事務局だより 第48号
   

The Miyazawa kenji Association Iihatobu Center

事務局だより 第48号
1999,08,27
Office Kenji

宮沢賢治学会
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事務局だより
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事務局だより 第48号
 *第10回定期プログラムについて


 早いもので今年10回目を迎える定期大会が、来たる9月22日23日の二日間にわたって定期大会が開催されます。 新たな2000年にむかって、今年も盛りだくさんの内容となりました。 会員外の方も参加できますので、どうぞおさそいあわせの上、おいでください。

 9月22日(水)
会場 NAHAN(ナハン)プラザ
       (東北線花巻駅前)
▼第9回宮沢賢治賞、イーハトーブ賞贈呈式
 主催 花巻市     9:30〜12:00
 選考経過報告、主催者あいさつ、受賞者あいさつ、本賞受賞記念講演
▼定期総会       13:00〜13:45
 議事 (1)一九九八年度事業報告及び収支決算の承認について
    (2)一九九九年度事業計画及び収支予算について
    (3)役員の改選について
▼賢治研究リレー講演  14:30〜15:30
 (1)中谷俊雄(東京都)
   「文語詩鑑賞法」
 (2)門屋光昭(岩手)
   「イーハトーブ・ふぉくろあ事始め」
 (3)ケイト トムソン(岩手県)
   「 未 定 」
 (4)栗原俊明(栃木県)
   「モニュメント制作のエピソード(「風の又三郎」群像と「よだかの星」彫刻碑」
 (5)佐藤国男(北海道)
   「賢治童話の魅力「夢幻」について」
▼イーハトーブサロン  15:15〜16:45
 −私と賢治−
 「私と賢治」というテーマで参会者が、5分間の中にそれぞれの思いを気軽に述べあうコーナー。 発表者への記念品として、ちょっと気になる「イーハトーブ館図書券」(5百円券2枚)を用意いたしますので、どうぞ皆様ふるってご参加ください。 当日会場にて申し受け付けます。
▼参加者交流・懇親会  16:30〜18:00
 1日目の行事終了後、同会場にて、参加者交流・懇親会を開催いたします。 会費千円、当日会場にて受付いたします。
 また昨年好評であった宮沢賢治作品にちなんだ料理パート3も企画中。 今年は、力丸代表理事のレシピをもとにメニュー構成いたしますので、どうぞお楽しみに。

 9月23日(木・祝日)
会場 宮沢賢治イーハトーブ館
▼研究発表       10:00〜12:00
1井上寿彦「賢治の方法」
 賢治の作品を3つに分類する。
A型動物・植物等が主人公のもの。 その中で、人は登場しないものをA−I、人が脇役的に登場するものをA−II。
B型 異世界と人が交流するもの。 その中で人が異世界へ行って環えってくるものをB−I、異世界のものが人のところにやってくるものをB−II。
C型 人が中心の物語。 その中で虚構性の強いものをC−I、生活体験に基づいたリアリズム系のものをC−II。
 前期ではC型が多く、中期ではA・B型が多い。 中期後半ではC型が増え、後期ではC型にかたよっている。
 賢治ははじめ動物昔話型(A型)で童話を書きはじめ、ファンタジー型(B−I)で完成度を高めると、アンデルセン的な創作昔話の方法に移っていったと見て、賢治童話と日本昔話との関係を問題にする。
2細田嘉吉「文語詩「硫黄」のい背景と輸送経路」
 文語詩「硫黄」の原体験は、大正7年の稗貫郡土性調査のとき出合った硫黄運送に使役されている子馬に対する同情又は愛情である。
この情を即興的に詠った二首がある。
”夜はあけて 馬ほのぼの汗したり
  うす青ぞらの 電柱の下”
(642)
”夜をこめて 硫黄つみこし馬はいま
  あさひにふかく ものをおもへり”
(643)
 文語詩稿の「硫黄」はこの短歌の発展である。 「硫黄」2行目の
 「元山あたりの白雲の、澱みて朝となりにけり」の「元山」は鶯沢鉱山の元山とされているが、この文語詩には先駆形があり、その先駆形と当時の鶯沢鉱山の状況を考え合わせると、どうしても、状況が一致しない。

 大森山の右肩に
 二十日の月ののぼるころ
 棒の硫黄をうち積みて
 峡の広場をいで立ちぬ
    馬は頭をうち垂れて
    かのましろなるきり岸を
    月のあかりにあゆみしに
    川あおじろく鳴りにけり
 東しらみて野に入れば   −以下略−


