遠藤周作 1991(平成3年)年10月20日
   

遠藤周作
『深い河』創作日記
1991(平成3)年10月20日




小説家遠藤周作(1923-1996)の見た星空です。 小説「深い河(ディープ・リバー)」の創作期1990年8月26日〜1993年5月25日までの日記に記された星空です。
この『深い河』創作日記の中に、遠藤周作氏の見た星風景が2度ほど出てきます。 シミュレーションした画面は、その一つで1991年10月20日晩の南天の様子です。

『深い河』創作日記より抜粋
 十月二十日(晴)
 文字通り秋の長雨の後、久しぶりの晴。 朝、加藤夫妻迎えにきてくれ十時八分の新幹線にて京都へ赴く。 友人たち国際ホテルに投宿。 月見の時間にはまだ余裕があるのでタクシーにて京都芭蕉庵に赴き、庵の裏にある蕪村の墓を拝す。
 五時、嵯峨の家に行く。 先着した順子を拾って大沢の池に。 ようやく月が雲より現れ、月見に絶好の夜となった。 船頭、竿をたぐり湖畔の葦の近くに船を泊めて、中川(善雄)先生の笛を聴く。 月光波にゆれ、森のなかで鷺の声が時折鋭くきこえ、満天の星、笛の調べ、幻妙。 言葉につくせぬ一時間だった。 船は池を一周して岸に戻る。 一同孤狸庵に戻って夜餐、談笑。 十時に散会。 (以下略)


本文から、京都での観月会の様子であったことがわかります。 ここで出てくる「大沢の池」は、「三沢」といわれる大沢・広沢・猿沢の「日本の三大名月鑑賞池」の一つとして特に知られた場所でした。 場所は、京都嵯峨野、ちょうど嵐山のやや北寄りの場所、嵯峨の大覚寺境内になります。 (大覚寺のホームページはこちら。 観月で用いられる屋形船(龍頭船、鷁首船)の写真があります。)
この日の月齢は、12.6(20時)です。天文暦もあわせて調べておきましょう。

月の出      15時13分
日の入      17時18分
薄明終了     18時42分
月南中      21時20分

調べてみると、月は早い時間に出ており、夕方にはもう出ていたことがわかります。 この月の満月は10月23日。 この年の「仲秋の名月」(旧暦8月15日)は、9月22日ですから、一ヶ月ほど遅れた観月の会だったわけです。
遠藤周作氏は、17時頃に嵯峨に着き、大沢の池に向かい、月と「満天の星」を楽しんでいます。 月がありながら「満天の星」ですから、空気も澄んでいたことでしょう。 薄明終了時刻が18時42分ですから、19時頃から楽しんだのでしょうか。



- 参考文献 -

(1)遠藤周作著「『深い河』創作日記」講談社文庫


▲文人たちの見た星空ヘ戻る


メインページへ

宮沢賢治のページへ

☆星のページへ

△山のページへ

kakurai@bekkoame.ne.jp