映画館がやってきた!

ロードショー鑑賞記1998


 ホームシアターと、ちょっと離れますが、映画館で見た作品の感想を書きます。 今後LD/DVDで発売されたときの参考にもなりますように(^^)  率直な感想を書きたいので、筋や結末に触れることもあります、ご注意を。 ネタバラの可能性のある部分は"字下げしてグレー表示"しています。

タイトル上映館音声日付
GODZILLA(日本語字幕版)日本劇場(有楽町)SDDS 7.13
TAXiSRD 8.
スプリガン日本劇場(有楽町)SRD 9.13
マスク・オブ・ゾロ日本劇場(有楽町)SDDS10.22
タイタニックリッツ劇場(錦糸町)
みゆき座(日比谷)
dts
SRD
11. 5
11.11

■タイタニック

 今回は珍しく『いけません』の話。
 タイタニックの凄さについては、あちこちで読めるから今更触れませんが、
錦糸町「リッツ劇場」はいけません。
 タイタニックも丸一年の上映をむかえ、上映も最後だろうし、時間もある
と、気楽な気持で入ったのです。もともと、古い劇場だというのは承知して
いましたが、それにしても…と思ったので、この場で細々と訴えておきたい
と思った次第。

 まず音。看板はもとより、映画にDTSロゴがちゃんと出てくるので、設備は
間違いないと思いますが、やっぱり、フォーマットだけ対応しても、駄目で
すね。
 ロゴの部分では有る程度低音もあったように思うのですが、本編のBGMの
低音(LFEに回らない程度の50〜100Hzとおぼしき帯域)が、わが家で見る
市販ビデオで、メインSPだけ鳴っている状態でも「ドーン」と響いているの
に、リッツはすかすか。
 もちろん、サラウンド感もなんだか乏しい。
 フォーマットはDTS対応していても、スピーカーやアンプの類は、壊れる
まで古い物を使い回そうという魂胆ではないかと、疑っています。

 もっと良い劇場でお払いしてこないと寝覚めが悪いや(苦笑)
 …と思い、速攻で日比谷のみゆき座に行って来ました。

 こちらも、建物は古そうですが、音響はSRDで、まずまず。
 ほっとしました。

 次に画質について、フィルムもくたびれているのかも知れませんが、
全体的に暗いのはもともとの色調でしょうが、ハイライトの飛びがなんだか
多くて全体的に白くもやもやしている。
 さらに、ロールごとにカラーバランスが違う。肌色の赤みや、海の色が、
なんだかコロコロ変わる。(自宅で見るビデオではそんなことはない)
 いったいどんなフィルムを使っているのか、ちょっと謎です。

 全体的にセピアがかっているのは、古い時代を扱っているので、演出かも
知れないし、長い上映でフィルムがくたびれてきていると思えないこともない。
どちらとも判別が付かないのは不安です。
 あぁ、公開初期にもっと見ておけば良かった…(^^;;


■マスク・オブ・ゾロ

 この映画を見に行く前にちょうど「アランドロンのゾロ」が放送されたので、
何となく見比べると面白いかなと思っていたのですが、ゾロ映画に背景以外は
これと言った決まりはないようですね。

 ホプキンス(旧ゾロ)とバンデラス(新ゾロ)の二人のゾロが登場するのですが、
年は取っても気品に満ちたホプキンスに比べ、盗賊上がりで旧ゾロに拾われ訓練
されるバンデラスの新ゾロは、それゃもお小汚い小僧。
 敵の屋敷のパーティーに堂々と紛れ込むために「気品を身につけろ」みたいな
ことを旧ゾロに指示されて特訓&変装するわけですが、パーティーで
「汗くさいのは嫌いで…」とか言ってのける割にどうも「ぎらぎらに獣的」なの
は…、演出かも知れないけれど、スマートで格好いいバンデラスを見てみたかっ
た客にとっては、もひとつ納得のいかない所ではなかったかと思います。
 ま、タイプを分けるならエビータのバンデラスか、デスペラードのバンデラス
かってことですね。

 冒頭の旧ゾロの現役時代の活躍シーンは、アランドロンのゾロにもあった爽快
で格好いいシーケンスです。文句無しに気持ちいい。
 これにくらべると新ゾロ、バンデラスには爽快なチャンバラはあまり無い。
 いちばん見せるのは、旧ゾロの娘とのチャンバラでしょう。予告編でもくり返
し見せてくれましたが、やっぱり素晴らしい。ゾロが主導権を握っているようで
いて、ずばっと切り込まれたりするとわくわくしてしまいますね。

