映画館がやってきた!

鑑賞日記1998


 主に私が新しく見て気に入った作品のLD/DVDについて感想を書きます。 率直な感想を書きたいので、筋や結末に触れることもあります、ご注意を。 ネタバラの可能性のある部分は"字下げしてグレー表示"しています。

タイトル監督俳優L/D音声記録番号日付
タイタニック(LD/WIDE/字幕版)('98)J.キャメロンディカプリオ/K.ウィンスレットLDDD5.1-11.19
青の6号Vol.1 "BLUES"DVDDD5.111. 1
フィフス・エレメントL.ベッソンB.ウィリス/M.ジョヴォヴィッチDVDDD5.1 9.27
アポロ13ロン=ハワードトム=ハンクス/エド=ハリスDVDDD5.1 9.23
アビスJ.キャメロンE.ハリス/M.E.マストラントニオDVDDD5.1片面2層PCBP-61 9.17
タイタニック(TVサイズ/輸入盤)('98)J.キャメロンディカプリオ/VHSDS- 9.13
ジャッカルの日/THE DAY OF JACKALF.ジンネマンE.フォックスDVDDD1片面1層PIBF-1030 8.30
デスペラードR.ロドリゲスA.バンデラス/S.ハエックDVDDD5.1片面1層 7.29
ゴジラ('54)LDMCLVTLL 2182 7.17
さらば宇宙戦艦ヤマトLDSCLVBELL-1148 7. 3
ガメラ2"レギオン襲来"LDSCLVDLZ-0214 7. 1
もののけ姫宮崎 駿LDDD5.1CLVTKLA-50300 6.28
オネアミスの翼・サウンドリニューアル版LDDD5.1CLVBELL-1141 6.25

■タイタニック(LD/WIDE/字幕版)('98)

公式バナー  言わずと知れたタイタニックなので、作品の感想などは抜き。米国版の感想はこちら(タイタニック(TVサイズ/輸入盤)('98))
●字幕のスッキリしないところ研究(タイタニックの英語を読む)
 日本語字幕がしっくりこない部分や、英語の慣用句について、英語字幕を
たよりに辞書を引いて自分なりに原文に忠実な訳を調べてみました。
(解決しなかったことも書いています)

・引き上げシーン(Lovetto)
That's Hockley's bed.
That's where the son of a bitch slept.
→ son of a bitch(サノバビッチ)=野郎。
 現代米語ではごく親しい男同士の間で気軽に使われるので、ののしっている
わけではなく、「ここで奴が眠っていたんだ」というほどの意味。

・金庫を開けて
This same thing happend to geraldo, and his career never recovered.
→ 「よくあることさ」というような訳が付いているが、どういう語源なのか不明。

・電話をしながら
Hang on second.
→ "hang on"で電話を切らないでいる、という意味だそうな。つかまっている
わけじゃないんだな…。

・Old Roseが絵を見て(Rose)
dish
→ 「グラマーでしょ」と訳されるが、dish=魅力的な女性。
 もちろんお皿のことだが、お皿にグラマーという含みがあるのか…?
(初期シナリオのhot numberの方が下品な言い方か?)

・鏡を見つめて(Rose)
The reflection has changed a bit.
→ 字幕「映る姿は変わったわ」だが、"a bit"とあるので、
「ちょっと変わったわ」という程度。字幕ではがっかりしたような感じを受ける
が、台詞はあまりがっかりした感じが無くちょっとした軽口程度に聞こえる。

・沈むタイタニックの説明
berg=氷山,bow=船首,stern=船尾
→ 概ね、ボーディンの口調はデリカシー無し(^^)

・Bodineの説明を聞いて(Old Rose)
... somewhat difference.
→ ちょっと違う
 字幕は「とてもそんなものでは…」となっていて、Bodineの説明を否定するよ
うなイメージが強いが、台詞はもっと控えめなイメージがある。

・CalがダイニングでRoseを呼ぶとき
sweet pea
→ 植物の「スイトピー」 字幕は単に「ローズ」という呼びかけになっている
が、たぶん「ハニー」などと呼びかけるのと同じなのだろう。が、辞書には無い??

・お夕食だわ。騎兵隊の突撃ラッパみたい(Molly)
→ 直訳すると、「いつもひどいラッパを押しつける」というような、非難する
調子が強い。
・JJに紹介されてJack
Chippewa Falls Dawsons.(字幕:ウィスコンシンのドーソンです)
→ 調べたところ、ウィスコンシンにChippewa Fallsという都市がある。 (ちなみに、Chippewaはインディアンの種族名(妻から))
 写真の載っているホームページもある→ A Photo Album of the Chippewa Falls Area
 風光明媚な観光都市という感じで、もちろん冬はIce Fishingも出来るらしい(^^)
・OLD Rose「緊張を隠した芝居は見事だった」
He must have been nervous, but never faltered.
→ 「緊張していたはずだが、決してひるまなかった」の方が台詞に忠実では
ないかな? Jackは「素直さ全開」で乗り切ったのであり、芝居ではないし。

・母は辛辣だった
count upon
→ 辞書に載ってない〜(^^;

・三等船室の住み心地は?(劇場公開版字幕)Ruth
steerage
→ LDでは「そちらの船室」と変更されているが、steerageには「三等船室」の
意味なので、この変更は改悪か? Ruthならずけずけ言うに違いない。

・Jack,Ruthに答えて
Hardly any rats.
→ 字幕「ネズミはいません」だが、直訳なら「ほとんど…は、いません」
 後の沈没シーンではネズミが出てくるので、伏線として。
 それに、「ほとんど」の方が、
「三等は"実際"上品なところではないけれど住めば都だよ」という、おどけた
雰囲気が強くなる気がする。

 このあとのRuthの質問責めは、字幕の表現より実際の台詞は、嫌みできつい感じ。

・Roseが乾杯の音頭をとる
To making it count.
→ 劇場字幕「良い人生に」から「今を大切に」に変更。
(これも辞書には載っていない表現だ。)
 食後JackがRoseにメモを手渡すシーンで同じ"To making it count"が出てくる。
 劇場ではこの部分が訳されていないが、ビデオで訳すことにしたので、訳を合
わせるために変更したのだろう。が、この部分は「良い人生に」の方がしっくり
くる(刷り込みかな?)

