映画館がやってきた! 映画鑑賞記

ガメラ3 邪神<イリス>覚醒

■DATA ニュー東宝シネマ(有楽町)SRD(?)1999.3.15

Story

 1999年、地球的規模でギャオスが大発生。鳥類学者長峰真弓はその生態研究を 進めていた。
 そしてついに東京にギャオス飛来。これを追ってきたガメラとの戦いで、渋谷 は一瞬にして壊滅。死者1万5千から2万という。
 政府はこれによってガメラをギャオス以上に危険な生物と見なし、退治を検討 する。

 「ガメラが憎い」 … 4年前、東京のギャオスとガメラの戦いで両親と飼い 猫を亡くした少女、比良坂綾奈(前田愛)は、弟とともに奈良の山奥の村に住む 親戚に引き取られていた。
 綾奈は転校生いじめをする少女たちに命じられて、古代から続く洞窟の祠に 入り、そこで甲羅をかたどった石を発見する。それは、災いをもたらす伝説の 「柳星張」を封印したものだった。
 綾奈によって封印を解かれた「柳星張」は孵化し、綾奈のガメラへの憎しみに 同調して育っていく。
 綾奈はその異形のものにかつての飼い猫と同じ「イリス」と名付け育てるが、 精神的感応ばかりでなく、ついに身体ごと取り込まれてしまうが、完全に融合を 果たす寸前に、同級生の守部に助け出される。
 洞窟に残された生体組織から、イリスはギャオスの亜種で、綾奈との融合を きっかけに急速に変容しつつある危険な存在と判明する。

 綾奈と切り離されたイリスは洞窟を抜け出し、周囲の村の住人を食べて急速に 成長し、ついに自衛隊との交戦状態にはいる。
 イリスは、綾奈との完全な融合を求めて、病院から移送される彼女を追って 京都に出現。ゴジラもこれを追って京都に現れる。
 綾奈の憎しみはゴジラを倒すのか?
 ガメラとは人類にとって何なのか?

感想

 怪獣映画の最高峰。ガメラ3を見て、この言葉を贈らない人はいないだろう。
 圧倒的なビジュアルは、伝統的ミニチュア技術にデジタル技術が絶妙に被さっ
て、飛躍的に「作り物臭さ」を拭い去ることに成功している。
 画面を覆い尽くす炎の中で戦う二体の怪獣は、本当に、100m近い体長を感じさ
せる。
 ギャオスの、生物らしい造形も秀逸だが、より凶暴さを増したガメラの表情も
「人類の敵か味方か?」という今回の謎を、見るものにかき立てる。
 そしてイリスの造形、特に幼体と飛行形態の美しさ。

 特撮映画のクオリティに占める映像のクオリティの重要性を改めて感じされら
れる。
 もし『巨大生物被害』が我が身に降りかかったら、ということを真面目に扱お
うとしたら、ミニチュアの街の中で怪獣が暴れている映像ではなく、その街の中
に視点を置くことが必要。その重要な映像を見事にリアルに描いている。

 ドラマ作りも、徹底的に『巨大生物被害』のシミュレーションにこだわり、
お子さま向けシーンや、くだらないジョークを差し挟んで緊張感を損なわない
真面目な所が良い。

 とにかく『ガメラは人類にとって何なのか』という問いに真面目に答える。
 充実した作品でした。

 1,2作の回想シーンが冒頭に出てくるけれど、前作を見ていた方がより楽しめ
ることは間違いない。というわけで、可能なら予習して行くことをお薦めします。

 『怪獣は災害だ』というわけで、災害映画はハリウッドでも大量に作られてい
るが、アメリカが、火山だ、隕石だ…と言うなら日本の代表的な災害は『怪獣』。
 そういう位置づけで、肩を並べられる出来であることは間違いない。

●音楽
 イリスのテーマの神秘的メロディーが、繰り返し繰り返し流れてきて、妙に心に
残る。なかなか良い出来と思います。

●映画館にて
 月曜の最終回、しかも大雨の中という条件にしては、まあまあの入りかも知れない。
 子供は皆無で、ほとんど「育った怪獣少年」という顔ぶれの客であったが、この映画
はもっと幅広い層に、見られるべきと思う。
 映画は"DOLBY SR"のロゴが付いているが、なぜかSRDのトレーラーが上映された。
 何故??

■二度目を見て考えたこと
 二度目を見てきました。すごく良いです。皆さんで見に行きましょう(^^;
 ストーリーはもやもやしてますが、特撮はとにかく凄いです。
 その手の掲示板では、今回のガメラは、野武士だとか高倉健だとか言われてま すが、確かに男の後ろ姿を感じさせてくれます。甲羅ですが(笑)
---- G3への不満
・名前が恥ずかしい
 ヒロイン「比良坂綾奈」
 ヒーロー(?)「守部龍成」
 G1のヒロイン「草薙浅黄」

 ヒロイン一人だけが、変わった名前というならまだ我慢できるが、この奇妙な 名前三人組は絶えられない。名前が濃すぎて『虚構らしさ』が強調されている。 ま、怪獣映画なんだから本質が虚構には違いないが、「もしも怪獣が現れたら」 というシミュレーションが売りのこの作品では、主人公は昨日までは平凡な少女 であるべきではないのか?
 G1の浅黄は、偶然勾玉をもらっただけだし、G3の綾奈も、偶然逃げ遅れて ガメラに踏みつぶされた家族の生き残りなだけで、あんな濃い名前である必要は ない。そして、今回濃い名前の登場人物が大集合してしまったことで、妙に落ち 着かない結果となってしまった。
 守部君は、古い家柄らしい。そういう理由があれば、名前にも納得が行くのだ けれど。

