事務局だより 第53号
   

The Miyazawa kenji Association Iihatobu Center

事務局だより 第53号
2000,08,31
Office Kenji

宮沢賢治学会
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事務局だより
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事務局だより 第53号
 *第11回定期プログラムについて


 2000年の宮沢賢治生誕日、宮沢賢治国際フェスティバル2000・第2回宮沢賢治国際研究大会が閉幕いたしました。 はたして参加者の皆さんの印象や感想はいかなるものであったでしょうか。
 さて、その熱気もさめやらぬまま、来月は定期大会が開催されます。 期間は例年通りの9月22日、23日の二日間。 会員以外の方も参加できますので、多数のご参加をお待ちしております。

 9月22日(金)
会場 NAHAN(ナハン)プラザ
       (東北線花巻駅前)
▼第10回宮沢賢治賞、イーハトーブ賞贈呈式
 主催 花巻市     10:00〜12:00
 選考経過報告、主催者あいさつ、受賞者あいさつ、本賞受賞者記念講演
▼定期総会       13:30〜14:45
 議事 (1)一九九九年度事業報告及び収支決算の承認について
    (2)二〇〇〇年度事業計画及び収支予算について
    (3)役員の改選について
▼賢治研究リレー講演  14:30〜15:30
 (1)ジャン クリスチャン ブービエ(福岡県)
 (2)斉藤徳美(岩手県)
 (3)吉田精美(岩手県)
 (4)森本智子(兵庫県)
 (5) 未 定
▼イーハトーブサロン  15:15〜16:45
 −私と賢治−
 「私と賢治」というテーマで参会者が、5分間の中にそれぞれの思いを気軽に述べ合うコーナー。 発表者への記念品として、今年も「イーハトーブ館図書券」(5百円券2枚)を用意いたしますので、どうぞ皆様ふるってご参加ください。 当日会場にて申し込みを受け付けます。
▼参加者交流・懇親会  17:00〜18:30
 1日目の行事終了後、同会場にて、参加者交流・懇親会を開催いたします。 会費千円、当日会場にて受付いたします。

 9月23日(土・祝日)
会場 宮沢賢治イーハトーブ館
▼研究発表       9:30〜12:00
1樋口 恵「「装景」としての「春と修羅」〈第三集〉」
 「春と修羅」〈第三集〉は草稿群で残され、写実色が強まったため、「生活記録風の詩」「挫折の記録」として読まれることが多かった。 しかし、農民の子供へのメッセージ的なもの、絵画的なものなどがあり、一概にはくくれない。 また、「詩法メモ」には、「第三詩集 手法の革命を要す(中略)心象スケッチの非ず」というものがあり、何らかの「手法の革命」が行われたと考えられる。
 近代に入りアノニマスな風景が発見されたが、勝原文夫はその視線を「旅行者的審美の態度」から「生活的景観」を見るものであったと指摘した。
 ところが、〈第三集〉に見られる視線は「生活的景観を「装景」し「探勝」化するものではなかったか。 風景に固有性を与えることによって、〈イーハトヴ〉を「装景」していく試みは、「ルーラルデザイン」(農村修景)の実践であったと考えられる。
 勝原氏の論を援用し、同時代の農民詩人との比較も試みながら、「装景」の過程を明らかにしていきたい。
2高橋梯子「日英対訳・賢治童話の読み取りから学ぶ事〜「オツベルと象」に頻出するオノマトペの英訳手法を中心に〜」
 数人の翻訳者による英訳・賢治童話が今日迄様々刊行され、筆者自信も日英語表現比較研究の対象資料として活用し、主に多発するオノマトペの英訳手法を中心的に研究してきたが、本稿では、ジョン・ベスターによる対訳「オツベル象」に見られる英訳手法に対する統語的観点からの対照比較によって析出された原文解釈の新たな視点を提示する。 考察要旨を示唆する中核的事例として次の2点を上げる。
[1]原文のオノマトペが英訳された場合、動詞化(又は準動詞化)される傾向が見られる。 具体的には「グララアガア」は、
‘bellow’、‘roar’、‘trumpet’、「のんのん」は、‘thump’に、「パチパチ」は‘pepper’、‘rain’、‘sting’にといった一般動詞に変換され英語の文脈環境で異なった表現効果を発揮する。
[2]「パチパチ{(a)象、(b)歯、(c)顔}にあたる」は、(a)pepper the elephant、(b)rain against his tusks、(c)They sting ! のように、「あたる」の動作主と対象物に応じて各々異なった動詞を用いる。 これらの気づきは原文の読み取りを一層多面的に成熟させるものである。
3斎藤文一「「柳沢」に記録された異常発光現象−榊氏の新説について
 賢治の短編「柳沢」には、一九一七年十月、岩手山麓の柳沢で、異常な発光現象に出会った体験が記されている。 彼は、それを気圏における「燐光」であると推定した。 この推定をめぐってはすでに筆者の論考があるが、最近、榊氏がその近著において、これを全面的に否定する説を発表された。 しかしその内容は、いくつかの重大な事実誤認があり、さらに氏の論の中には、とくに賢治評価において極めて特異なともいうべき主張が随所に見られる。 こうした主張は、今後、われわれにとっても看過しえない大きな問題を含むと考える。
4杉山諭「賢治が芸術・宗教・科学に一体感を持っていたこと」
 賢治は、芸術・宗教は一体であることの感を持っていた。 芸術は心を豊かにし、宗教は人間性を覚醒ます。 科学は究理発見応用である。
 宗教と科学は根底に共通理念あり。 賢治は農民芸術概論綱要で、宗教は疲れて近代科学に置換され然も科学は冷たく暗い、とあるがそれは既成の宗教観に対する一般論で、生前の賢治が信仰と科学の交流を十分述べずに去った。 吾菲才乍ら同信の大先輩にかわり代弁し、宗教と科学の一体性を表明各論す。
 賢治信仰の宗教には尊崇対象、教法、布教者に主師親の三徳あり、主師親判の原理。


