映画館がやってきた! |
手持ちの機材の写真を撮って、PhotoShopで空っぽの部屋の写真に張り込んでみる。 …こんな部屋になる予定。 |
旧からから亭は、床はコンクリートに絨毯張り。天井は最上階なので
断熱材加工あり。広さは10畳強、といったところで、何も物が無い状態
でも床が吸音するような部屋だった。
1.変形部屋なので、ちょっと音像が左に抜ける。
分かっていたことであるが、スクリーン面積確保のため音響は多少犠牲にするのだ。
具体的には窓(スクリーン&スピーカー)に向かって左がキッチン&ダイニングコーナーなので、壁は無いも同然。右だけから反射がある。
高音に関しては、右の壁を吸音して、左に何か反射する物を置くとバランスが修正されていくのではないかと思う。完全には無理だろうが、センタースピーカーも置くし、リアも稼働させれば欠点は埋もれていくだろう。
2.エアボリュームが増したので、残響時間が長く低音が出る。
残響のためか、音圧も出る。
天井は15cmコンクリートスラブ。床はフローリング。一面窓、左右は高密度石膏ボートの二重張りという条件で、以前の部屋より全体、特に垂直方向の剛性が上がったことが、影響している。
エアボリュームは、1.5倍以上はあるはず。
一面がすべてカーテンで、床には2M四角の敷物。これでフラッターエコーは撲滅しているし、残響時間もだいぶ減ってはいるが、その分、低音の制動が効かない感じ。
敷物をもっと厚手の絨毯にしてフローリングの共振を押さえ込めば低音も程良く損失してくれるのではないかと思うが、どうだろうか。あとは、ソファを入れるとかスピーカーの足下の強化か。
…それにしても、フローリングのマンションがこんなに響いて色々難しいとは…いじりがいが有るとも思うが、大変。
小さな安アパートに住んでいた頃は、音量が小さいことは勿論低音なんか全然出なかったが、カーペット敷きの洋室、フローリングの更に大きな部屋と、部屋が変わるごとにバランスは大きく変わって、それを押さえるのはパズルのようだ。難しい。
というわけで、ここからは上記のまとめ1.2.を対策しようという話です。
次に黒。
これは「黒レベル確認パターン」を使う。
まず、プロジェクターの「明るさ」を目一杯上げ、プレイヤーからの信号が
黒つぶれしていないことを確認する。プレイヤーや、ビスコムなどの中間に挟む
機器によっては、最暗部の信号が無くなってしまっている事もあるので、要注意
なのだ。黒が出ていなければ、送り出し機器のレベルを持ち上げる。
それからプロジェクターの「明るさ」をデフォルトの50に戻し、色温度の
バイアスを調整する。
バイアスは、ゲインのときと同じように、R,G,B単独でそれぞれ見えるかどうか
ギリギリの値を探り、最後に三色そろえると完全な黒にごく近い値になる
ので、そこから微調整する。順番としては「緑」が人間の目の感度が高い
ので緑を基準にし、赤、青の順が良い。
黒をいじったらもう一度「白の確認」をする。
(だから、黒レベル→白レベルの順に調整する方が正解)
「明るさ」を50より上げると「彩度が低下する(白っぽくなる)」ので、
テクニックとして50の時、THX推奨値よりわずかに明るくなるようにバイアス
をセットし、実際には「明るさ」を47くらいにして使うのが良い。
そうすると「少しだけ暗部がつぶれている」というソフトを鑑賞するとき、
彩度を犠牲にせずに明るくする調整が効く。
「コントラスト」は、80の状態で限界まで明るくなるようにゲインを設定
しているので、プラスすると白が飛ぶ。もっぱら下げる方向で調整するわけ
だが、下げる(コントラストを落とす)ということはあまり無いはず。もし
明るければNDフィルターの使用も良い。
「色の濃さ」を上げたい場合は、そのぶん「コントラスト」を下げないと
色飽和が起きる。
…という具合に調整した10HTは、とにかく安定した白が出るので
