映画館がやってきた! | 映画鑑賞記 |
物語は交通事故の不始末が原因でとある組織の下働きをする羽目になったジェリー(ブラッド・ピット)が
メキシコにザ・メキシカンと呼ばれる伝説の銃を引き取りに行くという話。ところが、この銃を手に入れたいのは
一人ではなかったために恋人サマンサ(ジュリア・ロバーツ)が人質として殺し屋リロイ(ジムズ・ガンドルフィーニ)に
拉致される。 一方ジェリーは銃を受け取った直後に祭りの流れ弾に当たって死んでしまった取引の相手を背負い込むことになるが 相手が組織のボスの孫であり、おまけに地元のこそ泥たちに車ごと銃もなにもかも盗まれドツボにはまる。 ゲイの殺し屋と彼の愛を信じることができないサマンサの心の旅(?)と、やることなすことドツボにはまりながら 銃を追うジェリーの二つのロードムービが、美銃「ザ・メキシカン」の伝説を挟んで展開する。 |
どういうわけか、世間での評価は低くて実際興行もふるわなかったようだが、私はブラピの魅力全開のコメディーで
良い映画だと思ったけれどな。ブラピは美形だが、美形を振り回すような役より持ち味は素朴な青年を演じたときが
いい。ジュリア・ロバーツにアンチが多いのはしょうがないかも知れないが、今回は心の底は良いやつなのだけれど
彼氏の前ではつい過剰にわがままになってしまい良い人間関係が作れないと言う役。それでちょいと態度が鼻につくのは
確かだけれど、殺し屋とのハートウォーミングなシーンとの対比だと思えば。コメディーなんだし。
最初ジュリアロバーツとブラピの物語がまったく別々に進んでいるように見えて違和感があったが、ブラピが
殺し屋を殺したラスト30分から突然シリアスに変貌し、なにもかも一気に収束していく。
完全に「お友達」として客に感情移入させていた殺し屋を主人公がやっちまうのは反則かも知れないが、
一応理詰めの説明は有ることだし、そんなことはともかく、ブラピの演技は「ジェリー」そのもので良い。
大スターになるとついつい役より役者が出しゃばってしまうものだが、それが無いのが彼の光っているところ
だと思う。その点でジュリアは何をやってもジュリア・ロバーツに見えてしまうのだけれど。
そうそう、犬と殺し屋を忘れちゃいけない。
主人公がメキシコで「メキシコらしい車」をレンタルしたら車に付いてきてしまった犬。手の着けられない
狂犬のような面相をして荷台に陣取って動かない犬だが、銃で脅した瞬間に言うことを聴いたかと思ったら、
旅を続けるうちに次第に賢さを発揮して、ストーリーのスパイスのように効いている。可愛いやつ。
殺し屋とジュリアの旅は互いの心を癒し合うようなストーリーになっていて、裏の社会を歩き続けてきたからこその
人間観察で彼女に優しく接するのだけれど、殺し屋の性からは逃げられないという悲しさもただよわせて、第三の主役
を存在感たっぷりに演じている。
舞台がメキシコだから、ラテン的な陽気さと呑気にあふれているのもポイントか。命が危ない追いかけっこなのに
からりとした空気に満たされているのが良いんだなぁ。
●DVDについて
おまけはメイキングと予告編、キャスト、スタッフなど。平均的。
画質はこってりした色乗りで解像度も高いけれど、クロマズレで色が遅れているのが遺憾。滲みもある。
25インチのTVでも冒頭の信号機などみると、盛大に色がはみ出しているのがわかるくらいだから困ったものだ。
文:唐澤 清彦 | 映画館がやってきた! |