映画館がやってきた! 映画鑑賞記

エイリアン

■DATA 監督: リドリー・スコット

Story

 地球に帰還する途中の宇宙貨物船が、異星から届く救難信号をキャッチした。
 冷凍睡眠から起こされたクルーたちは、その星で巨大な宇宙船を発見するが 搭乗者はすべて全滅していた。
 船内に整然と並ぶ卵形の物体を調べようと近づいたクルーの顔面に、卵から 飛び出たカニのような寄生虫がへばりつき、ヘルメットを溶かし食い込む。
 救出されたクルーに為すすべもない医師だったが、翌日謎の寄生虫は自然に はがれ死んだかに見えた。しかし、寄生虫の本体はクルーの体内に潜り込み、 成虫になる時を待っていたのだった。
 突然クルーの腹部を食い破って飛び出す凶暴な生物、それがエイリアンだった。
 強烈な酸の唾液で船体を溶かし、鋼鉄の顎で何もかもかみ砕く。そして知能は 高く俊敏。なんとか退治しようと立ち向かうクルーは、一人、また一人と倒されていく。 

感想

[2000.6.17] ★★
 エイリアンシリーズはTVでしか見たことがないので、ちゃんと見るのはこれが始めて。
 1979年作品というから結構古いが、画質も悪くないし、話を知っていても怖い。
 削除シーン集初めとするオマケ映像の充実もなかなか嬉しい。
 ほっとしたかと思ったらどんでん返しが連続して起きる定番の展開も正しいが、 なんと言っても、優れたデザインが確固たる世界観を構築していると言うことが 心を引く原因だろう。
 宇宙貨物船のSF的にレトロなデザインは「宇宙船とはこういう物」という、 SF的リアリティーが充満しているし、異星人の宇宙船、異星人、エイリアンの 「異質さと、そこにある統一感」の凄さは、ホラーが嫌いな人でも一度は 見ておく価値があると思う。
 「生物的でありながら絶対に地球上の物ではない」 とこれほど先鋭に主張するデザインは他にない。

エイリアン2(完全版)

■DATA 監督/脚本 J.キャメロン

Story

 エイリアンとの最後の戦いの後、救助カプセルで宇宙を漂っていたリプリーは、 奇跡的に拾われ救助される。しかしそこは数十年後の過去の世界となっていた。
 エイリアンが潜んでいた惑星には移民が街を作り鉱山開発を行っていた。
 エイリアンの危険を主張するリプリーの意見とは逆に、エイリアンを生物兵器 として開発しようと目論む会社は、移民にエイリアンの研究を命ずるが制御に失敗。 街はエイリアンに乗っ取られ壊滅する。
 リプリーは唯一エイリアンと戦った経験者として、軍隊に同行してあの星に 戻ることになる。

感想

[2000.6.18] ★★☆
 昨晩は0時で根性尽きたので、朝目が覚めてから2に突入(^^;
 2はTVで後半を見たことがあるだけ。だから人一倍楽しめるはず(笑)  まず「おぉ」っと言ってしまったのが、最初と最後(リプリーが 冷凍睡眠状態で宇宙を飛んでいる時)の音楽が、2001年宇宙の旅でディスカバリー号 の搭乗シーン(冷凍睡眠状態の乗組員が映るとき)の音楽と同じ、 「ガイーヌの子守歌」だということ。
 ビルパクストン始め、キャメロン組俳優が出てくるのもなんとなく嬉しい。
 リプリーの子供のお墓が「ウィスコンシン」にあるというのも、こっそりと キャメロン繋がりだし、さがすと色々ありそう。
 この作品の中でしつこいほど繰り返され、最後に準主役の少女が口にする 「了解(affirmative)」という単語は海兵隊用語なのかも知れないが、後に ターミネーター2が口にして 「そんな堅苦しい言い方普通しないよ」と笑われる言葉だし。もしかしたら、 意識しているのかも。
 合成人間の型番の「ハイパーダイン120A2」というのもターミネーター世界 の響きがある。その役者の風貌はまさにサイボーグ。はまる人って居るものだ(^^)
 オリジナルはドルビーサラウンドなのに、5.1ch化して結構リアがガンガン鳴るのも良い。

