映画館がやってきた! 映画鑑賞記

パーフェクト・ストーム

■DATA(米)
監督:ウォルフガング・ペーターゼン
キャスト:ジョージ・クルーニー、メアリー・エリザベス・マストラントニオ

Story

 1991年、大西洋沖で三つの嵐が激突、この半世紀中で最大の勢力を持つまでに成長した。
 米国、大西洋岸の漁港でカジキマグロを釣る漁師たち。
 だが主人公たちの船は不漁が続き、船員それぞれの思惑の元に 一隻だけ台風の近づく海に、再び漁に出ていく。
 数日を無為に過ごした後の大漁。しかし、三重の嵐、 パーフェクト・ストームが彼らの帰港を阻んだ。

感想

[2001.2.2](レンタルDVD) ★☆
 久しぶりにLFEがガンガン鳴る大音響の映画を見た。
 後半一時間はず〜っと嵐の轟音の中なのでとても疲れて感覚が 麻痺してくる。登場人物もず〜っと叫んでいる。大変。
 でも最後にほろりと泣けるようなお話。悪くないと思う。ちょっと ラストは「アルマゲドン」の葬式/結婚式みたいなセンスだが、タイタニックでも 歌われた「主よ御許に」の賛美歌が流れるのが海難映画らしく余韻がある。

 予告編を見た限りでは
「嵐の中を漁に出た欲張り船長の物語」としか見えず、頭悪いなぁ と思って映画館にも行かなかったけれど、「止むに止まれぬ出漁の理由」 というのが、それなりに説得力があり、嵐の中を突っ切って帰って こなければならなかった理由もまあ「物語の必然性」をちゃんと 用意しており感情移入の妨げにはならなかった。
 冷静に見れば「命あっての物種だよ、船長」と思うけど。まあ…。

 予告編に出てくる「大波」は最後の最後に出てくる。つまり、真面目に見ていると 「この波は最後じゃない」というのが判ってしまうから、初めて見てもちょっと ネタバレ的だ。
 大西洋の地理は全然判らないから、島の名前や漁場の名前を聞いても全然分からない。 劇中「いっそのことポルトガルにでも行ったらどうだ」というセリフがあるので かろうじてとても東だということは分かるのだが、DVDの付録として海図に船の軌跡を 書き込んだものが欲しいところ。
 漁船の他に嵐に巻き込まれる個人のレジャー・ヨットが出てくるが、オーナーの お馬鹿加減だけが目についてあまり良くないエピソードに思える。遭難について、 自然の猛威の前に人間の過失、悪い人間は基本的にいないこの映画だが、ヨットの 船長だけは個人の判断ミスによる遭難といえるから。
 天気の変化を見せるために出てくる「お天気キャスターの仕事場」のシーンでは まったく興味の無さそうな助手の女が嫌な感じ。
 嵐の全貌を描くつもりならこういうごちゃごちゃしたエピソードも必要だろうが、 この映画ではもっと漁船の6人にフォーカスしてエピソードを絞り込んだ方が 良かったような気がする。

 嵐の中で船長が相当ダイ・ハードな活躍をするが、ちょっと 超人的で盛り上げすぎの気もする。
 思わず「うっそ〜」と叫んでしまう。嗚呼ハリウッド(笑)

 背景の大波はCGIだが、前景の船を洗う波は本物の水らしい。
 これが実に壮絶で、役者が気の毒になるほど。屋内スタジオのブルーバックに 囲まれたタンクでの撮影だが、まさにスタジオの中で遭難しそうなほど。 こればっかりは本当に凄いと思う。

 とにかく目に付くアラはいっぱいあるのだけれど、映画の時間の中では 嵐にもまれて「うお〜、ぎゃ〜」と楽しめば良い 体感アトラクション・ムービーと言ったところだ。

■史実

 この映画は一応問題の嵐を扱ったノンフィクションを底本にしている。
 水産資源に関する統計資料を調べると、70〜80年代以降すべての海域のほとんどの 魚種で漁獲高は激減しており、もちろん大西洋域でも 「今までのポイントでさっぱり漁にならない」という状況は深刻だったものと思われる。

■画質・音質

 とにかく嵐の音が全チャンネルからガンガン出る。
 重低音ダイエットになりそうなくらい揉まれる(笑)
■関連URL

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文:唐澤 清彦 映画館がやってきた!