映画館がやってきた! 映画鑑賞記

海の上のピアニスト

■DATA 原題:The Regend of 1900

Story

 1900年ヨーロッパとニューヨークを結ぶ豪華客船の中に生まれたばかりの赤ん坊が拾われる。
 子供は生まれた年から1900と名付けられ、船のボイラーを焚く男に育てられる。男が事故で亡く なった後、少年は船内を歩き回り、一等の大広間にあったピアノを弾き始める。それは誰も聞いた ことのない素晴らしいメロディーだった。そしていつしか彼の噂は海を越えて広がっていった…

感想

[2000.1.17 有楽町・丸の内ピカデリー1にて]
 ほとんどは罪のないホラ話で大いに笑えるのだが、 ラストだけは納得行かない。爽快に終わってほしかったなあ…。
 丸の内ピカデリー1の音響は爆音&低音過剰でバランス悪し。ピアノの音はまともだが、 バンドのメンバー紹介のシーンでベースの番になったときデロデロと 凄い音がしてボイラー室で爆発でも起きたのかと思ったらこれがベースの 音だなんて…映画館の技師のセンスを疑う(^^;;;;
 サラウンドは、石炭を放り投げるシーンで左右後方に定位。たくさん投げるので そのたびに笑ってしまった(^^)

  • 書店で原作本を見かける。
     映画館でパンフレットを買わなかったので知らなかったのだが、 イタリアの若手作家の一人芝居用の戯曲のような作品が元になっているらしい。
     もちろん舞台の語り手となるのは、映画でも語り役だったトランペッターで、 本には「どんな音楽を流すか」とか、舞台装置に関するト書きもあって興味深い。
     実際イタリアでは何度も上演されている人気作なのだというが確かに芝居として 面白そうだ。映画はこういう幻想的な題材には即物的すぎるのかなと、ちょっと思う。 特にラストの余韻は芝居の方が上じゃないか? ピアニストの白熱バトルは決して 芝居では見ることができないにしても、芝居のアドバンテージは確実にある。

  • 『海の上のピアニスト』のページを眺める
     映画館で提供クレジットがやたら多いと思ったが、やっぱり多い。不思議だ。 アスミックの配給だが、ここの映画はみんなそうなんだろうか?船会社の提供は いいが、三菱商事なんて名前が出るとすっかり「文化の輸入」という気分になる。
    本国イタリアでは、心を揺さぶる感動作として『ライフ・イズ・ビューティフル』 『イル・ポスティーノ』を、胸を打つ音楽として『シャイン』を、そしてスケール の大きさとして『タイタニック』を超えたと絶賛され、すでに大ヒットを記録した
     などと書かれているが、意外に音楽が記憶に残らなかったのは、複雑華麗な 曲が次から次へと流れるので、覚える間がないから。なんとなく「すごいな〜」 というイメージのみ残る。
     「スケールの大きさがタイタニックを越えた」というのは言い過ぎ。もっとも 何のスケールだか知らないけれど(笑)
     タイタニックが確か1914年なので、この1900年の物語は相当近い世界。
     やはり三等船客は汚い移民の世界だが、この汚さ、異様なパワーは確かに 1900の方が上回っている。タイタニックは視点が一等船客の世界なので 豪華絢爛な世界。フィルムから受ける印象が、明るくぴかぴかな虚構の世界… と言って悪ければ「過去の栄光」かな?上流社会という物自体がかなりの 虚構を内包しているわけだ。
     不満を感じるのは、解説には
    豪華客船“ヴァージニアン号”のスケール感も見せ場のひとつ。 全長154 メートルのポーランド製の元貨物船を大幅に改造、この実物の 貨物船とイタリアのスタジオ・チネチッタに創られた巨大なセットにより 雄大な時代の流れが再現された。
     とあるのだが、巨大な船のスケール感が今ひとつ感じられない。
     恐らく船が港にいるシーン、甲板を歩き回るシーン、ラストの××シーン は本物の船を使っているのだろう。しかし、主たる舞台は最初のボイラー (エンジン)室、いくつかの寝室、一等の広間、三等の娯楽室に限られ、 基本的に密室のドラマである。
     だから、タイタニックでは主人公が船内を駆け回ることで 客に広さを伝えていたのに比べると、豪華客船の内部を感じさせることは ほとんど無かったと言っていい。部屋がいくつか有る。そういう感じ。
     その室内も、演奏シーンが多いので夜のシーンばかり。
     照明が暗くて、一等の広間の豪華さも何だかくすんで感じるし、そもそも 人物とピアノ以外があまりアップにならないので、ぱっとしない。
     このぱっとしない色彩が「ヨーロッパ映画の味かなあ…」と思わない こともないけれど、も一つ物足りない気分。

     船の外観は、豪華客船のシンボルの4本煙突。しかもタイタニック沈没以前 の話なのでボートの数が少ない。というのを確認。タイタニックマニアにとっては はずせないチェックポイントだ。もっとも、舞台が1900の活躍する1927年以降に なると、演奏シーンばかりになり船の外観はほとんど映らないので、ボートの 数が増えていることの確認はできなかった。(誰かこれから見る人は忘れず チェックして教えて下さい(笑))


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    文:唐澤 清彦 映画館がやってきた!