5板谷英城「賢治研究法について」
 浪人時代の賢治は次のような短歌一三四を詠んでいる。

 わがあたま
 ときどきわれに
 ことなれる
 つめたき天を見しむることあり


 花農時代の童話「インドラの綱」に、天の空間についての次のような言葉がみえる。

 重力は互いに打ち消された冷たいまるめろの匂ひが浮動するばかりだ。

 相対性原理の影響は明らかであるが、賢治が天に感じたマルメロの匂いはまぎれもなく幻想感覚がもたらしたものであり、天の空間もまた幻想感覚ということになろう。
 そして晩年の童話「銀河鉄道の夜」でも実在しないリンゴとノバラの匂いが漂っているし、それに幻想第四次ということばもあり、幻想空間であることはさらに明白である。
 賢治の異空間は生来の幻想感覚が感知した幻想空間であった。 そして、相対性原理や数学的四次元論は、異空間の客観的な説明のために賢治が無理に援用したものに過ぎない。
 賢治の異空間の解釈に関する難解性は、それを幻想空間と認識することによって、たちどころに霧散するであろう。
 賢治の言葉を自分の学識で考察するのではなく、賢治の感性に従って感受するのが、難解化から脱却する唯一の最善の方法であろう。

▼ポランの広場      13:30〜15:00
 本年のポランの広場は、力丸代表理事と鹿川理事のお二人がコーディネーターをつとめ、
 ・花巻弁がふんだんに聞けるもの
 ・本年春季セミナーに続く「下書稿の読み」
などをプログラムにした催しを企画中です。 どうぞお楽しみに。

▼宿泊のご案内
 花巻観光センターをご利用下さい。 市内すべての宿泊施設をご案内いたします。
      電話 0198-31-2244


 *イーハトーブ館ショップ 猫の事務所(ご案内)


 前々号の「事務局だより」でお知らせしましたように、『新宮澤賢治語彙辞典』の内容を補正した『同初版補遺』(小冊子、48ページ)が、予定より少し遅れて出来上がり、初版を会員特別価格でイーハトーブ館でお買い上げの方々には、版元(東京書籍)からお買い上げリストにより既にご自宅宛に発送ずみの連絡がありました。 なお、特別価格期間後、イーハトーブ館で、あるいは書店等でお求めになった方々には、ハガキまたはファックスで、左記版元宛にご請求下されば、折返しお届けするとのことです。 そのことは、新聞等でも追って広告する旨、同補遺刊行が遅れたお詫びかたがた、版元から連絡がありましたので、お知らせいたします。
  〒114-8524
  東京都北区堀船2-17-1
  東京書籍 書籍編集部
  TEL 03-5390-7409