 当時の鶯沢鉱山の硫黄は、元山から西鉛温泉駅まで鉄索輸送で馬を使っていない。
 西鉛・志戸平間は、馬車鉄道であったが、距離8粁で僅か1時間余の行程であって、「二十日の月ののぼるころ」つまり真夜中に出発する必要はなかった。
 その他、このコースには、「かのましろなるきり岸」「川あおじろく鳴りにけり」といった場所はなく、「東しらみて野に入れば」といった情景も考えられない。
 この文語詩の背景に、ぴったりの鉱山と輸送路が他にある。 それを紹介したい。
3亀井茂「大正5年宮澤賢治クラスの盛岡附近地質調査の動機に関する一考察」
 大正5年盛岡高等農林学校2年生の賢治らクラスは、地質学担当の関豊太郎教授の指導のもと、夏期実習として盛岡付近地質実習を行っており、その成果は翌大正6年盛岡高農『交友会会報』に報告された。
 関教授は、地質・鉱物の講義と平行して、地元盛岡付近はもちろん、遠く県外、例えば秩父などへの実地研修を常としていたが、しかし夏期実習として地質調査を課し、しかもその結果を報告書にまとめ、発表させたのは、賢治のクラスのみである。 このことはかなり特異なケースであり、それには賢治の関与がかなり予想されるが、その点についての言及は今までになされていない。
 今回はこの調査が企画された動機、経由に賢治が如何に関与し、また当時関教授との関わりが如何に深かったかを、例証を挙げいささか考察を試みたので報告したい。
4杉尾玄有「法華文学の創作とは?−とりあえず『風の又三郎』その他−」
 「風の又三郎」(略・B又三)の終りに「ふしぎなことはせんせいが…赤いうちはをもつてゐる」「先生はあかいうちはをもっていそいでそっちへ…」とあるが、どなたもこの団扇をふしぎがらない。 これは道元から来る。《現成公案》末尾「風性は常住なるに何ゆえ扇を使うか」→暴風の日なのに! 風性こそは『風野又三郎』(略・A又三)のテーマ。 賢治にとって「風性常住」は《如来寿量品》の仏の常住に直結。 A又三は果して気象学的啓蒙作品か。 「急に向かふが空いちまった。僕は向かふへ行くんだ。さよなら。」 これではまるで「点から点へ」の直線的瞬間移動。 「ひかりの素足」の仏が、「実にはやく実にまっすぐにこっちへ」直行する場面にそっくり。 こんな気象現象はなかろう。 《如来寿量品》に照準をあててA又三で《如来寿量品》の痕跡を払拭するのが賢治法華文学の真骨頂。 何を払拭したかを「赤いうちは」で示唆しつつ素知らぬ顔をする賢治の心憎い手法!

▼ポランの広場     13:30〜15:00
 本年のポランの広場は、本会理事の鹿川博司さんをコーディネーターに、「それは、賢治への想い」と題した朗読会。 参加のみなさんとともに賢治の世界を訪ねる企画です。

▼宿泊のご案内
 花巻観光センターをご利用下さい。 市内すべての宿泊施設をご案内いたします。
      電話 0198-31-2244


 *イーハトーブ館ショップ 猫の事務所(ご案内)


 イーハトーブ館ショップ「猫の事務所」の書籍等販売図書をお知らせいたします。 宅配もしておりますので、どうぞご利用ください。
▼東京書籍
・原子朗著『新宮澤賢治語彙辞典』
 「事務局だより46号」にてご紹介の、会員特別価格1万4千170円(税込み・送料込み)の特典最終締切を、発刊が遅れたことにともない9月23日(必着)まで申し込みを受け付けることができることとなりました。 これが最後の機会となりますので、お見逃しのないようご注意ください。
▼柏書房
・宮沢賢治研究会編『宮沢賢治文語詩の森』(価格2,400円+税)
▼若草書房
・安藤恭子『日本文学研究論文集成35』(価格3,500円+税)


 *賢治祭関連行事のご案内


 9月20日(月)
◆花巻農業高校「賢治先生を偲ぶ会』
 ◯井堂雅夫さんの講演、花巻農業高校生による合唱、
  演劇、鹿踊りほか
  午前9時から
  会場・花巻農業高校
◆夏期 宮沢賢治記念館市民講座
 ◯午後1時30分
  合唱 ユネスコ・ペ・セルクル
  午後2時〜
  講演 歌人 今野寿美さん
  会場・宮沢賢治イーハトーブ館

