映画館がやってきた! 映画鑑賞記

インビジブル

■DATA (2000年/米) 原題: THE HOLLW MAN
キャスト:ケビン・ベーコン

Story

 軍の出資で行っている秘密研究。透明人間プロジェクト。
 透明化は簡単だったが、元に戻すことが難しく計画は難航していたが プロジェクトリーダーが天才の閃きでこれを可能し、動物実験を成功させる。
 だが、成功はこの研究を軍に引き取らせてしまい、極秘故に科学者として 名を売ることも出来ない制約から、彼は成功を隠して研究を続行し、 自ら「世界初の透明人間」になることを望む。
 透明化は成功するが、スタッフは目に見えない彼が何かしでかすのではないかと 不気味に思う。
 そして、一週間後非透明化の血清を注射するが、人間のDNAの複雑さの故か 実験は失敗。彼は戻れなくなってしまう。研究を続けるスタッフだが、透明化 した本人は次第にストレスを募らせ、研究所を飛び出す。
 そして、彼に手を焼いたスタッフが上司に報告して事態を収束させようとした 時、透明人間の殺人が起きる。地下深くに隔離された研究所の中でスタッフと 透明人間の死闘が始まる。

感想

[2001.8.26](DVD) ★★
 発売即日4月に買って4ヶ月も積んでいた物だがやっと鑑賞。(妻と見ようと思ったのだが、 怖い物苦手なのでなかなかタイミングが…(笑))

■CGとサウンドが凄いぞ
 特典映像の中で「ダイナソーの100倍凄い」とスタッフが言っていたが、確かに 特撮、CGと実写の融合の度合いと緻密さ、CGに演技をさせる繊細さという点で 前代未聞のことをやってのけたと見える。
 とにかく人間の内臓や筋肉などの常識的にはグロテスクな映像を「芸術品」のように リアルを越えた美しさで仕上げたことは凄い。透明か過程は何度もリプレイして トコトン味わいたくなるような、人体の神秘に触れさせられるような感動がある。
 透明化した後の映像も、足跡のみ、煙、雨、水、消火器、血糊、ゴムマスク、 シーツetc.とあらゆる状況下で見えたり見えなかったりする透明人間を極めて 「さも有りなん」なリアル映像で見せる。
 そして、サラウンドを活用して音だけの移動感も、他の役者の視線移動 と声の出る場所の意外性のトリックを活用して効果満点だ。

■このストーリーをあのP.バーホーベンが?
 もう、映像のインパクトだけで満点を与えられるような作品だが、 最初はただエキセントリックでつき合いにくい天才肌の研究者が、 透明であることを利用して悪事を働き、さらに戻れなくなったことから 次第に狂気に落ちていくという、シチュエーション悪化の長い長いクレッシェンド がヒタヒタと進行する上手さが本当に決まっている。
 じわじわと悪くなる状況は、いきなりの心臓に悪いびっくりを押さえつつ しかし着実に悪くなっていくのが、巧妙のひとことに尽きる。

 とにかく、今までのP.バーホーベン監督作品のトレードマークであった 「下品で悪趣味」が良い方に昇華したように見える。
 カットシーンに透明人間のレイプシーンがあるが、これを本編から省いた 判断は全体の流れからはまったく正しいが「あのグロ専監督が!」という 驚きはある(笑)

 一つ物足りなかったのは、これだけ悪くなってハッピーエンドは無い だろうということ。主人公は透明人間で悪に落ちるが、透明状態から戻れ なくなって精神を失調するのは悲劇でもある。これと戦う元彼女と彼氏は、 彼女はともかく彼の方は主人公の透明人間プロジェクトに参加している 「非」天才科学者だし、これと言って魅力があるわけではない。どちらか というと、常識人めかした嫌な奴でもある。彼を主人公と 戦わせてどちらが生き残るかと言ったら、たとえ「狂った透明人間が社会 に出る」ことが悪夢だったとしても、感情的にはあんな脇役が生き残っても つまらないな〜と思えるのだ。
 どうせ、じゃんじゃん死んでしまうなら「誰も生き残れなかった」 という結果の方がつまらない脇役が生き延びてしこりを残すよりすっきり しているのでは。そう思う。


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文:唐澤 清彦 映画館がやってきた!