映画館がやってきた! |
TV(SONY) 光源が大きいので広がっていますが、肉眼では写真よりもう少し RGBの三原色が強いのがはっきり。まさに画面を虫眼鏡で 観察したときに見える三色そのものが並びました。 | |
UHP(VPL-VW10HT) 水銀ランプ系は、緑の輝線が特徴的です。青が水色に近いTVと比べて 青紫の比重が大きいので非常にコクのある青になります。 | |
蛍光灯 「七色発光型」の売り文句の通りに綺麗に輝線が並びました。 | |
液晶 ノートPCの画面。「三色発光型」の蛍光灯をバックライトに使用して いるようですが、青は相対的に弱いようです。 | |
電球 ちょっと電圧の下がったハロゲン灯。なだらかに続くスペクトラムで 赤のパワーが強力なのがよく分かります。 |
(紫はスペクトラムの上には出ないが、赤と青を同時に見るとき 人間の目は紫と感じる。)
赤に関しては、電球(ハロゲンランプ)の赤は赤外線までず〜っ 伸びている。明らかにUHPの赤は弱いが、蛍光灯よりはマシという ことか。これは水銀灯系の共通の弱点。
蛍光灯は多色発光して面白いが、プロジェクターとは事情が異なる。
蛍光灯が色々な色を持つのは、たとえば狭い範囲の波長しか反射しない
物を見たとき、輝線の波長から外れていると暗く見えるからだ。自然に
見えるためには、なるべく連続的なスペクトルを持つ波長で照らす必要が
ある。
TV(白) | |
| TV(R,G,B) |
VW10HT(白) | |
| VW10HT(R,G,B) |
映画に使用される光源は「キセノン・ランプ」で、これは昼光色に近く
理想的な光源とされるが、家庭用としては発光効率が低いこと、高温高圧で
使用するため割れやすく取り扱いが難しいことから、一般用のプロジェクター
には使用されない。
「メタルハライド・ランプ」もなだらかな分光特性を持つが発光効率が
低いためやはり一般用には使用されないが、最大出力は大きく取れるので
そちらの用途で使用される。
近年主流となったUHPランプは「超高圧水銀灯」で、低圧水銀灯が
鋭い輝線スペクトルを持っているのに対して、200気圧以上で点灯すること
によってなだらかな分光特性を実現したものである。
ここで使用したVPL-VW10HT用のランプがこれである。
RGB単独でスペクトラムを取ったときの分布を、TVの蛍光体と比較する。
"R"...水銀灯のもともとの特性から、赤は弱い。
スペクトラム上の
波長自体は、綺麗なルビー色にまで伸びているが、赤全体のバランスの上で
はオレンジが優勢なので、そこまでの赤は出ない。赤に関しては、ほとんど
TVと同じでわずかにプロジェクタの方がルビー寄りという感じになる。
"G"...黄緑と黄色に輝線があるために、どうしても「ダークグリーン」
は表現しにくく、緑は黄緑がかってしまう。
TVの方が少しだけダークグリーン
に近い。深い緑は青を混ぜることで作るか、単に暗めにすることで
相対的に作ることになりそうだが、そのために「気品のある緑」というのは
このランプでは本質的に難しい色になるようだ。
"B"...青はTVの蛍光体よりぐっと波長が短い青紫が強力に出る。
人間の目が感じられる青の限度いっぱいに近い波長が出ているようで、
そのためとても綺麗な青が表現できる。
それに比べるとTVの青は少し水色っぽいので、ハリウッド映画の
ナイトシーンなどでは全然違う色調になる。
以上のようにRGBの原色に近い領域では、どうやってもTV的な色に
ならない部分は有る。
中間色はRGBのバランスで決まるので、原色よりコントロールが
効く。
従って、三原色に近い色を変更しようといじりすぎると、出口のない
迷路にはまる可能性が高いので、三原色の不一致にはこだわりすぎず中間色の
バランスを重視して調整していくのが合理的な調整法だと言える。
もう一つの可能性として、TVとプロジェクターの一番目立つ差は
黄色の輝線なので、黄色だけ通さないフィルターを使用すると、
緑の色再現性が向上するのではないかということだ。
文:唐澤 清彦 | 映画館がやってきた! |