映画館がやってきた! | 映画鑑賞記 |
タイのリゾートに遊びに来た若者(ディカプリオ)。日本の大学生の間でも
貧乏海外旅行は流行っているが、まさにそれ。危険な夜の町でドキドキのスリリングな
旅情を楽しんでいる。 彼は、泊まった安宿の隣の部屋の客と知り合うが、大麻でラリっていたこの客は 翌朝自分の部屋で死んでいた。だが、彼は死ぬ前にディカプリオの部屋に「楽園」 の在処を示す謎の地図を残す。 同じ宿に泊まったフランス人カップルを道連れに、地図の島にたどり着くと、 大麻畑。喜んでいると、武装した農民に追われる。 ところが、逃げた先にはまるで、『イージーライダー』が旅先で出会ったような ヒッピー文化、理想主義者のコミューンが有った。 ある女性をリーダーに、自給自足の生活をし、秘密を持たず、高い崖に囲まれて 外界と隔絶した美しいビーチに面した村で、毎日歌い遊んで暮らす。 ホテルで死んだ男は、このコミューンの一員でディカプリオ一行はその情報を 持ってきた対価として「人を増やさず、農民と共存する」という掟のこの村に 参加を許される。 夢のような日々を送るが、メンバーが鮫に襲われ死にきれずに絶叫するのに 耐えかねて、たった一人の看病役をあてがい村から追放。明るさの戻った村に、 空虚さを感じるディカプリオ。 そして、彼が島に来る直前に地図のコピーを渡した別のグループが 島に来たことから、村は武装農民の襲撃を受ける。 農民は「全員で立ち去るか、それとも原因を作ったディカプリオを殺すこと」 を、リーダーの女に要求する。が…
というわけで、今時あり得ない楽園を求めて旅立ったら、やっぱりそこは
矛盾に満ちた世界だった。という話。 |
公開時には相当叩かれて、 ラジー賞 では、最低主演男優賞にもノミネートされている。が、映画が悪いというよりも、 最近の若者は…という世間体による評価のような気もする。
ディカプリオが、村長の女から「渡ってきた若者から地図を取り上げるまでずっと見張れ」
と命令されて一人で密林の中で暮らすうちに、気分がテレビゲームの主人公になったような
倒錯を起こしてなんだか楽しくなってくる…という下りは、画面もニンテンドーっぽくなって
非常にばかげている。
この辺はラストに現実に戻って社会に復帰するための落差を付けようと言う演出
なんだろうけれど、ばかげた感じしかしないし、単純に面白くも何ともない。
というわけで最後には「楽園とは…青い鳥は自分の側にいるんだよ」という話に
持っていきたいらしいが、楽園のあり方が古臭く、今的には現実離れしているため
にリアリティーに乏しく、さりとて、驚くほどの夢を見せてくれるでもなく、
というぱっとしない作品になった。
「タイタニック後のディカプリオ作品」として考えたときに、みんながコケた
気持ちは良く分かった(^^;
撮影時「国立公園の椰子の木の植え替えをして自然破壊だ」とかニュースになっていたが、 画面には結構現実感がない海岸なので、CGIの背景合成で良かったんじゃないかな という気もする。
ちなみに、ロケ地に島は130近く点在しており、このビーチが特別に美しいわけでは
ないけれど、確かに地図がなければ「噂の島」にはいけないような環境らしい。
文:唐澤 清彦 | 映画館がやってきた! |