映画館がやってきた! |
ワイド液晶なので、入力信号ごとの「アスペクト比」「縦スクロール」なども 設定しないと見られないが、これらは入力ごとにメモリーするものなので、後述する。
1.SQシネスコ(フル/Vシフト)シネスコ画面では、画面に「黒み」が出来る。この黒みは液晶の「黒浮き感」を 増長するので画面の外に追い出したい。そこで、Vスクロールで、画面全体を上端に ずらし、下端は黒布でマスキングする。(下端にずらし上からマスキングでも良い)
2.シネスコ(ズーム/Vシフト)
3.4:3(ノーマル)
4.SQビスタ(フル)
5.ビスタ(ズーム)
6.その他(-)
「字幕入り」モードは「台形補正が無効」なので、うちでは使えない。
そのため、字幕がはみ出す映画はVスクロール+サービスマンモードの微調整。
それでもはみ出すときは仕方ないので多少絵が犠牲に…(^^;;
画面の縁にドット欠けがあるので、なるべくその部分を使わないように、 画面シフトを駆使して逃れる。とにかく、字幕表示エリアにドット掛けがあるのが 一番目立つので、完全に画面外に追い出すか、映像を載せて目立たなくするかどちらか。
●コントラスト/ブライトネス/色の濃さ/D.ピクチャー
次にこの4つを合わせる。この四つは密接に関連している。
基本はCPJ-A300の調整の時と変わらず、
1.ブライトネスで、暗部が潰れないギリギリのポイントにする(例:45-55)という順序で。
2.コントラストで、ハイライトが飛ばない明るさにする。(例:55-90)
3.色の濃さを、階調表現に注意しながら動かす
4.最初に戻って、微調整する
大切なのは、液晶の黒浮きと、入力信号の黒浮きを分けて考えることで、液晶の黒浮きは
何をどういじっても変わらない。光っている部分との輝度差(コントラスト比)によって
相対的に鮮明に見えるというポイントから考えれば、黒は絞るものではなく「明るさを稼ぐ
ことによって相対的に黒浮きを押さえる」という考えをしなければならない。
一方、入力信号が黒浮きしている場合は明るさを絞る(黒を引き込む)必要がある。
これは邦画系のレンタルビデオ、輸入LD等(米国規格のNTSC)で顕著だが、最初から
黒が灰色がかっているソフトは少なくない。
これら、黒のレベルをブライトネスで合わせる。
黒が灰色の入力は、画面の中の一番暗い部分がきちんと全黒になるように落とす。
最初から暗い画面の映画は、暗いシーンが潰れないようにブライトネスを上げる。
どちらにしても、「暗いシーンがきちんと見える範囲でなるべく暗くする」というのが
ポイント。
いくつかのソフトで試したところでは、黒浮きソフトは45,暗いシーンの多いソフトは
55ほど範囲に収まりそう。
黒が決まったらコントラストで、ハイライトを合わせる。
VW10HTは他の多くの液晶プロジェクターと違って、設定値のMIN〜MAXまで、
フルに使うことが出来るのが特徴。明るくすると階調が失われて真っ白になると言うことが
ほとんど無い。明るさをMINにすると(当然)何も見えなくなるが、その一つ手前のステップまで
意味のある画像が出てくれる。
MIN,1〜99,MAXの100段階調節で、デフォルトは80。
大まかに1ステップ10ANSI lm見当だと思っても良いかも(0付近は黒浮きのためにリニア
では無いけれど、概ね。)
暗いプロジェクターでは、「白飛びしない範囲でなるべく明るく」という合わせ方をしたが、
本機はMAXにしてもほとんど白飛びしないので、眩しくない程度に絞る。というアプローチで
良いだろう。
明るくするほどコントラスト比が大きくなるので、鮮やかに見えるが、平均輝度の高い
ソフト(アニメ等)では目が疲れる可能性があるし、どぎつくなるので絞る。このとき
50-65くらいか。
暗いシーンの多い映画では、デフォルトの80より上げてもいい。
80〜90にすると全白のときに「もの凄く明るい」が、従来のプロジェクターでは
べったりと白くなっていたような映像でも、きちんと階調のある白が出ていることが
わかるはず。
たとえば「デスクスタンドの前で書き物をしている人」という画像で、人物の明るさを
同じにしたとき、照明の明かりが直接カメラに入ったときより眩しく感じるのがVW10HTで、
そういうリアリティーのある明るさが得意である。
とにかく、明るさの表現が得意なプロジェクターだから「液晶の黒浮きは、 白を活かすことで押さえる」というアプローチが最重要。そうすれば、 闇夜に忍者 or 宇宙空間に星、というようなシーン以外で黒浮きが気になることはないし 闇夜の忍者にストレスを感じないためには、忍者がしっかり見えるよう、 ブライトネス/コントラストを上げることだ。
色の濃さは、上げすぎると、色が濃い部分のコントラストが低下する。
しかし本機は基本の色の純度が高いので、色を濃くしていっても破綻が少ない。