 エイリアン2には「モニターカメラ越しの映像」が沢山出てくるが、DVDの高解像度と VW10HTのおかげでシャドウマスクのツブツブ感がくっきり。リアルでよい。

エイリアン3

■DATA 監督:デビット・フィンチャー

Story

 "2"の脱出艇が遭難して製鉄所に25人の囚人だけが住む、 監獄惑星に不時着。実は一匹のエイリアンが寄生しており、囚人とリプリーを襲う

感想

★ まともに見るのは初めてだけれど、「2で命がけで助けた女の子をいきなり殺 すとは何ごとか」と多くの人が非難していた作品ではなかったかしら? いや〜 実際監督に対する憤りを感じますな(^^;;
 シチュエーションとしては、一対一の対決という意味で"1"に近くなったわけだが、 不思議なことに"1"ほどの怖さがない。
 恐らく「大仕掛け」であるはずの「実はリプリーにもクイーンの幼虫が寄生 していた」という設定も、それほど驚きがない…。というか、自分も死ななけれ ばならないと決意したリプリーが『ターミネーター2』に見えてきてしまうんだな、 何しろ溶鉱炉に飛び込むという設定からして同じだし「死ななければならないが、 自分から飛び込む勇気もない…」という迷いが全くあちらとダブって見えてしまっ てどうも(^^;;

 本当のところ、どうしてなのか分からないのだけれど、"1"は何度見ても怖いのに どうして"3"はぱっとしないのかな…。
 "3"に欠けている物は、音の演出。
 5.1chで普段以上の音量にして鑑賞したのだけれど、それなりにサラウンドは 使われているが、「音で怖い」ということはついになかった。
 冒頭でいきなり犬に寄生し、以後ずっと成獣のエイリアンしか出てこないから、 エイリアンのライフサイクルが出てこないのも物足りない点か。
 シガニー・ウィバーの坊主頭も賛成できない。今まで「女の強さ」というところ で演技していたのに、なんだか中性的にしてしまうのは間違っているような気が する。

エイリアン4 - RESURRECTION

■DATA 監督:ジャン・ピエール・ジュネ

Story

 RESURRECTIONは「死者のよみがえり」または「キリストの復活」という意味。 本作の中では、"3"で殺してしまったリプリーを血液からのクローン再生で蘇ら せることをさすが、リプリーはエイリアンのDNAと融合していて、すなわち、 エイリアンをも再生する。

感想

★★ 面白い!
 本作を見ると"3"は「谷間だなあ」と思わざるを得ない。無くても良い。
 舞台は宇宙空間に戻って、冒頭に見せられる宇宙船のメカニックなデザインの 「らしさ」も素晴らしいし、オリジナルなエイリアンの世界と、同じ世界に属し ているいい雰囲気がある。"2"の世界からはずっと後の時代の物語 なのだろうけれど、きちんと文化的なつながりがある。
 "3"との違いは、エイリアンがじっくりと見られる時間が多いということにも ある。"3"は犬に寄生して目にも止まらぬスピードで走り回るエイリアンという 設定であるのが災いしてか、ほとんどのシーンで「チラッ」としか見えず、あの 美しいエイリアンのデザインを堪能することは出来ない。薄汚い監獄惑星の室内 が延々映っているだけという感じ。
 そこに行くと"4"は、凝りまくったデザインの 宇宙船や、船内のメカニックな感じ、実験設備の非人間的な雰囲気と、とにかく 見て面白い風景がずらっと並んでいる。そして、肝心のエイリアンは、いやという ほどとっくりと見ることが出来る。完全生物としての強く凶悪な表情がじっくりと 表現されている。
 エイリアンにお約束の人造人間役(コール)に「ウィノナ・ライダー」が出ている が、これがまた「あなた人造人間だったのね!」と正体がばれてみると、なるほど 人造人間に見えるところが良い。先代は渋い中年男でこれも素晴らしく人造人間顔 だったが、ウィノナライダーの黒く大きな瞳も「二世の人造人間」らしく見える。
 この「造られた」ウィノナライダーと、「クローン」であるリプリーとの間に 芽生える友情みたいな物の描かれ方もなんだかいい。
 エイリアン・シリーズの締めくくりとして、何度も何度も倒されては、生物兵器 として蘇らされてきたエイリアンを「実はそんな人間こそが本当の悪者だ」と、 はっきり主張するストーリーは、エイリアンとリプリーの遺伝子が混ざり合って 出来た新種のエイリアンの最後を本当に「可哀相な犠牲者」として見せる。

 エイリアン4での人間とエイリアンの融合した新種エイリアンのデザインを最初 に見たときには「なんだ、こんな不細工なもん…」と思ったが、このストーリー の流れの中で見ると、本当に 可哀相な生き物に見えてくるから不思議だ。

 最後は地球の大気圏に突入して燃え尽きる辺り「本当にちゃんと死んだのかな?」 という不気味さが無いではないが、エイリアンシリーズの最後の作品として、 見事だったと思う。

 エイリアンの体液が強酸性であることは分かっているのに、 「床が溶けて逃げられてしまう」とか、軍の人間があまりにもマヌケ揃いなのは、 この際見逃すことにしよう(^^;
 黄色いチューリップの花を擬人化したJRのキャラクター『びゅうりっぷ』の頭は 『エイリアンの卵』に似ている。
■関連URL

[戻る | 目次]
文:唐澤 清彦 映画館がやってきた!