・鉄で出来た舟は沈む。物理的真実です(アンドリュースさん)
→ mathmaticalyは"数理的"。
 字幕の"物理的"の方がしっくりくるけど、なぜ彼は数理的というのかな?
 「1+1=2と同じくらい簡単な理屈」というような含みか?

・ボートをおろすシーンで頻繁に
Steady lads!(みんな落ち着いて!)
→ "lads"は男に対する呼びかけ。先々沢山出てくる。

・Andlewsさんが、廊下でメイドさんに「君が手本になれ」
for God's sake(お願いだから)という言い回しが含まれる。
→ 単なる指示のようにきこえるシーンだが、このときメイドさんは、救命胴衣
を着用しないままに避難誘導をしている。
 だから、「お願いだから、君自身が救命胴衣を付けてみんなの手本になってくれ」
と、彼女の身を案じる気持ちが込められている。と思う。
 Andlewsさんは優しい。

・Jackを助けに行ったRoseが、助けを呼びに階上に戻って
Damn it!
→ 字幕は「いないの?」となっているが、直訳すれば「畜生!」
 全般にJackと交わってだいぶ下品な言い回しが増えた。

Can anybody hear me!(誰かいないの)
→ 沈没後救助に戻ったボートで航海士が叫んだ台詞と同じ。

・Roseを誘導しようとして逆に殴られた船員が
To hell with you!
→ 字幕は「勝手にしろ」だが、ここは「お前なんか、くたばれ!」ともっと
激しく罵っている。無理もない(^^;;

・Lightoller航海士とAndlewsさんの押し問答
Now, fill these boats, Mr. Lightoller, for God's sake, man!
→ 字幕では単に「定員ギリギリまで乗せるんだ!」とあって、全体の流れから
して激しく叱責しているような印象を受けるが、実際は「お願いだから〜」と、
ずっと丁寧に言い含める印象。
 最後まで優しく紳士的なAndlewsさんだった。

・銃で撃たれたシーンなど
Bastard!
→ このやろう!(あちこちで頻出単語になっている)
 Roseもボートに乗るの乗らないののシーンでCalに言ってますね。

・赤ん坊を抱えた女が船長に
Capitan Capitan...
→ ポルトガル語らしい

●ちょっと気になるあのシーン
・時計台シーン
 ローズの足音が止まった瞬間に、九つの鐘が鳴り始め、九つ目の鐘の余韻に
のせてJackの"So you want to go to a real party?"
 サウンド的に、ちょっと格好いい(^^)

・ピカソが好きなRoseがJackの絵をほめるはずが無いという意見について、
モネも好きだったように、結構多趣味だったんじゃないかと思う。

・斧を取って返したローズが振り下ろすシーン
どう見ても、Jackの左手首を直撃している。これは痛い(^^;;

・濁流に押し流されてゲートに激突する直前のカット
 Jackの顔に灰色に顎髭のあとがくっきり(^^;
 ここはスタントを使って顔だけCGですげ替えたと有名なシーンですが、
処理抜けも有るんですね…(^^; ローズの顔も未処理。う〜む。

・紳士として正装して死んでいったグッゲンハイム
 最後のシーンで左後ろに控えていた若者は「従者」でしょうね。
 お若いのに可哀相に…。

・タイタニックの船尾がもっとも高く持ち上がったとき(折れる直前)に落ちた
人は、落下時間=4.1秒、落下距離=約80m
 その後スクリューに膝をぶつけて痛そうな人がぶつかったタイミングは
約1.4秒、船尾からスクリューまでの落下距離は約14m。
(数学的な真実と言うことで…(^^;)


■青の6号 Vol.1"BLUES"

 フィルムをいっさい使わない日本初のフル・デジタルアニメという触れ込み で、気にはなっていたものの「30分で5,000円」という価格に
「とってもつき合ってられない」と思っていました。
 発売日に店頭デモで見て、なかなかスピード感があって面白そうだと思った ものの、購入にいたらず。
 しかし、プロジェクターでビデオの映画を見た後、たまたまWOWWOWの カウボーイ・ビバップにひっかかり、さらにそのCMの中に『青の6号』があった のでした。
 「あれ、大画面で見ると、全然面白みが違うよ〜」
 というわけで、ついに財布の紐が緩んでしまいました。恐ろしい…(^^;;

○話題のフルデジタル・アニメは、買いか?
 この作品では、基本的に人物は2Dペイント、メカは3D-CGで描かれていて、 背景は場面によって、2D,3Dが使い分けられているようです。

 国産3D-CGムービーは、考えてみればゲーム機で年中見慣れた映像。
 それ自体には特に驚きもなく、頭を3D-CGモードに切り替えれば、ごく 当たり前の映像でした。
 技術が「当たり前」のものならば、人を驚かすためには使い方ですね。

 CGでなければ絶対出来ないと思われる映像には、巨大な鯨をベースにしたよう な生物兵器が泳ぎ回るシーンなどがありましたが、あれは、デザインも優れてい るし、なかなか良かった。

 ハリウッドのSFXの緻密さには全くかなわない、CGくさい映像ですが、 画材の一つとして、使いこなしていく面白さは期待できそうです。

○キャラ
 女主人公の声質が耳障りなのもさることながら、青6の艦長の仕草は常に斜め でよろよろしているように見えます。あれで、「斜に構える」という表現なんだ ろうか…? 片目をつぶるのも不自然。もっと、人間の役者の動作を観察した方がよいと思います。

○サウンド
 実はOVAとしてこの作品で一番画期的なのは、5.1ch音声ではないかと思いまし た。
 オネアミスの翼のサウンドリニューアル版もかなりの物でしたが、本作は、 2chにサラウンド効果を付けたというのではなく、全てのチャンネルを対等に 扱っているのが、画期的です。
 もはや、センターSPは「ダイヤローグ・チャンネル」なんて意識もまるで無く、 画面に映っていない物を全て音で表そうとしているようです。
 あまりにも、爆音を重視しすぎて、セリフが何を言っているのか全然聞こえて こないシーンも多々あるのは、ちょっと素人仕事的な感じもしますが、台詞を 犠牲にしても迫力を出したいという心意気は大いに買うことが出来ます。
 ともあれ、戦闘シーンの物凄さは欠点よりも凄さが上。
 四方の爆発音は、容赦なく全てのSPから発せられますし、吹っ飛んでいく物体 に割り付けられた音は、画面の外まで飛んでいきます。
 これはちゃんと5.1chで見てあげないと、店頭デモなど見ても全然参考に ならないですね。

 作品としては、何しろ30分しかないので、「主要メンバーが揃って敵と一戦交えた」という だけのことで、これから面白くなるのかどうかも、さっぱりわからん!と、
そういう意味では不満はあるけれど、とにかく絵も、音も新しいことをしようと 言う気合いはたっぷりで、取りあえず満足しました。

○オマケのこと
 次回予告すらまともになく、設定シートは紙。DVDなら、メニュー画面を用意 して楽しませて欲しいと思うのですが、封入物はどうも、同時発売のLDと同一 仕様らしい。惜しいですね。


■フィフス・エレメント

 う〜面白い! こんなに面白いなら劇場で見ておけば良かった!