プロジェクターの色濃度が飽和するより、入力ソースの色ノイズが我慢できなくなる方
が先だろうと思う。
水の色が白っぽくて透明感のない「アビスのDVD」でも、本機で映して色温度『低』に
すると、意外に冷たく透明な青になってくるのが凄い。
もちろん、アルマゲドンの水槽や宇宙空間の青など、他のプロジェクターが苦手な
「青のモノトーン」の冴えた感じは、本機の独壇場だろう。
また、爆発シーンなど「赤〜黄〜白」の輝度の高いグラデーションが、きちんと
出るのも本機の偉いところ。
こういう、厳しい条件のシーンを選んで調節すれば良いと思う。
いずれにしても、もともと鮮明な発色なので50-55程度の数値に落ち着く
と思う。
●色あいを変えたいと思うことはまず無いと思う。
ダビングを重ねてHUEが回ってしまったような絵は、アナログ100%なTVの時代
に見たのが最後だし。
●シャープネスは、45くらいにしている。
もともとビデオ回路の解像度が高いので、シャープネス回路で作らなくても
鮮鋭感は高い。むしろ、入力ソースのノイズで偽の輪郭なんかが出来ることの方が
心配だし、DRC 4倍密によるシャープネス向上を活かせばよい。
●DRC-MF
色々な意味でDRC-MFは注目の機能だが、字幕の細線(1ラインしかないような物)が
不安定になる場合があることをのぞけば、4倍密モードが圧倒的に良い。
ドルビーデジタル・エクスペリエンスなどに収録されたマルチバースト信号で
見ても、プログレッシブモードの時は、画素のピッチとソースの白黒のピッチ
の差からモアレ状の濃淡が出来るが、4倍密モードにすると、白黒の縞模様が
くっきり等間隔に並ぶ。マジック的変貌。
逆に滑らかに変化して欲しい部分、例えば、監督や俳優の名前がクレジットされる
と、ANVWの斜め線の滑らかさ、CGOなどの綺麗な丸みなど、最初から高解像度の
信号だったかのように、滑らかに表現される。
時々宇宙の映像で「星の点が四角くなる」ような画素変換をする機器があるが、
DRCでは、きりっと丸くなる
紙や肌の表面の質感、砂、手の込んだ衣装など、微細なテクスチャをもつ
「面の表現」もDRC 4倍密の得意分野。
苦手は、動く斜め線に発生するジャギーを消す効果はないという部分。
また、ジッターの多いLDの信号などでは、この美点は出てこない。
ざわざわした映像は、残念ながらそのままざわざわして現れる。が、元の信号
以上に悪くしているということはなさそう。
ゲイン | バイアス | 印象 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
R | G | B | R | G | B | ||||
高 | 183 | 109 | 148 | 76 | 62 | 79 | もっともTV的バランスで自然 | ||
低 | 183 | 88 | 88 | 74 | 62 | 76 | 映画の標準モードとして良好な暖色 | ||
カスタム1 | 183 | 189 | 180 | 76 | 62 | 79 | Gの勝った冷たい色彩 | ||
カスタム2 | 223 | 229 | 220 | 76 | 62 | 79 | 1のコントラストを全体的に上げた色 | ||
カスタム3 | 183 | 128 | 128 | 74 | 62 | 76 | 低と高の中間 | ||
カスタム4 | 183 | 68 | 68 | 74 | 62 | 76 | 低よりさらに赤みを強調 |
弐号機(Sno.120xx / ROM 01.02)
ゲイン | バイアス | 印象 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
R | G | B | R | G | B | ||||
高 | 174 | 72 | 116 | 107 | 93 | 118 | もっともTV的バランスで自然 | ||
低 | 174 | 61 | 65 | 109 | 93 | 113 | 映画の標準モードとして良好な暖色 | ||
カスタム1 | 174 | 178 | 174 | 107 | 93 | 118 | Gの勝った冷たい色彩 | ||
カスタム2 | 214 | 218 | 214 | 107 | 93 | 118 | 1のコントラストを全体的に上げた色 | ||
カスタム3 | 174 | 101 | 105 | 109 | 93 | 113 | 低と高の中間 | ||
カスタム4 | 174 | 41 | 45 | 109 | 93 | 113 | 低よりさらに赤みを強調 |
#ffd0c0 | 白人系 |
#ffe8c0 | アジア系 |
+10 | -10 | |||
---|---|---|---|---|
赤 | #ffdcbc | #f0dcbc | #e0dcbc | . . |
