毎日新聞・夕刊(?)

《 夢を追う 》 都会の自然 守りたい 


戻ってきたカワセミ

 江戸川と中川に挟まれた東京都葛飾区の水元公園。大小さまざまな池が点在し、水生植物や昆虫、淡水魚が生息している。公園の一角にある東京都立水元水産試験場が今月末、移転する。試験場内には都の天然記念物のオニバスや、文化遺産ともいわれる江戸前金魚など貴重な生き物がいるが、そのまま失われる恐れがある。

 「水と緑の会」代表の長沢瑞(たま)さん(68)らは飼育池や魚、研究機能を残すよう都議会へ請願したり、シンポジウム開いて、多くの人の協力を呼びかけるなど、運動を続けている。

 同会は合成洗剤の追放運動をしていた葛飾区の消費者らが1984年に発足させた。水質汚染をなくし、健康を守るため、合成洗剤をやめ、せっけんを使おうと、パンフレットを作って市民に呼びかけてきた。

 葛飾区一帯は「水郷」と呼ばれるほど昔から池などが多いところ。釣りや水遊び、水際の散歩など昔から水に触れることを楽しんできた。長沢さんは10年ほど小学校の先生をしたことがあり、自然と触れ合いながら遊べる環境が子供の健康、成長にいかに大事かを痛感している。子供たちのためにも、この自然を守ろうと同会の中心メンバーとして活動。池のアンモニア、COD(化学的酸素要求量)、臭気などを調査し、監視してきた。

 会員の努力は実を結んだ。水元公園地区にある水元小合溜はかつてカワセミのすむ池だった。しかし水が汚れて魚が減ったため、カワセミも婆を消した。会員は行政に働きかけて「カムバック カワセミ作戦」で、水質浄化などの運動を進め、6年後にカワセミが戻ってくるようになった。

カワセミ
 昨年から試験場の自然環境を守る運動と同時に、試験場に隣接する「ごんぱち池」の水質調査も始めた。周囲300mほどの小さな池だが、どこからも水が流れ込まないため水が比較的きれい。絶滅危惧種で黄色の花を咲かせるアサザや、オニバスがみられる。しかし今は何の保護策もとられていないため、会員はこの自然が破壊されるのではないかと心配していた。そこで監視活動を行い、行政に保護を訴えることにした。

 「都会の自然は放置していると、荒れるばかりです。人の出入りを制限するなど、ある程度の保護策は必要」と長沢さんは言う。室内で遊ぶことが多くなった今の子供たちにこそ、思いっきり遊べる自然を残したいというのが、元教師としての夢だ。               【川鍋 亮】


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