平成9年度 葛飾区議会区民連合 行政視察報告

視察テーマ:(文教委)学校教育について
        (区民委)プールの水の殺菌方法

葛飾区議会議員   木下しげき


はじめに 今回は違っていたが視察で他の自治体へ出て、彼の地の「担当部局」の説明を伺っているとあまりのおざなりさ不勉強さに唖然とすることもある。「不勉強でもいいから当該施策に熱意くらい持てよ」と言いたくなることもある。議員の不勉強を前提の説明のような気がしてならない。願わくば葛飾区を訪れる「行政視察団」には同様の感じを抱かれないことを願うのみである。

*今回は会派の行政視察であり、所属委員会ごとにテーマが異なっている。実際には本報告以外にも厚生委員会関係の「24時間ホームヘルプサービス事業」の視察も行ったが紙幅の都合で割愛する。

 

和歌山市(和歌山県)

【市勢概要】人口=391,314人(男)186,167人(女)205,147

世帯数=142,078世帯/面積=209.34ku/当初予算額=124,605,419千円

市制施行=明治224

 

1、スクール ドリーム プランの奨励について

 

和歌山市の『スクール ドリーム プラン』

 和歌山市の『スクール ドリーム プラン』は「同プラン奨励交付金交付要綱」によれば「各学校・園がより魅力ある特色を打ち出し、それぞれの学校・園が創意工夫し、子どもに夢と希望を与える活力のある学校・園づくりを図るため、1校園につき100万円を交付する」というものである。

 「事業実施要領」の「事業目的」では「21世紀の和歌山市を担う幼児・児童・生徒の健全育成こそが、和歌山市発展の基を築くことになる。青少年の健全育成を進めるためには、魅力のある教育環境を創造しなければならない。「スクール ドリーム プラン事業」は、各学校・園が、より魅力ある特色を打ち出し,それぞれの学校・園が創意工夫し、子どもに夢と希望を与える活力のある学校・園づくりを推進しようとするものである。そのため和歌山市立幼・小・中・高92校園(分校園を含む)に1校園に100万円ずつスクール ドリーム プラン奨励交付金を出し、魅力ある学校・園づくりを推進し教育の活性化を図るとするものである。

 特色ある学校・園づくりの事業の内容の例として

1、芸術・文化活動の推進

2、飼育・栽培活動の推進

3、国際理解教育の推進

4、異年齢集団活動の推進

5、環境教育の推進

6、ボランティア活動等福祉教育の推進

7、体験学習の推進

8、特色ある児童会・生徒会活動

9、親子ふれあい活動の推進

10、地域社会との連携推進(開かれた学校)

11、保護者や地域の教育力の向上       等

 

 それぞれの学校・園や地域の実態に応じ,子どもたちにとってより魅力のある学校・園、活力のあふれた学校・園を創造するためには何をすべきか、教職員それぞれの英知を集めて計画していただきたい。常に子どもを前面にして考えていただきたい。

 

 以上が実施要領の概略である。平成8年度から3年間の期間を区切った事業で、11年度以降は3年間の実績をふまえて再検討するという。平成9年度の事業一覧によると「特色ある学校・園づくりの事業の内容の例」に全ておさまっている。この事業の狙いとする「各学校・園が、より魅力ある特色を打ち出し、それぞれの学校・園が創意工夫し、子どもに夢と希望を与える活力のある学校・園づくりを推進」が本当に実現しているのか疑問なしとしない。かつて竹下元首相が「ふるさと創世資金」と称して各自治体に1億円ずつばらまいたことを思い出す。

 事業の例示があるから各学校・園はそれにあてはめようとするのであろう。本当に「それぞれの学校・園が創意工夫し」であるならば「例示」など不要である。行政が学校の教育内容にまで立ち入る必要はあるまい。


