映画館がやってきた! 映画鑑賞記

みんなのいえ

■DATA (2001年/日)
キャスト:

Story

 家を建てる。それは家族にとっての夢。しかし、両家の親にも、建築家にも別々の夢があって 三つどもえの衝突が起きる。

感想

[2001.7.8](VC市川#2) ★★
 久しぶりの映画鑑賞。VC市川に行くと日曜の15時頃人で溢れている。珍しいことだが、 『A.I.』と『ポケモン』を上映しているためらしい。『A.I.』なんか3スクリーンを 順に使って毎時見られるような状態。えらいこっちゃ。
 そんな中で『みんなのいえ』は、#1(A.I.)の隣の小さな#2スクリーンで、程々の 入りで鑑賞。といっても、100人弱は入っているようだから盛況とも言える。「ブランチ」 のランキングでは4位だったかな?(すぐ上には健さんの『ホタル』も居る)
 ともあれ「夏の映画界は盛況じゃないか」と思う。

 さて、本題。
 客席は若いカップルからおばちゃんの二人連れまで年齢層も幅広く、上映前から なんだかくつろいだ雰囲気。なぜ(?)
 そういうところは三谷監督の「一年に一度しか映画館に行かないような人にこそ見て欲しい」 という狙いが当たっているのかも。と思える。すでに公開一ヶ月になるので客席にはリピーター も多いのかも知れないけれど、ギャグの入りに「待ってました」という空気が客席に 漲るし、オチを受ける客席になんとも言えない一体感がある。
 結構、監督も沢山のTVや雑誌に出まくってギャグや見所を紹介してまくっていたから、 たぶん初めて見る人だって「お、笑いどころだ」と分かってしまうし、全く予備知識が なかったとしても、ここは笑いどころというのが察知できるのが、なんて至れり尽く せりな脚本なんだろうと思ってしまう。
 『ラヂオの時間』は、どんどん話が盛り上がって、怒濤のクライマックス(といっても ほのぼの終わるのだが)があって、今回の『みんなのいえ』には、そういう流れに沿った 加速感は無い。
 家を建てる。設計家と建築家がもめる。施主がオロオロする。いつしか対立は和解し ハッピーエンドという大きな流れはあるけれど、基本はその場その場の小さなギャグの 積み上げ。そして、呆れるほど繰り返し出てくる小ネタが、何回繰り返しても笑える 不思議とか、そんなところに笑いどころがある。
 本当のところを言うと「どんどん家が建っていく」という、仕事の面白さはちょっと 物足りない。工事現場を早回しで観察するような、そういう楽しみも期待していたのだが、 設計家と建築家の対立と和解がテーマになっているので、家そのものが一体どうなって いるのかという見通し、明快さが弱い。
 そこが「舞台作品」と「映画」の違いだと思うのだが、人間関係の面白さはどちらで 表現することも出来るけれど、実際に「家一軒建てる」ということは、舞台では絶対 不可能、映画でしか出来ないことなのだから、そこを最大限に生かして欲しかった 気がする。新築祝いなら、お客さんは飲み食いしているだけじゃなく必ず家の中を 隅々まで案内して主人に説明してもらうものだから、この映画でもできあがりの家を じっくり見せて貰ったら、とっても満足できたのじゃないかな?
 あとは、大勢出てくる大工の長一郎の仲間たちに、良い役者を使っているのだから、 もっと出番があると良かったのにと思う。
 土建屋、左官、電気屋etc.の出番はそれぞれあるが、もっと「見せ場」を持たせて あげたかった。いつも現場で着替えている怪しい親爺とか、ビデオを回している親爺 とか、変なキャラは大勢居てみな引っかかりは残したが、もったいない。ひょっとして、 編集で切られてしまっているのかも知れないけれど…。
 と、監督にお願いしたいことはあるのだが、 施主の飯島直介(田中直樹)と妻民子(八木亜希子)の二人が建築家や親戚に 振り回される様は、絶対現実に有りそうで、でも「有ったら嫌だな〜」という とんでもないエピソードばかりで可笑しくもリアリズム。
 インテリア・デザイナー柳沢(唐沢寿明)と民子の父で大工の棟梁長一郎(田中邦衛) の激しい衝突は、世代の壁とか、職人と芸術家の気質の違いとか、役者の持ち味 全開でハラハラ、ドキドキとんでもなく可笑しい。
 一時も笑いの途切れることがないってことは大変な映画だと思う。

 有名俳優がノンクレジットでゲスト出演しているのも「お楽しみ」なのだが 地鎮祭の神主氏は、こんなに長く演技してノンクレジットか〜と思うほどの 出演だった。

  • みんなのいえ・公式ページ
     録音部のスタッフコメントの中に「監督は”その気持ち”を映像に変える時、誰よりもセリフを大 事に考えてくれるので、録音部としては、とても助かったと思います。」と あるのだが、確かにこの作品は、もの凄くセリフが明瞭で、聞き取りにくい言葉が一つもなかった。
     ただ、劇場のせいか、画面の外の人の声だけが聞こえるシーンが沢山あるのだが、 妙にエコーがかかって質感のおかしい所がいくつか有った。自宅でDVDで見たら、 すっきりいい音に聞こえるだろうか?

    DVD

    [2002.1]
     東宝も頑張って「二枚組で6,000円」。独立した特典ディスクには建築マメ知識 から、「めざましテレビ」の特集を編集したメイキング、「英語の映画紹介番組の パロディー」のメイキングまで盛りだくさん。

     HiVi 2002/2月号のVSV13、『みんなのいえ』の特典映像 「みんなのみんなのいえ」へのコメントの間違い
     「映画評論家が構成したインタビュー」と紹介されているが、この作品は 三谷監督が脚本を書いたインタビュー形式のパロディーだ。
     前作『ラヂオの時間』の特典「ラヂオの時間の時間」は、どこから見ても 本物のインタビュー番組にしか見えなかったけれど今回、「みんなのみんなのいえ」は最後 まで見ると徐々に「なんか、変」と気づくように出来ている。
     レポーターがさわりしか見ないで記事を書いているのがばれてしまう。しかも、 編集部の誰も気づいてないのも情けない…

    玄関は外開きに決まってる
     映画では良く、部屋に立て籠もってバリケード作るシーンがあるけれど、内開きの外国のドアだと バリケードが有れば開かなくなるけれど、日本だとバリケードの有無に関わらず取りあえず 開けることは出来そうだ(鍵が壊せれば)。
     「米国の住宅ってバリケード攻防戦のために内開きなんだ。さすが犯罪都市シカゴ」(?)
     などと考えたが、実は「日本では玄関で靴を脱ぐスペースが必要だから外開き」というのが 実際的な理由らしい。
     しかし体当たりをしてドアを壊すのも、内開きならでは。外開きのドアに体当たりしても 痛いだけで壊れない。日本のドアは体当たりに強い(笑)


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    文:唐澤 清彦 映画館がやってきた!