「宮沢賢治学会地方セミナー in 旭川」
   

「宮沢賢治学会地方セミナー in 旭川」


Kenji & Event

2003年10月4日〜5日 北海道旭川にて


「宮沢賢治学会地方セミナー in 旭川」

平成15年10月4日(土)〜5日(日)
於 北海道旭川建設労働者福祉センター(サン・アザレア)

主催
宮沢賢治学会イーハトーブセンター

主管
旭川宮沢賢治研究会(北海道)


宮沢賢治学会地方セミナー in 旭川
10月4日(土)
 13:00 開場
 13:30 主催者あいさつ宮沢賢治学会代表理事:萩原昌好さん
講演「心象スケッチ「旭川」とその前後」詩人:入沢康夫さん
 15:00 休憩
 15:20 お話「宮沢賢治の世界を彫る」木版画家:佐藤国男さん
 16:05 アイヌ楽器による演奏トンコリ奏者:オキさん
 14:30 会場移動(旭川パレスホテル:サロン・ド・シャルム)
 17:30 夕食会
10月5日(日)
  9:15 旭川駅前広場集合
  9:30 「宮沢賢治の心象スケッチ「旭川」をたどって」出発
  8:45 ・師団通〜六条通(旭川東高校付近)
       ・賢治詩碑前解散


 
   

       旭川。

      植民地風のこんな小馬車に
      朝はやくひとり乗ることのたのしさ
      「農事試験場まで行って下さい。」
      「六条の十三丁目だ。」
      馬の鈴は鳴り馭者は口を鳴らす。
      黒布はゆれるしまるで十月の風だ。
      一列馬をひく騎馬従卒のむれ、
      この偶然の馬はハックニー
      たてがみは火のやうにゆれる。
      馬車の震動のこころよさ
      この黒布はすベり過ぎた。
      もっと引かないといけない
      こんな小さな敏渉な馬を
      朝早くから私は町をかけさす
      それは必ず無上菩提にいたる
      六条にいま曲れば
      おゝ落葉松 落葉松 それから青く顫えるポプルス
      この辺に来て大へん立派にやってゐる
      殖民地風の官舎の一ならびや旭川中学校
      馬車の屋根は黄と赤の縞で
      もうほんたうにジプシイらしく
      こんな小馬車を
      誰がほしくないと云はうか。
      乗馬の人が二人来る
      そらが冷たく白いのに
      この人は白い歯をむいて笑ってゐる。
      バビロン柳、おほばことつめくさ。
      みんなつめたい朝の露にみちてゐる。


宮沢賢治地方セミナー、この秋の地方セミナー1回目の旭川セミナーに参加してきました。 賢治は北海道を3度(1913年5月、1923年8月、1924年5月)訪れていますが、旭川は1924年8月の樺太への旅の立寄の地です。 当時の旅の行程は、多くの賢治研究者により推定され、この旭川の賢治の歩いたルートも実に詳しく考証されています。 プログラムも楽しそうだし、また、地元の方々の案内で、賢治の歩いた道(実際は馬車に乗っていたはずですが)を歩ける・・・、ということで、参加することにしました。 時間的には忙しいですが、飛行機をを利用した一泊旅行で行ってきました。

☆地方セミナーレポート☆
   

講演
 プログラムの最初は、入沢康夫さんの講演「心象スケッチ「旭川」とその前後」でした。 春と修羅「オホーツク挽歌」詩群の賢治の旅を、文献資料、作品の記述などを絡めながら、その問題点などを紹介しつつ、わかりやすく説明されました。 賢治がかぶっていた「ナーサルパナマ」帽とは・・・?  何気なく読み過ごしていた言葉(私も特殊な帽子の一つぐらいにしか思っていなかった)も、実は調べてみると、「よくわからなかった」ことなども新たな発見として興味深いものでした。 伝記研究の難しさ、問題点についてもわかりやすく説明があり良き参考となりました。 今回の講演では、時間の都合もあり、「賢治の旅の途中」までのお話となりましたが、後半も別の機会にお聞きしたいものです。 写真は、講演中、萩原昌好さんが補足説明をしている場面です。

お話
 講演の次は、版画家の佐藤国男さんのお話です。 本はよく読んでしましたが、とても楽しい方で、蛇の研究のお話もありました。 (佐藤国男さんを紹介したページ(ギャラリー村岡)はこちら

トンコリ奏者
 オキさんによるトンコリの演奏がありました。 トンコリはアイヌ民族に伝わる伝統的弦楽器です。 弦の数の音と、倍音(ハーモニックスによる)の音しか使えない楽器だそうで、曲もその音階に限られたものとなるそうです。 そんなわけで、賢治の「星めぐりの歌」もアレンジして演奏されていました。 トンコリもピックアップをつけたエレキ仕様に改造されていて、伝統文化も現在進行形で発展を続けているのを見て嬉しくなりました。 (オキさんを紹介したページ(北海道振興課の広報誌「北海道暮らし」より)はこちら

