映画館がやってきた!

SONY VPL-VW10HTの画質調整を考える

 SONYの液晶プロジェクターVPL-VW10HTをいじってみて解った画質調整、使いこなしに関する 項目をまとめたいと思います。

設置

 設置で最初に行うのは、ズーム、ピント、台形補正でしょう。
 CPJ-A300では画素の粒々を隠すためにピントをずらすというテクニックを使ったが、VW10HTは ピントをずらすと色にじみが発生する(三板だから?)ので、とことんぴったりあわせた方が良い 結果になるように思う。(ちょいずらし、もまた味があるか?)
 視聴位置が2Hくらいだと多少画素感があるが、DVD以外の入力では、ソースに含まれる ノイズ感が露わになってしまうので、いずれにしても最低2Hは離れたほうがよいと思う。
 台形補正は、わが家では約-10度の傾斜でパラメーター的には、-32
 このくらいなら、ピント感の劣化は無いと言っていいと思う。

 ワイド液晶なので、入力信号ごとの「アスペクト比」「縦スクロール」なども 設定しないと見られないが、これらは入力ごとにメモリーするものなので、後述する。

ビデオメモリーの使い方

 ビデオメモリーは、「画質調整」と「信号設定」を保存する。
 ビデオメモリーは6個だが、OFFの時は、入力端子ごとの設定が生きるので、 実質的にもっとメモリーがあることになる。
 「画質設定」は厳密に言えば「作品ごとに最適値は別」なので、毎回手で合わせる という考え方と、洋画/邦画/アニメ/TV放送、とジャンルごとに画質の雛形を作成して おくという考えがあるだろう。
 ここでは、ひとまずアスペクト比の切り替えをメモリーで行い、画質は手で 合わせる方法を試したい。具体的には下記の通り。
1.SQシネスコ(フル/Vシフト)
2.シネスコ(ズーム/Vシフト)
3.4:3(ノーマル)
4.SQビスタ(フル)
5.ビスタ(ズーム)
6.その他(-)
 シネスコ画面では、画面に「黒み」が出来る。この黒みは液晶の「黒浮き感」を 増長するので画面の外に追い出したい。そこで、Vスクロールで、画面全体を上端に ずらし、下端は黒布でマスキングする。(下端にずらし上からマスキングでも良い)
 フル・モードではVシフトが効かないので、サービスモードに移行しそこで 現れるメニューから調整をする。(値リセット有効)
(サービスモードへの移行/復帰は、[ENTER][ENTER][↑][↓][ENTER] )

 「字幕入り」モードは「台形補正が無効」なので、うちでは使えない。
 そのため、字幕がはみ出す映画はVスクロール+サービスマンモードの微調整。 それでもはみ出すときは仕方ないので多少絵が犠牲に…(^^;;

 画面の縁にドット欠けがあるので、なるべくその部分を使わないように、 画面シフトを駆使して逃れる。とにかく、字幕表示エリアにドット掛けがあるのが 一番目立つので、完全に画面外に追い出すか、映像を載せて目立たなくするかどちらか。

画質調整

■メニュー項目一覧

 メニュー項目は「ビデオ/s端子」「コンポーネント/15k RGB」 「倍速コンポーネント/ハイビジョン/DTV」「白黒信号」など、入力によって変化するので、 ここでは、ビデオ/S/コンポーネントに話を限る。

■設定方法

色温度は、RGB各色のゲイン/バイアスの設定である。  従って「コントラスト、ブライトネス、色合い」と密接に関係するから、まずこれを 決めなければならない。
 切り替えると面白いほど雰囲気が変わる。
 高(テレビ的)/低(フィルム的)の他に、カスタム1,2,3,4があり、中では カスタム4が一番人肌的だが癖があるとも言える。長く見ていると目は慣れるので ひとまず『低(フィルム的)』固定で考えて良いかも。
 色温度のカスタマイズは「サービスモード」で可能なので、 今後じっくり追求していきたい。