 リュック・ベッソン監督といえば、レオンやグランブルーなど、アクションの 中にも叙情有り…みたいなイメージを持っていたので、 「あの」ブルース・ウィリスが主役(?)でドンパチやるというのが"ピン"と来な くてLDが発売されても放置していたのでありました。しかし、先日公開された "TAXi"が思いの外面白かったので、DVD発売を機に見てみようかという気を起こ した次第。

 オープニングは、1910年代のエジプトでとある神殿の壁画を解読する考古学者。  地球には5000年に一度、全ての生命を破壊し尽くす悪が飛来し、その神殿には 彼らと戦う武器、風、土、水、火の四要素、そして完全なる生命の第五の エレメントがまつられているらしい… そして、次の襲来は300年後。
 というところに、人類の味方の謎の宇宙人(モンドジャワン人)が現れて、 エレメントを回収して去っていく。
 悪が訪れるとき我々もまた来ると。

 なんとなく、インディージョーンズみたいで、考古学ネタも結構好きなのです が、モンドジャワン人の、人相の悪い甲冑姿を見た教授が
「ドイツ人?」とボケて見せるのがフランス流ジョークなんでしょうな。

 そして、舞台は23世紀の地球。
 太陽系に現れた謎の球体。迎え撃つ連邦艦隊のシーンは、なかなか美しい。 なんとなく、宇宙戦艦はスターウォーズのエッセンス頂きって感じ。しかし、 この絶対悪は敵の攻撃をおのれの力に取り込むような、超越的な的で人類は 絶体絶命!

 ってところで、いきなり寝起きのブルース・ウィリスの、どアップになるのだ から始末が悪い(^^;; 舞台はニューヨーク。

 ここまでスターウォーズかスタートレックかというノリできていたのに、 いきなり、気分がダイハードにジャンプしてしまった。だから、映画館に行かな かったんだよな〜、と思うわけです(^^;;

 ここから全ては、マンガチックなノリに変化します。
 でも、これが面白かった。
 敵と内通している武器商人の親玉(ゾーグ)は、レオンに出ていた「キレた刑事」 で、コスチュームも未来漫画的。
 地球にやってきた「フィフス・エレメント」の女の子を連れて、他の四要素の "石"を入手するために、ウィリスは「コロッケの懸賞で旅行に当選した」という 偽装で目的地のリゾート惑星に行くのですが、極秘だっちゅうのに、なぜか懸賞 旅行はラジオ番組とタイアップしており、マシンガントークなDJにつき合わされ て、何もかも筒抜け。
 このDJのせいで、映画そのものがDJショーのノリでバキバキ進んでいくのが、 面白いんですね。

 目的地のリゾートに着いてみれば、「ホテル兼遊覧宇宙船」のデザインが なんだか「タイタニック」だったりするし、敵の仕掛けた時限爆弾によって、 ちゃんと脱出ボートのシーンもあって、船員の代わりにボーイさんが、乗客を 必死の誘導するシーンがあったりする(笑)

 このリゾートでコンサートを開く宇宙人歌手が、"石"を託されて運んできて いるのですが、そのコンサートの曲が、クラシカルなオペラアリア風から舞台裏 の"石"を巡る暗闘のアクションの盛り上がりにシンクロして、ロック調の曲に 変化していくのも、この映画のかなり大きな見所という感じがします。
 とにかく曲が良い。

 そして、最後は地球の、最初の神殿に戻って敵を倒すために、5つの要素を 起動する事が出来るか! というのが山場になるのですが、この神殿の神父が (最初から出てきていますが)なんとなく、ジェダイの騎士風だったりします。
 未来のニューヨークに、東洋人の空飛ぶ屋台が出てくるところは、明らかに ブレードランナーのパロ。

 徹頭徹尾、流行った映画のパロディー要素のてんこ盛りを、ラップのビートに 載せてジャンジャン繰り出すのがこの映画のミソ。

 「主人公がレオンのジャン・レノだったら良かったのに」という人もいるみたい ですが、ひょっとしてブルースウィリスを出したこと自体が、ダイハードのパロディー なのかも知れないと思えてくるところが笑えるんですね。

 頭を空っぽにして笑うも良し、どこが何のパロディーなのかマニアックに掘り 返すも良し。とにかくエンターテイメントな作品なのでした。(98.9.27)

検索したら、膨大な感想文ページが引っかかりました。面白いのでご紹介

■アポロ13(APOLLO13)

 NASAの管制室、あるいはApollo13の船内に居合わせたかのような抜群の臨場感。 そして、本物の無重力、スピード感、人間ドラマ。

 基本的にノンフィクションなわけですが、下手な味付けはさけて ドキュメンタリータッチに迫っているのが、見るものを引き込むように思います。  最後は無事帰還する話と分かっていても、とにかく緊張の連続。

 まさに男の戦いのドラマ。くり返し見たい作品です(^^)

●ドラマ
 …といっても、ノンフィクションなんですが。
 月まであとわずかの距離に迫りながら突然の爆発事故に見舞われたアポロ13。
 失われる、水、酸素、電力etc.
 無事地球に帰ってくるためには、それらの残量が地球への期間に必要な時間 持ちこたえることが出来るか、技術と知力をかけた戦いが繰り広げられます。

 つぎつぎとアポロ13を襲うトラブルと、それを解決していく乗組員と管制官、 科学者、バックアップチームの人間ドラマ。
 本物の記録を見ているような臨場感がドラマを支えます。

