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「平成憲法」愛知私案(全文)  −第三次改定版−

目次

前 文

第一章 国家体制

第二章 国家統治原則

第三章 天皇

第四章 安全保障及び対外関係

第五章 国民の権利及び義務

第六章 立法権

第七章 行政権

第八章 司法権

第九章 財政

第十章 地方自治

第十一章 改正


  前 文

 われわれ日本国民は、明治、昭和の二代の憲法に引き続き、ここに新たなる憲法の制定を決意した。われわれは、この憲法の制定にあたって、 われわれの祖先の代から築かれてきた歴史と伝統の尊重を改めて表明す るとともに、その歴史と伝統の尊重の上に立ち、且つ常にわれわれに続く世代の幸福を念頭に置きつつ、今後の我が国の国家運営を行なうことを宣言する。

 そもそも、我が国は、国家の統治を為すにあたっては、国民の意思を 尊重し、国民の合意の上に立って、これを行ってきた。

それは、我が国最古の法典たる十七条憲法に提起され、明治維新時の五箇条御誓文においても確認され、明治、昭和の二代の憲法に受け継がれてきた我が国の流儀である。われわれは、この統治の流儀を守り、諸事に渉り国民各層 の広範にして自由な議論を奨励する。われわれは、国民各層が過去から 現在に至るまで内外で行った議論に基づき、我が国の進むべき道筋をつけることにする。

 西洋近代に端を発する進歩主義の精神は、人類に多くの恩恵を与えてきた。しかし、その反面、近代進歩主義の精神は、人類の無限の可能性を称揚し過ぎた結果、却って人類それ自体の生存基盤を顕著に浸食するようになっている。武力紛争、飢餓、貧困、資源枯渇、更に地球環境問題のように、今や、全人類が一丸となって取り組まなければならない課題が、われわれの前に浮上している。

 われわれは、近代進歩主義への評価と反省を起点にして、この全人類的課題に取り組んでいく。そのためにも、われわれは、我が国の歴史と伝統に湛えられた国家と国民を守るために自らなすべきことをなしてゆ くとともに、他国の国民とも広く識見を交えていく。

 我が国は、古来、個人の尊重を重視するとともに他との対立よりも調和を重んじてきた国柄を有する。われわれは、祖先の代より、家族に始まり、地域社会、国際社会、人間以外のものとの関係に至るまで、互いに己が立場を尊重しながら、他との調和の中に自らを処すことを佳しと してきた。われわれは、個の確立を基本としつつこの調和を重んじる精神や価値意識、すなわち「共生の精神」を支えにして、我が国内外の諸事に相対していく。

 われわれは、対立と軋轢を繰り返した今世紀の人類の来歴の後で、「共生の精神」が持つ普遍的な意義を確信する。人類と人類以外のものとの関係から、人種、民族、宗教などを巡る様々な人類間の関係に至るまで、われわれは、「共生の精神」が人類の普遍的な価値たるように尽力する。そして、われわれは、二十一世紀を「共生の精神」に満ちた世 紀、すなわち「共生の世紀」たらしめることが、我が国の世界史上の使命と位置付ける。われわれは、この世界史上の使命の貫徹に邁進する。