コントラスト/ブライトネス/色の濃さ/D.ピクチャー
 次にこの4つを合わせる。この四つは密接に関連している。
 基本はCPJ-A300の調整の時と変わらず、

1.ブライトネスで、暗部が潰れないギリギリのポイントにする(例:45-55)
2.コントラストで、ハイライトが飛ばない明るさにする。(例:55-90)
3.色の濃さを、階調表現に注意しながら動かす
4.最初に戻って、微調整する
 という順序で。
 ダイナミック・ピクチャーは使いどころが難しくて、映画で使うと黒潰れしやすい ので、うんと黒浮きしてブヨブヨした入力か、明るい一方のTVの時だけに使うのがよいのでは ないか。

 大切なのは、液晶の黒浮きと、入力信号の黒浮きを分けて考えることで、液晶の黒浮きは 何をどういじっても変わらない。光っている部分との輝度差(コントラスト比)によって 相対的に鮮明に見えるというポイントから考えれば、黒は絞るものではなく「明るさを稼ぐ ことによって相対的に黒浮きを押さえる」という考えをしなければならない。
 一方、入力信号が黒浮きしている場合は明るさを絞る(黒を引き込む)必要がある。
 これは邦画系のレンタルビデオ、輸入LD等(米国規格のNTSC)で顕著だが、最初から 黒が灰色がかっているソフトは少なくない。
 これら、黒のレベルをブライトネスで合わせる。
 黒が灰色の入力は、画面の中の一番暗い部分がきちんと全黒になるように落とす。
 最初から暗い画面の映画は、暗いシーンが潰れないようにブライトネスを上げる。
 どちらにしても、「暗いシーンがきちんと見える範囲でなるべく暗くする」というのが ポイント。
 いくつかのソフトで試したところでは、黒浮きソフトは45,暗いシーンの多いソフトは 55ほど範囲に収まりそう。

 黒が決まったらコントラストで、ハイライトを合わせる。
 VW10HTは他の多くの液晶プロジェクターと違って、設定値のMIN〜MAXまで、 フルに使うことが出来るのが特徴。明るくすると階調が失われて真っ白になると言うことが ほとんど無い。明るさをMINにすると(当然)何も見えなくなるが、その一つ手前のステップまで 意味のある画像が出てくれる。
 MIN,1〜99,MAXの100段階調節で、デフォルトは80。
 大まかに1ステップ10ANSI lm見当だと思っても良いかも(0付近は黒浮きのためにリニア では無いけれど、概ね。)
 暗いプロジェクターでは、「白飛びしない範囲でなるべく明るく」という合わせ方をしたが、 本機はMAXにしてもほとんど白飛びしないので、眩しくない程度に絞る。というアプローチで 良いだろう。
 明るくするほどコントラスト比が大きくなるので、鮮やかに見えるが、平均輝度の高い ソフト(アニメ等)では目が疲れる可能性があるし、どぎつくなるので絞る。このとき 50-65くらいか。
 暗いシーンの多い映画では、デフォルトの80より上げてもいい。
 80〜90にすると全白のときに「もの凄く明るい」が、従来のプロジェクターでは べったりと白くなっていたような映像でも、きちんと階調のある白が出ていることが わかるはず。
 たとえば「デスクスタンドの前で書き物をしている人」という画像で、人物の明るさを 同じにしたとき、照明の明かりが直接カメラに入ったときより眩しく感じるのがVW10HTで、 そういうリアリティーのある明るさが得意である。

 とにかく、明るさの表現が得意なプロジェクターだから「液晶の黒浮きは、 白を活かすことで押さえる」というアプローチが最重要。そうすれば、 闇夜に忍者 or 宇宙空間に星、というようなシーン以外で黒浮きが気になることはないし 闇夜の忍者にストレスを感じないためには、忍者がしっかり見えるよう、 ブライトネス/コントラストを上げることだ。

