賢治の「星の原風景」を訪ねて-1996夏-
   

賢治の「星の原風景」を訪ねて-1996夏-


賢治の見た星の風景を体験しよう!
 「賢治の見た星空を体験すること」、これは同じ季節で同じ時間なら、そして同じ場所なら誰にでも容易に実現しそうです。 ところが、星空の中には、星座をつくる恒星の他に、月やいくつかの惑星があり、日々刻々とそのレイアウトを変えています。 そこで今年1996年夏の星空と、賢治の時代のいつの夜空とが似ているのか探ってみました。
 今年の8月の新月は、14日(水)です。ちょうど夏休み真っ盛りで、海や山へ旅行されている方も多いと思います。そんなひとときを賢治の見た星空に重ね合わせてみることにしました。

今年 1996(平成8)年8月14日の花巻における南の空

 賢治の好きな「赤眼の」さそり座は、この夏も南の空に輝いています。 さそりの尾のあたりやいて座のあたりには天の川でも特に濃い部分を見ることができ、その中に明るい木星が輝いています。 では、この木星に注目してみることにしましょう。 木星は太陽系最大の惑星で、太陽のまわりをほぼ12年の月日をかけ公転しています。 1994年7月にはシューメーカーレビー第9彗星と衝突し、天文界の大きなニュースとして報道されました。
 さて、賢治の時代に木星がいて座にあったのは、

1900年12月〜1901年 1月
1912年12月〜1914年 1月
1924年11月〜1925年12月

つまり12年で黄道を一周するわけですから、賢治の短い一生では3回だけとなるわけです。 (逆行による一時的なものは除く)

1900年8月
 1900年8月、このとき賢治は3歳、まだ星空を眺めるにはまだまだ早すぎる年齢です。 しかし、さそり座が南中するころ、木星はいて座で輝いていました。

1913年8月
 1913年8月、ハレー彗星が接近してから3年後、賢治は盛岡中学に在学していました。 この年、北海道に修学旅行に行ったりしています。

1925年8月
 1925年8月、この年の南の空が、一番今年の風景に近いといえます。 木星は南斗六星のすぐ上にあり日時ともまあまあ今年のものと同じです。

1925(大正14)年8月13日の花巻における南の空

 賢治は1925年の8月10日から11日にかけ、早池峰山登山をしています。 途中、河原坊に野宿していますから、もし好天に恵まれていたら、星空を満喫していたことでしょう。 この時期の作品としては、

 8月10日 詩「朝のうちから」        
 8月10日 詩「渓にて」           
 8月11日 詩「河原坊(山脚の黎明)」     
 8月11日 詩「山の晨明に関する童話風の構想」

などがあります。 なかでも、詩「河原坊(山脚の黎明)」では、下弦の月を描いていますので、実際に夜空を見上げた可能性は大きいといえます。 この夏の南の空を眺めながら1925年8月にタイムスリップしてみましょう。

1996,7,4

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