夜の旭川駅
 昼のプログラムを終え、近くのホテルで食事会。 その後、会場を移して中華料理を食べながら有志での懇親会となりました。 宮沢賢治学会代表理事の萩原昌好さんの樺太旅行の旅のお話など、番外編も聞き逃せません。 会場を出ると、すっかり夜中になっていました。 けっこう寒い・・と感じたのも当たり前、10月上旬でも、皆厚着をしています。 最低気温はもちろん一桁、最高気温もたったの12度でした。 近くのコンビニでちょっと買物をして、駅前のホテルにチェックイン。

旭川駅前
 2日目は宮沢賢治ゆかりの場所を散策「宮沢賢治の心象スケッチ「旭川」をたどって」、ということで旭川駅から六条一三丁目付近を目指します。 集合は9時15分。 最初の日とは若干顔ぶれも変わりました。 ここで地元の石本裕之さんから、今回のセミナーが紹介されている記事の掲載された地元情報誌「ライナー」をいただきました。 ありがとうございました。 少し肌寒いですが、好天で朝の散歩にはちょうどいい陽気です。 写真は、案内役の松田嗣敏さんが、当時の貴重な町並みの写真を示しながら、賢治が馬車に揺られて見た風景について説明しているところです。 前日に配布されたセミナー資料の地図や、詩の解説(解釈)文を参考に歩くとよくわかります。

旧師団通り(現平和通買物公園)
 昔から人通りの多いメインストリートだったこの道は、今は歩行者専用道(公園)として整備されています。 車の心配をすることなしで散策することができました。 付近には、「石川啄木宿泊の地」などもあります。 (旭川を訪れた人々をを紹介したページ(旭川冨貴堂)はこちら。 その他、旭川と文人たちの情報が充実しています。)

6条通7丁目の交差点
 駅前からまっすぐに歩いてきた道を、ここの交差点で右折します。 建物がだんだんまばらになってきます。 写真は、駅前を背に、左手方面(つまりこれから向かう方向とは反対方向)の風景です。

6条通
 六条通りを十三丁目を目指し歩きます。 ところどころに並木があります。

イチョウ
 当時、旭川中学(現旭川東高校)にあるイチョウの木です。 すっかり黄色になって見事でした。 高校の道沿い植え込みには、当時あったというポプラ(賢治の作品ではポプルス)の大木の切り株がいくつも残されていました。 (旭川東高校のページはこちら>

6条通13丁目
 信号機にこの場所の住所が表示されています。 「6条通13丁目」で賢治が目的としていた農事試験場があったはずの場所ですが、実際には別の場所であることがわかっています。 ここを訪れた賢治はどうしたのでしょうか。 謎は残ります。 (宮沢賢治立寄り地を紹介したrikuさんのページこちら

詩碑「旭川:
 今年の8月2日(1923年に賢治が旭川に)に建立された詩碑「旭川」です。 写真では見ていましたが、近くで見るとどっしりと立派な碑です。 黒い石に賢治の筆跡で、白い文字が刻まれています。

入沢さん
 講師でいらした入沢康夫さんです。 著書にサイン中。 詩碑の前では、皆入れ替わりで記念撮影会となりました。 賢治の訪ねた地をいろいろ調べながら歩くことは楽しいことです。

記念撮影
 学会のスタッフと、地方セミナー世話役旭川賢治研究会の皆さんです。 詩碑の前で集合写真の撮影となりました。 この後、詩碑の拓本を分けていただき、記念品としました。 ここで二日間のセミナーは解散となりました。

三浦綾子記念文学館
 セミナーのプログラムを終えて、地元メンバー、学会のスタッフの皆さんと食事に出かけました。 その後、二手に分かれ、市内観光です。 私は、理事代表の萩原さん、学会事務局の牛崎さんたちと三浦綾子記念文学館を訪れました。 森の中で気持ちのいい場所に建てられていました。 写真は、記念館の前でメンバーの記念撮影です。 (三浦綾子記念文学館のページはこちら


 次いで、市の郊外にある旭川動物園へと向かいました。 なんでも、抜群の入場者を誇る、人気動物園だそうで、評判に釣られて出かけてしまいました。 行ってみると納得です。 それぞれの動物が、その特徴に合った檻に入っていて、見る側も新たな視点で楽しむことができます。 写真はペンギンのコーナーです。 車で移動も、全て旭川賢治研究会の方々の運営で行われました。 この場を借りてお礼したいと思います。 旭川空港から夜の便で帰宅となりましたが、飛行機のエンジントラブルで、旭川空港を出たのが20時過ぎ、東京に着いて帰宅したのは真夜中になってしまいました。 いろいろありましたが、楽しい旅でした。 (旭川動物園のページはこちら

▲賢治の見学記ヘ戻る



メインページへ

宮沢賢治のページへ

☆星のページへ

△山のページへ

kakurai@bekkoame.ne.jp