 色の濃さは、上げすぎると、色が濃い部分のコントラストが低下する。
 しかし本機は基本の色の純度が高いので、色を濃くしていっても破綻が少ない。 プロジェクターの色濃度が飽和するより、入力ソースの色ノイズが我慢できなくなる方 が先だろうと思う。
 水の色が白っぽくて透明感のない「アビスのDVD」でも、本機で映して色温度『低』に すると、意外に冷たく透明な青になってくるのが凄い。
 もちろん、アルマゲドンの水槽や宇宙空間の青など、他のプロジェクターが苦手な 「青のモノトーン」の冴えた感じは、本機の独壇場だろう。
 また、爆発シーンなど「赤〜黄〜白」の輝度の高いグラデーションが、きちんと 出るのも本機の偉いところ。
 こういう、厳しい条件のシーンを選んで調節すれば良いと思う。
 いずれにしても、もともと鮮明な発色なので50-55程度の数値に落ち着く と思う。

色あいを変えたいと思うことはまず無いと思う。
 ダビングを重ねてHUEが回ってしまったような絵は、アナログ100%なTVの時代 に見たのが最後だし。

シャープネスは、45くらいにしている。
 もともとビデオ回路の解像度が高いので、シャープネス回路で作らなくても 鮮鋭感は高い。むしろ、入力ソースのノイズで偽の輪郭なんかが出来ることの方が 心配だし、DRC 4倍密によるシャープネス向上を活かせばよい。

DRC-MF
 色々な意味でDRC-MFは注目の機能だが、字幕の細線(1ラインしかないような物)が 不安定になる場合があることをのぞけば、4倍密モードが圧倒的に良い。
 ドルビーデジタル・エクスペリエンスなどに収録されたマルチバースト信号で 見ても、プログレッシブモードの時は、画素のピッチとソースの白黒のピッチ の差からモアレ状の濃淡が出来るが、4倍密モードにすると、白黒の縞模様が くっきり等間隔に並ぶ。マジック的変貌。
 逆に滑らかに変化して欲しい部分、例えば、監督や俳優の名前がクレジットされる と、ANVWの斜め線の滑らかさ、CGOなどの綺麗な丸みなど、最初から高解像度の 信号だったかのように、滑らかに表現される。
 時々宇宙の映像で「星の点が四角くなる」ような画素変換をする機器があるが、 DRCでは、きりっと丸くなる
 紙や肌の表面の質感、砂、手の込んだ衣装など、微細なテクスチャをもつ 「面の表現」もDRC 4倍密の得意分野。

 苦手は、動く斜め線に発生するジャギーを消す効果はないという部分。
 また、ジッターの多いLDの信号などでは、この美点は出てこない。
 ざわざわした映像は、残念ながらそのままざわざわして現れる。が、元の信号 以上に悪くしているということはなさそう。

スクリーンとの相性

 現在『OS ウルトラビーズ(90インチ4:3)』を使用しているが、極めて普通(^^;
 プロジェクターの光軸を外れると、直線が歪んで見えるくらい波打っているが、 輝度ムラ、ホットスポットは無いし、格別眩しいということもない。
 恐らく黒浮きの絶対値は、ホワイトより大きいと思うが、全白が入力されたときの 室内の明るさを考えると、ホワイトにしたときの迷光によるダメージは計り知れない。
 やはり、リビングに導入するなら目の細かいビーズがベストだろう。

色温度の研究

■色温度デフォルト値

 色温度のデフォルトは、機体ごとに個体差があるとのことなので、ここに示す値は 参考と考えて欲しい。各設定の相対的な差を見て欲しい。
初号機(Sno.10xxx / ROM 01.01)
ゲインバイアス印象
RGBRGB
183109148766279もっともTV的バランスで自然
1838888746276映画の標準モードとして良好な暖色
カスタム1183189180766279Gの勝った冷たい色彩
カスタム22232292207662791のコントラストを全体的に上げた色
カスタム3183128128746276低と高の中間
カスタム41836868746276低よりさらに赤みを強調

弐号機(Sno.120xx / ROM 01.02)
ゲインバイアス印象
RGBRGB
1747211610793118もっともTV的バランスで自然
174616510993113映画の標準モードとして良好な暖色
カスタム117417817410793118Gの勝った冷たい色彩
カスタム2214218214107931181のコントラストを全体的に上げた色
カスタム317410110510993113低と高の中間
カスタム4174414510993113低よりさらに赤みを強調