・登場人物が多すぎる
 G1の登場人物が帰ってきた。それは完結編としてのG3には楽しいことかも 知れないけれど、一人一人の出番が短すぎないか?
 G1の草薙(ガメラ)、長峰(ギャオス)、大迫、審議官の人
 G3の比良坂(イリス)、守部龍成、深雪、朝倉、倉田

 一つに、G1を見ていないと、G1キャラについての背景の描写が無さ過ぎる と言うことはある。しかし、それがあったとしても、大迫は長峰の鞄持ちに過ぎ ないし、守部深雪は立っているだけでパンフレットに「新星」なんて書かれるの は何か事務所絡みだと思わせるし、倉田も朝倉も何も役に立っていない。

 もちろん、草薙も役に立っていないが、彼女は『ガメラの巫女』だから、 『ギャオス(イリス)の巫女』としての比良坂とのペアで出演の意味はある。

 実は長峰もこの事件の役に立ったかというと、何もしていない。
 イリスのサンプルを採取したことくらい。

 そうすると実は必要な登場人物は、『イリスの巫女』『ガメラの巫女』のみ。
 あとは、自衛官、警察官、政府高官と、匿名の登場人物だけで十分話は動く。

・守部君と剣、期待はずれ
 ギャオスを封印する一族、守部。
 本来は、ギャオスを生んだ時代の超古代文明の(ガメラ側の)末裔で、とてつも ない能力を有していた物が、時代と共に忘れられてしまったということなのでし ょう。
 しかし、あまりにも役に立たなさすぎ。
 ギャオスを封じる剣も、むなしくイリスに跳ね返り、綾奈の頬にひっかき傷を 付けただけ。(それで、ハッと気付いたようだけれど)

 もっとも、戦いの主体はガメラにあるわけで、構造的に少年の入り込む余地が ないわけですが、無意味すぎる。あれなら、あんなアイテム(剣)はなくても良か った。そして、無力な人間の代表として朝倉らとともに死んだ方が…?

・朝倉美都/倉田真也の謎
 まず倉田。天才ゲーム作家で、オカルト好き。それとマナ、ギャオスのつなが りが希薄。ただの破滅指向のオタクにしか見えない。
 一方朝倉は、どちらかというとギャオスから日本を守る立場の人間で、この 二人が互いに不快感も見せずにつるんでいるのがどうしても不自然。

 そして、朝倉は数年前から倉田を巻き込んで、怪獣の研究をさせているにして は、自分が何をすべきか見失っている。
 ただ何となく比良坂を拉致しただけで、どうすればいいのか困っているようだし。

・イリスの造形 - 異質さのわけは?
・マナって結局何? - どこにも説明が無い。倉田の仮説にしか見えない。
・馬鹿な自衛隊 - いくら何でも、怪獣に機関銃は効かんでしょう。

●ガメラ3の必殺技
 特撮は凄いが、物語が未熟というのがこの映画の評の基本線になりそうです が、まあ特撮だけでもものすごいと思えるから良いのではないでしょうか?(笑)

 ガメラの必殺技は私も何がどうなっているのか分からなかったので、再度劇場 に足を運び目を皿のようにしてみていたところ、
 ガメラにとどめを刺すためにイリスが触手の先から放射しようとした熱線を 失われた右手の傷口から吸収し、燃える手のような形に成形し、その右手を イリスの腹部にぶち込み内側から爆発させた。
 ということのように見えました。
 レギオン戦で、地球のエネルギー(マナ)を集めて、腹から放射するという荒技 をやってのけたくらいですから、敵の攻撃を己の技に転換するなどは雑作もない ことなのでしょう。

 発売中のフィギュアの中には、右手がオレンジ色の透明部品になっているもの がありますので、これが、そのことを型どった物なのでしょう。

 イリスはギリシャ神話の虹の女神で、陸海空と自在に飛び回れる力を持ってい ますが、八本の触手を持ち、少女を生け贄に求めるところが、どことなく やまたの大蛇的でもあります。

 大蛇といえば、草薙の剣。(まあ、大蛇を倒したのはこの剣ではないけれど)
 ということで、この技を『草薙フラッシュ』とでも名付けておきましょう。

 卑弥呼の末裔(?)は出てくるし、人名が出雲神話とリンクしていたり、 神話マニアや近畿以西の方には、東の人間より話が分かりやすいのかとも思いま す。もっとも、観客にカルトな知識を要求する脚本は、決して誉められる物では ないと思いますが。

●レンタルVHS視聴記

●画質音質評
 LDが発売されるようだがとてもとても高価なのでレンタルビデオで我慢する。 早くお買い得DVDにしてもらいたいものだ。
 画質は全黒が完全に沈まず白っぽく、色が浅く、ノーマルVHSなので色ニジミ もある。画質的にはDVDの登場を切望する状況。定価16,000円もするのに何を やっているのかという感じだが、ノーマルVHSじゃどうしようもないのかな?

 画質の非力さに比べて、音質、特にサラウンド感はなかなか立派で、 アナログなpro-logicながら、迫力があり楽しめた。


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文:唐澤 清彦 映画館がやってきた!