2、市民温水プールの殺菌方法について

 全国の各地方自治体の議員約150人で作る『環境と産業を考える地方自治体議員の会』の今年度のテーマは「水」である。

 和歌山市の現助役、浅井周英さんが教育長時代に導入したという「特殊浄水装置」による温水プールの殺菌で効果をあげていると言う噂を同会事務局長の千葉市議会議員、藤井武徳さんより聞き会派の行政視察に加えてもらった。浅井さんからは電話で説明は受けたが視察の日は折あしく管外出張とぶつかってしまった。しかし、「生体エネルギー」の効果の信者のような教育委員会教育総務部施設課の瀧文裕さんに熱く語ってもらった。「特殊浄水装置」の効果かどうかわからないが消毒用の塩素のポリタンクが機械室に20本置いてあったが塩素臭独特のツンと来る臭いはなかった。

 (先述の千葉市議会議員、藤井武徳さんと一緒に千葉市の教育委員会、生涯学習部の課長と係長が見学に来たと聞いた。机の前でルーティン・ワークをこなすだけでなく、効果ありという施策をやっている自治体があれば東に西に、南に北に飛んで行くのも区民を思う役人の姿勢ではないのか。仮に今は出来なくてもそうした知識と(他の自治体職員との)面識が区の財産になって行くのであろう。区職員にそうした積極姿勢を喚起しておきたい。)

 その効果の程を当日、資料として頂いた新聞のコピーから紹介しよう。私自身、この新聞の舞台の「勝田スイミングスクール」へ行って泳いで来ようと思っている。報告は後日。

 

『新いばらきタイムス』97-3-17

特殊浄水装置が活力再生

 水に対する考えが大きく変わろうとしている。浄水場から人の口へ繰り返し巡る都市の濁った水と、フランスの聖地ルルドのようにいやしをもたらす土地の水の性質を比べれば、科学的には解明されないそのなぞを通して、「何かが異なっている」ことに多くの人が気付いている。
 ひたちなか市市毛にある勝田スイミングスクール(磯崎圀男社長)は、プールに入って泳ぐだけで免疫力を高め、難病などにも効果があると話題になっている。週末ともなると、全国から大勢の見学者が訪れるほどだ。免疫力を高める素となっているのは、「生体エネルギー教育型プール施設用浄活水器」という特殊な浄水装置がつくり出した、プールの水。自然界の中で水が活性化するプロセスを再現したという装置の中を水道水を循環させる、というそれほど複雑な仕掛けを持っているわけではないのだが、中を通過した水は、生体エネルギー水と呼ばれる「生きた水」となるようだ。

「生きた水」が免疫力高める プールで泳ぐだけで効果

 この浄活水装置は、長野県・東部町にある生体エネルギー実践研究会(佐藤政二代表)という、本来農業研究が基盤の民間の研究団体が開発した。

 @残留塩素を残しながら、塩素臭、塩素害がなくなる A人間の自然治癒力を高める Bプール水が施設配管の汚れやさびを浄化する C浄活水器の排水は河川環境を浄化する D生体内部の「場」を高め、周囲の環境の場のエネルギーを高めるーーなどの効果をうたっている。

●活性力生むプロセス

 同研究会によるとなぜそのような「力」のある水が生まれるかについては、「一般には理解してもらえない部分があまりにに多い」とあえて説明を避けている。それでも分かりやすく説明してもらうと、プールの水を循環させる際に、特殊な応用セラミック内を通過させることで、水道水に生体エネルギー(仮説)が転写される。その水が身体に触れることで、身体に眠っているさまざまな情報を活性化させ、免疫力の高まりにつながる、という。

全国でこの装置を導入しているのは現在でもわずかに三ヵ所。同研究会が製品化していた飲用浄水器をプールにも応用できないかと93年12月、勝田スイミングスクールが初めて導入に踏み切った。

●アトピーにも効果

 この装置を通過した水の成分分析でみても、県薬剤師会公衆衛生検査センターの水質検査など科学的な、遊離残留塩素、過マンガン酸カリウム消費量、Ph値、濁度といった主要な項目の数値は、他のプールの水と目立った違いは見いだせない。それにもかかわらず、設置とともにプール水特有の塩素臭が消え、以後二年余りの間には、プール利用者の健康状態にも大きな変化が現れて来ている。