第一章 国家体制

第一条

@ 日本国は、天皇を推戴する立憲君主制国家である。

第二章 国家統治原則

第二条 統治の正統性

@ 国家統治に関する総ての権力は、国民に由来する。

第三条 統治の主体

@ 国家統治に関する総ての権力は、国民によって行使される。

A 国民は、権力の行使に際して、正当な選挙及び推薦の手続きを経た国会における代表を通じてこれを行う。

B 前項の場合の他、憲法改正の際の国民投票において、国民は、国家統治に関する最終的な意志を決定する。

第四条 国民の条件

@ 日本国の国民であるための条件は、法律によって、これを定める。

第三章 天皇

第五条 天皇の地位

@ 天皇は、日本国の元首である。

A 天皇は、対外的に日本国を代表するとともに、日本国の伝統、文化、及び国民の統合を象徴する。

B 天皇の地位は国民の総意に基づく。

第六条 皇位の継承

@ 皇位は、世襲のものである。

A 皇位の継承は、国会の承認した皇室典範の定めるところによって、皇統に属する者が、これを行う。

第七条 国政との関係

@ 天皇は、国政に関する一切の権能を有しない。

第八条 国事行為の原則

@ 天皇は、憲法の定める国事に関する行為を行なう。

A 天皇は、国事に関する行為を行なうにあたって、内閣の助言と承認を受ける。天皇の国事に関する行為については、内閣が責任を負う。

B 天皇は、法律の定めるところによって国事に関する行為を委任することができる。

第九条 摂政

@ 天皇が成年に達しない場合、もしくは皇室典範が定める場合には、摂政を置くことができる。

A 摂政の行為は、前条の規定を準用する。

第十条 三権の長の任命

@ 天皇は、衆議院の指名に基づき、内閣総理大臣を任命する。

A 天皇は、衆議院の指名に基づき、衆議院議長を任命するとともに、参議院の指名 に基づき、参議院議長を任命する。

B 天皇は、内閣の指名に基づき、最高裁判所長官を任命する。

第十一条 国事行為の内容

@ 天皇は、次に定める国事に関する行為を行う。

一、 外国の対し及び公使の信任状を受領すること。

二、 全権委任状、外国の大使及び公使の信任状、批准書、及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。

三、 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。

四、 国会を召集すること。

五、 衆議院を解散すること。

六、 衆議院議員の総選挙及び参議院議員の通常選挙の施行を公示すること。

七、 国務大臣及び法律の定める他の公務員の任免を認証すること。

八、 恩赦、刑の減免及び復権を認証すること。

十、 栄典の授与を行なうこと。

十、 儀式を行なうこと。

第十二条 天皇の準国事行為

@ 前条に規定する国事行為の他、次に挙げるように、天皇が、元首として対外的に日本国を代表し、日本国の文化、伝統、国民統合を象徴するために必要な一切の行為は、国事行為に準ずるものとする。

一、 即位の礼、婚姻の礼、大喪の礼その他の皇室に固有の伝統儀式

二、 外国の国家元首及び賓客の歓待

三、 前二号に付随し関連する一切の行為

A 天皇が元首としての地位と尊厳を保つための条件は、国政の上で、特段の配慮を必要とする。

第十三条 皇室の財産

@ 皇室の財産は、国庫に属する。皇室に関わる総ての費用は、予算案に計上し、国会の議決を得なければならない。

第四章 安全保障及び対外関係

第十四条 世界平和の理念

@ 日本国民は、武力紛争、抑圧、飢餓、貧困、環境破壊といった人類の災禍が地球上から除去されることを希求する。

A 前項の目的を達成するため、日本国は、正義に基づく国際秩序の形成、維持、発展に主導的な役割を果たすように努めるとともに、確立された国際機構の運営及び活動には戦力の使用を含む責任ある立場で積極的に参画する。

第十五条 自衛権・戦力の性格・国民の義務

@ 日本国は自らの独立と安全を守り、急迫不正の侵略に対しては、これに対抗し防衛する権利を有する。

A 国民は国家を防衛する義務を有する。

B 日本国は国家防衛の目的に即し同盟を組むことができる。

C 本条の第一項の目的を達成するため、日本国は、陸海空三軍その他の戦力を持つものとする。

D 日本国は、本条一項の目的を達成するため必要と認められた場合に限り陸海空三軍その他の戦力を使用することができる。但し、憲法第十四条二項に相当する場合はこの限りではない。