 ゲイン/バイアスとも、設定範囲は0〜255
 デフォルト値を見ると、全ての設定は一から調整したわけではなく、色温度「高」の設定から 機械的に派生させたように見える。ということは、ユーザーによる調整の余地は有るということだろう。
 ゲインは、明部の色バランスを決める。
 バイアスは、暗部のバランスを決める。
 中間階調はゲインとバイアスの綱引きのようなものだ。それが理解できていれば、何をすれば 良いかはつかめると思う。

具体的な調整手順

■基準値と肌色の秘密

 調整の際、この値は変更しないという基準があった方が泥沼に落ちないで済むと思う。
 色温度のメモリーを良く見ると、赤のゲイン=183、緑のバイアス=62はほぼ各メモリー 共通なので、これは動かさずに基準とする。
 人間がもっとも敏感に反応する色はおそらく『肌色』だし、好みが現れるところでもある。
 人種にも寄るが、肌色は、ほとんど白の灰色に血の赤をさしたようなものだ。だから、 RGBの値で表現したら
#ffd0c0 白人系
#ffe8c0 アジア系
 という具合に、基本的にかなり明るい色で、ゲインで調整すればいいことが解る。
 そして、RGBの各値を変化させていくとどうなるかを見ると、下記の通りである。
+10-10
#ffdcbc #f0dcbc #e0dcbc .
.
#f0ecbc #f0dcbc #f0ccbc .
.
#f0dccc #f0dcbc #f0dcac .
.
緑・青 #f0eccc #f0dcbc #f0ccac .
.

 この表からは、赤をへらしすぎたり、緑が過剰だったりすると簡単に不健康な肌色に なることが想像できる。
 青が与える影響は少なく、健康的な肌色は、赤と緑のバランスにあると言えそうだ。
 緑・青の両方を強めたパターンは、いわゆる色温度が高い状態を再現。肌色が薄く、 物足りない感じがするだろう。

■緑のモヤから逃れる

 現時点(2000年1月)では、緑のバランスの崩れが沢山の人から指摘されており、私の機体でも この問題はある。従って現時点での目的は「少しでもこの影響を避け、美しい肌色を作る」という あたりにある。
 現象は具体的には「肌の陰影や、髪の毛の生え際など暗い肌色が緑になる」というもので、 女性の肌ならまだ良いが、夕方の男性の肌なんてのは植物人間的様相を帯びかねない。
 この対策は、ほとんど単純に緑のゲインを落としていくことに尽きる。
 緑のゲインは高=109,低=88だが、より大胆に62程度まで落としても、例えば草の葉が 暗くなると言う感じはあまりしないので、その辺でまとめる。同時に肌が紫にならない 程度に青のゲインも少し下げる。

 肌色は上記でなんとか我慢するとして、緑のもやもやはどんなときに発生しているかを 確認する。
 これは、全白信号を入れてVW10HTのコントラストをMINからMAXまで動かして やると、全黒〜全白までの信号を100段階で入れたのと同じような変化を見ることが できるので、活用する。
 まず全白は、映画の中では照明を直接写したときとか、青空に浮かぶ雲とか、 たまにしか出てこないので、とりあえず白ければあまり問題ない。
 問題は全黒からほんの少し明るくなった部分〜肌の明るさくらいまでの領域。
 私の機の場合、コントラスト値、1〜10あたりのごく暗い領域で、緑が強かったり、 赤が強かったりのまだら模様が良くわかる。これが、髪の生え際が緑になる原因 だろう。一方周辺でやけに赤が強いのも気になる。画面の周辺部が暗いとき、まだら っぽくなる原因だ。
 結局、映画の場合「中央は明るくて、周辺が暗いことが多い」と割り切り、周辺部の 暗い赤をバイアスで押さえなるべく正しいグレーにし、中央の緑がかりは ゲインを思い切り落とすことで、防ぐ。
 これで、ほとんどの場合標準の色温度「高」に対して暖かく濃厚な発色(肌も、衣装も) で、暗部のざらつきも適度に押さえた画質で『恋におちたシェイクスピア』を鑑賞できる ことになった。残った暗い部分の緑がかりの問題は修理だろう。
 緑を思い切り押さえたことで、エリザベス女王の孔雀の羽のドレスもひときわ 鮮やかになった。つまり「濃厚な緑」とは暗い緑のことなので、これは正しい。素質として VW10HTの色の純度が高いから、暗い色が鮮やかに見えるのだろう。