 新ゾロはどうも、もう一つ格好良さを抑制されている気がします。
 馬泥棒シーンは新ゾロのデビュー戦で、腕前イマイチ、強運で乗り切るが、
どうも、愛馬と目を付けた馬には馬鹿にされて、ちっともまともに乗れない。
(馬が笑うってのは、ひょっとしたらCGI効果かしらん?)
 馬に笑われるのはジョークとしても、この格好良くなさ加減は、ひょっとした
ら続編への布石では…と勘ぐりたくなるほどであります。

 もう一つの問題は、悪役の悪さが明瞭でない所か。
 農民に対する厳しい圧制を敷く「体制側の象徴」というのが、ゾロの戦う相手
だと思うのですが、さらってきた農民を使っているとはいえ、
「金で支配権を買おうとする」という悪役は、ちょっと憎しみの入り方が浅く
ないでしょうか? ずる賢い小物に見えてしまいます。

 吹き替え無しだというフェンシングの技はなかなか見物で、素晴らしいと思い
ましたが、最後の決戦に至るとどうも散漫になったような気もします。
 長すぎるんですな。

 色々考えるに、ゾロが二人。敵も提督と、親衛隊長の二人で、戦いの視点が
散ってしまい、悪者も黒幕と部下の二つに散ってしまい、最後の山場に引き
つける力が分散してしまったのではないかと思います。
 ホプキンスの旧ゾロの死を最後まで引っ張らずに、適当なところで新ゾロに
全てを背負わせるという流れにすれば、ぐっと引き締まったのでは?
 さらに、ホプキンスの「大人の格好良さ」と、バンデラスの新人ゾロとしての
格の違いを書き込むあまりに、バンデラスを生かし切れなかったところが、
爽快さが得られない原因になっていると思います。

 とはいえ、最後の鉱山大爆発のシーンの火薬の量というのは異常なまでの物で
正直、圧倒されました(^^;;

 全体的にとても面白かったですが、「もっと面白くなるんじゃないのか?」
という勝手な期待感が騒いでしまった…というのが、この作品に対する私の評価
です。

■スプリガン

総監修/構成  大友克洋 
脚本/監督  川崎博嗣 

 予告編が大変期待させる出来だったもので、事前に原作コミック(たかしげ宙)
を読破した。これが面白い。壮大なスケールのミステリーと主人公の成長物語。

 古代の超文明を封印することを目的とした調査機関&私設軍隊「アーカム」
 そのNo.1用心棒である高校生、御神苗 優。
 そして、彼らを遺跡を守る妖精の意味である「スプリガン」と呼ぶ。

 古代文明をキーワードにした様々なアイテムが面白いし、主人公の成長物語は、
拳法マンガのそれであったりする。
 主人公が高校生なので、学園モノでもある。
 メカも登場するし、超自然現象も起こりまくる。
 まあ、ちょっとカルトだけれど、面白くなる要素てんこ盛りの原作だと言って
いいでしょう。

 さて、公開当日には行かなかったものの、時間を見つけていきました。

 映画では、原作の「ノアの箱船」のエピソードを取り上げて居るのですが、
そのために、成長物語や、学園モノである面白さは入り込む余地がありませんで
した。もっぱらアクションと、破壊のカタルシスで見せることになります。

 しかし、なんだか見終わって心の底からスカッとしない。
 たとえば、トルコの市街地での追いかけっこシーンがありますが、ルパン三世
だったら、走っているだけで楽しいのですが、そういうのが無い。スピード感は
有るのだけれど、爽快感が…

 アクションシーンなどはアニメの得意分野だと思うのですが、いまひとつ。
 なんか、画面がごちゃごちゃしていてよく分からない。一騎打ちなら、
もののけ姫のサンとえぼし御前の名シーンが思い浮かびますが、そういう緊張が
ない。原作マンガの方がアクションを感じるのはどういうことだろうと思って
しまいます。

 オリハルコンの繊維で作った強化服の威力とか、原作での重要なアイテムが、
主張していないのも、ツボを外された気分です。
 強化服を着ているために、30倍の力が出る。…と言葉では説明されていました
が、映画の中では、簡単にぶっ飛ばされたり、めちゃくちゃ強かったり、首尾
一貫していない印象を感じました。

 超人的な戦士であるが故に、原作では戦いの中にも静けさのようなモノが感じ
られるのですが、映画は単純な力と力に見えます。

 TVの特番でdts音声について触れられていましたが、アクションの緊迫感につ
いて、音響が失敗していたせいもあると思います。
 ま、映画館の設備がしょぼいのも有りましょうが、始終ぐわ〜んと大音響で、
間がない。ひたすらうるさい。
 銃の手入れをする効果音などがTVで紹介されていましたが、1000人もはいる
映画館の音響ではブヨブヨよ拡大されて、まったくリアリティーが損なわれてお
り、悪いところばかりが耳に付きました。
 ノアの崩壊シーンも、抜くところを作らないとうるさいだけなんですね。