 それが本当にあったことだという背景を除いても、おそらくこの作品の 劇的魅力は少しも損なわれないでしょう。
 爆発によってほとんど失われる電力。それをなんとか帰還まで持たせるために 船のコンピューターは停止させられます。これは、大気圏突入の瞬間まで使うこ とが出来ない。
 そういう状況の中で、軌道修正のために手動でロケットを噴射してしまうシーン も緊張するし、管制室で軌道計算する管制官の手元にはなんと「計算尺」
 時代ですねぇ…

 再突入のためのコンピューターの電力に余裕がないために、なんとか最低の 電力で再突入プログラムを起動させるシーケンスを見つけようと奮闘する バックアップチームの姿も印象的。再突入のため、それまで霜が凍り付いていた 船内の温度が上昇し「電気回路がショートしたらお終いだ」と祈りながら 起動していく様子も緊張します。
 そして、再突入の通信謝絶状態が予定の時間を過ぎても回復しない。
 ノンフィクションだから、絶対助かると分かっているのに、どうして あんなに盛り上がってしまうのでしょう(^^)

 あいだに表現されている、家族の不安や、直前に風疹の疑いで交代させられる 正チームの一人(ゲイリー=シニーズ)の押し殺した悔しさと、救出作戦での見事 な働き、沈着冷静なフライトディレクター(エド=ハリス)が、時々爆発してみせ る司令官ぶりなど、人間的仕草は芝居臭くならずにドラマをもり立てています。

 この作品を見ていて感じたのは、自分もこの事件と同じ時代に生きていたのだ なという感慨と、出来れば本物のニュースで彼らを見守りたかったと言うことで しょう。
(全世界中継される中、日本では、中継されなかったそうで)

 人類が初めて月に降り立った深夜、私はまだ夜更かしを許されない程度のほん の子供でしたが、それでも、ちょっとだけTVを見て異様な熱気を感じたものです。
 そして、初めてスペースシャトルが飛んだのは、高校三年生の頃。 (徹夜でTVの前に釘付けでした)
 我々の年代はまさに、宇宙の冒険時代に生まれ、育ったという感慨があります。

 アポロ13の頃は打ち上げはTV中継もされないほど、当たり前のようになって しまっていたというのが、設定ですが、それでもまだまだ月に行くのは本物の 冒険であった時代の私たちの気持ちを裏切らない、迫真の出来映えだと思いま した。
(最近はコーラの景品で宇宙に行ける時代になったようですが(^^))

 蛇足ですが、これを見て『オネアミスの翼』の発射シーンなどはなかなか良く できていたなぁと思いました。どちらも、宇宙開発のロマンが色濃い作品ですが、 同じ匂いがします(^^)

●サウンド
 5.1chは、わりと強調感のない音場だと思いました。周囲の環境音が自然に 取り巻く感じで、巷のSFX映画のような音源移動を強調する演出は無し。これは これで結構なことだと思います。
 ただ、打ち上げの轟音というのは、もっとハイレベルで轟いても良いのでは ないかと思いました。実況中継の人間の声が聞き難くならない音量に止めたの かも知れません。
(全体にボリュームを上げればいい話かも…)

●SFX
 発射台を撮影したシーンなどで、空中でカメラが移動して引いていく場面など、 「あ、ここはCGね」と分かってしまうのは、物理的に不可能な視点移動が伴うた め。
 タイタニックなどでも船首に立つ二人からぐっとカメラが引いて煙突の煙の中 を抜けてタイタニックの全景へ…という視点移動がありましたが、やっぱり、 不自然な感じがするので、よほどの必然性がないのなら避けた方が無難だと思い ます。(タイタニックには演出上の必然を感じますが)

 で、そのわざとらしいカメラもありましたが、この作品の無重力の表現は凄い。
 アビスが本物の水の中でやっているのも凄いけれど、アポロ13は、まさか本物 の宇宙空間でやっているわけ無いのだけれど、いったいどうやって撮影したのか?
 小物が宙を舞うだけならばなんでもCGIで書けそうだけれど、役者は…??

 …と思ったら、実は本物の無重力で撮影していたのですね(あらびっくり!)
 仕掛けは、KC-135というNASAが宇宙飛行士訓練用に保有している大型機で、 こいつは、高度7,000m〜10,000mを行ったりきたりして、その頂点で約20秒間の 無重力状態を作り出す、空飛ぶジェットコースターみたいなものなのですね。

 ともあれ、この本物の無重力が映画のノンフィクションらしさを支えて、この 作品を成功させる大きな力になっていると思います。(98.9.23)

参考:

■アビス(THE ABYSS)

 タイタニックで盛り上がっているところにタイミング良く投入された、 キャメロン監督の海洋SF、アビスのDVD。発売前日にゲットして鑑賞しました。

 ストーリーは先刻承知の方が多いでしょうが、この盤には60分もある メイキング・ビデオが特典として付いてくることが、さすが、DVDです。

 鑑賞して感じたのは、海溝の底に棲むエイリアンの操る海水ロボット(水の 分子を自由に操って、海水そのものを「しもべ」として使うというような設定) の映像が、ターミネーター2の液体金属サイボーグT1000の基礎になっていたり、 深海油田掘削基地を襲う怒濤の海水が、タイタニックの沈没シーンを彷彿させる とか、後に続く作品に生かされた原点がいくつもあったということ。
 キャメロン監督の中では大ヒットとは行かなかった作品ですが、タダでは転ば ないという感じがします。

 メイキングも含めて一番感心したのが「ほとんど特撮が無い」ってことです。  現在なら命に関わるほど過酷なシーンはCGIで済ますのでしょうが、アビスは 「建設中で放棄された原子炉施設」を流用した大プールの中で、ひたすら本物の 水中撮影による本物の映像を撮っている。
 役者も命がけだし、監督は毎日水の中で12時間以上暮らしている。
 その、監督の海洋おたくぶりが全編から溢れているし、これほどの海に対する 思い入れがあったからこそ、タイタニックにも繋がったのだと、自然に理解する ことが出来ました。