■色温度と色乗り

 さて、色温度を低くすると濃度を上げなくてもコクのある色になるという現象を シミュレートしてみた。

色温度が高い #d0f0f0 #d0f000 #00f000 #00f0f0 #d000f0 #0000f0 .
.
中庸 #e0e0e0 #e0e000 #00e000 #00e0e0 #e000e0 #0000e0 .
.
色温度が低い #f0d0d0 #f0d000 #00d000 #00d0d0 #f000d0 #0000d0 .
.
グリーンを沈める #f0c8d8 #f0c800 #00c800 #00c8d8 #f000d8 #0000d8 .
.
いわゆる液晶色 #d0f0f0 #d0f000 #00f000 #00f0d0 #d080d0 #0080d0 .
.

 これを見ると、液晶プロジェクターで一般的な「濃い黄色が出ない」という現象が、 色温度が高いためだということがわかる。
 色温度を下げるともっとも色の薄い黄色がこってりとするために、全体に濃密な感じが増す。
 意図的にグリーンを沈めた場合、緑と水色が深くなる。「風光明媚な風景」にはお薦めの設定。
 (もちろん、白の偏りが不自然でない範囲で作るわけです)

 いわゆる液晶色とは、暗い液晶プロジェクターで青の輝度を稼ぐために純青が水色系に 傾いている機種の色合いを再現してみた。青を表現するときに緑の成分も出ているため、 色温度を下げることが困難である。

映画ごとの設定

 色温度のデフォルトは、機体ごとに個体差があるとので、ここに示す値は 参考と考えて欲しい。各設定の相対的な差を見て欲しい。

 一本の映画を通してみながら、色温度を工夫した記録である。
ゲインバイアス印象
RGBRGB
183109148766279もっともTV的バランスで自然
1838888746276映画の標準モードとして良好な暖色
恋におちたシェイクスピア20076134765672もとが赤いので逆に比較的高い色温度に落ち着いた
RONIN2217492885974もとが寒い色なので、逆に低い色温度になった

 さらに、色温度が高く暗いシーンばかりの「レ・ミゼラブル」でこういう映画に合う 色温度設定を作る。
 明るくコントラストの強いDVDの代表として「フィフス・エレメント」を試すと、 レ・ミゼと同じ設定が色は合うが、赤のゲインが200を越えていると、明るいところの色が 飛ぶことを確認。画質調整画面で「コントラスト/ブライトネス」を調整すれば飛ばさないことも 可能なようだが、色温度を切り替えると画面の明るさが大きく変わるのは不便なので、 電卓を叩いて正規化する。(ゲインは赤183程度、バイアスは緑58を基準に揃えた)
 こうして、カスタム・メモリーに自作の色温度高・中・低の三パターンをメモリーした。
 以下にその値を示す

ゲインバイアス印象
RGBRGB
カスタム・高18379154825878レ・ミゼ、フィフスなど
カスタム・中18365102845873恋におちたシェイクスピアなど
カスタム・低1836179885974RONINなど

 別々に調整した色温度だが、正規化してみるとバイアスの値はほとんど同じ数値になった。 これは、全黒が正しい黒になるように調整すると、ほとんど同じ結果になるためだと思われるが、 その中の微妙な違いに設定のコツが現れているような気がする。

映画ごとの設定(弐号機)

 弐号機は、交換なったその日の晩にお客様に披露する予定だったので、初号機で作った設定を、 色温度・高の数値に合わせた比率でかけ算して、カラーバランスを作ってみました。  概ね目論み通りの色になりましたが、完全に計算通りには行かないようです。
ゲインバイアス印象
RGBRGB
カスタム・高174571469686110レ・ミゼ、フィフスなど
カスタム・中174459410483115恋におちたシェイクスピアなど
カスタム・低------RONINなど
 

映画ごとの設定(弐号機・改)