 全体としては、なかなか楽しかったのですが、原作の面白みがどうも生きて
おらず、アクションの速度だけで点数を稼いだ感じでした。

 日本のSFアクション系アニメの中ではかなり高い水準をいっていると思います
が、もっと監督/演出に力が欲しいところです。
 大友さんの監修ですが、随所に『アキラ』臭さが出ていたのは、大友ファン
には良いのでしょうが、私も何度も繰り返し見ている作品だけに、奇妙な既視感
におそわれて、『スプリガンを見ている』という気分が削がれたという逆効果も
感じました。

 音楽はなかなか良かったですね。
 エスニックな女性ボーカルの響きは『攻殻機動隊』でも使われていましたが、
今回は舞台が日本〜トルコでもあるし、しっくりきていました。

■GODZILLA(日本語字幕版)

○ゴジラその人
 まず、一番の問題になっていると思われるゴジラ本人のデザインについてです が、玩具で見るとエイリアンみたいでとっても変ですが、映画では全く不自然に 感じませんでした。
 というのも、映画の中でも全身が写るのはわずかなシーンで、ほとんどは、手、 足、頭、しっぽなどの部分のアップ。全身が写るときも、後ろ姿だったり、とに かく全体の形がよく分かるようなシーンがあまりない。そして、たいてい玩具と 違って前傾姿勢を取っています。
 その上で、部分部分がなかなか良くできているので「とてつもなく大きい物」 というイメージだけが強烈に残ります。

 マンハッタンのビルのあいだを、ずお〜っと通り抜けていく様は、スター ウォーズのオープニングで戦艦スターデストロイヤーをなめていくショットの イメージで、ゴジラでは、窓の外を鉤爪が見え、胴体が通り、足が見えて、 しっぽが長々〜と通り過ぎてゆき、最後に左右に揺れるしっぽの先が高層ビルの 窓ガラスを「ずしゃ〜」っと壊して去っていく。
 これで「お〜でかいなぁ」と思ってしまう。なかなか良くできたショットです。

 初代ゴジラの精神に忠実に作ったと監督は言いますが、確かに、核を持った 人間の愚かしさに自然からの報いを受けるという点は同じだと思いました。
 最初にゴジラにおそわれるのは日本の遠洋漁業船なのですが、画面に東洋人が 写っているとなんとなく「日本映画みたい」と思ってしまうから不思議。

 今度のゴジラはもちろん、初代と血のつながりがないのでデザインが違うのも 当たり前といえば当たり前なのですが、「人にゴジラと呼ばれる存在」と考えれ ば納得がいくのではないかと思います。

○特撮
 特撮の出来に関しては、ジュラシックパークと比較されるのだろうと思います が、ジュラシックパークがクローズアップが多かったのに比べて、ゴジラは 雨の中のロングショットが多いので印象はだいぶ違います。ただ、カメラ自体が ゴジラを追って高速で移動するシーンが多いのが最大の違いでしょう。
 とにかく全編スピード感があふれています。

○人
 私はもともとLEONから入ったジャン・レノファンなのですが、 ゴジラではジャン・レノが実に良い役(謎のフランス人(^^;)をやっています。
 ジャン・レノファンは見るべきでしょう。じつにオールマイティーな鉄人ぶり を披露してくれます(^^) ジャン・レノは、なんだか死に役が多いのですが、 今回は最後まで格好いい立ち回りが見られるので、ファンとしては安心です(^^)

○音響
 音響的にはソニー系列だけあってSDDSがメインフォーマットなのですが、 マリオンの日本劇場では結構迫力のある音がしていました。
 最高の音で聞くためには映画館の中央で聞く必要があるのですが、良い席は しっかり指定席エリアなんだな。
 前の方に座るとフロントチャンネルの音しかしないので、ぜんぜんサラウンド になりませんが、ある程度後ろなら無数に飛び交うヘリやミサイルの音で目が 回りそうな感じです。早くDVDで発売されて自分のホームシアターで見るのが 楽しみ。SONYが自社のDVD機器の宣伝に使っているので間違いなくDVDで発売され るでしょう。

 雑誌記事では監督が次回作についても臭わせていますが、ぜひ続編を作って もらうためにも、映画館に行きましょう(^^)

●グッズ
 玩具サイズだとエイリアンみたいで可愛くない米ゴジラですが、二頭身に デフォルメされたマスコットサイズのゴジラが、そりゃも〜可愛い。 大きさは、高さ25mmくらい。
 イメージとしては眼光鋭い「ごきげんザウルス」(?)という感じかなぁ。 吸盤でくっつタイプと、ボールペンのノック部分にゴジラがついているタイプがあり、 腰がどっしり座ったデフォルメキャラが実にいい。買いました(^^)


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文:唐澤 清彦 映画館がやってきた!