行財政改革、地方自治体の外部監査、会計制度改革(複式簿記導入)
ニュージーランドの行財政改革に学べ
葛飾区議会議員 木下しげき
同じ会場で、やはり『環境と産業を考える地方自治体の議員の会』のメンバーで加古川市議の真田ちほさんから『ニュージーランドでは1984年、政府に企業と同じ発生主義による複式簿記導入を義務付けた財政責任法を制定し12年後の1996年には過去最大規模の減税が出来た。』『公会計に企業会計方式を取り入れて国、自治体の資産、負債、剰余金が明確になったことから改革の具体的計画が立てられていった。』と教えられた。 (半年くらいの勉強で本を4〜5冊読んだだけの生半可な知識でおこがましいが、あえて言わせてもらうと)自治体会計が現金主義による単年度の単式簿記会計処理であることが負債を拡大していった一因のような気がする。先述の増田さんも言うように住民の税金がこのように有効に使われていますよというバランスシート(貸借対照表)を公表すべきではないのかと思っている。 副収入役(前防災課長)飯塚 仁さんに『選挙と複式簿記のバランスシート』を忠告された。ごもっともです。二期目のテーマは「公会計の見直しからの行財政改革」。職員の数や議員の数を一人二人減らすといった姑息な手段ではない本質的なアプローチをしてみたい。それと共に知識集約的ほんもの産業の誘致である。パイを取り合う型の自民党的政治からの脱却を志向しなければなるまい。(以下に新聞からの資料を掲載する。) 資料1この人にこのテーマ(朝日新聞 97―7―13)
行政改革会議の論議が来月、ひとつのヤマ場を迎えようとしている。ところが、行政が国民のためになっているのか、効率性は高いのかなどを測る基準や、そのための組織については、議論のテーマにすらなっていない。そこで、「公的会計監査の先進国」である米国の現状と日本へのアドバィスを、ボウシャー米会計検査院(GAO)前院長に聞いた。 (編集委員・早房 長治)
Q:米国における公的会計の監査システムの核心部分はボウシャーさんの院長時代にできたのですね。 A:「企業会計の監査システムは大恐慌(1929年)後の30年代の不況期に確立された。ところが、中央や地方の政府の会計は、70年代半ばまで内部監査だけで、外部からのメスは入らなかった。」「きっかけになったのは75年に起きたニューヨーク市の財政危機だ。連邦政府は救済融資を行う一方で、外部による監査を経た会計報告を毎月、財務省に提出することを要求した。その後、連邦政府が一定額以上の補助金をだしている州政府や大都市に対しても、同様の要求を出すようになった。」
世論が明朗化要求
Q:連邦政府の会計については。
A:「私が81年、GAO院長に就任して以来、GAOの監査を主要省庁が受け入れるよう議会側から圧力をかけ続けた。政府側がやっと譲歩し始めたのは、ブッシュ政権の下でだ。国防総省の不正会計事件、不動算バブルの崩壊による多数の貯蓄貸付組合(S&L)の倒産、財政赤字の増大などが重なって、政府会計の明朗化を求める世論が高まったことが大きい」
「対照表」最も重要
Q:公的会計基準のポイントは何ですか。 A:「貸借対照表(バランスシート)の導入が最も重要だ。レーガン政権時代、国防予算が約二倍に増えた。問題は兵器が有効に使われているかだ。実際は倉庫で眠っている武器が約三倍に増えた。このようなことは、単年度ベースの収支会計による年次決算報告では分からない」「隠れた負債もバランスシートを義務付ければ国民の目に明らかになる。例えば軍人年金関係の巨大な負債だ。18歳で軍に入り、20年後に退役すると、給与の約50%に相当する年金を終身保証される。空軍では、すでに現役に対する給与より退役軍人への年金の支出の方が多い。年金会計は巨大な負債を抱えているはずだが、単年度の収支会計ではなかなか表面化しない」「バランスシートの義務付けは94年の法改正で決まり、97年度決算から実現する。来春、大統領がサインして公表する年次決算報告が楽しみだ」
