学舎大学東洋学研究所『集刊』33集、二松学舎大学『論集』46号
・漉林書房『漉林』113号
・漉林書房『田川紀久雄詩集音を聞きに出かける』




宮沢賢治学会
- トップのページへ -
 
事務局だより
- 元のページに戻る -


メインページへ

宮沢賢治のページへ

☆星のページへ

△山のページへ

Copyright (C)1996-2003 Atsuo Kakurai. All rights reserved.