E 陸海空三軍その他の戦力の最高の指揮監督権は、内閣総理大臣に帰属する。

第十六条 地球安全保障

@ 人類に対する直接の殺傷でなくとも、中長期的に地球環境を破壊し、地球の安全を脅かすような行為は、これを認めない。

第十七条 国際法規の遵守

@ 日本国が自ら締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。

第五章 国民の権利及び義務

第十八条 基本原則

@ 国民は、何人も人間としての基本的自由を享有する権利を有する。この憲法が国民に保障する権利は、侵されることのない恒久の権利である。

A この憲法が保障する権利の外国人に対する適用は、法律でこれを定める。

B 国民は公共財の保守に資する義務を負う。

第十九条 自由及び権利の保持義務、国民の憲法及び法令の遵守義務

@ この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力により、これを保持しなければならない。

A 国民は、この憲法が国民に保障する自由及び権利を濫用してはならず、常に公共の利益との調和を図るようにしなければならない。

B 国民は、この憲法及び法律を遵守する義務を負う。

第二十条 個人の尊厳

@ 総て、国民は、個人として尊重される。

A 生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の利益に反しない限り、立法その他国政の上で、最も尊重されなければならない。

第二十一法の下の平等

@ 総て、国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分、門地、心身障害その他を理由とした不合理な差別を受けることはない。

A 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴わない。ただし、法律で定める年金その他の経済的利益の付与は、この限りでない。

