映画館がやってきた! 映画鑑賞記

ベン・ハー(1959)

■DATA (1959年/米 原題 )
スタッフ:
キャスト:チャールトン・ヘストン

Story

 白黒・無声映画時代の『ベン・ハー(1926)』も見たことがあるが、ストーリーは同じ。 カラー版は忠実度の高いリメイクと言ってよい。
 ローマ帝国が世界を支配しユダヤも統制する時代の中でキリストが生まれる。
 ユダヤ人の中に反ローマ感情が高まる中、ユダヤの有力な商人 「ジュダ・ベン・ハー」の幼馴染のローマ人メッサーラが統治者としてやってく る。
 反ローマ勢力狩りに力を貸すようベン・ハーに持ちかけ、これを断わられた司令は 腹いせに冤罪でベン・ハーをガレー船漕ぎに送り、彼の母と妹を牢につなぐ。
 ガレー船漕ぎは厳しく一年と生きていられないというところをベン・ハーは 三年間生き抜き、ローマの艦隊司令の目にとまる。宿敵との決戦の時、奴隷を つなぐ鎖から一人除外されたことに恩義を感じ、大破撃沈された旗艦から司令を 救い、人柄を見込まれてローマで司令の息子として第二の人生をはじめる。
 ローマ人として地位を得たベン・ハーだが、母と妹を救うためにユダヤに戻る。
 あわてた司令が牢を調べさせると彼女らは業病に掛かっており、釈放はされた ものの二人は密かに業病の谷に隠れ住む。
 二人は死んだ、と聞いたベン・ハーは復讐を挑むが恋人に「愛を説くナザレの 人の教えに従って生きよう」と止められ苦しむ。しかし、エジプト人の戦車 プロモーターに「戦車レースで打ちのめすこと」をすすめられ、ついに司令を 打ち倒す。
 ユダヤ人の勝利にますます高まる独立運動だが、ローマは思想的指導者として キリストを捕らえ処刑する。無力に泣くベン・ハーだがその時奇跡が起き母と妹の 業病が癒える。メデタシ。

感想

[2002.2.18] 鑑賞(ル・テアトル銀座) ★★
 アカデミー賞最多11部門受賞で(米)映画史に残る名作。
 主人公の「チャールトン・ヘストン」の長い顔がシュワルツネッガー に見えて辛かった(笑)
 妻がシネ・トレとかいう映画懸賞サイトでチケットをもらったので誘われたが 招待券は一枚なので1800円は払った。う〜ん、劇場が損をする仕組みになっている はずが無い。が、受付に積まれた招待はがきの枚数と入場者の数はほとんど同じに 見えたね。やはりクラシック映画の興行は大変か。しかも、ほとんど4時間 ある超大作なので、映画館が銀座だとはいえデートにも使えないだろう。終演は 夜の11時目前だった。


 ストーリーを極限まで圧縮するなら「ローマ支配に抵抗して地獄の底から這い上がった男が 戦車レースで復讐を果たすが、真の救いはキリストによってなされる」という 感じ?
 そもそも「キリストの物語」という副題があり、しかし、シーンとしては キリストの誕生、「ガレー船に運ばれるベン・ハーに水を飲ませてくれる」、 「説教に人が集まる」「つかまって十字架に掛かる」という4個所にしか 出てこない。
 「キリストの物語というのは言いすぎ」と思うが、4時間近くベンハーが 苦難の道を歩かされて救いもなくどん底! というラストで「奇跡で解決」 …盛り上がるけれど、いいのかそれで…と非クリスチャンは思うわけだ。

 キリスト教的ご都合主義には納得いかないが、この作品の凄さは画面に 溢れている。
 『スターウォーズ・エピソード1』が色々『ベン・ハー』っぽいのは周知だが ミニチュアくらいしか特撮技術のなかった時代に、ユダヤの街、ローマの町と 豪華な宮殿、巨大な闘技場etc.を撮影したスケールの大きさ、見渡す限りの大ロング のローマの町並みをいったいどうやって作り撮影したのかと思うと眩暈がする。
 戦車レースも、当然ながら細かくカットを割ってつなぎ合わせて作っているのは 確かとしても、そうとう本物らしい力感がある。
 ローマの戦勝パレードの華やかさなどに、スターウォーズは足元にも及ばない。
 唯一情けないのはミニチュアを使ったローマの艦隊戦。こいつはチャチくて へなへな(^^;

 凄い。お金掛かってる。豪華。
 でも長い(^^;;;;
 至る所で少しずつカット可能だし、戦車レースなんて9周回るのを馬鹿丁寧に 9周撮影することはないんで、いくら迫力の撮影だからといって何とかならないか。 『エピソード1』のポッドレースを三周にしてさらに一周省いて見せたルーカス は間違っていなかったと思うくらい長いぞベン・ハー。150分くらいにして欲しい な。
 ちなみに白黒版のDVDは141分。(淀川氏の解説込み)
 ついつい長くなるのは「豪華を強調したい」という意図も有るだろう。 たとえばローマの戦勝パレード。確かに凄い。『スターウォーズ』のナブー のパレードに明らかにこれを意識した装飾やアングルを認め得るが、物量の威力は CG映画では超えられないのかと思わせるものがあり。
 もっともローマ帝国とナブーの国力の差もあり、征服者と抵抗者の差もあるが。

■『ベン・ハー』とキリスト教
 主人公が三時間半くらいかけて己の人生を切り開き、それでもどん底で行き詰まっ たところをキリストの奇跡でメデタシという映画。それがベン・ハー。
 主人公は終盤徹底的に「復讐を忘れて汝の隣人を愛せ」と言われるのだが、 現代アメリカは「やられたらやり返せ」のイスラム的価値観さえ飛び越えて 「やられる前に叩き潰せ」に突入している。
 アメリカは「キリスト教国」だと思っていたが、実態は俺様教の 変な国。間違ってるよ君たちといってあげたい。


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文:唐澤 清彦 映画館がやってきた!