映画館がやってきた! | 映画鑑賞記 |
信長に伊賀の里を根絶やしにされ雌伏していた忍者、葛籠重蔵(中井貴一)
の元に「秀吉暗殺」の命が下る。 依頼主の代理人として現れながら、敵か味方かわからぬくノ一「小萩」(鶴田真由) に、愛情と命の危機を同時に感じながら、重蔵は仲間達と京の街の治安を乱し 大公暗殺の準備を進めるが、そこに影の世界をいとい、立身出世を夢見て 伊賀から公儀の隠密に寝返った昔の仲間、風間五平(上川隆也)が立ちふさがる。 裏切り者とは言え昔の仲間。冷酷になり切れぬ重蔵は、苦しい戦いを強いられる。 しかし、太閤に世継ぎが出来たことで暗殺計画は白紙になり、これを知る者の 抹殺が始まる。 差し向けられた甲賀の敵、摩利支天洞玄との戦いで重蔵は瀕死の傷を負い、 小萩の元に逃げ延びる。献身的な看病、生きる意味を問う日々の中で二人の 愛情は確かな物になって行く。 追っ手から逃れて共に暮らそうと願う小萩。しかし、回復した重蔵は自らの 生きる意味を賭けて秀吉暗殺に赴く。「生きていたなら必ず戻る」と言い残して。 |
この映画は忍びとして生まれた重蔵が人として生きるために
苦しみ、不器用ながら愛を勝ち得るまでの過程を描いた『恋愛映画』
なのだな。
ハリウッド映画のような爽快感はないけれど、司馬遼太郎の
歴史小説の世界の深み、大河感覚には手応えがあった。
音楽「湯浅譲治」はNHK大河小説の音楽も沢山書いており、まあそういう
感じだが、時代劇に良く合う。甲賀者との対決の後ろに流れる怖い音楽
は恐らく「タン・ドゥン」でしょう。
夜のシーンが多いけれど、ハリウッド的に記号化してやたら
「夜=青い照明」を当てるということが無く、月明かりの青白い光と
蝋燭の赤い光で撮影されていたのが印象的。邦画らしい。
THX劇場のドルビーデジタル(もしかしたらdts)音声で鑑賞したが、
全体のまとまり感はもうひと頑張りのシーンがあちこちにあった。
しかし、移動感、定位感はたいした物で、サラウンドの
面白みが満喫できた。
「忍者の気配を殺した気配」なんてものが音で表現されているので、
いい加減な音響の劇場で見たらちょっと味わえない演出がなされて
居るとも言える。
●映画館について
コルトンプラザ市川のNo.3スクリーンはTHXではあるが、
同館のプレミア・スクリーンよりちょっと非力で、若干の振動音
(ハム音っぽいが電気音かどうか不明)が漏れていた。
「梟の城」はまるで無音の中に遠くから虫の音が聞こえてきたり、
衣擦れの音があったりと、耳をすますシーンが多いだけに、より
いっそうの努力を願いたい。
約130席。7列22人掛け。B,C列の間に通路。ベストは「C-11席」
チケット販売窓口の係員が、イマイチ不慣れな感じなのが歯がゆい。
全席指定なのだから、もっとスムーズに良い席の相談に乗って欲しい
物である。
せめてチケット売場に座席表を掲示すべきだろう。
映画の予告編を流しているTVが小さくて、しかも無音。最低50インチ
に小さくても良いから音を付けて欲しい。だいたい、静かすぎると
ロビーがブキミ。
文:唐澤 清彦 | 映画館がやってきた! |