緑 | #f0ecbc | #f0dcbc | #f0ccbc | . . |
青 | #f0dccc | #f0dcbc | #f0dcac | . . |
緑・青 | #f0eccc | #f0dcbc | #f0ccac | . . |
肌色は上記でなんとか我慢するとして、緑のもやもやはどんなときに発生しているかを
確認する。
これは、全白信号を入れてVW10HTのコントラストをMINからMAXまで動かして
やると、全黒〜全白までの信号を100段階で入れたのと同じような変化を見ることが
できるので、活用する。
まず全白は、映画の中では照明を直接写したときとか、青空に浮かぶ雲とか、
たまにしか出てこないので、とりあえず白ければあまり問題ない。
問題は全黒からほんの少し明るくなった部分〜肌の明るさくらいまでの領域。
私の機の場合、コントラスト値、1〜10あたりのごく暗い領域で、緑が強かったり、
赤が強かったりのまだら模様が良くわかる。これが、髪の生え際が緑になる原因
だろう。一方周辺でやけに赤が強いのも気になる。画面の周辺部が暗いとき、まだら
っぽくなる原因だ。
結局、映画の場合「中央は明るくて、周辺が暗いことが多い」と割り切り、周辺部の
暗い赤をバイアスで押さえなるべく正しいグレーにし、中央の緑がかりは
ゲインを思い切り落とすことで、防ぐ。
これで、ほとんどの場合標準の色温度「高」に対して暖かく濃厚な発色(肌も、衣装も)
で、暗部のざらつきも適度に押さえた画質で『恋におちたシェイクスピア』を鑑賞できる
ことになった。残った暗い部分の緑がかりの問題は修理だろう。
緑を思い切り押さえたことで、エリザベス女王の孔雀の羽のドレスもひときわ
鮮やかになった。つまり「濃厚な緑」とは暗い緑のことなので、これは正しい。素質として
VW10HTの色の純度が高いから、暗い色が鮮やかに見えるのだろう。
色温度が高い | #d0f0f0 | #d0f000 | #00f000 | #00f0f0 | #d000f0 | #0000f0 | . . |
---|---|---|---|---|---|---|---|
中庸 | #e0e0e0 | #e0e000 | #00e000 | #00e0e0 | #e000e0 | #0000e0 | . . |
色温度が低い | #f0d0d0 | #f0d000 | #00d000 | #00d0d0 | #f000d0 | #0000d0 | . . |
グリーンを沈める | #f0c8d8 | #f0c800 | #00c800 | #00c8d8 | #f000d8 | #0000d8 | . . |
いわゆる液晶色 | #d0f0f0 | #d0f000 | #00f000 | #00f0d0 | #d080d0 | #0080d0 | . . |
一本の映画を通してみながら、色温度を工夫した記録である。
ゲイン | バイアス | 印象 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
R | G | B | R | G | B | ||||
高 | 183 | 109 | 148 | 76 | 62 | 79 | もっともTV的バランスで自然 | ||
低 | 183 | 88 | 88 | 74 | 62 | 76 | 映画の標準モードとして良好な暖色 | ||
恋におちたシェイクスピア | 200 | 76 | 134 | 76 | 56 | 72 | もとが赤いので逆に比較的高い色温度に落ち着いた | ||
RONIN | 221 | 74 | 92 | 88 | 59 | 74 | もとが寒い色なので、逆に低い色温度になった |
ゲイン | バイアス | 印象 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
R | G | B | R | G | B | ||||
カスタム・高 | 183 | 79 | 154 | 82 | 58 | 78 | レ・ミゼ、フィフスなど | ||
カスタム・中 | 183 | 65 | 102 | 84 | 58 | 73 | 恋におちたシェイクスピアなど | ||
カスタム・低 | 183 | 61 | 79 | 88 | 59 | 74 | RONINなど |
ゲイン | バイアス | 印象 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
R | G | B | R | G | B | ||||
カスタム・高 | 174 | 57 | 146 | 96 | 86 | 110 | レ・ミゼ、フィフスなど | ||
