QE2 WorldCruse 2005 ~ Osaka-Taiwan-HongKong 乗船記 - からから亭 |
■第一次世界大戦以前
帆船から外輪船、スクリュー船へと変化し大西洋航路を開く。1910前後急速に大型化
船名 | 船籍 | 就航 | 総トン数 | 全長(m) | 全幅(m) | 総定員 | 速力 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
オーシアニック | 英/ホワイトスター | 1899 | 17,272 | 214.6 | 20.8 | 19.5 | ||
モレタニア | 英/キュナード | 1907 | 31,938 | 240.8 | 25 | |||
タイタニック | 英/ホワイトスター | 1912 | 46,329 | 264.8 | 27.8 | 2200+ | 24.0 | |
インペラトール | 独/ハパグ | 1914 | 52,117 | 280.1 | 23 | |||
■第一次〜第二次世界大戦
多くの定期船が軍用に徴用され、沈んだ船も多かった。
船名 | 船籍 | 就航 | 総トン数 | 全長(m) | 全幅(m) | 総定員 | 速力 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
クイーンメリー | 英/キュナード | 1936 | 80,774 | 310.2 | 36.1 | 29 | ||
クイーンエリザベス | 英/キュナード | 1940 | 83,673 | 314.2 | 36.1 | 30 | ||
■第二次世界大戦後
平和な時代を迎えるが、大西洋航路の主役は航空機に奪われ衰退。新たにクルーズ船が登場する。
船名 | 船籍 | 就航 | 総トン数 | 全長(m) | 全幅(m) | 総定員 | 速力 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
クィーンエリザベス2 | 英/キュナード | 1969 | 70,327 | 293.5 | 32.0 | 1500 | 28.5 | |
クィーンメリー2 | 英/キュナード | 2004 | 151,400 | 345.0 | 39.9 | 3090 | 30.0 | |
ナビゲーター・オブ・ザ・シーズ | 142,000 | 311.1 | 47.4 | 3840 | ||||
飛鳥 | 日/日本郵船 | 28,856 | 192.8 | 24.7 | 592+270 | 21 | ||
にっぽん丸 | 日 | 21,903 | 166.6 | 24.0 | ||||
ふじ丸 | 日 | 23,235 | 167.0 | 24.0 | ||||
ぱしふっくびーなす | 日 | 1998 | 26,518 | 183.4 | 25.0 | 696+204 | 18.5 | |
タイタニックの兄弟船「ブリタニック」建造中に時代は第一次世界大戦に突入し、客船は
戦争に徴用されます。
もともと、それらの客船は高速を出すために燃費が悪く採算が苦しかったために、戦時には
徴用される条件で政府からの補助金を得て運行していたのだそうです。
「ブリタニック」は客船として完成しないまま病院船として徴用され、エーゲ海に沈みました。
大戦後社会が安定すると次世代の客船が登場します。
1936年就航した「クイーンメリー」は、80,774総トン。大きさはタイタニックの1.7倍ですが、
三本煙突で外観はタイタニックに通じる高速船のそれです。
第二次世界大戦に突入すると、これらの客船はまた徴用され、30ノット以上のその速力には
Uボートも追いつくことが出来なかったと言われています。
第二次世界大戦後、これらの客船も改装して本来の旅客輸送に戻りました
(残念ながら、沈んだ船も多かったようです)が、
時代の主役は徐々に航空機に移り、1970年代に北大西洋航路の旅客輸送は終焉を迎えます。
「クィーンエリザベス2」は1969年就航で、最後の北大西洋航路定期便であり、これ以降に
続くクルーズ時代も視野に入れた船といわれています。つまり、「クィーンエリザベス2」は
近代の船ではありますが