 ストーリーは前半は、深海底の密室の中で繰り広げられるサスペンスで、 核弾頭を手にした狂った海兵隊員と、共同作業する油田作業員との駆け引きに、 巨大な水圧の恐怖がかぶさって、緊張感抜群。
 そして、未知の生命体とのコンタクトがこの映画がSFで有ることをチラチラと 見せるのですが、海溝に向かって放たれた核弾頭を回収に向かう主人公が、 水圧に耐えるために、海軍が開発した「呼吸可能な液体」で肺を満たす特殊な 潜水服で潜るシーンで、ぐっとSFマインドをくすぐってくれます。

 呼吸可能な液体自体は、手術の輸血の補助のために開発されたもので実在して おり、潜水に使われた実績こそ無いものの、ネズミをその液体に沈めても呼吸 可能で死なないというデモは、昔々私もTVで見たことがあります。
 今見るとどちらかと「エヴァンゲリオン」のエントリープラグを満たすLCLを 思い浮かべる人の方が多いでしょうが、あのスタッフもアビスは見ていたかも知 れませんね。
(ただし、呼吸は出来ても発音は無理。エヴァは喋っているけれど)

 ここからのシーンが「未知との遭遇」になるわけですが、核兵器で破滅しそう な人類を戒めるために全世界を津波で滅ぼそうとしていた深海のエイリアンが、 主人公が自分の命を懸けて、海溝に放たれた核弾頭を回収に向かった姿に心を動 かされ、死にそうな主人公を救い、人類そのものを見直して、津波を止めてくれ る…。
 という、実に明快な筋書き。
 単純だけれど、実に見せる場所が多い。

 最後に深海からエイリアンの母船が石油掘削基地ごと海面に送り届けてくれる シーンで、
 「減圧していないのに平気だ」
 「これもエイリアンの不思議な科学の力なのね?」
 と、マニアから突っ込みが来そうな穴を、取りあえず説明するカットを入れる など海洋マニア・キャメロンの良心が感じられます(^^)
 ともあれ、ストーリー、演出、特撮、全て素晴らしい第一級の作品でした。
 重苦しい深海の密室の中で展開されるストーリーだけに、一般ウケしなかった のかと思いますが、たとえタイタニック人気のオマケでも、これを機に大勢が 見ると良いなぁと思います。

141分の本編に対して170分の完全版もあるそうです。これもいつかは見たい ですね。(98.9.17)

参考:

■タイタニック(TVサイズ/輸入盤)('98)

●鑑賞の事情
 日記のコーナーにも書いたが、最近妻が"タイタニック・マニア"である。
 夏休み。私が留守の間に遅ればせで見に行ったと思ったら、いつの間にか タイタニック・オタクの私設掲示板に参加して、先の土曜は「タイタニック 引き上げ展・オフ」に参加。
 そこで、さらに共鳴してしまい、「字幕に気を取られずにじっくり鑑賞する」 という目的で輸入盤ビデオ購入に踏み切る。

 それもともかく、(原語)ビデオはTVサイズを買って、11/20のLD発売日には WIDE版(日本語字幕)を買うという意気込みで、理由は
 「TVサイズは監督の丹念な再編集が施されていてWIDE版で写っていない部分が 写っているから。」
 おぉそれはスーパー35方式というものでキャメロン監督は…と話しかけると
 「そおそお、それそれ。言おうと思っていたのよ」…だと。
 このように妻がオタク化していく場合、たじろぐ夫はどうすればよいのでしょう(^^;
 スクリーンを引き出して映画館モードに入り上映開始。後ろで眺めていたら
 「気が散るわ!」という理由で追い出されてしまいました。

 どうやら、このままAV機器の操作法もマスターしそうな勢い。 ゆくゆく上映プログラムの奪い合いになったら困るぞ…(^^;;
 こういうはまり方をしたのは「エヴァンゲリオン」以来です。(変わった夫婦かも)

●…で、タイタニック鑑賞
 実は私は映画館で見ていないし、英語が得意でもないのですが、まあ、 大体要点はちゃんと何言ってるのかつかめたので、曖昧なりに納得がいく程度に 分かりました。
 なんでこんなにみんなが"はまる"のか、見てみたら確かにわかったような気が します。
 ターミネーター2あたりまではCGを売りにするような映像だったけれど、 タイタニックではどこがCGでどこまでが現実の映像なのか、わが家の90インチ スクリーンにかじりついてもまったく判らない。
 コンタクト(DVD版)の特典映像で、海洋物の特撮について細かく解説している のを見たので、たぶんタイタニックを航海させるのにも同じような技術を使って いるのだろうなあと、想像は付くのですが、もはやSFXに限界はないですね。

 しかし、タイタニックが凄いのは結局のとこSFXが完全に裏方にまわって、 ドラマそのものが見事だということですね。
 とにかく、三時間どこにも気の抜けることが無いというのは凄いことです。
 デカプリオの演技が優れてるとも思わないし、女優もすごい美人というわけ ではない。これはいったいなんなんだろうと思ってしまう。もちろん、ヘロヘロ なヒアリング能力でも楽しめたのだから、セリフ回しが感動的だからというわけ でもない。
 AデッキからEデッキまでの階級、貧富の差による生々しい人間ドラマ、 アイルランド差別。愛もあるし。
 他方、タイタニックの中を歩けるという仮想現実感が見事に実現し ていることもある。とにかく豪華だし珍しいから。
 ほとんど余談ですが、エンジンルームの描写もとっても迫力があって格好 良かったですね。私は心の底で「宇宙戦艦ヤマト」のエンジンルームを思いだし、 別な感慨に耽ってしまいました(笑)
 その他、ラスト付近での甲板から人がこぼれていくシーンの細かい描写。
 あの辺は、こだわりと書き込みの勝利と言えるかも知れません。
 要素は沢山あると思うのですが、最後はやっぱり、監督の手柄かなあ。

 最近では、ポール・バーホーヴェンが「宇宙の戦士」を映画にし、エメリッヒ が、「ゴジラ」を映画化しましたが、今度こそぜひ、キャメロン監督で原作付き SFのビッグ・タイトルを映画化してみてもらいたいところです。
 J.P.ホーガンの「未来の二つの顔」なんか、ドラマも映像もいけるんじゃない かと思うなあ。
 とにかく、キャメロンの次回"SF"作品が楽しみですね。(1998.9.13)


■ジャッカルの日/THE DAY OF JACKAL('73)

