映画館がやってきた!

鑑賞日記1999


 主に私が新しく見て気に入った作品のLD/DVDについて感想を書きます。 率直な感想を書きたいので、筋や結末に触れることもあります、ご注意を。 ネタバラの可能性のある部分は"字下げしてグレー表示"しています。

タイトル監督俳優L/D音声番号日付
ハムレットケネス・ブラナーK.ブラナー/ケイト・ウィンスレットVCDS 9.15
仮面の男ランダル・ウォレスL.ディカプリオ/ガブリエル・バーンDVDDD5.1DL-56293 4.12
マスク・オブ・ゾロスピルバーグ/M.キャンベル A.バンデラス/A.ホプキンズ
/キャサリン・ゼタ・ジョーンズ
DVDDD5.1- 3. 9
TAXiJ.ピレス/R.ベッソンサミー・ナセリ/F.ディーファンタル
/マリオン・コティヤール
DVDDD5.1PCBE-00002 3. 9
アベンジャーズJ.チェチックR.ファインズ/ユマ・サーマン
/ショーン・コネリー
DVDDD5.1- 3. 9

鑑賞日記:1998

■ハムレット(96年)

 時代設定を中世から19世紀に移して、シェイクスピアの戯曲を完全映画化。4時間3分の超大作。
 舞台はデンマーク。先王が無くなって早4ヶ月。実弟が王位を継ぎ、先王の妃を 自らの妃とし、戴冠式を執り行っている。
 そこに、いまだ喪に服し、妃の貞節の無さに批判と疑いを持つ王子ハムレット (ケネス・ブラナー)が黒装束で登場。うっとおしい北欧の冬、喪服の青年、 華やかだがどこか寒々しい宮殿。いきなり文学文学な世界爆発である。
 …その夜、無くなった先王ハムレットの亡霊が現れ息子のハムレットに告げる。
『私は毒殺された。その男は今王冠を頂いている。私から命ばかりか、王位も、妃も奪い取ったのだ』
 ハムレットの復讐劇はやがて未曾有の悲劇へと突き進む。

 エリザベス、恋に落ちたシェークスピアetc.と、最近イギリスものに注目しており、 ケイト・ウィンスレットが出演していて、全然知らなかった…。 そんなわけでレンタルしてみた作品。
 96年製作(監督:ケネス・ブラナー)の映画で、なにしろ4時間3分の超大作なので 国内では大々的な ロードショーもなかったようだが、大変面白い。面白いが、延々セリフで一度 では頭に入らないので、レンタルでは物足りない。何度も見たいので、ぜひDVDで 発売して欲しいと思う一本。(ビデオはTVサイズというのも辛い)

 中に蒸気機関車が出てくるのが???と思ったら時代設定は19世紀に 書き直されているのだそうだ(つまり産業革命まっただ中)。宮廷に有色人種が 出入りしているのも19世紀だから?
 ちょっと落ち着かない気がするのだが、映画界もこういう時代だから仕方ないか…?

 先王の亡霊登場シーンなどは、映画ならではの迫力だが、シェイクスピア独特 のセリフ回しのため「映画で見る演劇」というスタンスで見る方が違和感がない。
 カメラワークにしても、(目が回るほど)360度回り込みが多用されているが、 恐らく、舞台の緊張感を引き出すために長回しをしたくて、登場人物のアップを 繋いでいく代わりに、回り込んでいるのではないかと見える。

 話はハムレットそのものであるので、映画としてどうかと言うことに絞れば、 役者については、ケネス・ブラナー(ハムレット)、ケイト・ウィンスレット (オフィーリア)の存在感の確かさが飛び抜けており、好演だと思う。半面、 ロビン・ウィリアムスなどの有名俳優がちょい役で何人も出ているようだが、 それほどの印象は残らず、それは無駄遣いのような気がする。
 ケネスは、若き王子を演じるには年が行っているのではないかという意見も あるようだが、まわりの「ご学友」と年齢が揃っているので、これはこれで 違和感はない。特に最後の葬送のシーンで棺の中に横たわる彼は 『偉大な王になるであったろう人を失った…』という立派さがにじみ出ていて 物語の格が上がったと言っても良いほど重厚だ。
 ケイトのオフィーリアは、恋と絶望に狂って死んで行くには逞しいという 気もするが、しかし、いかにも儚げな女性が狂うより、ケイトの健康的な笑顔が 却って狂気の無惨さを引き立てているように思えるので、これはなかなか素晴ら しいキャスティングではないかと思える。兄に向かって空想の花を摘んでみせる シーンの狂気は魅せる。

