串田孫一 1962(昭和37)年 5月26日
   

串田孫一
北海道の旅
1962(昭和37)年 5月26日




登山家、そして文人としても著名な串田孫一(1915-)氏の見た夜空です。 最近出版された「北海道の旅」には1962年の春、北海道を旅したときの様子がつづられています。 文章には車窓や旅先の宿から見た星空の様子が描かれています。 そんな記述を手がかりに、その時の夜空をシミュレートさせてみました。
「北海道への旅」(1)の「27清里の宿にて。」では清里町から見た星空が登場します。 清里というと、八ヶ岳山麓の清里高原が有名ですが、この清里は、斜里岳の西側、斜里郡清里町にあたります。 串田氏もやはりそんな説明を交えながら手紙を書き出しています。

『北海道の旅』 27より抜粋
 礼文島から名寄、名寄を午近く出て今夜は清里に泊り、明日斜里岳に登る予定です。 まずこの星空では天気は間違いないでしょう。 信州八ヶ岳山麓の駅名は清里、こっちは清里町です。 最終で来て着いたのが八時半近く、暗くてあたりの容子は分りませんが、何となく山麓の感じが八ヶ岳の清里に似ているからです。

「27清里の宿にて。」より(P232)

図は、5月26日、時間が午後8時30分として、シミュレーションさせてみたものです。 「まずこの星空では天気は間違いないでしょう。」と言っていますが、まだ日没後の薄明の時間です。 この晩の日の入時間などを計算すると、

日の入  18時52分     
薄明終了 20時39分     
金星入  21時17分     

となります。 清里町の駅に到着の時間で、太陽高度-14.5度、航海薄明も過ぎていますが、うっすらと山の端が見える程度でしょうか。 この時間の星空は、西の空に冬の星座が沈みつつあります。 ちょうどこの年の春は、金星が宵の明星、つまり一番星として輝いていたようです。


- 参考文献 -

(1)「北海道の旅」平凡社(1997)


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