カスタム・中 | 174 | 45 | 94 | 104 | 83 | 115 | 恋におちたシェイクスピアなど | ||
カスタム・低 | - | - | - | - | - | - | RONINなど |
弐号機改(Sno.120xx / ROM 01.03)
ゲイン | バイアス | 印象 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
R | G | B | R | G | B | ||||
高 | 193 | 102 | 131 | 116 | 109 | 143 | 緑が強い | ||
低 | 193 | 85 | 71 | 113 | 109 | 133 | 緑が強い | ||
タイタニック | 224 | 98 | 206 | 58 | 67 | 82 | 色温度・高 | ||
-中間- | 221 | 75 | 175 | 58 | 67 | 82 | 色温度・中 | ||
恋におちたシェイクスピア | 218 | 53 | 142 | 58 | 67 | 82 | 色温度・低 | ||
恋におちたシェイクスピア新 | 246 | 55 | 123 | 67 | 72 | 98 | 色温度・低 | ||
エリザベス | 228 | 64 | 124 | 47 | 56 | 89 | エリザベス専用 |
●136時間
タイタニックをネタに上映会を開こうという話が出たのをきっかけにタイタニックが
綺麗に見える設定を追求。
黒レベルを厳密に合わせたら、暗部がスッキリと自然になった。
恋におちたシェイクスピアをタイタニックより低い色温度で再調整。
黒レベルはタイタニックと同じで、暗闇が変に偏った色合いにならないのはどの映画でも
効果的だということが分かる。
●144時間
手持ちのDVDを色々見た結果、
![]() VPL-VW10HTの白表示のスペクトラム |
緑を減衰させるのが目的であるから、補色はマゼンタであり、
ここではフジフィルムのカラーフィルター、
CCM50を使ってみた。
このフィルターは、緑成分を1/2にする。
R | G | B | |
---|---|---|---|
フィルター取り付け前の常用パラメータ | 201 | 67 | 187 |
階調が飛ばないRGBの最大値(やや余裕有り) | 204 | 213 | 214 |
CCM 50 フィルター取り付け | 189 | 192 | 198 |
CCM 20 フィルター取り付け | 201 | 116 | 212 |
効果として一番わかりやすかったのは、『スターウォーズ』のタイトルバックの
星の数が倍に増えた。
『タイタニック』のラベットやジャックの髪の色の階調が豊になった。
『恋におちたシェイクスピア』の土や家具、茶色系統が安定した。
これらの効果は皆、緑の暗部の階調表現が安定、向上した
ことに起因するものと思われる。
全体的な発色については、フィルターの有無で大差は無いが、
暗部階調の表現に着目すれば驚くほどの変化があり、『スターウォーズ』の
星の数の違いにいたっては感動的ですらある。
フィルター使用による副作用は、微妙にマゼンタを感じてしまうことが
あることだが、常にフィルターを使用していれば視覚の恒常性が吸収
してしまう程度の微妙なもので、あまり問題は無い。
黒浮きの中の緑成分も半減するので、僅かながらコントラスト比の
拡大にもなっているように思える。
とはいえ、このCCM50が最適と言うわけでも無さそう。
マゼンタがかかっている事が分からないくらいで、しかも効果がある
フィルタの濃度の最適値を探す必要がある。
私のVPL-VW10HTはめいっぱい調整してあるので、後継機に対して、
いままでも
10.9HTくらいの実力は有ると思っていたが、今回の試みで、
11.2HTくらいまでは行ったのじゃないかという気がする。
さて、パソコンでテストパターンを作って調整したら面白そうだぞと言うことで、
フォトショットでグレースケールのチャートを作成します。
基本は256段階の階調から、上下8段ずつ16段階に分割(16刻み)し、全黒端と
全白端をさらに(8刻みで)分割した20段階のチャートです。
これを読んでいるあなたのディスプレイでは、全ての階調が再現できているで
しょうか?
このくらい細かいテストパターンがあると、ニュートラルな白黒を再現するのが 大変楽に出来ます。黒側でバイアスを調整、白側でゲインを調整、試行錯誤が 少なくて済み、プリセットとは似てもにつかないニュートラルなグレーの再現に 成功しました。
試しに、RGB入力で調整した色温度の数字をコンポーネント入力の時に入力して
みると、RGBモードとはまるで違う色合いになってしまいます。
RGBモードを使用するときは要注意でしょう。
(まだまだ、続くつもり)
文:唐澤 清彦 | 映画館がやってきた! |