 弐号機を修理して、光学系全とっかえになってしまいました。
 特別な問題は無くなりましたが、プリセットの色温度が「異常に緑」です。


弐号機改(Sno.120xx / ROM 01.03)
ゲインバイアス印象
RGBRGB
193102131116109143緑が強い
1938571113109133緑が強い
タイタニック22498206586782色温度・高
-中間-22175175586782色温度・中
恋におちたシェイクスピア21853142586782色温度・低
恋におちたシェイクスピア新24655123677298色温度・低
エリザベス22864124475689エリザベス専用

 恋におちたシェイクスピアで調整。
 バイアスの値がプリセットと猛烈にかけ離れているのは、現在のロットで プリセットのままで見ている人はどう思うか心配なほど緑にくすんだ色だということの数値的 証拠です。
 エリザベスは、通常の設定だと黒浮きがしてぼけぼした絵なので、さらにバイアスを落とし、 緑っぽさを無くすために色温度を下げる。
 結局作品的に汚した絵が多いようなので、コントラスト感がなく汚いのは仕方ないのだが それでもかなりマシに見えることが出来た。
 まだまだ厳密な調整が必要だが、100時間時点での成果。

●136時間
 タイタニックをネタに上映会を開こうという話が出たのをきっかけにタイタニックが 綺麗に見える設定を追求。
 黒レベルを厳密に合わせたら、暗部がスッキリと自然になった。
 恋におちたシェイクスピアをタイタニックより低い色温度で再調整。
 黒レベルはタイタニックと同じで、暗闇が変に偏った色合いにならないのはどの映画でも 効果的だということが分かる。

  ●144時間
 手持ちのDVDを色々見た結果、

 ということになった。これらについて念入りに調整し、平均を取った数値を「色温度・中」として、 メモリーのカスタム1・2・3を作成。
 かなり多くの作品が、この三つのどれかで満足のいく画像を見せてくれるようになりました。  

カラー・フィルターを使用した調整

[2003.2.25]
 前項は、2000年5月に書いた内容で、ほぼ3年経過後の新章追加。
 ここまでに書いた調整で、カラーバランスはデフォルトとは比較にならない くらい良好で、後継機VPL-VW11HTに迫る画質を得ていたが、 2003.2.19発表の 新デバイスSXRDの発表によって、「買い換える前に、もう一工夫してみよう」 と意欲がわいて、カラーフィルターを用いた調整に取り組んでみた。
 現行最新機種VPL-VW12HTはオプションでマゼンタの色フィルターを 装着することが出来る。それを10HTでもやってみる。

■原理

 からから亭の記事、プロジェクターの分光特性 を見てもわかるとおり、プロジェクターの光源は、緑に大きなエネルギーがある。

VPL-VW10HTの白表示のスペクトラム
 そのため、明るさを重視するならば、全体の色合いは緑に偏る。
 この項までの調整では、ゲイン調整で緑を大胆に絞り込むことで 自然な色の再現を実現した。
 一方で、全白を表現するために緑の液晶を閉じているということは、 階調表現を犠牲にしているということになる。
 例えば、256階調の表現が可能なところを、半分閉めたら、128階調 しか無くなってしまう。
 液晶パネルが持つ階調表現を最大限に引き出すためには、RGB三枚の パネルが100%開いているときに、純白になっているのが望ましい。
 そのために、色フィルターによる、光学的な補正を施す。

 緑を減衰させるのが目的であるから、補色はマゼンタであり、 ここではフジフィルムのカラーフィルター、 CCM50を使ってみた。
 このフィルターは、緑成分を1/2にする。

