映画館がやってきた! 映画鑑賞記

宇宙戦艦ヤマト(シリーズ)

さらば宇宙戦艦ヤマト ★

■Story

 束の間の平和。新造戦艦の完成に伴いヤマトは廃艦間近である。
 そこに届いた宇宙からの警告。敵は白色彗星帝国。

■感想

 劇場公開時には、やっつけてもやっつけてもラッキョウの皮を剥くかのように 敵が現れる彗星帝国の仕掛けに、高校生の私はいたく感動した。
 もっともラストの、古代進がただ一人ヤマトを操縦して特攻するシーンには、子供心にも 「ヤマトには自動操縦装置も付いていないのか?」あるいは 「半物質のテレサが突入するならヤマトがつっこむ必要は…?」など、ストーリーの無理を 感じてはいたのですが(テレサの推進源なんか、考えてはいけないんだろうな…(^^;)。
 この辺の話の強引さは企画・総指揮の西崎義展のせいで、松本零士は強硬に反対したのだとか。

 しかし、今回ひさしぶりに見て感じたのは「アクションの遅さ」でした。
 もっともテンションの高いはずの戦闘シーンなどでも今のアニメーションの水準からすると 特殊効果のスローモーションかと思うほどの動きの遅さ。
 これは何故なのかと考えてみたら、動画枚数が少ないので、早い動きは絵が飛んで しまって書くことが出来ないという事情だったのではないかと、思うのでした。時代が 変わったんですね…。

 因に本作は全体的に 8コマ/秒。銀河鉄道999は 8,12コマ/秒、背景のスクロールは、 24コマ/秒などをカット毎に使い分けているようです。
 最近のアニメを代表する「もののけ姫」では標準が12コマ/秒。アクションシーンは 24コマ/秒でした。もちろん、タタリ神のうにうにもフルアニメーションしています。

ヤマトよ永遠に ×

■Story

 宇宙の果てから「人間の脳だけを破壊する」という重核子爆弾が打ち込まれる。
 ヤマトのメンバーが再び集まり、敵の母星にあるコントローラーを破壊しに旅立つ。
 敵の惑星に着いたつもりが、出てきた人間の話によれば、ここは未来の地球だという。 そこで「過去の歴史としてのヤマトの最後」のビデオを見せられ、ヤマトの諸君は絶望する。
 しかしそれは、「敵の母星の地質が波動砲に弱い」という弱点を隠し、ヤマトを追い返すための カモフラージュだった。
 何だかんだあって、事実に気付き敵母星を攻撃、壊滅させるヤマトだが、いつも通り敵は二重構造に なっており、固い芯(惑星の人工核)が残る。これを破壊するためには中に進入して波動砲を撃つしかない。
 たまたま敵惑星に残っていたサーシャ(じつは前作でスターシャと古代守(進の兄)の間に出来た 子供で一年で成長)が手引きをして進入に成功し、サーシャもろとも波動砲で吹き飛ばす。そして、 サーシャの霊体はスターシャの元に返っていく。

■感想

 今回の目玉は「重核子爆弾」と「サーシャ」?いまさらストーリーはどうでもよい のだが(笑) ヤマトの作画について。
 ヤマトは日本海軍のヤマトの殻でカモフラージュして生まれたのだから、基本のサイズは それが基準になると思うのだが、第一艦橋を中から見たときと外から見たときの、人間を描く スケールがでたらめ? 艦橋を外から眺める時、窓に映る人影が異様に小さい。さらに コスモタイガーのサイズはF-15戦闘機より一回り大きいくらいだと思うのだが、 古代君が整備しているシーンを見るとまるで戦略爆撃機のようにでかいし、やはり シーン毎にスケールが変動する。あきれた話である(^^;
 エンディングが、布施あきらと岩崎宏美(?)の歌謡ショーみたいなのもかなりびっくり したのだが(^^;…ほかになんとか締めようがなかったのかなぁ…。

宇宙戦艦ヤマト完結編 ×

■Story

 突然異次元から現れた銀河が、我々の銀河系を浸食する。
 この異次元の銀河の出現星域にガミラス星があったため、ヤマトは お見舞いに出かけるがデスラーパレスはすでに廃墟だった。
 白いバラの花など投げて帰還の途につくヤマトを異次元の銀河が襲い、 ヤマトは無差別ワープで脱出する。
 ところが、脱出した空間には洪水の荒れ狂う惑星があり、古代は 自己中心的なヒューマニズムから溺れる者を救うために着水するが、 大波に洗われ逆に大勢の乗組員を失う羽目になる。 救ったのは一人の少年のみ。
 帰途につくヤマトを謎の艦隊が襲い、艦に刺さって放射線を吐く ミサイルにやられる。船底の乗組員はミサイルの開けた穴から宇宙空間に 吸い出され、宇宙服着用の命令を出した直後、艦橋にもミサイルが刺さり、 古代は宇宙服を着用するまも無くやられる。
 乗組員が全員意識不明に陥ると、ヤマトは自発的に動き出し帰還する。 アナライザーは「ヤマトに命があるのか」と驚いてバラバラに。 (たぶんコンピューターに友の魂が宿っているのだろう)
 帰還したヤマトに森雪らが駆けつけると、ミサイルでめちゃくちゃになった 艦橋は綺麗に片づいており、古代はヘルメット無しで放射線と真空に さらされたわりには生き延びる。(実はガミラス星人とのハーフとか?)
 古代は乗組員を失った自責の念から辞表を出す。

