映画館がやってきた! 映画鑑賞記

60セカンズ

■DATA (2000 米)
キャスト:ニコラス・ケージ

Story

 主人公(ケージ)はもと高級車専門の車泥棒。今は足を洗って街を捨て、子供のためのレーシング教室 なんかをやっているのだが、昔から兄にあこがれていた弟が「やばい相手」から依頼された 車泥棒をしくじって、ケージの元に話が回ってくる。
 「リストの50台を盗み出さないと弟とお袋さんの命はないぞ」と。
 今は皆堅気の仕事に就いている昔の仲間を呼び集め、一晩で50台の車を盗む計画を練る ケージたち。だが、弟の仲間たちの買った手行動によって現役時代から因縁の深かった刑事に マークされる羽目になる。果たしてケージは見事50台を盗み出して弟の命を助けることができ るのか。

感想

[2000.9.10](VC市川#1) ★★
 予告編が凄くかっこよくてケージファンでなくても行かなくちゃと思っただろう作品。
 オープニングはMTV的な作りで、最近見た中では『ロミオ・マスト・ダイ』にも似ている。 流行なのかも。
 とにかくスタイリッシュな映像を矢継ぎ早に繰り出すことが特徴の映画だが、登場人物 は「職人気質の親父」「ちょっとサイコな検屍医(?)」「若さが爆発して余計なことをしちゃうやつ」 「悪人には向かない徹底的なドジ男」「怪しい美女」などなど、超個性的なのがずらりと揃って わかりやすい行動を取りまくり。
 そして弟を人質にする悪人は「木工フェチ」のサイコ野郎だ。悪人もなんだか高尚っぽい 趣味を持っているところが、やっぱり最近の米作品の流行かも。
 車は本当に50台盗み出したのか数えられなかったが、そのスピード感ってのはたいしたものだ。 しかし、盗みがほとんど夜であることと、あまりにも動きが早いために何がどうなっているのかが イマイチよく見えないのがストレスと言えば言える。
 ジョン・ウーじゃないが、見せ場の美味しいシーンはスローモーションでじっくり見せてくれて も良いかなぁとおもう。予告編では「目にも留まらぬスピード感」ってのが格好良かったのだが、 本編が「目にも止まらな過ぎ」
 そういうわけで、心情的にはいわゆるスーパーカーが明るい光の下でがんがん走り回る姿を 是非見てみたかったものだと思うのだった。
 最後に盗み出す一台は、時間的に朝の光の中を、パトカーを連れて大カーチェイスという ことになるのだが、ここはなかなかスリリングで良かった。車泥棒だから事故はいけないので、 主人公のクラッシュシーンがないのは珍しいかも知れないが、パトカーは大々的につぶれる(笑) また、車はほとんどケージ本人の運転だと言うが、結構凄いことをやっているので感心して しまう。

 ラストは「ハリウッドで成功したスターが悪役をやるはずがない」ということはもう 分かり切っているので、書いてしまってもネタバレということにはならない気がする くらいなのだが、まさに、そういう結末。
 基本的には悪の親玉以外は全員ハッピーエンドなんで、私のように「スリルは好きだが 痛いの怖いの悲惨なのはパス」という人には大推薦(笑)

 作品の評価として、「DVDになったら買って損のないクラス」と思うが、どっちかというと、 映画館で見るよりDVDで時々スローモーションにして見ないと納得がいかないだろう… という意味もあり。
 これが 『TAXi2』ほど明るく気持ちの良い景色の中を走る映画なら、さらに無条件で良い映画と 言えるんだけどな〜という含みがあるのだ。


ラスト・メデタシ度 ★★★★★
予告編の出来が良すぎた度 ★★★★

■DVD

[2001.7.21]鑑賞(レンタル) ★
 映画館で見て「暗くて名車もよく見えないよ」と思い、 「DVDになったらストップモーションでもっと観察できるかも」と思ったの だが、やっぱり暗くてよく見えなかった(^^;;
 「50台の名車を盗むのだから、車を堪能したい」という視点で見ると、 この映画は人間ドラマ(兄と弟、刑事と泥棒、泥棒同士の三段構え)と、 カーチェイスに重点があって、せっかく「ポルシェやフェラーリがぞろぞろ」 と出てくるのに、「車は美しい」という視点は無いとはいわないが、かなり 希薄だ。
 結局「暗い、よく見えない、もやもや」という気分は変わらなかった。
 DVDとして、ブエナビスタ特有の黒を引き込んだ画面作りも、ナイトシーン の見にくさにつながっている。

■特典
 メイキング映像集には、プロデューサー「ジェリー・ブラッカイマー」の過去の作品の自慢話 も含む。最新作「パール・ハーバー」からの映像もちらっとあるのだけれど、 この人の過去の作品を次々と紹介して話を進めているのを見ると、 『パール・ハーバー』も一連の「楽しさ最優先のエンターテイメント映画」の 流れのひとつであって、テーマが戦争だからといって歴史認識問題とか、 反戦思想とか、他の多くの戦争映画が多かれ少なかれ持っている「何かを感じて もらいたい」という視点は無いよな。ということを再確認した。
 ジェリー・ブラッカイマーの目的はただひとつ、「お客さんに受ける」
 彼が監督(作家)ではなくプロデューサーだというのが、これをより、色濃くし ていると思う。
 ちなみに、メイキングに出てくる作品は、

 まぁ、「アメリカってすばらしい and/or 派手な大爆発」のエンターテイメント 作品が見事に並んでいる。

 このラインナップを見ると『パール・ハーバー』の制作者が 「ラブストーリーとして見てくれ」しつこく言うのも分かる気がするが、 だったら舞台は「スターウォーズ」でも良いはずで、真珠湾を持ち出したのは 『タイタニック』以来の「史実は受ける」という単純発想と、真珠湾で試写会を やれば受けるかも。というイベント的発想がありそう。もちろん、 『プライベート・ライアン』の存在も大きいだろう。


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文:唐澤 清彦 映画館がやってきた!