「タイタニック」あるいは「モレタニア」たちの最後の直系の子孫と言うことになるわけです。
定期旅客輸送に応えるその本性は、最大25〜30ノットも可能な大出力とスマートな船体のデザイン
に現れており「洋上の貴婦人」と呼ばれています。
QE2はフォークランド紛争の折、英国軍の兵員輸送に徴用されたことでも有名ですが、
これは大戦中と同じく「どの船よりも速い」という理由からでした。
近年QE2の倍、140,000総トンを超えるクルーズ船が続々と建造され、カリブ海に
浮かんでいますが、
多くは「洋上のホテル」として設計されているため、ずんぐりと四角い箱型の船が多く、
船としての美しさは後退しているように思います。
しかしながら2004年に就航した「クイーンメリー2」は、151,400総トン、
全長345mもの巨大な船
でありながら、スリムな形をしており、30ノットの高速を生かして「北大西洋定期航路」
を偲ぶ「サウザンプトン<->ニューヨーク」の往復航路も運行しています。
なお、世界一周クルーズをするためには、スエズ運河、パナマ運河を航行する必要が
あり、喫水の深さ制限などからあまりの巨大客船は航行不可能なようです。
日本でも近年クルーズ需要は高く、「飛鳥」の世界一周クルーズは毎年満席状態だそうです。
ただし船の大きさは2〜3万総トンで、それでも大きなものですが海外の最新豪華客船の
1/5以下のサイズということになります。
船の大きさは大きいほど豪華になりますが、一度に運べる客の数が増えるためにコストは
圧縮され、結果的に日本船のクルーズと、はるかに豪華な外国船のクルーズ費用があまり
変わらないという現象も見受けられます。
多くのお客様からエンジンルーム見学のご要望を頂いていますが、
高度なセキュリティー体勢の実施と安全上の理由からご要望にお答え
できないのを残念に思います。
しかしながらQE2の技術面について大きな関心を寄せられていることを
感謝しており、この概説が一般的なご質問の回答となれば幸いです。
QE2の動力源はディーゼル・エレクトリック※1で、このシステム固有の信頼性と
柔軟性から採用されました。1986/87年に1億ポンドを投じて、
9基の中速MAN L58/64 9気筒ターボチャージド・ディーゼルエンジンが、
老朽化して燃費の悪い蒸気エンジン※2と換装されました。
このディーゼルエンジンは、G.E.C.発電機を動かし、それぞれ10.5MWの
電力を10,000ボルトで発生させます。
それぞれのエンジンはおよそ120トンの重量があります。
さらに、船の運航と変圧器を通してホテルサービスのために供給され、
発電された電力は、プロペラシャフトに接続した二つの主推進モーター
を動かすために用いられます。
それぞれのモーターの最大出力は44MW(59,000 H.P.)で、QE2に32ノット
(36.8 MPH)以上の最高速度をもたらします。
それらは突極型同期構造※3で、
それぞれ直径9m、400トン以上あり、これまでに建造された過去最大の海洋用モーターです。
28.5ノット(32.7 MPH)のサービススピード※4は7基のエンジンだけで
維持することができ、
そのため航海中でもスケジュールに影響を及ぼすことなく基本的かつ定期的な
保守を行うことが出来ます。
このスピードにて、以前と同質の燃料-IF380(C重油)を使用して、
以前の動力機関と比較して35%の燃料を節約しています。
この燃料はエンジンに送り込まれる前に圧力をかけ140度に加熱されます。※5
主機関のほかに、機関室には船に必要なサービスを維持するための補助装置を備えています。
9基のエンジンの排気筒に廃熱回収ボイラーが取り付けられており、スチームを
発生させる2基の石油ボイラーと接続されており、
燃料の加熱、家事用水の加熱、プールの加熱、洗濯機や厨房のために使われます。
ボイラーを冷却したり、掃除や飲料水のために、
海水から淡水を作る4基のフラッシュ・エヴァポレーター(蒸気濃縮製水器)を備えています。
淡水化装置の仕上げとなる逆浸透ユニットは、一日に1,000トンの水を生産することが出来ます。
その水は加熱/冷却する前に処理タンクからサービスタンクに送られ、船内各部に供給されます。
構内TVシステムが、常に機関室のあらゆる場所をモニターしています。
