映画館がやってきた! 映画鑑賞記

ベン・ハー(1926)

■DATA (アメリカ/1926年作品/モノクロ/サイレント)

Story

 ローマ帝国に占領されたエルサレムの名家の息子ベン・ハーとローマ人 メッサラは、幼なじみであるが対立せざるを得ない運命に育つ。
 囚われの身となったベン・ハーは、ガレイ船の奴隷に使われるが 将軍に拾われて自由の身となり、戦車レースの選手としてメッサラと戦う。
 ここから物語はキリストの生涯にチェンジし、ベン・ハーはキリストの ために軍団を組織するが、当のキリストに咎められたために逆ギレして、 キリストをローマに売ってしまうが、後悔しても後の祭りである。

感想

 スターウォーズEP1のポッドレースの本家として、あちこちでうわさに上っていたので、 本家の戦車レースを一目見ようかと購入。本作はカラーのリメイク版もあるが、これは モノクロ・サイレントの本家。
 このDVDは故淀川氏の解説シリーズで、冒頭の解説で「戦車レースのキャメラが凄い」 を連呼してらした。実際、サイレントの時代にこれは一体どうやって撮影したのだろう と言うくらい迫力のアングルで、世間があっといったのは想像が付く。サイレント で有りながら、心の中に「ドドドドッ」と蹄の音が聞こえるよう。
 レースで賭をする人々の怪しい雰囲気や、スタジアムの観客席、そういう周辺の 雰囲気も確かにエピソード1とよく似ていて、なるほどと思える。パロディーという よりは、映画史に残る名シーンに敬意を表していたのでしょう。

 戦車レースの所しか知らなかったので、副題が「キリストの物語」となっているのを 見て???になる。キリストの登場箇所はマリアの登場と誕生シーン、ガレイ船に送られ る途中でベン・ハーに水を恵んでくれるシーン、若干の説教シーン、最後の晩餐、 十字架にかけられる前に、ライ病のベン・ハー母と妹を癒す奇跡のシーン。そういう 断片的な場所に画面の隅から手だけ見せて決して顔を出さない。最後の晩餐などは 有名なダビンチの絵の並びはそのままで、キリストの前にもう一人座っていて見えない というのが泣かせる(^^;
 そういうわけでキリストの物語というのは無理がある気がしないでもないが、 ベン・ハー(実はユダ)の世界の背後にキリストがいると言うことは示されている。
 つまり、確かにキリストは出てくるけれど「ベン・ハー=ユダ」の物語と思って 見ればよいのでしょう。
 ともあれ、サイレントで140分は辛い。でも何とかクリアした…という感想でした。

 作品には関係ないが、このDVDは転送レートが低くもやもやした画質である。 何だか変だな、と思う部分でボーズしてみると「ビデオCDか!」と驚くような 盛大なモザイク模様で、いななく馬の首のカクカクしていることといったら、 初代のバーチャファイターのようである。
 とにかく、私が持っているDVDの中でも、技術的に最低ランクだというのは間違 いない。版元は「IVC/カルチャー・パブリシング」。
 こういう古い作品は、出して くれるだけでも有り難いとはいえ、驚異の低品質は何とかしてほしいものだ。

■59年リメイクを劇場で見た後にDVD再見

 ほとんど忠実に同じなのだが一番大きな違いは ラスト付近、キリストとのからみだった。

 それはそうと、141分のDVDを2倍速再生で見たが、全然速く見えない。
 音声は、そもそもサイレントなので関係なく、ただコマの進む速度が二倍になって いるはずなのだが、ほとんど早送りであることが不自然に見えない。ガレー船の オールの動きと、戦車レースの速度が速いなあと思うだけで、そのたの人間の動きや カットの速度はまるで普通に見えると言うことは、この時代の俳優の動きが、 ことごとくまったりゆっくりということか。


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文:唐澤 清彦 映画館がやってきた!