映画館がやってきた! 映画鑑賞記

ピース・メーカー

■DATA (1997年/米)
キャスト:ジョージ・クルーニー(トーマス・デヴォー大佐), ニコール・キッドマン(ジュリア・ケリー博士)
監督:ミミ・レダー

Story

 旧ソ連領内で核弾頭を積んだ貨物列車が不可解な事故を起こす。
 合衆国の核兵器の専門家ジュリア・ケリー博士は、その事故が核兵器略奪 を偽装するための恐ろしい計画の一部であることを発見する。
 時間との争いの中、 調査責任者に任命されたケリー博士は軍部から派遣されたトーマス・デヴォー大佐 とチームを組むことになるが彼の方針に不満を抱く。 しかし2人は衝突しながらも次第に惹かれあい、国連ビル本部を狙う最後の1発 となった核弾頭を追跡するのだった。

感想

[2000.8.17] VHSレンタル ★☆

[2001.4.23] TV ★
 TVで放映された物を再見。評価下がる(笑)
 ハンス・ジマー音楽だが、冒頭のロシアのシーンに流れる音楽は プロコフィエフのバレエ音楽「ロミオとジュリエット」の中の一曲にうり 二つだ。ロシアっぽいメロディーをどこかから取って来るにしても、こんな 有名な近代の曲を使うならそのまま使って著作権料を払った方が良いんじゃ ないかな。
 アメリカ側のシーンの音楽は、良くあるアメリカ人の士気を鼓舞する音楽。 ありふれた突撃ミュージックだ。

 ミミ・レダー監督は今では結構メジャーだけれど、情感がベトベト して暑苦しい。
 まず、ロシアの核弾頭を解体して運び出すシーンは「蒸気機関車に電子ロック 搭載の貨車」という組み合わせが、確かにロシアでは蒸気機関車も現役なのかも 知れないけれど恣意的な演出だ。
 そこに乗り込んで同胞を殺しまくる軍人も殺される軍人もロシア兵を馬鹿者 として描きすぎ。アメリカ人て嫌らしい。
 盗まれた核弾頭を国連本部で爆発させようと言う東欧のテロリスト。 彼らの描き方も酷い。
 確かに「民族紛争を激化させた責任はアメリカだ」という主張は明瞭だ。
 しかし、人物描写は「巨人の星」の飛馬とバン忠太のごとくすぐに燃えて 抱き合って熱い涙を流し合う…みたいな、どう見ても「同胞愛」よりは「ホモ」 に見える、気持ち悪い男の抱擁が見苦しい。
 国連を核で爆破しようなんて人たちは当然頭がおかしいので、感情表現が 不気味なのは差し引くとしても、こいつら、あんまり頭が良くない。しかし、 テロを計画するだけの知性は感じられた方がよい。
 これからアメリカに乗り込むという前にテロリストが長々とピアノを弾く シーンが挿入されるのも感情的に押しつけがましくて気持ち悪い。
 結局、「ピースメーカー」アメリカの偽善性をちらつかせながら、最終的には ロシア人も東欧人も悪者でアメリカ人は正義の味方さという結論に落ち着く いつものハリウッド映画である。
 ニコール・キッドマンの若々しい活躍が見られる所だけが救い。


■関連URL

[戻る | 目次]
文:唐澤 清彦 映画館がやってきた!