第二十二条 人格権

@ 何人も、名誉、信用その他人格を不当に侵害されない権利を保障される。

A 何人も、自己の私事、家族及び家庭について、濫りに干渉されない権利を有する。

B 通信の秘密は、これを侵してはならない。

第二十三条 思想及び良心の自由

@ 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

第二十四条 信教の自由

@ 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。

A 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。

B 国およびその機関は、一宗一派に偏した宗教教育その他のいかなる宗教活動 もしてはならない。

C いかなる宗教団体も、国から特権を受けてはならない。

D 公金及び公の財産は、宗教上の組織もしくは団体の使用、便益もしくは維持のために、これを支出し、またはその利用に供してはならない。

第二十五条 表現の自由

@ 言論、出版、報道その他一切の表現の自由は、これを保障する。

A 検閲は、これをしてはならない。

第二十六条 集会及び結社の自由

@ 何人も、集会及び結社の自由を有する。但し、この憲法秩序の破壊、あるいは国民の諸権利の侵害を目的とするとともに、具体的な活動に及びたる結社は、これを禁止する。

A 何人もその意に反して結社に参加することを強制されない。

第二十七条 居住及び移転の自由

@ 何人も、居住及び移転の自由を有する。

第二十八条 国籍離脱の自由

@ 総て、国民は、外国に移住し、または国籍を離脱する自由を保障される。

第二十九条 学問の自由

@ 学問の自由は、これを保障する。

第三十条 職業選択及び営業の自由

@ 何人も、職業選択及び営業の自由の自由を有する。

第三十一条 私有財産所有の自由と権利

@ 何人も、財産を私有する自由と権利を有する。

A 財産権の内容は、公共の利益に適合するように、法律でこれを定める。

B 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共の利益のために用いることができる。

第三十二条 家族生活における個人の尊厳と男女の平等

@ 家族は、社会を構成する最も基本的な単位である。何人も、各自、その属する家族の運営に責任を負う。

A 婚姻は、両性の合意に基づいて成立し、夫婦が同等の権利と責任を有することを基本として、相互の協力により維持されなければならない。

第三十三条 生存権、国の社会的使命

@ 総て、国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

A 国は、各人の人格の尊重の上に立って、社会福祉及び社会保障の向上及び増進に努めなければならない。

B 前項に関連して、心身に障害を持つもの、高齢者、妊産婦に対しては、国政の上で、特段の配慮が与えられなければならない。

C 国は、公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

D 国は、科学、芸術その他の文化の振興に努めなければならない。

第三十四条 環境権に関する権利及び義務

@ 何人も、良好な環境を享受する権利を有するとともに、良好な環境を保持し且つわれわれに続く世代にそれを引き継いでいく義務を有する。

A 国は良好な環境の維持及び改善に努めなければならない。

第三十五条 子供の育成、教育を受ける権利、国の社会的使命

@ 国は次代を担う子供の健全育成のために特別の配慮をしなければならない。

A 総て、国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。

B 総て、国民は、法律の定めるところにより、その保護する子弟に普通教育を受けさせる義務を負う。義務教育は、これを無償とする。

C 子供は、これを酷使してはならない。

第三十六条 勤労者の団結権

@ 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

第三十七条 納税の義務

@ 国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負う。

第三十八条 国家非常事態下における協力義務

@ 総て、国民は、憲法第八十五条に規定される国家非常事態命令が発動された場合には、内閣の命令に従い、内閣の活動に協力する義務を負う。

第三十九条 法定手続きの保障

@ 何人も、法律の定める適正な手続きに依らなければ、いかなる不利益も受けることがない。

A 何人も、実行の前に制定された明確な法律に依らなければ、逮捕され、刑事上の責任を問われない。また、何人も、同一の事犯について、重ねて刑事上の責任を問われない。

B 非人道的な刑罰は、これを禁止する。

第四十条 逮捕の要件

@ 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、裁判官が発し、かつ理由となる犯罪を明示する令状に依らなければ、逮捕されない。

第四十一条 抑留又は拘禁の要件、不法拘留に対する保障

@ 何人も、理由を直ちに告げられ、かつ直ちに弁護人に依頼する権利を与えられなければ、抑留又は拘禁されない。

A 何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、本人またはその弁護人の要求があれば、その理由は、本人およびその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。

第四十二条 住居の不可侵

@ 何人も、憲法第四十一条の場合を除いては、正当な理由に基づいて裁判官が発する令状に依らなければ、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることはない。

A 捜索及び押収は、捜索する場所および押収する物品を明示した個別の令状に依らなければならない。

第四十三条 刑事被告人の権利

@ 総て、刑事事件においては、被告人は、裁判所の公平にして迅速な公開裁判を受ける権利を有する。

A 刑事被告人は、総ての証人に対して審問する機会を十分に与えられるとともに、自己のために公費で強制手続きにより証人を求める権利を有する。

B 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国がこれを付する。

C 刑事被告人は、法律の定めるところにより、裁判所の判決が確定するまでは、無罪と推定される。

D 刑事被告人に限らず、何人も、自己に不利な供述を強制されない。次に挙げる自白は、刑事裁判の証拠としての効力を持たない。

一、 強制、拷問もしくは脅迫による自白

二、 不当に長期にわたる抑留及び拘禁の後の自白

三、 刑事被告人にとって唯一の不利な証拠としての自白

第四十四条 刑事賠償請求権

@ 何人も、抑留及び拘禁された後、裁判所において無罪の判決が確定したときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。

第四十五条 公務員を選定し罷免する権利、普通選挙の保障、選挙権行使の義務、投票の秘密の保障、公務員の性質

@ 国会議員、地方公共団体の首長及びその議会の議員その他の公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。

A 公務員の選挙については、成年者による直接選挙を保障する。

B 総て、選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関して、公的にも私的にも責任を問われない。

C 総て、公務員は、国民全体に奉仕する。公務員は、特定の個人、組織あるいは団体に奉仕することがあってはならない。

第四十六条 請願権

@ 何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令または規則の制定、改正もしくは廃止その他の事項に着いて、平穏に請願する権利を有する。

A 何人も、前項に規定された請願を行なったことを理由として、いかなる差別も受けることがなく、いかなる不利益も被ることがない。

第四十七条 国及び地方公共団体の賠償責任

@ 何人も、公務員の不法行為により損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国または地方公共団体に、その補償を求めることができる。