「第二のポイントは連結決算だ。すべての主要省庁の連結決算をしない限り、全体像は浮かび上がってこない。この点も企業会計と同じだ。企業会計との違いがあるとすれば、企業では、建物、機械など大部分の資産の減価償却が必要なのに対して、政府会計では、軍艦など一部の兵器やワシントン記念塔のようなものに償却は不要という点だろう」
3Eの観点で評価
Q:GAOは収支と資産の監査をする際、政策や予算にも言及しますか。
A:「当然だ。政府の政策とその執行を監査するにあたって、GAOは三つの基準を持っている。効率性(efficiency)、有効性(effectiveness)、経済性(economy)だ。例えば、60年代から不況になるたびに、各省庁は競って就業再訓練プログラムを作り、一時、130にも達した。これらの計画全体を3Eの観点から評価し、改善を求めた」
Q:GAOが政府でなく、議会に属している意義は。 A:「独立性の確保だ。院長は大統領に指名されるが、最高裁長官と同じ15年間の任期が保証される。検査院予算に行政府は関与できない。GAOが政府内部にあったら、バランスシートや連結決算の導入は実現しなかっただろう」
Q:日本に対するアドバイスを。 A:「行革を進めるにしても、行政の効率性や有効性を測る基準がなくてはどうにもならない。米国人から見ると不思議な気がする。ただ、米国民だって公的会計の明朗化の必要性に目覚めたのはニューヨークの財政危機以来だ。日本国民も政府と地方自治体に粘り強く要求すれば実現できるはずだ。米国にいい見本があるのだから、まねしてほしい」
資料2 (日本経済新聞 97―7―20)
公的部門に企業会計手法 小さな政府へ世界標準作り 世銀が資金、大蔵省も整備
世銀は60万ドルを拠出し、具体的な会計基準の策定作業を世界会計士連盟の公的部門委員会に委託した。国際通貨基金(IMF)や国連開発計画、アジア開発銀行も参加する。
公会計基準は、行政改革先進国とされるニュージーランドや、公的部門を企業経営の手法で運営するエージェンシー制度を導入した英国などのほか、米国でも導入されている。世銀はこうした各国の制度を研究し、公会計の基準を示す。
世銀は発展途上国に融資をする場合などに、この基準を採用して公的部門を効率化するよう求めていくとみられる。欧州でも財政赤字削減、公約部門のスリム化を急ぐために公会計の必要が指摘されている。米英などに加えてこれらの国が公会計の採用に動き、この基準が世界標準になっていく公算が大きい。
日本では、大蔵省が日本公認会計士協会に公会計基準の策定を依頼、一年程度をかけて結論を出す。その後はこの基準で特殊法人などの決算が実施されることになる。財政赤字削減を迫られる自治体でも採用が広がりそうだ。
特殊法人や自治体が内外の金融市場で債券を発行する場合は、この基準で財政状況を開示しないと投資家の信頼を得られなくなる可能性も強い。
世鋭や日本の大蔵省の作業では、貸借対照表、損益計算書などの採用が柱になるが、その際は公的部門の予算無駄遣いを排除する透明な制度づくりが焦点の一つになる。公的部門の決算は政府の予算と連動する「単年度主義」が主流。これは予算で決められた経費枠を無理してでも使い切るといった考え方につながり、経費を抑えて利益を上げるという発想が乏しくなる。また、時価を考慮した資産・負債の概念も乏しく、長期の大型開発プロジェクトで膨大な含み損を抱えても問題が表面化しにくい。
現行制度では、予算が余っても、恣意(しい)的に引当金や準備金をつくって使い切ったように見せかけられる。そこで新しい基準は、引当金や準備金を整理することも求める。余ったお金を利益として開示し、透明度を高める狙いだ。また、仕掛かり中のプロジェクトに将来、投下する資金を負債として明示することなども課題となる。
【きょうのことば】