 話のメリハリについては、基本的にはシェイクスピアに忠実に、だが、 「生きるべきか死ぬべきか…」や「オフィーリアの死」などの有名シーンは もっともり立てて観客サービスしても良かったのではないかと思う。
 例えばオフィーリアの死などは、これをテーマに描かれた絵画もあり、 我々の心にはそれなりのイメージが有る。しかし映画では一瞬の挿入映像 しかない。これをオフィーリアの死を告げる長い語りで、役者を写さずに、 淡々と水底のオフィーリアを見せる絵にしても良いんじゃないか…、そこが 硬派に「舞台の映画化」を進めるか、観客にサービスするか、考え方の違い かなという気がする。
 まあ、ハリウッドでキャメロンが撮ったら、ケイトはたっぷり水に沈められ ただろう(^^;
 何もかもセリフで押していくこの「アンチ映画的手法」から、ケネスの 「シェークスピア映画」という別のジャンルの表現だと考えても良いような 気がする。
 それでも、ラストの御前試合で王家滅亡のシーンは、映画でなければ出来ない スピーディーでスリリングな映像と展開で、4時間の長丁場に疲れてきた 観客の目を覚まして引き締めてく、素晴らしいと思う。

 ともあれ、役者が良いのか、シェイクスピアが偉いのか。「今世紀最後の 大長編映画」(確かに)は、繰り返し見たい作品の一つとして心に残った。

関連HP


■仮面の男

 17世紀フランス。若き国王ルイ14世(L.ディカプリオ)の馬鹿殿振りに憤った 先王時代の三銃士、アトス、アラミス、ポルトスは、鉄仮面をかぶせられ バスチーユ監獄に幽閉されていた国王の双子の弟を救いだし、替え玉作戦を 実行する。
 幼少の頃からルイに使えていたダルタニャン(ガブリエル・バーン)は、 親衛隊長として殺気立つ国民と、ルイ(親衛隊)の間に立って、いつかは良い王に なってくれる日を祈っていた。
 ダルタニャンは三銃士のたくらみに気付き、これを阻止する。
 替え玉作戦は失敗してフィリップは、再び牢獄に。三銃士は辛くも逃亡。  だが、三銃士のもとにダルタニアンから、フィリップ救出の手引きが。 フィリップとルイの運命は…
 というストーリーですが、史実としてはルイ14世は「太陽王」と呼ばれるほど
の良い君主だった。すなわち、悪いルイは良いフィリップにすり替わっていたと
いうのが、前提になるわけです。
 しかし映画は、デュマの原作ともだいぶ違うそうなので、三銃士(ダルタニアン物語) も読んでみたいものです。

 どこの個人ホームページを見ても書いてあることなので、今更ですが、原作の タイトルでも分かるとおり、主役はルイではなく、ダルタニアンでした。
 興行的にはディカプリオファンを集められる利点はあるでしょうが、私のよう に「ディカプリオ人気で作った映画など見たくない」と思っている人も確実にいる わけで、売り方には疑問を感じますね。
 そのディカプリオに関しては、兄弟二役の演じ分けが注目されたわけですが、 台本がすでにそれほど演技力を要しない物だったような気がします。それだけ、 ストーリーはダルタニャンや、そのたのルイに振り回される人々の苦悩などの描写に 重点が置かれていたからと言って良いと思います。

 一方、三銃士のブレイン役アラミスと、ダルタニャンのやりとり、大人の渋さは 十分楽しめたと思います。
 A級娯楽映画にはほど遠いですが、おじさまの渋い魅力全開で、いっとき 王宮絵巻に浸れるという楽しみ方は十分提供してくれる作品でした。  この作品は、脇を固める名優たちの過去の作品を発掘してみたくなる、良い きっかけかも知れません。

関連HP

■マスク・オブ・ゾロ

 20年前、農民に圧制を強いていたカリフォルニア知事モンテロは、母国 スペインへの召還命令を受けるが、最後に、農民の英雄、宿敵ゾロ(ディエゴ =アンソニー・ホプキンズ)をおびき出し、投獄する。
 ディエゴは、妻を失い、幼い娘はモンテロに連れ去られ、彼の子として育てら れる。

 そして20年後。モンテロはカリフォルニアを手に入れるために戻ってくる。
 ディエゴは長年閉じこめられていた牢を抜け出し、ナイフを手にモンテロに近 づくが、傍らに成長した娘「エレナ(=キャサリン・ゼタ・ジョーンズ)」の姿を見 て、その場での復讐を思いとどまる。
 ディエゴは、モンテロの軍の隊長「キャプテン・ラブ」に兄を殺されて酒場で 酔いつぶれているアレハンドロ(=アントニオ・バンデラス)を見いだし、彼を第二 のゾロとして育る。
 剣(フェンシング)、戦う心、紳士としての気品。全てを若きゾロに託すディエゴ。
 二人は、スペインの貴族に変装してモンテロに近づき、彼の野望を探り当てた。
 アレハンドロは、宿敵ラブを倒せるのか?
 ディエゴは、モンテロから娘を取り戻せるのか?