 '98年夏公開の『ジャッカル』が、この映画からキャラクターを借用している とかで、マニアや評論家筋では

 「もとの『ジャッカルの日』の方が一万倍面白い」

などと言われているこの作品がDVDで発売されたのを機に見てみました。

 本作はそもそもフレデリックフォーサイスの原作ベストセラーの映画化と言う ことで、原作を読んでいるとまた違った感想を持つこともあるのかも知れません が、純粋に映画のみの感想を行きます。

★以下ネタバレ全開です★

 物語はフランス大統領ドゴール暗殺を依頼された謎の殺し屋『ジャッカル』と 暗殺を阻止すべくこれを追う刑事の頭脳戦。
 次々とジャッカルの謎を解いて迫る刑事たち。そして、正体をつかんだと思わ れた瞬間に姿を変え、名前を変え刑事の追跡をかわしていくジャッカル。
 果たして暗殺は成功するのか。

 全体を見終わってまず感じたのは、「息詰まった…」
 とにかく追跡する刑事の捜査が理詰めで、着実に相手を追いつめていく。それ は間一髪で次々とジャッカルにかわされてしまうのですが、見ているうちに風采 のあがらない風貌の刑事がどんどん魅力的に見えてきます。

 しかし、ジャッカルの行動は見ているうちにどんどん破綻が目に付いてきます。
 名作としてほめる人が多いだけに、不満も沢山出てきました。

 そこで、『ジャッカルの10の不満』

●不満1 ジャッカルの風貌が平凡すぎる。
 確かにどこの誰かも判らない変装の名人という設定からすれば、平々凡々な 外見が仕事がしやすいのかも知れませんが、最後まで魅力が感じられないし、 狙撃手として銃の腕は確からしいけれど、修羅場で追いつめられたら絶対に逃げ られなさそうなひ弱さを感じます。
 中盤から手刀ひとつでばんばん人を殺していくので、そちらの方も凄いらしい のですが、とてもそうは見えない。

●不満2 暗殺側の連絡員が正直すぎる
 政府側が暗殺側の動きに目を付けて連絡員をとらえるまではいいとして、  「誰からの連絡を待っていたか」という質問の中で「ジャッカル」の名前を 漏らしてしまう。
 どうせ暗号名なのだから、適当な名前を答えておけば良いのでは?

●不満3 ジャッカルは何故本名が割れるようなコードネームを使っているのか
 過去の事件で知られている名前、
 チャールズ・カルスロップ
 の頭三文字ずつを使って CHA-CAL なんだそうですが、すべての捜査はここか ら始まったわけで…。

●不満4 女好き
 フランスに入国する際の国境近くのホテルで、マダム・モンペリエをナンパ。
 未亡人はコマシ易いと言うことなのかどうかよくわからないのですが、殺し屋 が仕事の最中に素人に手を出す必要がわからない。
 後に再登場するのですが、それは成り行きで、この時点で計画されていたとは 思えない。
 濃い関係を持つほど足がつきやすくなると思いますが??

●不満5 ジャッカル事故る
 ホテルからの逃亡。車を塗り直して、ナンバープレートも換えて…
 そこまで周到にしておきながら、峠道で事故って足がつく。
 謎の殺し屋がカーチェイスでもないのに事故るとは…

●不満6 無駄なモンペリエ夫人殺し
 事故の後逃げ込んだモンペリエ夫人邸。
 進んでかくまってくれると言うのだから最後までだまし続ければ良かったのに、 無闇に殺したばかりに、使用人に警察に連絡され、乗り換えた車がわれ、足がつく。

 殺し屋が、こんな無駄でずさんな殺しをやるなんて大幻滅でしょう。
 ここで『ジャッカル本人』の魅力はゼロになってしまいました。

●不満7 サウナの親切な客
 パリに入って、ホテルに止まると足がつくからサウナに向かうジャッカル。
 そこで、世話好きな地元民に声を掛けられ自宅で世話になることに…。
 しかし、都市生活者が、サウナで見かけたよそ者に自分から声を掛けて、自宅 に招くなんてことがあるでしょうか?

 これって、ずいぶんと都合が良すぎるのでは?
 あげくにジャッカルに殺されるなんて、かわいそうな人だ…。

●不満8 暗殺者側の女スパイは、何故公衆電話から連絡しない?
 住み込んでいる大臣の家から連絡するから、盗聴されて足がつくのだ。

●不満9 ジャッカルの最後
 警備員に何ごとか聴いて、ジャッカルはあるビルの最上階だと断定する刑事。
 しかし、このシーンでのジャッカルの変装(老傷痍軍人)は誰にもばれていない はずだし、無数にいる警備員の一人に状況を聞いて、これだと断定する事が出来 る根拠が不明。
 ここまでひたすら理詰めで追ってきたのに、ここだけが直感。

●不満10 狙撃が下手なジャッカル
 車椅子の傷痍軍人に勲章を渡すドゴール。
 狙撃するジャッカル。

 狙われた相手が不意に動いて弾がはずれるのは定番だが、勲章を渡すシーンで 身をかがめたりするのは当然予測可能な動作ではないか?
 経験を積んだプロなら、敬礼の瞬間とか、確実に静止する瞬間を狙うのが当た り前だと思う。

 以上でした。ともあれ、全体の緊迫感の高さに、論理的破綻の多さの アンバランスが気になった作品でした。(1998.8.30)

■デスペラード

 Desperadoとは英語で「ならず者」とかいうような意味らしい。
 映画エビータを見たとき、この映画の主演のアントニオ・バンデラスが 「かっこいい!」と思ったのでいつか買おうと思ってました。

 まず、通して見た感想は「荒唐無稽だが格好いい」ってこと(^^;
 何しろひたすらのガン・アクションで警察はかけらも出てこない所からして、 作り話らしいし、国も時代も定かではないのですが、そういうことには拘らない で長髪バンデラスの血塗れ汗まみれのアクションに没頭する事が出来れば、とて も面白い。
 ちゃんと、笑いもあるし、意外な展開もあるし、美人も出てくる。  いかにもB級な作りを楽しめるかどうかが、好き嫌いの分かれ目かな?

