映画館がやってきた! 映画鑑賞記

ハリー・ポッターと賢者の石

■DATA (2002年/米 原題 )
スタッフ: キャスト:

Story

 階段の下の物置小屋で誰にも愛されずに育ったハリー・ポッターの11歳の誕生日に 魔法学校から入学許可の手紙が届く。ロンドン駅の9と3/4番線から汽車に乗ってたどり着いた先は ホグワーツ魔法学校。仲間たちと勉強を始めるハリーだが、かつてハリーの両親を殺した悪い魔法使い が復活のために「賢者の石」を狙っていることを知る。
 敵は魔法学校の教師の誰かに乗り移っているらしいのだが、校長先生たちは取り合ってくれない。 しかし敵は「賢者の石」の隠し場所を探り当ててしまった。
 ハリーと仲間たちは自分たちの手で賢者の石を守り悪い魔法使いの復活を阻むために、子供たちだけで 敵の待つ地下迷宮に踏み込んでいく。

感想

[2002.1.3] 鑑賞(VC市川#1) (字幕版) ★★
 お正月映画としてハリーポッターを見る。
 ヴァージンシネマズ市川コルトンプラザでは2スクリーンで朝から深夜まで合計11回上映だが 毎回上映の2,3時間前に売り切れで夕方出かけた我々が見ることが出来たのは夜9時の回だった。 正月休みとはいえ、まったく凄い人気。こういう映画ばかり続けば、オープン当初 「せっかく出来た全館THXのシネコンもこのままでは潰れるかも…」と心配した不入りも めでたく昔話になるかも。

 さて『ハリー・ポッター』の感想だが、魔法の小道具まじない小道具を 売る町の雰囲気など細部に凝りまくった描写がものすごい。最近では特撮技術で驚く ということはすっかり無くなって、どんな映像も描けて当然。描かれたイマジネーションの中身、 細部へのこだわりこそが見所だと思うが、この作品は本物の魔法の町に迷い込んだような 「世界の構築感」がどっしりと有る。「その世界に自分も入っていきたい」と思う。
 いかにも「子供向け映画」だなと思うのは、お菓子やごちそうの描写がたっぷりと あることだが、カエルの形をしてパッケージを開けると逃げ出してしまうチョコレート の映像なんかは子供が喜ぶだろうし、100味ドロップは「味」が映像に映らないのは 残念だけれど楽しいアイテムだと思う。ほかにも「子供サービス」な映像は至る所に ある。

 サウンドは、人や物が飛び回るシーンが多いので、効果音がびゅんびゅん 飛びまくってわくわくモノ。
 主役のハリーやヒロイン(なのか?)の難しい名前の女の子もものすごく可愛い。

 でも、脚本はなんだか冴えない。
 原作のエピソードをそのまま盛り込んでいるのが売りのようだが、詰め込む ことに必死になって流れが悪い。といって、ここをこうすればもっと 良いのに…と具体的に思いつくほど目に付く欠点があるというほどではないの だが、なんだかすっきりしない。小山の連続で大山がボケでいるのか。

 箒に乗ってプレイするボールゲームのルールは、芸能人のクイズ大会みたい で、10点、20点と積み上げていっても、主役(ハリー・ポッター)が最後にでかい の当てると逆転一発勝負というのは、う〜ん、大味。あのルールで楽しいとは 思えない。これは小説がそうだからと言って映画では「実際に楽しめるゲーム」 としてもう一ひねりしても良かったのではないかと思える。

 この作品で一番頑張ったのは美術。この素晴らしい美術が「テーマパーク」に なったら楽しいだろうなあと思う。あの魔法の町を歩いてみたい。映画全体の 出来はタイタニックや宮崎アニメを凌ぐ物ではないと思うが、ポッタリアンに とって小説では体験できない細部を補完する「動く挿し絵」としての完成度は 凄い。
 昨今の大作映画の常として膨大なスタッフロールが流れるが、この映画に投入 された人材の規模は確かに凄いと実感できる。しかし原作はどこまでいっても 子供向けの童話だということを引きずっている。続編の撮影も始まっている ようだが、映画として大胆なストーリーの再編があって良いのではないかと 「非ポッタリアン」は思う。


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文:唐澤 清彦 映画館がやってきた!