消火システムは機関室の内部に設置されており、
客室スプリンクラー・システム用圧力タンクと常時稼動している消火ポンプが
スプリンクラーと消火栓の水がいつでも確実に使用可能なようにしています。
泡消火器、二酸化炭素、最新のハロン放出システムなど、ほとんど全ての消火システムが
備えられており、これらが、QE2に乗船中のあなたの安全を保証します。
補助システムとして、7つのR134A冷媒※6を使用する空調装置、
186のポンプ、178の換気扇、2セットのスタビライザー、2つのバウスラスター※7
を含みます。何マイルものパイプや電気配線は言うまでもありません。
主空調装置は機関室内にあります。4セットのスタビライザー用のポンプ、バウスラスター、
電気-水圧操舵装置も同様です。
私共は皆様の旅が快適でありますよう尽くしております。また何か質問がございましたら、
遠慮なく私どもスタッフにご質問下さい。
Best Regards,機関長
訳注:
- ※1 ディーゼル・エレクトリック … ディーゼルエンジンで発電し、 電動モーターでスクリューを駆動する船舶エンジンの形式。
- ※2 蒸気エンジン … 機関部改装前のQE2は、重油ボイラーで蒸気を発生させ ギヤード蒸気タービンでスクリューを駆動していた。
- ※3 突極型同期構造 … 船の邦訳では「同位相の消音(silent)柱」と 誤訳しているが、原文は"synchronous salient pole construction"。 シンクロナスモーターの形式名称だが、モーターの論文で見かける程度の学術用語で、 「効率の良い最新式のモーター」程度に思っていれば良い。
- ※4 サービススピード … 定常的に使用する最大速度。QE2の場合28.5knots だが、本気の最大速度は32.5knots
- ※5 … 元の訳は「140度の圧力の下で加熱されると 室温で道路用のタールと同質のものになります」 と意味不明。実際は「C重油は常温では非常に粘度が高いため、燃料として使用する際には 加熱して液状にする必要が有る」ということを説明している。
- ※6 R134A冷媒 … 代替フロンの一種。オゾン層を壊さない。
- ※7 バウスラスター … 船首の水面下に設置した横向きのスクリュー。 接岸時など小回りする必要がある場合に用いる。
F.A.Q.
燃料消費量は?
28.5ノット(32.7MPH)のサービススピードで、燃料消費量は一日380トン。
これは50フィート/ガロンに相当します。
(約3.5m/L)
プロペラとシャフトの直径は?
プロペラは可変ピッチで、それぞれ5枚の羽があります。直径は6mをわずかに超えるくらいです。
2本のプロペラシャフトは長さ80m。強化鋼でできており、直径は590mmあります。
エンジンの大きさは?
油溜めまで含めたそれぞれのエンジンの大きさは、ほぼ二階建てバスくらいの大きさです。
それぞれに直径580mm、ストローク640mmの9つのシリンダーを持ち、4ストロークサイクルで
動いています。
エンジンの動くスピードは?
ディーゼルは400回転/分、推進モーターは144回転/分です。
全ての燃料タンクを一杯にすると、どのくらい航行できますか?
サービススピードで、QE2は12日間航海するのに十分な燃料を搭載しています。
しかし、もっとゆっくり、20ノット(23MPH)の経済的なスピードでは、30日または世界一周の
2/3の航行が可能です。
技術部門では何人の人が働いていますか?
機関士および電気技術の士官は28人です。
また66人以上の技術者がおり、機械技師、配管工、大工、電気技師、空調技術者がいます。
機関室では何名の技師で運用しているのですか?
新しい装置は無人で運用できるように設計されています。しかしながら一名の
シニア・エンジニア・オフィサーと三名の技術スタッフが、4時間勤務8時間休憩
のローテーションでコントロール室に詰めています。
船が港に停泊すると、全てが停止するのですか?
船を乾ドックに入れての長期間の修理の場合に限り、全てが停止します。
港では、照明、空調、厨房機能を動かすために常に一つのエンジンを動かしています。
スタビライザーはどのようにして作動するのですか?