 利用する人たちの間からは、「他のプールではできる水いぼができない」「プールに入るたびに目や顔がひりひりとする症状がここではない」「髪が金髪にならない」「肌が直った」などといった、プール特有の塩素害が消えたとする報告が主に寄せられている。中でも、アトピー性皮膚炎に関しては、さまざまな好転あるいは完治例が数多く報告されている。生後6ヵ月ごろからアトピーに悩まされ全身に赤く細かい斑点が広がっていた、山形県の小学校1年生の男児が、プール水の使用後数ヵ月で、健康な普通の人見分けがつかない程にまで、肌が滑らかになった例もある。

●水が柔らかく

 勝田スイミングスクールの試験を知った、和歌山県和歌山市の同市民温水プールでも95年4月、同じように浄渇水器を同市教委では、学校プールだと全身がかゆくなるなどの症状がでるアトピーの児童生徒たちに、水泳体験をしてもらうための方策を模索していた。同市教委・小橋義実施設課長は次のように話す。「水が全く柔らかくなりましてね。アトピーの原因はひとつではないので一概に言えないのでしょうけれど、症状が好転した子供たちが多い、というのがわれわれの実感なんですよ。それは私どもが言うより子供たちに尋ねてもらったほうがよい。また、宣伝していないのに、昨年の利用者が平年の38,000人程度から43,000人と大幅にふえました。」

●エネルギー準位

 生体エネルギー実践研究会では、仮説と断っているが、人や動植物、鉱物などといったあらゆる存在には、個々に「エネルギー準位」と呼ばれるエネルギーレベル」があると考えている。地位が低いものや場所は嫌悪感を催させ、逆に地位が高いもの、あるいは準位の高い場にいると心地好く感じ、精神が活性化されたりする。 低いエネルギー準位を高めるには、準位の高いものに触れることで、準位の高いものの力と量を吸収して正常化する。浄活水器が作りだすのはそうしたエネルギー準位の高い水であるために、この水に浸るだけでも、低いエネルギー準位の人体のエネルギーが高まっていく ─── と考えている。

●人工的な水は死ぬ

 ある技師が指摘していたことに「水は人工的なやりかたで扱われる死ぬ」という言葉があった。死ぬとは劣化する、という意味だろう。生体エネルギーという言葉自体が一般になじみがなく、科学的な説明は難しいにしても、浄活水器を通過することで高められた水が大きな成果を上げているのは明らか。勝田スイミングスクールでは、プールの水を希望者に無料で毎月送っているが、既に全国で500世帯に上っているという。

 この水についての新しい考えと活用法は、人間の健康回復ばかりでなく、水とりいう素材を地球環境という視座から眺めた場合、環境浄化に有効な新たな可能性を提示しているようだ。


新宮市(和歌山県)

【市勢概要】人口=34,418人(男)16,000人(女)18,418人

世帯数=14,691世帯/面積=79.66ku/当初予算額=23,975,000千円

市制施行=昭和8年10月(県下2番目)

 

【新宮市側出席者(太字が文教関係の出席者)】

井上 新宮市社会福祉協議会次長/樋川 新宮市社会福祉協議会主事

笠松 主任ホームヘルパー/加納 新宮市教育委員会次長

坂本 学校教育課指導主事川辺 不登校児童生徒適応教室指導員

角 議会事務局次長/浜口 庶務係長

 

不登校児童生徒適応教室について

 

 新宮市の小中学校の児童生徒は小学校:2,238名、中学校1,181名で昭和55年の60%であるという。(同市の全人口に占める小中学校の児童生徒の割合は昭和55年度が14.67%、平成8年度が10.25%であるから少子化の傾向は同じである)

 平成9年度で不登校=小:4名、中:5名、計:9名。不登校ぎみ=小:6名、中:5名、計:11名。以上、小学生10名(全体の0.46%)小学生10名(全体の0.86%)という状況で「適応指導教室 はばたきの家」をスタートさせている。