第六章 立法権

第四十八条 立法権の所在

@ 立法権は、国会に帰属する。

第四十九条 二院制

@ 国会は、衆議院及び参議院の二院で、これを構成する。

第五十条 両議院の組織

@ 衆議院は、選挙された議員で、参議院は選挙された議員及び推薦議員でこれを組織する。

A 衆参両院で永年勤続の表彰を受けた議員で議席を失った者のうち希望する者は参議院の推薦議員となることができる。

B 議員は、総ての国民を代表する。

C 両議院の議員の定数は、法律でこれを定める。

第五十一条 議員及び選挙人の資格

@ 両議院の議員及び選挙人の資格は、法律でこれを定める。

A 両議院の議員及び選挙人の資格は、人種、信条、性別、門地、教育、財産または収入により差別されてはならない。

第五十二条 衆議院議員の任期

@ 衆議院議員の任期は、四年とする。ただし、解散の場合には、その期間満了前に終了する。

第五十三条 参議院議員の任期

@ 参議院議員の任期は、六年とする。ただし、三年ごとに議員の半数を改選するものとする。

第五十四条 選挙に関する事項

@ 選挙区、投票方法その他、両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。

A 参議院の議員の推薦に関する事項は、法律でこれを定める。

第五十五条 両議院議員の兼職の禁止

@ 何人も、同時に両議院の議員たることはできない。

第五十六条 議員の歳費

@ 両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。

第五十七条 議員の不逮捕特権

@ 両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されない。

A 会期前に逮捕された議員は、その所属する議院の要求のある場合には、釈放されなければならない。

第五十八条 議員の発言及び表決についての免責

@ 両議院の議員は、議員内で行なった発言、討論、または表決について、院外で責任を問われない。

第五十九条 通常会

@ 国会の通常会は、年に一回、これを召集する。

第六十条 臨時会

@ 内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。

A 前項の場合の他、何れかの議院の総議員の四分の一以上の要求があったときには、内閣は、臨時会の召集を決定しなければならない。

第六十一条 衆議院の解散、特別会、参議院の緊急集会

@ 衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に衆議院議員の総選挙が行なわれ、その総選挙の日から三十日以内に国会が召集されなければならない。

A 衆議院が解散されたときには、参議院は同時に閉会となる。

B 前項の規定にかかわらず、衆議院の解散中、緊急の必要があるときは、内閣は、参議院の緊急集会を求めることができる。

C 前項の規定する緊急集会において採られた措置は、臨時のものであり、次の国会召集から十日以内に衆議院の同意が得られなければ、その効力を失う。

第六十二条 資格争訟の審査

@ 両議院は、各々、所属する議員の資格に関する争訟を審査する。

A 議員の議席を剥奪するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。

第六十三条 定足数、表決

@ 両議院は、各々、所属する在籍議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。

A 両議院の議事は、この憲法に特別の規定がある場合を除き、出席議員の過半数で、これを決し、可否同数のときは、議長の決するところに依る。

第六十四条 議事の公開、議事録、表決の記載

@ 両議院の議事は、公開とする。

A 前項にもかかわらず、出席議員の三分の二以上の多数により議決したときは、秘密会を開くことができる。

B 出席議員の五分の一以上の要求があれば、各議員の表決は、これを議事録に 記載されなければならない。

第六十五条 役員の選任、議院規則、懲罰

@ 両議院は、各々、その議長その他の役員を選任する。

A 両議院は、各々、議事その他の手続き、及び内部の規律に関する規則を定め るとともに、院内の秩序を乱し或いは刑事裁判にて有罪が確定した議員については、これを懲罰することができる。

B 前項の場合、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決 を必要とする。

第六十六条 法律案の議決

@ 法律案は、内閣及び国会議員が、これを提出する。

A 法律案は、この憲法に特別の規定がある場合を除き、両議院で可決したとき法律となる。

B 法律案は、衆議院で可決したにもかかわらず参議院で異なる議決をしたときは、衆議院で出席議員の五分の三以上の多数で再び可決されることにより、法律となる。

C 前項の規定にかかわらず、衆議院は、法律の定めるところにより、両議院の協議会の開催を求めることができる。

D 参議院が衆議院の可決した法律案を付託された後、国会休会中の期間を除き六十日以内に議決を行なわないときは、衆議院は、参議院が当該法律案を否決したものとみなすことができる。

第六十七条 衆議院の予算案先議、予算案議決に関する衆議院の優越

@ 予算案は、先に衆議院に提出しなければならない。

A 参議院で衆議院と異なった議決が行なわれた後、両議院の協議会に予算案が 付託され、意見の一致がみられないときは、法律の定めるところにより、衆議院の議決を国会の議決とする。

