「あそこにレオノレ星座が出てる」の創作 1927(昭和2)年3月28日
「あそこにレオノレ星座が出てる」
1927(昭和2)年3月28日
『詩ノート』の中に「あそこにレオノレ星座が出てる」と書き出された詩があります。
「レオノレ星座」とはどんな星座でしょうか? 「レオノレ座」という星座は実在する星座ではなく賢治が創作した星座です。
『詩ノート』 一○二一 『あそこにレオノレ星座が出てる』
あそこにレオノレ星座が出てる
……そんな馬鹿なこと相手になってゐられるか……
ぼうとした市街のコロイダーレな照明の上にです
北は銀河の盛りあがり
……社会主義者が行きすぎる……
レオノレとは、しし座の学名「Leo」から創作されたとする説と、ベートーベン作曲の
「レオノーレ序曲」から引用したという説とがあります。
仮に「しし座」から発想されたと仮定して、詩についている日付の晩をシミュレートして
みました。時間は星を見る手頃な20時を想定しています。確かに「しし座」が空の中ほどにかかり良く見えています。
童話「ひのきとひなげし」でも、「双子星座柱」と「レオーノ柱」が並列扱いで取り上げられていますから、やはり「しし座」から
の発想が自然かも知れません。
街の明りをイタリア語風に「コロイダーレ(コロイド)」な照明、と書いていますが、さらに「北は銀河の盛りあがり」
と銀河が北の空にかかる様子を綴っています。これはシミュレートしたチャートからも明らかなように、
月明りのない晩ですから、ペルセウス座からカシオペヤ座付近の天の川が良く見えていたはずです。
街明りをコロイド状「コロイダーレ」と言ったあと、北のカシオペヤ付近の銀河を、
詩「温く含んだ南の風が」の中で、
天はまるでいちめん
青じろい疱瘡にでもかかったやう
天の川はまだぼんやりと爆発する
に見られるように、比喩でコロイド状になっていることを表現している部分は、地上の街明りが北の銀河の光の中に溶け込んでいる様子を
示しているのでしょうか?
「銀河をコロイド状態」として表わすのは、童話「銀河鉄道の夜」の後期形の冒頭「午后の授業」の中でも、
先生が銀河系の星を牛乳の油脂に例える時用いていますから、賢治の癖とも呼べる表現手法のようです。
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