同施設の案内パンフは以下のように言う。

 『子どもたちは、最近多くの悩みや不安に直面しています。なかでも、登校に抵抗を示す子ども、学枚へ行きたくても行けない子どもが、年々増加の一途をたどっています。そのため、新宮市教育委員会といたしましても、不登校や不登校ぎみの児童生徒が、学校生活に復帰できるよう、適応指導教室を平成8年4月に開設いたしました。この教室は、子どもの教育相談や、適応指導、学習指導、それに種々の調査研究や子育て研修を行なうことによって、不登校に陥っている子どもたちへの援助のための場として開設したものです。いつも、その児童・生徒の在簿する学校および、保護者、関係機関との連携を密にしながら活動を進めていきます。各学校、保護者の皆様には、この適応指導教室の機能をご理解下さって、効果的にご活用いただければ幸いです。』

 地域集会場の跡を改造して使っているため40uのスペースしかないという。これで全員に対応するには狭隘に過ぎるのではなかろうか。「駆け込み寺」が充実することは矛盾ではあるが、検討の余地もあろう。

 活動内容は「(1)やすらぎの場:お話をしたり、ゲームをしたり、心のやすらぎの場になるようにする。(2)学習への援助:それぞれの児童・生徒に応じた教科学習を職員の援助で進める。(3)教育相談:児童・生徒の皆さんと職員、保護者の方と職員、在籍学校関係者と職員が適宜相談する。(来室・訪問・電話等)(4)子育て研修:周りの大人たちの勉強会などを、必要に応じて進める。」というものである。

 不登校以外に学校へは来るが授業に参加しない(出来ない)児童生徒の存在についても質した。数としてはこれら不登校数よりも多いという。葛飾での同様のケースをふまえて『いい対処法があったら教えて欲しい』と言うと『我々の方が教えて欲しい』と切り替えされた。

 さらに、どこにでもあるような、教育委員会、校長・教頭の管理職、教員、事務職員間の軋轢は無いのかについても質した。新宮市は教育委員会、校長会、教職員組合の全ての者が参加する「教育研究会」が存在し、全教職員がどれかの部会に参加するのだという。この研究会は20年余の歴史を持ち、各部会に研究委託をしているという。職域の壁を取り払った研究の成果は学校現場の教育実践に、家庭での教育に、多く活かされているという。その前提になるのは新宮市も含まれる熊野地方には「熊野学」というものがあり伝統的に共に学ぶ姿勢があるからである。と、いう。俄には信じ難いが教育委員会次長の妙に自信にあふれた言いようには伝統への誇りが感じられた。

 翻って、葛飾区の教育界にそのような伝統があるのか。私は不勉強のせいもあろうが寡聞にして聞かない。各先生方に葛飾区で教えることの誇りを持ってもらうことも教育委員会の大きな責務ではないのか。教育とは人を作ることであり、教師は決して「労働者」であってはならない、「聖職者」であらねばならない。教育委員会は教師を労働者として捉えることは厳に慎まねばならないのである。そして、教師は自ら「聖職者」としての誇りと自信と矜恃をもたねばならない。

 この報告書作成の過程で葛飾区立葛美中学の先生に『学校としてどの位の不登校の生徒数を放置出来ないというのか』と聞いて『1人でも放置出来ない数です』と言われた。教師としては当然のお答えであろう。いつの間にか「行政側」の発想に立っていた自分に反省。

***

  メッセージ

拝復
 朝夕に涼風を感じる頃となりましたが皆様お健やかにお過ごしのことと存じます。この度は文教委員会視察報告書をお送り下さり有り難うございました。私も現職の時には十回程他校を訪問させていただいたり、多数の研修会、研究発表会に参加させて頂いたりしました。そして色々なことを学び、それを自校、自区の学校教育の向上に活かそうとして来ました。又、XX中には他府県からの視察者が大勢見えましたが、その方々のお役に立つべく成功例、失敗例、学校再建への道程、現在の実践などの資料を用意し丁寧に説明致しました。
 今回の木下委員さんの視察は明確な目的と高い識見を持って行われ、現地の施策そのものよりも、それについてのご意見の方を興味深く拝読致しました。
 今後のご活躍を祈念致します。                              敬具

     九月十五日

 上掲のハガキは私の尊敬する先生からの、私がお送りした視察報告への感想と激励である。(お送りしたのは「文教委員会報告」分のみであるので、和歌山市の二番目「市民温水プールの殺菌方法について」は入っていない。)お世辞とは分かっていても、自分の意図を理解してくれる人がいたことが嬉しい。


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