なかなか気持ちが良い。これを基準に色温度を落としていけば、色気のある
肌なんかも表現できるし。
こういったことは、実は毎度の作業なのだが、精密なテストパターンが
あると素早く、厳密に調整が出来る。いままで、色々な作品中の
「絵的に厳しいパターン」を選んで使っていたが、それをしなくてもかなり
のレベルできちんと調整が出来る。まったく、テストパターン様々である。
●さて、音の調整だ。
前の家ではそれなりに設定も固まり安定して使っていたが、こんどの家では空っぽで
ぐわんぐわんに響く状況からスタートして苦難の連続である(^^;;;
しかし、昨日見た『タイタニック』で方向性は決まった。
目標は「限られた音量の枠内で可能な限りの情報量を提示する」
ということ。
同じ機械を使うなら大音量にすれば、情報量が増えるのはあたりまえ
だが、やかましいのは願い下げである。聴く者に緊張を強いることの無い
音量で迫力と情報量をバランスさせたい。
大前提の「箱(部屋)の音質」は、当初の絶望的な状況から実は
劇的に改善している。
それは、絨毯、スピーカーの後ろのカーテン、スピーカー横の壁に
設置したDVDラック(カーテン付)の効果が大きい。
特にDVDラックは、何しろ面積が大きいので拡散効果が絶大で、低音の
ブーミーな癖が劇的に解消した。
そのなんとか癖を押さえ込んだ部屋で、AVアンプやサブウーファの
コントロールで「メディアージュの印象」を再現しよう、音量以外は(^^;
というわけで、THX Optimizerの音声編をしばしいじってみた。
まず、音量の上限のある前提で情報量を稼ぐためにはどうしても
「ダイナミックレンジ圧縮」を使用する必要がある。
精神論からすれば、ダイナミックレンジは広い方が良いわけだが、
「微小レベルの情報量を確保する」というテーマを優先するなら
圧縮は必須で、イメージ的には「ダイナミックレンジ=迫力」だが、
実際のところは全く逆で、ダイナミックレンジは狭い方が平均音圧が
あがって迫力が増す。減るのは「爆発音の衝撃」などだが、家庭で
屋根が落ちてくるような音量を出せない限り、そのダイナミックレンジ
は絵に書いた餅だ。
また、AV環境ではプロジェクターノイズなどの影響で「小さな音」
は聞こえないというのも、圧縮が必要な要因だろう。
次にゆるい低音対策だが、THXのスタイルを真似て、
全スピーカーSmallに設定してみた。
これが意外にヒットで、サブウーファのつまみ一つで全スピーカーの
低音バランスをまとめてコントロールできるので思い切り低音を
抑えてバランスを見るのに役立った。
結局のところ、インテリアの工夫で低音コントロールは進んだが、
フローリングの共振による低音のふくらみを撲滅することは難しい
ため、さらに思い切り低音を絞り込むことが、全体の明瞭度の向上に大きく
貢献した。
LFEのバランスも、以前のマンションでは-6.5dbくらいで使用して
いたが、基本の-10dbにセット。
低音を絞り込むと聴感上の「うるささ」はかなり減少するので、
その状態でダイアログがくっきり聞こえて、うるさくない程度の
最大音量に持っていくと、従来9時くらいだったボリュームは
10〜11時の位置まで上げることができ、静かなシーンでも聞こえて
くる情報量を確保することが出来た。
それから、サブウーファーのボリュームを少しずつ上げて、
情報量を損なわず、インパクトのある低音の量を捜す。
最後に、アンプのLFEバランスを、必要なら-10dbより持ち上げる。
調整後の全体の印象は、最初のゆるくてうるさい音が、締まって
情報量が多い音に近づいたと思う。実際ボリューム位置はかなり
上げることが出来ているので、今まで埋もれていた音が聞こえる。
新しいマンションでの、ベースとしてこのあたりから詰めて
いこうというスタート地点としては十分だろう。
文:唐澤 清彦 | 映画館がやってきた! |