■調整値と効果

 調整の手順は次の通り。
  1. フィルターを取り付け、サービスモードに入る
  2. 明るさ、コントラストの値はデフォルトに戻しておく
  3. ゲイン調整画面に入る
  4. THXテスト・パターン(スターウォーズDVDに収録のもの)を利用して、 白側の階調が飛ばない限界点を出す。
    (このとき、いったんRGBのゲインをすべて0にして、各色単独で数値を 上げていくと簡単に階調を失うポイントがわかる)
  5. 階調を失わないRGBの最大値で純白になっているなら、完璧。
     緑が強いようならさらに濃いマゼンタのフィルターが必要だし、 ピンクがかって見えるならば、薄いフィルターに交換。
     私の10HTでは、CCM50の 濃度でほとんど綺麗な白になった。
  6. RGBのバイアス値を操作することで、色合いの微調整をする。
    (すでに明るさの最大値を出しているので、マイナス方向で補正する)
 上記の手順で実際に設定したパラメータは下記の通り。(数値は 個々の製品によってバラツキがあるので注意)
RGB
フィルター取り付け前の常用パラメータ20167187
階調が飛ばないRGBの最大値(やや余裕有り)204213214
CCM 50 フィルター取り付け189192198
CCM 20 フィルター取り付け201116212

 この調整値は、色温度は高めである。
 最大値からわずかの変更で最適値になっているため、フィルターの 濃度は適切といえる。

 効果として一番わかりやすかったのは、『スターウォーズ』のタイトルバックの 星の数が倍に増えた。
 『タイタニック』のラベットやジャックの髪の色の階調が豊になった。
 『恋におちたシェイクスピア』の土や家具、茶色系統が安定した。

 これらの効果は皆、緑の暗部の階調表現が安定、向上した ことに起因するものと思われる。
 全体的な発色については、フィルターの有無で大差は無いが、 暗部階調の表現に着目すれば驚くほどの変化があり、『スターウォーズ』の 星の数の違いにいたっては感動的ですらある。

 フィルター使用による副作用は、微妙にマゼンタを感じてしまうことが あることだが、常にフィルターを使用していれば視覚の恒常性が吸収 してしまう程度の微妙なもので、あまり問題は無い。
 黒浮きの中の緑成分も半減するので、僅かながらコントラスト比の 拡大にもなっているように思える。
 とはいえ、このCCM50が最適と言うわけでも無さそう。
 マゼンタがかかっている事が分からないくらいで、しかも効果がある フィルタの濃度の最適値を探す必要がある。

 私のVPL-VW10HTはめいっぱい調整してあるので、後継機に対して、 いままでも 10.9HTくらいの実力は有ると思っていたが、今回の試みで、 11.2HTくらいまでは行ったのじゃないかという気がする。

RGBモードの色温度

 Dsub-15ピン - BNCx5 のケーブルとBNC-RCA変換プラグを購入し、ノートパソコンと 接続してみました。 (白・黒のケーブルをプロジェクターの端子の白・黒を入れ替えて接続することが必要)
 これもビデオ入力時と同じように緑の強いプリセットになっているのですが、デジカメ で撮った写真をスライドショーしてみると大画面の素晴らしさ。去年の夏休みの写真が もの凄く楽しく思い出が新たになってしまいます。

 さて、パソコンでテストパターンを作って調整したら面白そうだぞと言うことで、 フォトショットでグレースケールのチャートを作成します。

 基本は256段階の階調から、上下8段ずつ16段階に分割(16刻み)し、全黒端と 全白端をさらに(8刻みで)分割した20段階のチャートです。
 これを読んでいるあなたのディスプレイでは、全ての階調が再現できているで しょうか?

 このくらい細かいテストパターンがあると、ニュートラルな白黒を再現するのが 大変楽に出来ます。黒側でバイアスを調整、白側でゲインを調整、試行錯誤が 少なくて済み、プリセットとは似てもにつかないニュートラルなグレーの再現に 成功しました。

■RGBとコンポーネント入力の関係

 RGB入力で調整した色温度で映画を見たらどうなるかな? とINPUTを切り替えて みたらびっくり! 値が変わっていない。
 調べてみると、色温度のメモリーはどのモードでも「高・低・カスタム1,2,3,4」 の6種類見えますが、RGBは独立したメモリーになっているようです。

 試しに、RGB入力で調整した色温度の数字をコンポーネント入力の時に入力して みると、RGBモードとはまるで違う色合いになってしまいます。
 RGBモードを使用するときは要注意でしょう。

(まだまだ、続くつもり)


それでも難しそうだな〜というあなたに…。[あなたのVW10HTを出張調整いたします]

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文:唐澤 清彦 映画館がやってきた!