串田孫一 1962(昭和37)年 5月23日
串田孫一
北海道の旅
1962(昭和37)年 5月23日
登山家、そして文人としても著名な串田孫一(1915-)氏の見た夜空です。
最近出版された「北海道の旅」には1962年の春、北海道を旅したときの様子がつづられています。
文章には車窓や旅先の宿から見た星空の様子が描かれています。
そんな記述を手がかりに、その時の夜空をシミュレートさせてみました。
「北海道への旅」(1)の「21スコトン岬に上陸、船泊まで歩く。宿で聞いたクラリネットのこと。」では、アンタレスが登場します。
『北海道の旅』 21より抜粋
大分長いあいだ聞こえていたクラリネットもいつの間にかきこえなくなりました。
波の崩れる音もなく、静かな夜が更けます。
海馬島の上に赤く見えているのはアンタレスでしょうか。
そうするともう十二時になります。
「21スコトン岬に上陸、船泊まで歩く。宿で聞いたクラリネットのこと。」より(P185)
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この文章は、「五月二十三日」の日付で書かれた手紙の最後の部分です。
礼文島に立ち寄り、スコトン岬から海馬(とど)島に渡った後、再び船泊まで戻り、そこの宿からの手紙です。
船泊からスコトン岬の方角は、北西にあたります。
時間は、5月23日の午後12時(=24日午前0時)でシミュレートさせてみました。
まず、北西の空(海馬島の上)にアンタレスを見ることが不可能ですので、しし座のレグルスなどの星が大気の減光により赤く見えていたことなどが想像されます。
本文でも「アンタレスでしょうか。」とやや疑問を持った表現になっていますから、その可能性もあるかも知れません。
この時間、アンタレスは、ほぼ真南の空、高度18度の高さに見えています。
この高度からも、筆者が高緯度の場所にいることが推測されます。
- 参考文献 -
(1)「北海道の旅」平凡社(1997)
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