映画館がやってきた! | 映画鑑賞記 |
1583年ベネチア。女性は男性の所有物としてしか扱われなかった時代。 ベロニカ・フランコ(キャサリーン・マコーマック)は青年貴族マルコ (ルーファス・シーウェル)を愛していたが、彼は持参金も用意できない 彼女を人間として対等に扱うことはなく、父の用意した政略的縁談に 嫌々ながらも応じ彼女を捨てる。 尼になるしかないと嘆くベロニカに対して母パオラ(ジャクリーン・ビセット) はただ一つ彼の心を捉える道があると教える。それが「高級娼婦」。 あんまりな母の言動に耳を疑うベロニカだがとにかく経験してみなさいと 薦める母に従って修道院を覗いてみるとそこはまるで女の墓場。それよりは 高級娼婦の道の方が良いと悟る。そして、なんと母も没落した実家を支える ためにかつては高級娼婦として生きてきたのだという事実を知らされる。 高級娼婦とは、日本で言えば芸者や花魁のように芸を磨き、あらゆる 場面で男性を盛り上げ心身共に満足させるプロ。そしてこの時代には唯一 の女性の知識階級とも言える存在だった。 たちまちのうちにベロニカは高級娼婦会の頂点に上り詰め、 (椿姫のヴィオレッタの館のような)彼女の娼館には、ベネチア中の貴族、 政府高官etc.が集まり、当代一の詩人と対決してその才気溢れるシニカルな 詩で彼の人気までさらい、逆上した彼と剣で戦っても互角以上と言える 戦いを披露する。 そんな彼女にマルコは大いに嫉妬し「自分だけのものになれ」と言い 寄るが、やっと彼の心を掴んだ彼女は「そうなった途端に、男の心は離れる もの」と、じらし二人の関係に勝利する。 華々しく活躍する彼女だが、時代は確実に高級娼婦に逆風だった。 キリスト教徒の抗議活動、戦争そして妻たちの嫉妬。疫病の流行を 引き金におきた教会の魔女狩りが彼女の身に迫るのだが… |
文:唐澤 清彦 | 映画館がやってきた! |