 というようなお話であります。
 映画を鑑賞した感想は、別稿に詳しいのでそちらを見ていただくとして、DVD
で新たに嬉しかったことなどを書いてみます。

 まず、美しいピクチャーレーベル仕様。別に映画の内容には全然関係ないです
が、こういうものは何だかうれしいものです。(初回限定だとか)
 それから、期待していたとおり、音響はとても良かった。
 映画館のぼやけた音響では味わえない、シャープな移動感、包囲感がばっちり
楽しめます。
 殺陣のシーンなどで、様式美的に盛り上げるフラメンコのリズム。なかなか
良いんじゃないかと思います。

 なんだか、映画館で見たのより印象が良い。
 エレナの知的な美しさ、旧ゾロ(ホプキンス)の気品、新ゾロ(バンデラス)の
野性味溢れる魅力。そして、エレナと新ゾロのロマンスの駆け引きの妙や、
吹き替え無しのフェンシングの技のキレ。
 そんなものが、よく見えて楽しめた。

 ストーリー的には、随所に強引と思われる運びや、型にはまりすぎの所があり、
B級テイストがにじみ出ているのが残念だが、役者の魅力が良く出ているという
点で、存分に楽しめる作品だと思う。

■TAXi

 スピード狂のタクシー運転手ダニエル(サミー・ナセリ)は、スピード違反を見逃してもらうかわりに、 8回も運転免許試験に落ちている間抜けな新米刑事エミリアン(フレデリック・ディーファンタル)を 助けて、ベンツに乗って銀行襲撃を繰り返すドイツ人強盗団「メルセデス」を追う。
 250km/hの改造タクシーで、マルセイユの町を疾走する、ダニエルと「メルセデス」のチェイスの 決着は?

 あっと驚く改造タクシー、カーチェイス、どじな新米警官とのボケ、ツッコミ。 刑事たちの果てしなくベタなジョーク。それから、美人ガールフレンド(^^)
 そういうのが、この映画の要素なんだけれど、ジョークのお約束さ加減に素直に ついて行ければ、この映画は笑える。
 一切CGを使っていない、本物のカーチェイスが売り物だが、なにより、白く輝く マルセイユの町の爽やかさが、最大のチャームポイントではないかと思う。白い町並みを 疾走する、白いプジョー406(エアロパーツ満載、改造車だけど(笑))。


■アベンジャーズ

 '60年代の英テレビドラマをアメリカで映画化したSFXスパイ・アクション。
 英国を襲った異常気象は、『半物質気象コントローラー』で世界征服をたくらむ 科学者(ショーン・コネリー)の仕業だった。
 英国情報部員J.スティードがセクシーな女性気象学者(ユマ・サーマン)と、コンビを 組んで立ち向かうが…。

 筋はそんなところだが、作りははっきり『荒唐無稽』『駄洒落連発』
 確かに冒頭のレトロな英国紳士ファッションの主人公が 上司の仕掛けた刺客(実はテスト)をサクサクとかわしていく部分は、チャップリン的に 面白い。しかし、話が進むに連れてなんだか、見ていて引き込まれる部分が足りない ような気がして傍観しているうちに終わってしまった。乱雑で観客無視のすっ飛ばし多発

 「漫画的」と言われる作風でぱっとしなかったという点で、ふと「バットマン&ロビン」 を思い出したが、接点はユマ・サーマンか?  もっとも、バットマンでも、本作でもユマ・サーマンは魅力的で、出演作が何となく B級なのは監督の責であるのは当然だろう。まあ、彼女の特異な風貌がB級心をくすぐる と言うことはあるかも知れないが(^^;

 本作では様々なギャグ、変なものが出てくるので印象に残ったところを。

 一口に言って、見る側に「さあ、笑うぞ」という意気込みがなければ、楽しめない 映画だと思う。ギャグは連発しているのだが、ことごとく滑っているのが辛い。
 それでも、まあ見ていられるのはユマ・サーマンが美人だから?(^^;

 そうそう、この映画を誉めてたHiViの人、あなたとは感性違うみたいです(苦笑)

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文:唐澤 清彦 映画館がやってきた!