 *賢治祭関連行事のご案内


 9月20日(水)
◆花巻農業高校「賢治先生を偲ぶ会」
 ◯朗読、合唱、演劇、鹿踊り、
  原子朗さんによる記念講演「黄いろのトマトを持っていきます」など。
  午前9時から
  会場・花巻農業高校

 9月21日(木)
◆賢治祭
 ○午後5時 献花
 ◯午後6時 鹿踊り、朗読等
  会場 桜町雨ニモマケズ詩碑前
     (雨天の場合、南城小学校体育館)


 *図書・資料受入れ報告(2000年4月22日〜6月21日)


【寄贈図書】
〔配列は受入れ日順で、記載項目は、寄贈者(出版社)・書名・発行所(寄贈者・寄贈出版社が同じ場合は略)の順〕
・釧路宮沢賢治を語る会『マグノリア』78・79号
・森本智子『かほよとり』7号(武庫川女子大学大学院文学研究科国語国文学専攻院生研究会)
・甲南大学『紀要文学編114』
・平澤信一『文学・語学』165号コピー
・青山学院大学日本文学会『緑岡詩林』24号(青山学院大学日文院生の会・刊)、『青山語文』30号
・田口昭典『あるびれお通信』524〜531号
・東京女子大学学会日本文学部会『日本文学』93号
・クラムボンの会『CD林洋子ひとり語り』
・筑摩書房『ちくま』350〜351号
・真世界社『真世界』6133〜6134号
・東洋大学短期大学日本文学研究会『東洋大学短期大学論集 日本文学論』36号、『日本文学研究会 会報』15号
・鎌倉・賢治の会『かま猫通信』43〜45号
・歴程社『歴程』470〜471号
・跡見学園女子大学国文学『国文学科報』28号
・二松学舎大学東洋学研究所『東洋学研究所集刊』30集
・二松学舎大学文学院文学研究科『二松』14集
・二松学舎大学文学部『二松学舎大学論集』43集
・杉山論『いわて医報』586号コピー
・岩手郷土文学研究会『岩手郷土文学の研究』1号
・田口昭典『あるびれお通信』526〜529号
・安田女子大学大学院文学研究科『紀要 日本語学日本文学専攻』5号
・漉林書房『漉林』95号
・菅野俊之『文献検索1999』コピー(文献検索研究会・刊)
・日本近代文学館『日本近代文学館』175号
・香川大学教育学部『研究報告』109号
・無明舎出版『文学館とうほく紀行』(森田溥・著)
・宮沢賢治記念館『記念館通信』70号
・宮沢賢治研究会『賢治研究』81号
・毎日新聞社『2000年版読書世論調査』
・盛岡大学日本文学会『研究会報告』8号
・盛岡大学文学部日本文学科『東北文学の世界』8号
・盛岡大学日本文学会『日本文学会誌』12号
・渡辺仁子『りらく』23号(現楽社・刊)
・寺尾操『金子みすずと尾崎翠』(白地社・刊)
・佛教大学国語国文学会『京都語文』5号
・花伝社『〈私〉の思想家 宮沢賢治』(岩川直樹・著)
・山猫通信編集室『山猫通信』101号
・名古屋女子大学図書館『紀要46号』(名古屋女子大学・刊)
・野村胡堂・あらえびす記念館『館報』7・8号
・大阪国際児童文学館『news』19号
・花巻市教育委員会『花巻市文化財調査報告書』26集
・金沢市『金沢・名作の舞台』
・時間と空間の会『時間と空間』45号
・門屋光昭『鬼と鹿と宮沢賢治』(集英社・刊)
・神谷書房『宮沢賢治「オホーツク晩夏」旅の謎』(西村宗信・著)
・井上幸子『土の贈物 井上克弘教授追悼記念誌』
・渓水社『宮沢賢治《春と修羅》研究』(木村東吉・著)
・島田隆輔「宮沢賢治《文語詩稿》/歌ひめの詩系譜へ・その序」(『島大国文』28号抜刷)
・翰林書房『宮沢賢治の美学』(押野武志・著)




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