第六十八条 条約の承認に関する参議院の優越

@ 条約の承認案は、先に参議院に提出しなければならない。

A 衆議院で参議院と異なった議決が行なわれた後、両議院の協議会に条約承認案が付託され、意見の一致がみられないときは、法律の定めるところにより、 参議院の議決を国会の議決とする。

第六十九条 人事案件の参議院の優越

@ 法律で定める重要な公務員の就任については、国会の承認を経なければならない。

A 前項の国会承認に着いては、前条の規定を準用する。

第七十条 議員の国政調査権

@ 両議院は、各々、国政に関する調査を行い、これに関して、承認の出頭及び証言、並びに資料及び記録の提出を要求することができる。

第七十一条 国務大臣の議院出席の権利及び義務

@ 内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の何れかに議席を有すると有しないとにかかわらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。

A 内閣総理大臣その他の国務大臣は、答弁又は証明のために議院に出席を求められ たときは、法律の定める場合を除き、出席しなければならない。

第七十二条 弾劾裁判所、訴追委員会

@ 裁判官の罷免の訴追を行なうために、衆議院には、衆議院議員で組織する裁判官訴追委員会を置く。

A 前項に規定する罷免の訴追を受けた裁判官を弾劾するために、参議院には、参議院議員で組織する弾劾裁判所を置く。

B 訴追及び弾劾に関する事項は、法律でこれを定める。

第七章 行政権

第七十三条 行政権の所在

@ 行政権は内閣に帰属する。

A 内閣は、法律に基づいて、行政権を行使する。

第七十四条 内閣の組織

@ 内閣は、法律の定めるところにより、内閣総理大臣及びその他の国務大臣で、これを組織する。

A 内閣総理大臣は、内閣を代表し、国務大臣を統率する。

B 内閣総理大臣及びその他の国務大臣は、陸海空三軍その他の戦力に属する者であってはならない。

C 内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負う。

第七十五条 内閣総理大臣の指名、衆議院の優越

@ 内閣総理大臣は、衆議院議員の中から衆議院の議決で、これを指名する。この指名は、他の総ての案件に先立って、これを行う。

第七十六条 国務大臣の任命及び罷免

@ 内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。国務大臣の過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない。

A 内閣総理大臣は、国務大臣を任意に罷免することができる。

第七十七条 内閣の解散権、内閣不信任決議の効果

@ 内閣は、衆議院を解散することができる。

A 内閣は、衆議院で不信任の決議案が可決され、または信任の決議案が否決されたときは、十日以内に衆議院を解散しない限り、総辞職しなければならない。

第七十八条 内閣総理大臣の不在、新国会の召集と内閣の総辞職

@ 内閣総理大臣が欠けたとき、または衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があったとき、内閣は総辞職しなければならない。

第七十九条 総辞職後の内閣

@ 前二条の場合には、内閣は、あらたに内閣総理大臣が任命されるまで、引き続き憲法の定める職務を行う。

A 前項の場合、内閣は、衆議院を解散することができない。

第八十条 内閣総理大臣の職務

@ 内閣総理大臣は、内閣を代表して法律案、予算案その他の議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告する。

第八十一条 内閣総理大臣の統括権

@ 内閣総理大臣は、行政各部を統括する。

第八十二条 内閣総理大臣の臨時代理

@ 内閣総理大臣に事故あるとき、または内閣総理大臣が欠けたときは、内閣を構成する各大臣の中から選任された臨時代理が内閣総理大臣の職務を代行するものとする。

第八十三条 内閣の職務

@ 内閣は、一般の行政事務の他に、次の事務を行う。

一、 法律を誠実に実行し、行政事務を統括管理すること。

二、 外交関係を処理すること。

三、 条約を締結すること。ただし、事前に、場合によっては事後に国会の承認を経ることを必要とする。

四、 法律の定める基準に従い、公務員に関する事務を掌理すること。

五、 国会を召集すること。

六、 予算案を作成し、国会に提出すること。

七、 憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。ただし、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。