二組のデニー・ブラウン・スタビライザーが、船の横揺れを60%まで減少させます。
スタビライザーはジャイロスコープ(電気駆動で摂動作用を検出する)によって
コントロールされており、水圧ポンプを制御して飛行機の翼のような形状をした
「フィン」の角度を変更します。
水中の翼によって、持ち上げたり沈んだりする動きを生じ、悪天候による影響を
打ち消します。
それぞれの「フィン」は舷側から12feet突き出しており6feetの幅があります。
機関室ではコンピュータが使用されていますか?
広範に使用されています。
パワー・マネージメント・システムは確実に最高の効率を維持するために、
エンジンの停止・始動を自動制御しています。
あらゆる不具合を勤務中のエンジニアに警告する、洗練された
警報&モニタリング・システムも装備しています。
しかし、人間による監視が無くなることはありません。
QE2の大きさは?
全長 293.5m(963feet) 幅 32m(105feet)
ドラフト(水面下の深さ) 9.9m(32feet,7inches) ※1
船体の厚さ 28.5mm(1 1/8inches)
総トン 70,323※2
QE2の航海した距離は?
5,000,000マイル(8,046,720km)以上。
これはQueen MaryとQueen Elizabethの総航海距離を足したより長い距離です。※3
QE2はフルスピードから停船するまでどのくらいかかりますか?
30.5ノット(56.5km/h)で緊急停止するのに 3分38秒かかります。
この間に船は3/4マイル(約1,200m)進みます。
どうして技術仕官は紫に金線の肩章を付けているのですか?
タイタニック号が沈んだ時、全ての技師が船と共に沈みました。時の英国王ジョージ五世が
彼らの死を悼み、その日から船の技術仕官はロイヤル・パープルを身につけるように
法令で定められたのです。
訳注:
- ※1 日本の港の一般的な水深は10m、このためQE2が寄航できる日本の港は限られています
- ※2 最近の大改修(2003年)により100トンほど重くなったようです
- ※3 8,046,720kmは地球を200周以上に相当する。1969年就航〜2005年現在(36年間)なので、 単純平均で毎年地球を5.5周している計算になる。
現在年一回行われている「世界一周クルーズ」は頻繁に寄航を繰り返しながら105日の 日程なので、残りの北大西洋定期往復などで相当スピードを稼いでいると推測される。- 単位
※1mile=1,609.344m
※1knot=1,852m/h
QE2には「貸しフォーマル」もありますが、サイズのバリエーションが無かったり、
コスト的に勿体無いという理由で勧められない…と旅行会社から言われました。
Lidoの朝食は、ラインナップはメインレストランと良く似ていますが、
ビュッフェ形式なので現物を見て選ぶ事ができます。
しかしながら、QE2のLidoのビュッフェは客が自分で取るのではなく、
その場でスタッフに盛り付けてもらう仕掛けです。
しかも、卵料理やパンケーキ、ワッフルなど、その場でオーダーして焼いてもらう
メニューも有ります。…ということは、最低限の英語が出来ないとハードルが高い
システムなのです。
もちろん、指をさして「This one please.」の繰り返しでも事は足りますが、
卵の焼き方までは表現できませんから…、というわけで面倒なので私は
スクランブルエッグばかり取っておりました。
パンもガラスケースの向こうに様々な種類がごっちゃりと積み上げられているため、
指差しだけでは注文しにくかったですね。まあ、ベーグルとクロワッサンくらいは
言えますが。
チーズの種類、ハムの種類等も難しい。こうなると単に「語学」の問題で
はなくて、膨大な選択肢から一食分を組み合わせることについて、
英国風朝食メニューに精通している必要があるような気もします。
野菜に関しては「適当に盛り合わせて下さい」というのを英語でパッと
言えたらどれほど簡単かと思いましたが、出てこないのです(^^;
「Please assort suitably (with your recommendation).」かな
RIOJA LA VICALANDA 1999 RESERVA Bodegas BILBAINAS(楽天で3,000円)
chateauneuf-du-Pape 2001 Chateau Mont-redon(楽天価格不明)
文:唐澤 清彦 | QE2 WorldCruse 2005 ~ Osaka-Taiwan-HongKong 乗船記 - からから亭 |