映画館がやってきた! 映画鑑賞記

遊びの時間は終わらない

■DATA (1991年/日本)
キャスト:本木雅弘,石橋蓮司,原田大二郎,斉藤晴彦

Story

「筋書きのない実戦的な防犯訓練」を掲げマスコミ受けを狙った警察だったが 銀行強盗役の刑事(本木雅弘)のあまりにも真面目で完璧な活躍のため、事件は 「即刻解決、マスコミ絶賛」の所長の思惑とは裏腹に、駆けつけた警官の殉職、 マシンガン(M16)をもった犯人が人質をとって立てこもるという大事件に発展。
 面白がったマスコミと野次馬たちの勢いに、訓練中止を命ずることも出来ず 徹底抗戦に突入するが、やればやるほど失態を重ね、野次馬たちは犯人に 大喝采を贈る。この始末どうなる?

感想

[2000.12.23](DVD) ★★
 「真面目なだけの警官」がくじ引きで犯人役を仰せつかったため、凶悪犯を 勉強しまくり、武器を装備し、決めポーズの練習までする…というちょっと 切れてるんじゃないの?という導入部から銀行強盗実行のシーンまでのスリル は、訓練本部の所長が出てくるシーンで一気にひっくり返る。
 たいした事件も起こらない地方都市で、マスコミ受けを狙った所長の遊び として始まった防犯訓練だったが、犯人役があまりにも職務に忠実であった ために、現実と訓練が錯綜する二重空間が生まれてしまう。
 犯人モードと命令実行中の警官モードをくるくる切り替える本木は、シリアス もコメディーも演じられる見事な演技。訓練本部の所長(石橋蓮司)、次長(原田大二郎)、 本部長、etc.は 徹底的に後手後手。冷静にツッコミを入れる刑事(斉藤晴彦)もあり、本部内の やりとりは まるで『踊る大捜査線』のスリー・アミーゴスのようである。もちろん、全体の トーンはバッチリ官僚組織批判だ。
 踊るとの違いはといえば、それぞれの役所が極めて真面目に演じられており、 本部内のどたばたも「シリアスに馬鹿」で遊びの無いギャグというところだ。
 それから、いい音楽の存在も相当踊る大捜査線のノリを支える大きな 要素だということを感じさせる。確かに踊る…は映画版でもどことなく TVっぽい雰囲気をたたえているのに対して本編はずっと映画的な雰囲気を 醸しているのだが、犯人役のシリアスさに対する本部のコミカルさの軽みが もうちょっと鮮やかになると一段とヒットしたんじゃないかと思える。 これはギャグの切れそのものもさることながら、音楽による盛り上げも 大きな要素だと思える。
 ともあれ、2度3度とみても結構楽しめる秀作だと思う。
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文:唐澤 清彦 映画館がやってきた!