映画館がやってきた! 映画鑑賞記

ガタカ

■DATA (ジャージー・フィルム)
監督/脚本:アンドリュー・ニコル
キャスト:イーサン・ホーク、ユマサーマン

Story

 人工授精によって優秀な遺伝子を持つ人間を選択的に産むことが可能になった未来。 自然出産の人間は、遺伝子に欠陥があるという理由でエリートへの道を閉ざされていた。
 宇宙開発会社に就職してロケットに乗りたいという夢を持つ主人公は、 遺伝子的な身分詐称を企てるが…

感想

 延々と語りが続き、導入部の「状況説明か」と思っていたら、ずっとそのままの調子で 進んで淡々、鬱々と終わってしまった(^^; これは強烈に個性的ではある。ちょっと 『砂の惑星』に通じる虚無感。
 主演のイーサン・ホーク、ユマサーマンは最近ではおなじみの顔だが、主人公に遺伝子 データを提供する、下半身不随のエリートの『ジュード・ロウ』の貴族的品の良さが 印象深い。未来を無くしたエリートの憂鬱が悲壮だ。

 独特の暗くて渋い色彩、冷たい清潔感、主人公の住む家の螺旋階段はおそらく、 DNAの二重螺旋を象徴しているのだろう。そして海の見える部屋でのSEXは人の胎内の イメージか…。静かな映像の中にそういう象徴的なイメージが挿入され、重く沈んで いる。

 CM出身の監督が初めて撮ったいわゆる「インディーズSF」。ハリウッドの大作と比べたら 恐らくは、話にならないほどの低予算映画なのだろう。しかし作り物の大がかりなセットで 大立ち回りするより、ありもののちょっと洒落た建物やオブジェを使って完全な近未来を 作り上げるセンスは素晴らしい。
 もちろん、ハリウッドの巨大プロジェクトをマネジメントする能力は凄いことだけれど、 この映画のようなきらりと光るセンスをハリウッド映画にもそそぎ込めない物か。

 この作品にはずいぶん多くのファンを生んだようだが、そのキーワードは 「癒し」なのかも知れない。低刺激性で胎内のイメージに満ちた画像。 ビートミュージック全盛の中で坂本龍一のピアノ・ソロの静かなメロディーが 大ヒットしたのと同じ構造がここに感じられる。


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文:唐澤 清彦 映画館がやってきた!