八、 恩赦、刑の減免及び復権を決定すること。

九、 栄典の授与を決定すること。

第八十四条 行政情報の公開原則

@ 内閣は、次に挙げる場合を除き、その統括する行政各部の情報について、これを公開しなければならない。

一、 国家の安全保障を脅かすおそれのあるとき。

二、 公共の秩序を害するおそれのあるとき。

三、 善良の風俗を害するおそれのあるとき。

四、 関係当事者の人格を害し、その私生活上の利益を害するおそれのあるとき。

A 前項の規定に基づき、行政情報の公開に関する手続きは、法律でこれを定める。

第八十五条 国家非常事態命令

@ 内閣総理大臣は、国家の独立と安全保障、または国民の生命、身体もしくは財産に切迫した影響を及ぼす緊急事態が発生した場合において、国家非常事態命令を発動することができる。

A 前項の場合、内閣総理大臣は、国家非常事態命令の発動の後、十五日以内に国会の承認を得なければならない。国家非常事態命令の延長は、国会の承認を得られなければ、これを認めない。

第八十六条 国務大臣の特典

@ 国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。

A 前項を根拠としては、国務大臣を訴追する権利が害されることはない。

第八章 司法権

第八十七条 司法権の所在

@ 総て、司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置される下級裁判所に属する。

第八十八条 特別裁判所の禁止、行政機関の裁判

@ 特別裁判所は、これを設置することができない。

A 行政機関は、終審としての裁判を行うことができない。

第八十九条 法令審査権

@ 最高裁判所は、一切の法律、命令、規則または処分が憲法に適合するかしないかを判断する権限を有する終審裁判所である。

A 最高裁判所は、高度の政治性を帯びた案件についても、憲法に適合するかしないかの判断を回避してはならない。

第九十条 国会、内閣、裁判所及び地方公共団体の法令審査尊重義務

@ 前条の規定に基づき、最高裁判所が、法律、命令、規則または処分について、憲法に適合しないとの判断を下した場合には、内閣、裁判所及び地方公共団体は、その法律、命令、規則または処分の適用を停止しなければならない。

A 国会は、憲法に適合しないと判断された法律、命令、規則または処分について、これを速やかに改廃しなければならない。

第九十一条 最高裁判所の裁判官、任期、定年、報酬

@ 最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める定員数のその他の裁判官で、これを組織する。

A 最高裁判所の長たる裁判官以外の最高裁判所裁判官は、内閣が、これを任命する。

B 最高裁判所の裁判官は、任期を五年とし、再任されることができる。

C 最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官する。

D 最高裁判所の裁判官は、総て定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。

第九十二条 下級裁判所の裁判官、任期、定年、報酬

@ 下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿に依り、内閣が、これを任命する。

A 下級裁判所の裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。

B 下級裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官する。

C 下級裁判所の裁判官は、総て定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中に、これを減額することができない。

第九十三条 最高裁判所の規則制定権

@ 最高裁判所は、訴訟に関する手続き、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を制定する権限を有する。

A 最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を下級裁判所に委任することができる。

第九十四条 裁判官の独立、身分保障

@ 総て、裁判官は、その良心に従い、独立して自らの職権を行い、この憲法及び法律のみに拘束される。

A 裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾に依らない限り罷免されない。 裁判官の懲戒は、行政機関が、これを行うことはできない。

第九十五条 裁判の公開

@ 裁判の対審及び判決は、公開の法廷でこれを行なう。

A 裁判所が、次に掲げる理由により、裁判の公開が適当でないと裁判官の全員一致で決定した場合、対審は、公開しないでこれを行なうことができる。

一、 国家の安全保障を脅かすおそれのあるとき。

二、 公共の秩序を害するおそれのあるとき。

三、 善良の風俗を害するおそれのあるとき。

四、 当事者の私生活上の利益を害するおそれのあるとき。

B 前項の規定にかかわらず、政治犯罪、出版または報道に関する犯罪、もしくは憲法第四章で保障する国民の権利が問題となっている事件の対審は、常に、これを公開しなければならない。