 9月21日(火)
◆宮沢賢治記念館開館記念行事
 ○午前9時 胡四王神楽
  会場 宮沢賢治記念館前庭
◆賢治祭
 ○午後5時 献花
 ◯午後6時 鹿踊り、詩の朗読、合唱、野外劇、座談会など
  会場 桜町雨ニモマケズ詩碑前(雨天の場合、花巻地区社会体育館)


 *図書・資料受入れ報告(1999年5月3日〜6月30日)


【寄贈図書】
〔配列は受入れ日順で、記載項目は、寄贈者(出版社)・書名・発行所(寄贈者・寄贈出版社が同じ場合は略)の順〕
・ヨハンナ・フィッシャー『Der Buddhist und Dichter Miyazawa Kenji und die Naturwissenschaffen』(ベルリン大学・刊)
・文京大学女子短期大学部・文芸科『文芸論業』35号
・上智大学国文学会『国文学論集』32号『国文学紀要』16号
・安田女子大学大学院文学研究科『文学研究科紀要』第4集
・花巻農業協同組合『ぽらーの花巻』15・16号
・新美南吉記念館『記念館だより』58号『研究紀要』5号
・宮沢賢治記念館『記念館通信』66号
・松本隆『宮沢賢治よゆかりの矢巾の二人』
・森義真『盛岡児童文学研究会会報28』(コピー)(盛岡児童文学研究会・刊)
・歴程社『歴程』460・461号
・王敏「宮沢賢治研究の50年」(『東京成徳大学紀要抜刷』No.6)『新華僑』(創意総合研究所・刊)『東京成徳大学ニュース』ほか
・二松学舎大学大学院文学研究科『大学院紀要 二松』13集、二松学舎大学東洋学研究所『東洋学研究所集刊』29集二松学舎大学『二松学舎大学論集』
・長沼士朗『風船』1・2号
・田口昭典『北域』49号(北城社・刊)『あるびれお通信』474・481号
・清水正『Д文学通信』(D文学研究会・刊)
・「コミュニティ」編集室『コミュニティ』123号(地域社会研究所・刊)
・兵庫教育大学言語表現学会『言語表現研究』15号
・宮沢哲夫『賢治研究』78号(宮沢賢治研究会・刊)
・名古屋女子大学図書館『名古屋女子大学紀要人物・社会編』45号(名古屋女子大学・刊)
・松沢和弘「中日新聞夕刊記事」
・鎌倉・賢治の会『かま猫通信』36号
・宮沢賢治記念館『鹿踊りのはじまり 解説書』
・島田隆輔「宮沢賢治文語詩五十編/〈詩系譜〉の輪へ」(『島大国文第27号』抜刷)
・筑摩書房『ちくま』339・340号
・真世界社『真世界』6112号
・伊藤眞一郎「凝灰岩もて畳み杉植えて−文語詩稿「林間開業」の笑いとその背景−」(『安田女子大学大学院研究科紀要第4集』抜刷)
・武蔵大学人文学会『人文学会雑誌』21巻1・2号
・松田司郎『ワルトラワラ』11号(ワルトラワラの会・刊)
・牛崎敏哉『北天塾』10号(北天塾・刊)
・田川紀久雄『詩語り通信』5号
・時間と空間の会『時間と空間』43号
・大阪国際児童文学館『紀要』14号
・中四国宮沢賢治研究会『論攷宮沢賢治』2号
・清水寺研究会『清水寺研究』1号
・堤寛治『マグノリア』71号(釧路宮沢賢治を語る会・刊)
・信時哲郎「宮沢賢治「文語詩稿五十篇」評釈」(『山手国文論攷第20号』抜刷)
・甲南大学『甲南大学紀要文学編106』『甲南大学紀要文学編110』
・佛教大学教育学部『教育学部論集』9・10号
・中村伸一郎「イーハトーブエッセイ」「宮沢賢治の詩による合唱曲」(カセットテープ)
・サンマーク出版『「宮沢賢治」の行き方に学ぶ』
・田口昭典『北東北 郷村教育』6号(北東北郷村教育学院・刊)
・宮沢賢治研究会『宮沢賢治 文語詩の森』(柏プラーノ・刊)
・東洋大学短期大学『東洋大学短期大学論集』『日本文学研究会会報』14号




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