英国に本部を置く国際会計基準委員会(IAS)が策定を進めている民間企業向けの世界統一の会計基準。国際化する企業活動を投資家が理解するには、統一した基準が不可欠だとの考えが背景にある。同基準は資産や負債の評価を市場価格に合わせる「時価主義」などを柱としている。世界の金融市場では各国の公的部門も資金調達をしている。公的部門も厳密な手法で決算を表示しないと投資家の信頼を保てなくなる可能性があり、国際会計基準の考え方を組み込む必要性が指摘されていた。
資料3 主張 公明新聞(1997―7―26) 「公会計基準」づくりに注目
世銀が世界標準づくり 世界銀行が2000年の完成を目指し、「公会計基準」の世界標準づくりに乗り出したことは大いに注目される。公会計基準は、政府機関や自治体、特殊法人、公益法人など公的部門の決算に対して「貸借対照表」「損益計算書」などの企業会計の手法を導入するための基準で、民間並みの費用対効果の考えを取り入れ効率経営を目指す。現在、国際会計基準委員会(IAS)が、民間企業の「国際会計基準」づくりを積極的に進めている最中であり、官民そろっての「世界標準」が築かれることになる。 既に、ニュージーランドでは財政責任法などによって、与えられた予算を収入、施策・サービスを支出としてバランスシートを作成し、国民に開示している。当然、公認会計士のチェックも受ける。エージェンシー制度(外庁制度)を導入している英国も公会計が発達している。米国も地方政府や議会が、公会計に基づく分析を行っている。 世銀としては、世界共通の公会計基準をモノサシに発展途上国への融資をすることが業務として求められているわけだが、一方で公会計基準が世界標準になることは各国の財政が細部にわたって、国民と市場の目にさらされることを意味する。われわれにとっては、こちらの方が重要性を帯びる。 わが国の行政改革論議では、中央省庁再編から補助金見直し、特殊法人廃止などがそ上にあるが、いずれも個別案件になると官僚、政治家、関係業界などのはざまで「棚上げ」状態となる。こうした利害とメンツの世界とは別の観点から行革を進める手段として、公会計基準は威力を発揮できる。 なぜなら、企業会計は「結果重視」の世界であり、赤字がいつまでも積み上がっていくことは許されていない。上場企業であれば株価は下落し、経営陣は責任を問われ、最終的には破産となる。公会計基準に同じ発想が組み込まれれば、公的部門の執行者は絶えず決算を意識した行政運営を迫られる。そこでは、サービスの質を低下させることなく、予算から利益(経費節減)を出すことが重視される。 本来は、公企業会計が導入されていなくとも、国民の血税で賄われている政府、自治体および関連部門は「一円たりとも無駄にしない」との姿勢で運用されなければならない。しかし、「公的部門は利益追求ではない」「公的サービスに赤字は当然」との考えが強く、高コスト行政がはびこっていった。ケインズ流の有効需要論が「行政需要拡大は善」と見させていた面もあった。 だが、国家も企業も家計も基本的に「収入」の範囲で運用しなければ、借金漬けの中で破産する。企業、家計が借金する場合は将来の収入増を見込んでのことで、貸す側もそのことを厳しくチェックする。国家の借金も同じで本当の意味の「有効需要」でなければ、ケインズの説にも反しよう。「ばらまき」「つかみ金」を有効需要とは言わない。それは「無効供給」といった表現になろうか。無効供給は、赤字しか生まず、国力をさらに衰えさせる増税で帳じりを合わせるしかなくなっていく。行き着く先は「財政亡国」である。 振り返って見ると、公会計基準を導入したニュージーランド、英国、米国は、いずれも過去に深刻な「財政亡国」にさらされている。そして、予算、決算を会計処理することで、近年、著しい成果を上げてきていることでも共通している。
財政立て直しの土台部分 日本の大蔵省も公会計基準の策定を日本公認会計士協会に依頼し、一年程度をかけて結論を出すという。ぜひども損益と資産内容が正確にはじき出される、透明度の高い公会計基準を作成してもらいたい。それこそ、わが国の行革と財政構造立て直しの「土台部分」となるはずだからである。
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