映画館がやってきた! 映画鑑賞記

真夏の夜の夢

■DATA

Story

 シェイクスピアの戯曲「真夏の夜の夢」の舞台を「自転車が流行りはじめたイタリアで、 まだまだ封建的権威は生きているが、女達の服装は身軽になり、自立を意識しはじめたような 時代。」という設定で、原作にほぼ忠実に演じる。
 女達の力が原作より少しだけ目立つのが現代的なアレンジ。

感想

[2000.2.14 イイノホール(日刊スポーツ試写会)]
 イイノホールは初めてだが、作りは音楽会用のホールで、舞台の一番奥に小さめの スクリーンがある構造で、音はそのスクリーンの裏から出てくる。はじめてみる映画 だから本当の音響はわからないが、屋外のシーンでも洞窟の奥から響いてくるような ボワーンとした音響だ(^^;;
 前回妻が見た「アンナと王様」は立ち見を入れても入れない。というくらい人が居 たが、今回はギリギリ99.9%という感じ。そんなに招待券を配るとまた暴動が起きますぜ… と思う。

 さて、肝心の内容はシェイクスピアの「真夏の夜の夢」を回りくどいところを省いた くらいで、ほぼ完全に忠実にドラマ化した感じ。
 テクニカラー的濃厚な緑の野山の中に城と都市が浮かんでいるような長閑な土地。
 暗闇を飛び回る妖精達の光点は、金色の鱗粉をこぼしながら舞う。たぶんCGIを使え ば楽々出来る効果だけれど、「いま妖精映画を作ったら当然こうなる」と思うような、 絵本に出てきそうな、ぴったりイメージ通りの妖精。
 主役になる三組のカップルは、いかにもシェイクスピア劇に出てきそうな感じで なかなか良いが、ソフィー・マルソーが演じる「領主のフィアンセ」だけは、 大人の色気と知性が漂っていて「少年のような少女」が定番のシェイクスピア劇の ムードの中では異彩を放っていた。そして、それ以上に怪しかったのが 妖精王オベロンの妻タイタニア。妖艶パワー全開(^^)
 ハーミアとライサンダー、ディミートリアスとヘレナはいかにも元気な喜劇の 登場人物という感じの役者だ。
 オベロンが若くてはつらつとした雰囲気で「妖精の王」という感じが良かったが、 いたずら者の妖精「パック」はちょっとオヤジっぽく額にシワはあるし短い角なんか はやしちゃって、ちょっとイメージが違う。…とはいうものの、私のイメージの中の 妖精パックは「ガラスの仮面の北島マヤ」だったりするので、自慢は出来ない。 でも日本人の相当数のイメージは"あれ"だと思うけどな(^^;;

 BGMはカバレリア・ルスティカーナとか、イタオペの名曲とかを使用して、 日常クラシックを聴かない人には映画音楽に聞こえるのかも知れないけれど、 ちょっと「あり物で済ませた」という気分がしないでもない。映像の上では 登場人物がレコードをかけるというシーンと音楽を繋げたりしていたが。
 妖精達の宴会シーンは、(舞台はイタリアなのだが)ケルティックな音楽が流れて 人間達の宴と異質な感じをかもしていた。もっとも楽器が現代的なクラリネット など、ちらっと映っているのは「なんか、おかしい」と感じたが、たぶん そこまでこだわって作ってはないな(^^;
 妖精の衣装はほぼ「舞台衣装」のイメージ。ロバのメークが良くできている ことを除けば、スターウォーズのようなクリーチャーは居ない。

 恋人達のドタバタが全て終わってからの劇中劇は、もともとおまけっぽい なあと思ってしまうのだが、その出来はまあまあか? 舞台版の真夏の夜の夢 を見たことがないので比較できないけれど。笑えたから。

 最後に流れているクレジットをず〜っと眺めていたら、最後の最後に 「この作品は、一切の動物虐待をしていません」という一行が。
 英国ではアビスで液体酸素の中にネズミを沈めるシーンがカットされたとか言う 話も聴くが、けっこう作る方も大変なんですな。


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文:唐澤 清彦 映画館がやってきた!