 しかし、仕方のないこととはいえ、味方の死ぬシーンは辛いですね。
 そこまでしなくても良いんじゃないかという気がしてしまう。

★注文を付けたいところ
 たぶん、スペイン語とコロンビアのマフィアがからんでいるらしい所からして メキシコか何かが舞台だと思うのですが、SONY系の初期のDVDには解説チャプター が無いのが物足りないところ。
 ついでに、登場人物たちの、英語/スペイン語のチャンポン語を楽しもうと 思ったのに、字幕が日本語しか入っていないのが不満。
 私(スペインかぶれのヘボギター弾き)にとっては、そういうことが大切なんで すけれどね。(1998.7.29)


■ゴジラ('54)(LD/M/CLV)

 米ゴジラを見て評価するには、やはり初代のオリジナル・ゴジラを見ることが必要ではないかと 思い、正面から取り組む。従って、この一文は初代ゴジラの鑑賞記と言うよりは、米ゴジラを考 えるための材料として書きます。

●映画導入部分における、米ゴジラとの一致点
・登場シーンのくつろぐ船員と謎の生物の攻撃、SOS発信のシーケンス
・ただ一人の生き残り
・ゴジラという名前は、日本の漁村に残る言い伝え
・嵐の晩に踏みつぶされる漁村。
・科学者のリーダーは古生物学者
・破壊された村でガイガーカウンターを使う技術者
・足跡を調べる科学者
・ゴジラは水爆実験の犠牲者

 ここにあげたように米ゴジラは、導入部は「かなり細々した項目を押さえながら オリジナルの雰囲気を追いかけている」と言えると思いました。

●骨組みに関する、米ゴジラとの一致点
・ゴジラを殺したくない科学者の気持ち
・ゴジラは攻撃されることで凶暴性を刺激されていくこと
・基本的に怪獣映画ではなく、災害ドラマであること
・命がけで報道するTVマンが出てくること

 日本の続編のゴジラは、怪獣映画に成っていくのですが、初代のゴジラは水爆実験によって 住処を追われた「ジュラ紀の生物」による災害であるという点を強調しています。
 これは、日本の続編より、米ゴジラの方が忠実に初代ゴジラの精神を継いでいると 言って良いのではないでしょうか。

●論理的連続性
 初代ゴジラには、明らかな反戦、反核の意図と、ゴジラもまた核の被害者で あるという見せ方があり、そのゴジラを倒そうとする人たちと、そのことに痛 みを感じる人との葛藤があります。
 特撮は未熟だし、デザインも後年のゴジラと比べるとカエルみたいであまり 怖くも格好良くもないのだけれど、ただの怪獣映画になっていった続編に対し て、主張の強い、意気込みが吹き出すような映画だと思いました。

 初代ゴジラの最後のせりふは、

 「あのゴジラが最後の一匹だと思えない」
 「もし水爆実験が続けられるなら、あのゴジラの同類がまた世界のどこかで  現れてくるかも知れない」

 となっています。

 愚かなことに、現在まで世界は水爆実験を続けてきました。
 米ゴジラは「水爆実験によって生まれた"同類"」そのものなのでしょう。 そして、もっとも直接的に初代の跡を継いでいる作品であるのだと思いました。

[米ゴジラの感想]


■さらば宇宙戦艦ヤマト(LD/S/CLV)

 劇場公開時には、やっつけてもやっつけてもラッキョウの皮を剥くかのように 敵が現れる彗星帝国の仕掛けに、高校生の私はいたく感動した。
 もっともラストの、古代進がただ一人ヤマトを操縦して特攻するシーンには、子供心にも 「ヤマトには自動操縦装置も付いていないのか?」あるいは 「半物質のテレサが突入するならヤマトがつっこむ必要は…?」など、ストーリーの無理を 感じてはいたのですが(テレサの推進源なんか、考えてはいけないんだろうな…(^^;)。
 この辺の話の強引さは企画・総指揮の西崎義展のせいで、松本零士は強硬に反対したのだとか。

 しかし、今回ひさしぶりに見て感じたのは「アクションの遅さ」でした。
 もっともテンションの高いはずの戦闘シーンなどでも今のアニメーションの水準からすると 特殊効果のスローモーションかと思うほどの動きの遅さ。
 これは何故なのかと考えてみたら、動画枚数が少ないので、早い動きは絵が飛んで しまって書くことが出来ないという事情だったのではないかと、思うのでした。時代が 変わったんですね…。

 因に本作は全体的に 8コマ/秒。銀河鉄道999は 8,12コマ/秒、背景のスクロールは、24コマ/秒などをカット毎に使い分けているようです。
 最近のアニメを代表する「もののけ姫」では標準が12コマ/秒。アクションシーンは24コマ/秒でした。もちろん、タタリ神のうにうにもフルアニメーションしています。


■ガメラ2"レギオン襲来"(LD/S/CLV)

 東宝のゴジラが転けているあいだに、ガメラは見事に復活したという話は以前 から聞いていたのですが、ドルビーデジタルのチェックディスクにデモ画像とし て予告編が入っていてなかなかに格好良かったので、とうとうLDを買ってきまし た。(実は、初代ゴジラの物とどちらを買うか悩んだのだが…)
 それにしても、国産物の怪獣映画を見るなんて「ウルトラQザ・ムービー」 以来かも。

 予告編ははっきり言って息をのむほど格好いいです。畳みかけるようなテンポ。
 「たいてい予告編が一番良いんだ」などという周囲の声はともかく、しかし やっぱり、予告編の方が格好良かったかも(笑)

 とはいうものの、自衛隊をふんだんに投入したリアリティー重視の作り方には すっかり感心しましたし、敵「レギオン」のデザインや設定もなかなかの物だと 思います。
 話の流れとしては、傷ついたガメラをほったらかしてレギオンが侵攻してし まったために、主役の女性がガメラサイド、自衛官がレギオンサイドに分散して ドラマが散ってしまったとか、謎めいた「ガメラと交信する女性」が、ストー リー的に全然居なくて良い存在だったとか、結局ガメラにお任せで人間は見て いるだけに近かったとか、どうも、散漫とした感じがして、監督の力量かなあと 言う気はします。
 予告編は凄く良い絵が連続しているので、要するにテンポと密度が悪いんだと。

 特撮は、ミニチュアと着ぐるみの正当派日本の特撮。
 必ず高圧送電線が出てきてスパークするというのも日本の伝統かなあ?
 CG合成らしきの「ガメラの吐く火の玉」だけは、抜群にリアルというか、 粘度の高い液体風の感触が素晴らしかったですね。
 それから、羽アリのような無数の小型レギオンがびっしりとガメラにとりつい てガメラがのたうつシーンも、視覚的に強烈でした。