第九章 財政

第九十六条 財政の基本原則

@ 国の財政は、国会の議決に基づいて、内閣が、これを処理する。

A 国は、健全なる財政の維持及び運営に努めなければならない。

第九十七条 課税

@ 国は、あらたに租税を課し、または現行の租税を変更する際には、法律、または法律の定める条件に依らなければならない。

第九十八条 国費の支出、国の債務負担

@ 国は、国費を支出し、または債務を負担する際には、国会の議決に基づくことを必要とする。

第九十九条 公金その他の公の財産の使用の制限

@ 公金その他の公の財産は、公の支配に属しない教育、慈善その他を目的とする 団体に対して、その便益もしくは維持のため、これを支出し、またはその利用に供してはならない。

第百条 予算案

@ 内閣は、毎会計年度の予算案を作成し、国会に提出して、その議決を得なければならない。

A 内閣は、国会において議員が提出した法律案が可決されたときは、その法律の執行に必要な費用を次の会計年度の予算案に計上しなければならない。

B 内閣は、特別に複数年に渉って継続して国費を支出する必要のあるときは、継続費として国会の議決を得なければならない。

第百一条 予備費

@ 内閣は、予見の難しい予算の不足に充当するために、国会の議決に基づいて予備費を設け、内閣の責任において、これを支出することができる。

A 予備費の支出については総て、内閣は、事後に国会の承認を得なければならない。

第百二条 決算検査、会計検査院

@ 国の総ての収入及び支出の決算は、会計検査院が、これを検査する。

A 内閣は、次の年度に、前項に規定する会計検査院による決算検査と併せ、国の総ての収入及び支出の決算を国会に提出しなければならない。

B 会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める。

第百三条 財政状況の報告

@ 内閣は、国会及び国民に対して、少なくとも毎年一回、定期に、国の財政状況について報告しなければならない。

第十章 地方自治

第百四条 地方自治の原則

@ 地方公共団体の運営に関する第一の責任は、当該地方公共団体及び地域住民に属する。

A 地方公共団体の運営及び組織に関する事項は、前項の趣旨に基づき、法律でこれを定める。

第百五条 地方議会、首長、議員等の直接選挙

@ 地方公共団体には、法律の定めるところにより、議会を設置する。

A 地方公共団体の首長及びその議会の議員は、その地方公共団体の住民が、これを選挙する。

第百六条 地方公共団体の権能、条例制定権

@ 地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有する。

A 地方公共団体は、法律の趣旨の範囲内で、条例を制定することができる。

第百七条 特別法の住民投票

@ 特定の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票において、過半数の同意が得られなければ、国会は、これを制定することができない。

第百八条 国家非常事態下における地方自治

@ 憲法第八十五条に規定される国家非常事態命令が発動された場合、法律の定めるところにより、地方公共団体は、その権能を停止し、内閣の直接の指揮の下に入るものとする。

第十一章 改正

第百九条

@ この憲法の改正に際しては、改正案として、両議院のそれぞれにおいて、その在籍議員の三分の二以上の出席の上で、出席議員の三分の二以上の賛成による可決を必要とする。

A 前項の場合の他、この憲法の改正に際しては、改正案として、両議院のそれ ぞれにおいて、その在籍議員の三分の二以上の出席の上で、出席議員の過半数により、国会が、これを発議し、国民に提案して、その承認を得なければならない。

B 前項に規定する国民の承認には、特別の国民投票、または国会の定める選挙の際に行なわれる投票において、有効投票の過半数の賛成を必要とする。

C 本条第一項及び第二項に規定する憲法改正案は、内閣または国会議員が提出することができる。

D 憲法改正については、本条第一項に規定する改正案の可決、または第二項に 規定する改正案の承認があったときには、天皇は、国民の名において、これを直ちに公布する。


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