Jazz at からから亭

勧められて聴いてみる JAZZ CD

 ジャズの参考書籍に掲載されたCDを試聴/買ってみた評価
□未聴/★素晴らしい/●気に入った/▲微妙/×気に入らなかった
※本の推薦要旨
▼私の感想

- 目次 -
ジャズを読む事典(富澤えいち)
挫折し続ける初心者のための最後のジャズ入門(中山康樹/幻冬舎新書)
ジャズCDの名盤(文春新書)

ジャズを読む事典(富澤えいち/生活人新書(NHK出版))

 著者は専門誌「ジャズライフ」のメインライター

挫折し続ける初心者のための最後のジャズ入門(中山康樹/幻冬舎新書)

 著者は、元「スイングジャーナル」の編集長で、これまでも多数の 「ジャズ入門書」さらには「最入門書」を書いている。
 この本のタイトルはなかなか刺激的だが、そういう著者が「最後のジャズ入門書」 として書いたものだ。
 この本の類書に見られない「特異」なところは、全紙幅の半分以上を使って 「初心者は何故ジャズに挫折するか」を論考していることだ。
 結論を言えば、著者は「ジャズを聴くことは闘いだ。浅く広く聴いただけ では意味が無い。好き嫌いのたんなる感情を乗り越えて突き詰めた先にジャズ を聴く意味がある。」と断言している。
 従来の「名曲ガイド」は実はジャズを聴き始めてしばらく経った人向けで 初心者の為にはならないし、「全集ボックス版」や「オムニバス版」では ジャズを理解する役には立たないと主張する。
 つまり、ジャズに取り組む為には最初から「頂点」にぶつかるべきで、 これを繰り返し聴き込む事。
 「入門用」として推薦されるアルバムをいくつも買いこんでも、BGMにしかならない。
 …という著者が後半で「これが分らなかったらジャズを聴くのは止めで他の 楽しみを探したほうが良い」とまで言うアルバムは、私がこれまでに買い込んだ 「銘盤紹介本」とはほとんどかぶっていないのが、とがっていて感動した。
 著者が「最上にして最良のジャズ」として提示するのが、 マイルス・デイヴィス/イン・ア・サイレント・ウェイ
ビル・エヴァンス/ホワッツ・ニュー
の二枚。
 マイルスは「音楽のジャンルや個人的嗜好にかかわらず、知的音楽生活に必要不可欠 な存在が『マイルス・デイヴィス』であり、この『イン・ア・サイレント・ウェイ』 というアルバムであるといっても過言で無い」とまでいう。
 ビル・エヴァンスは前章で「入門用としてお薦めさることの多いCD」の代表として 『ワルツ・フォー・デビー』が紹介されている(私も持っている)。でも、これは 典型的なピアノによるジャズでありながら理解するまでにはかなりの忍耐力を要し、 表面的な美しさで満足して進歩が止まってしまう可能性のあるCDとされている。
 で同じビル・エヴァンスの『ホワッツ・ニュー』は、聴き所がはっきりしていて 親しみ易いと。
 このあとさらに、マイルス5枚、ビル・エヴァンス5枚と紹介は続くが、 「聴きこむごとに新たな発見がある」という価値観で紹介されていて、 好奇心をそそる。
 というわけで、ジャズを聴く動機として「かっこいいBGM用途」では無く、 音楽と向き合って知的な好奇心を満たしたいとい「熱意」のある人にとっては、 この本の主張することは、今まで隠されていた扉を開いてくれそうな、 そんな迫力を帯びている。

ジャズCDの名盤(文春新書)

著者:
・悠 雅彦(1937生まれ。ジャズシンガーとして活動後評論活動)
・福島 哲雄(1943生まれ。EMCレーベルマネージャー、製作部長を歴任)
・稲岡 邦弥(1949生まれ。1972池袋でジャズ・ルーム『渋谷メアリー・ジェーン』を開業)
 ジャズ100年の歴史から100傑を選出し、アーチストの生年ごとに名盤を選出していくという、 まさに辞典的アプローチの一冊。
 つまり「まったくの初心者」には向かない。何年か聞き込んだ初心者が新展開を求めるため開く本。
おしまい

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文:唐澤 清彦 からから亭