 そのころ宇宙では例の敵が演説。
 彼らの母星は回遊する水の惑星「アクエリアス」が接近したために この星から飛んできた水による洪水で爆発してしまい、 移住先として地球を選ぶ。アクエリアスを超科学で ワープさせ地球に洪水を起こし、水が引いたところに移住しようと言う 作戦だ。
(アクエリアスを一回150光年も、ワープさせる科学があるなら、 母星がやられる前にアクエリアスをどかしてしまえば良かったでは ないかと思うが、そういう機転の利く人物は居なかったらしい)

 アクエリアスの接近を知った地球人は、洪水が起きる間避難するため 全員宇宙に出るが、敵の艦隊に封じ込められる。
 ヤマトも発進するが、新艦長はなんと沖田だった。佐渡先生曰く 「わしの誤診で、脳死に至っておらなかった」とか…。
 敵のミサイル攻撃がヤマトに迫る瞬間、味方の艦が回り込み 盾となって轟沈。(島君、自力で避ける方が速いぞ)
 そんなこんなで一人生き延びたヤマトが「アクエリアス」に到達すると、 ラピュタみたいな浮遊大陸を浮かべた風光明媚な惑星。
 太陽もないのに虹は出るは、逆光でも虹が出るは、斜めの虹が 見えるは…。
 そこに空中投影美人の「女王・アクエリアス」が現れ、 地球とアクエリアスの過去の因縁話。(6千年女王?)
 いよいよ、アクエリアスの最後のワープを防ぐための戦い。
 敵はニュートリノのバリアでヤマトを防ぐ(が、ニュートリノ なんて普通痛くもかゆくもないと言うより、検出さえ難しいと思うけど)
 拾った少年は実は敵の王様の子供で、古代の盾になり 父王に撃たれて死ぬ。「地球では誉められることをしたんでしょ」 と言うのは、文化の誤解である。(森雪が吹き込んだという話もある。)
 島は白兵戦で負った傷を隠したまま脱出の操艦をして絶命。
 ヤマトは「光速の1/2で接近」するアクエリアスと地球の中間点で 自爆して水が降ってくるのを防ぐ事にする。
 自動操縦では失敗する可能性があると沖田艦長が居残る。
 アクエリアスの接近に従って降り注ぐ宇宙雨を受けつつ、 波動砲を自爆させる沖田艦長。
(とはいえ、
1.光速の1/2のスピードで接近する惑星からの水滴では、触れただけで大爆発するだろう
2.同じ大きさの星の引力で、アクエリアスから水が飛ぶなら地球の水も飛んで大洪水。 下手すると地核変動もある。
3.潮汐力で水が飛んでくるほどそばを地球と同じほどの大きさの質量が 通過したら、地球の軌道がめちゃくちゃになるんじゃ…)
 というわけで、ヤマトは真ん中から二つに折れ、宇宙空間に広がる 静かな海原に沈む。船だから。
(聞こえてくる漣の音は、画面手前の見切れた場所に砂浜があるのだろう。宇宙だけど)

■感想

 ヤマトシリーズほんとの終わり(のつもり)。大作2時間40分。

 …そういうわけで、「SF設定、豊田有恒」と有る割には 相変わらず海と宇宙を取り違えたまま、盛り上がりが欲しいと幼い子だろうが どんどん人を殺し、必要とあらば死人も起こし、戦中派の倫理観こてこてで 話は終始するのだった。
 それと、冒頭の「異次元の銀河との衝突」は、放っておいて良いのかな〜。
 恒例のエンディング歌謡ショーは15分、さらに「完」の一文字のみを一分間。 監督の陶酔がにじみ出ているようで恥ずかしいことこの上ない。

 やはり「私たちのヤマト」はTV版第一作と劇場版「さらば…」の二つだけに 絞れてしまうようだ。
 とにかく「話がだらけてテンポが悪い」ので、一時間くらいカットして 100分くらいにまとめるべき。家で妻を相手に画面につっこみを入れ合いながら わいわい見るにはGoodだが、一人で黙って見ると半分行かないうちに寝る(^^;;
 あぁ、西崎氏の息のかかっていないヤマトを見てみたい。

 ヤマトが物理的には『銀河鉄道999』と同じ宇宙を飛んでいるのであり、この宇宙の 物理法則が成立しないのは認めるとしよう。だが、SF的にめちゃくちゃ なのは目をつぶるとしても、人として健全な航海をして欲しい。


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文:唐澤 清彦 映画館がやってきた!