 あとはミニチュア撮影の空のスタジオっぽさが無くなれば良いと思いますが。

 外国の大作から見れば色々言いたいこともありますが、ただの怪獣映画という よりは見応えのある作品に仕上がっているとは思いました。ガメラ3の公開も近 いようですので、楽しみにしたいと思います。(1998.7.1)

■もののけ姫(LD/DD/CLV)

★音響について
 わが家は90インチ画面にドルビーデジタル5.1ch完備。
 しし神の森に踏み込むと、こだまの「カタカタカタ…」という音に取り囲まれて、 ひえ〜っという感じです(笑)
 低音もバリバリ入っているので、見終わったらへとへと(^^;

 自分で手を掛けて組み上げたホームシアターなのでそうとう「自己満足」入っ てますが、近所の小さな映画館で見たときには感じなかった迫力や臨場感を感じ て満足しました。
 特に、鬼モードのアシタカの矢の飛ぶ音、たたら場に潜入したサンが短刀を 操る細かな金属音などは、劇場のぐわんと響く音響(の記憶)よりキリリと鮮明に 聞こえて、ぐっと来ます。

★絵、画質
 アシタカ視点で走っていくシーンや、サンがえぼしに迫るシーンなど、 CGによる奥行き方向スクロールあるいは、超ズームアップが多用されていますが、こういう シーンはやはり大きな画面だとのめり込みます。従来作品よりずっと映画的な カメラワークを意識してるんでしょうね。

 しかし、しし神の池の360度パンは、目眩が…酔いました(^^;

 各所で疑問の声が上がっている「ジブリ(徳間)のLDの画質」については、 彩度は驚くほど高いのですが、TVを調節すればよい範囲かと思います。
 ナウシカやラピュタのLDで感じた浅い感じ、不安定な感じは、本作では感じま せんでした。少なくとも私はこれと言った不満を感じませんでした。

 それから、Disk1/2の切れめは、もっと前だったら良かったのにと思いました。
 盛り上がっている最中に切れてる感じがしてなんだか…。

★その他(作品について)
 作品について、劇場で見たときにはなんだか尻切れとんぼ、竜頭蛇尾な感じが して、それは、前半の人間ドラマの緻密さに対して、後半のもののけ、でいだら ぼっちとの戦いが、主人公たる「アシタカ」の手に負えない世界に行ってしまっ た無力さが、観客にも釈然としない気分を残したのだろうと思うのです。
 しかし、今回繰りかえし見て「何度も見るにふさわしい面白さ」が確かにある と感じることが出来ました。
 「でいだらぼっち」の暴走で何もかもぶちこわして、後にはただ緑の山だけが残される。 実に、空っぽな気分になるエンディングも、繰りかえし見れば「ゼロから出発しよう」 という気持が沸いてくるのかも知れません。
 ただ「緑が美しい」という優しい気持になれるかどうかが、この映画を見た人の 評価を分けるのか。…そこで一枚の絵の持つ訴える力が問われるのかも知れません。
 これは、私が見たジブリ作品の中では、「紅の豚」に匹敵する繰り返し耐久度だと思い ます。作品の重量感は全然違いますけれど。
 世界配給を狙うだけ有って、作画も凄いと思います。
 後半の無力感はやはり辛いと思いますが、前半のスピーディーな展開に見られ る監督の力も凄いですし。
 音楽は、至る所ラピュタとか過去の作品の断片を感じましたが、それが悪い方 には行っていないと思います。絵柄が宮崎駿で有るのと同じように久石譲なんだ なあと思います。しっくりくる。

 さらに繰りかえし見たときにやってくる発見が楽しみです。(1998.6.28)

■オネアミスの翼・サウンドリニューアル版(LD/DD/CLV)

★サウンドデザインについて
 オネアミスの翼のドルビーデジタル版は楽しみにしていました。
 最初の映画を見たのは、大学を卒業した春。LDも買いDD盤の発売を知ってから 予習のために何度も従来盤のLDを見ました。

 このサウンドリニューアル盤は、5.1CHの見本市かと言うくらい立体音響が詰まっている。
 とにかくセリフ以外の音は全て新録音で、いちいちリアル。
 特に環境音に力を入れたようで、繁華街のざわめきに対して、リイクニの家は 虫の音が鳴っていたりしていかにも郊外(町外れ)の雰囲気を強調しているし、 工場ではぶ〜んという通奏低音が流れる。
(時々効果音が大げさすぎて、たとえばコンピューターを揺さぶったときに、 空のロッカーを揺さぶるような音がするのはご愛嬌なのかな?)

 セリフも、冒頭のシロツグの独白が後ろから聞こえるのは、回想シーンだから なんだろうし、屋内は全て反響を付けて、戸口に来ると反響が減るなど、まあ 細かい細かい。
 しかし、セリフの残響付けはこれを不鮮明にする副作用もあり、リアルすぎて セリフが後退したような感じは残念。
 あの森本レオの白〜い間が良かったのになぁ(^^;

 というわけで、「サウンドリニューアル版」は、良いとこ悪いとこも有るのだ が、すでに持っている人も買い直す価値があるくらい面白くなっていると思う。  サウンド次第で、アニメでここまで臨場感がだせる。ってことを証明して見せ た。
 アニメの5.1CHは「ノートルダムの鐘」で経験済みで、あれもなかなかの物だ けれど、こんなに自由奔放ではない。リアルでありながら時に芝居臭い大げさ というのが上手くできている感じ。

★画質について
 以前出ていたCAV版はとにかく「ネガにある物はすべてみせる方針」とかで 画面に左右端にも黒縁が有り、やたら小さな画面だった。
 しかし、今回は普通の ビスタサイズになったので、細かな描写が目に飛び込んでくるようになった ような気がする。

 ところで、既存のCAV版の面割りの部分で体が反応してしまう。たとえば、 リイクニが草刈りしていると「あ、裏返さなきゃ」と腰が浮く(^^;
 大した手間ではなくともやっぱり、切れ目は無い方がいいですねぇ。(1998.6.25)


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文:唐澤 清彦 映画館がやってきた!