登山家、そして文人としても著名な田部重治(1884-1972)の見た夜空です。
最近、再刊行された「わが山旅五十年」(1)は、生い立ちから、山に親しみ、そして各地の山々を次々と登ってゆく様子が時代別に記録集的に整理され、それでいて文章としても楽しく読むことができる構成になっています。
田部重治の山とのかかわりを知るには、好適な一冊と言えるのではないでしょうか。
もちろんその代表作、「山と渓谷」などもおすすめでしょう。
さて、「わが山旅五十年」にも星空を見上げた描写がわずかながら出てきます。
ちょっとした好奇心で、そんな星空を見てみましょう。
第二十四篇には、ふるさと富山の毛勝山〜立山縦走、片貝谷、南又と旅する様子が綴られています。
1915年7月のことです。
平沢から奥平沢までは造作ない。
奥平沢の上流十町ほどのところには、片貝川の河原がある。
そこにテントを張った。
前方には残雪を頂いた奥大日岳は群山を排して高く峙ち、ずっと手前の左に毛勝岳をとりまいて片貝川の山山が聳えている。
河原には燃料が多いので好都合だった。
夕食をたべてからテントに寝ころがると夜は暖かい。
場所が低いせいであろう。
金作はテントの中は暑苦しいといって河原でねる。
月が出て河の表面に軽く霧がとざしている。 明くれば七月二十六日、天気がいい。 源次郎は頼んだ米を背負って来た。 もう、これで用意がすっかり整ったので、朝食を終えて出掛ける。 ここから百二、三十年前にあったといわれる木地屋村のあとを通り、次にオノマというところをすぎると片貝川が二つに分かれる。
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(1)平凡社ライブラリー「わが山旅五十年」田部重治著 平凡社(1996再刊)
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