映画館がやってきた!

SONY MDS-JA33ES 導入記

- MD SAVER+パソコン接続キットで生録の編集を -

Photo
SONY MDS-JA33ES(プレスリリース)
MD-PCリンクキットPCLK-MD1
MDデジタル編集機 MSP730

なぜMDを導入したのか

 私はオーディオ趣味の他にも、万年初心者ながら『演奏』も趣味にしており、 録再ウォークマンの時代にアマチュア演奏会の録音をはじめ、SONYのポータブルDATデッキ の一号機に飛びついたのから数えてこの10数年間に4台ものDATデッキを使用してきた、 生録野郎です。
 ほとんどは中小ホールでの生楽器の録音ですが、暇な大学生の頃(^^;はシンセサイザー (なつかしのDX-7など)の多重録音にも挑戦したり、年中、録音・編集をくり返していました。
 この経験はオーディオでも「原音再生」を考えるのに大いに力になっている気がします。

 現在でも、録音機の最高峰はDATで有ることに変わりはないと思いますが、DATによる 地道なカット編集も、総演奏会時間4時間、曲数50曲以上ともなると、ちょっと気が遠く なるほどの作業です。まして、これをカセットテープのA/B面への割り振りを含めて、 最短時間に編集するというのは、表計算ソフトを使っても一大作業で、しかも、なかなか 計算通りの結果にならない(^^;

 そんなわけで、とある演奏会での録音で、切りつめまくって90分テープ2本(45分x4面) に納まる計算だった録音がどうにも納まらなくて挫折してから、 『MDを導入してパソコンで編集するぞ』という野望に燃えるようになったのでした。

MDの利点と欠点(vs DAT/Cカセット)

●圧縮の壁

 MDの音質は圧縮音声であるが故に、原理的にリニアPCMにはかなわないものの、 デコードLSIの進化によって雑誌などでは『CDをダビングしてもほとんど差が分からないほど』 という評価が一般的になってきたようです。とりあえず、これが私が導入に踏み切ることにした 大きな理由の一つでもあります。
 MDS-JA33ESは、据置型の中でも最新であり、金額的には中堅機種であるものの技術的には 最先端の機種と言っていいでしょう。じっさいこの機種でCD(CDP-XA50ES これも中堅どころ) の録再をしてみたところ、ほとんど差はないが、若干音場が小振りになるか?という程度の 違いでした。録再機としてはまず、非常に優秀であると言って良さそうです。

 一方デジタル録音にはSCMSの壁がありますが、今回は同時に『SCMSのキャンセラー』を 導入したので、無制限にダビングをくり返すことが出来ます。
 DATなら、原理的には無限にくり返しても劣化がないところですが、MDの場合は、 外部とのインターフェースはリニアPCMのため圧縮伸張処理が伴うので、たとえ デジタルでも、ダビングによる音質劣化はあります。アナログ経由より有利でしょうが、 残念なところです。

●録音時間

 この点については、DATの一人勝ち、Cカセットとは一長一短と言うところ。
Cカセット45(60)90
(45*2)
120
(60*2)
MD607480
DAT6090120 180 (240) (360)

 DATは、標準で180分もの連続録音が出来、コンサートやエアチェックなどの用途は、これ無しで 考えられません。
 Cカセットは、90分を標準的に使いますが、45分で面が切れるのが、長時間の演奏を編集して 入れるのにとても不都合です。A/B面で5分ずつ無駄が出来たら80分しか使えないし、ぎっしり 詰めるために曲順を組み替えるのは、なかなか大変な作業です。
 MDは、Cカセットと比べて連続で長時間録音できるため、余計な悩みは減りますが、 最大が一般的に74分。SONYの新製品で80分 [プレスリリース]で、規格の上ではこの80分が限界だそうで、Cカセットとの 相互のダビングを考えると90分にわずかに足りないため、不便を感じます。
(もっとも、80分という製品の発売によって"後わずかでCDを丸ごとMDにダビングできない" という状況はだいぶ緩和されますが)

 コンサートの記録テープを作成して面倒なことは、長時間の演奏をどう収めるかです。
 4時間の演奏会なら、実質演奏時間は3時間〜3時間半(180〜210分)でしょう。
 DATなら、120分テープ二巻(240)で、適当に切れば良し。
 Cカセットは、90分テープ2本に納まりそうですが、実質は45分*4面なので、どうしても 90分以上の薄手テープを使わなければなりません。
 MDはどうしても三枚必要になり、60*3(180)〜74*3(222)の間で調整することになります。
 カセットより面数が一つ少ないのは利点ですが、一つの編集で、複数の媒体にダビング するマスターを作るのはのは、困難です。

●編集機能

 Cカセットは単純なSTART/STOPしか出来ないので、問題外。
 DATは、0.3秒刻みでインデックスを書き込むことが出来、これを基準にして 2台のDATで、カット編集や自動フェードイン機能を使って編集することが出来ます。
 MDは、MDS-JA33ESの場合、約0.01秒単位で、TOCエディット が出来ること(他に0.06秒刻みの機種有り)と、ダビング時には、デジタルフェードイン/アウトが使用できます。
 これにパソコンでの編集を組み合わせれば、かなり楽に精度の高い編集することが出来ます。

MD-PCリンクキットPCLK-MD1を使う

●構成・セットアップ

 PCリンクキットは、RS-232C端子に接続する、小さな箱形のインターフェースBOXで、 ここから、MD/CDなどについている「コントロールA1端子」に接続します。ケーブルは オーディオ用のモノラル・ミニプラグと同じで、私は1.5mのケーブルを買って延長しました。
 ソフトのインストールはsetup.exeをクリックするだけで何もすることがありませんが、  でてきたreadme.txtを見ると、 MD-PCリンクキットPCLK-MD1 のページを見ろと有るので、アクセスしたところ、 PCLK-MD1のアップグレードのページ があり、ver1.12という、新しいバージョンがあるというので、すかさず入れ替えてしまいました。
 設定は:comのポート番号だけで、家の場合何もせずにokでした。

●タイトル機能

   MD本体でMDのタイトルを入れるのは、慣れもあるのでしょうが「勘弁して!」と言いたく なるほどの苦行だと思います。
 テキスト・ファイルからのペースト等もできるので、ほんとに楽です。
 入力したタイトル(漢字/英数カナ)は、シールに印刷してインデックスとしても使えるの ですが、何しろ印刷可能な文字数が少なすぎて、あまり実用的とは言えないようです。 未整理のMDが貯まるより、マシですが。

●編集機能

 編集機能は、基本的なものだけで、本体の全機能をコントロールすることができないと いうのは、残念です。
 機能は、録音・再生・移動・分割・結合・一曲削除・A-B Eraseです。
 リピート再生や、フェードインなど、本体にある機能が制御できると良いのですが。

 カウンターは総時間・総残り時間・一曲経過時間・一曲残り時間を切り替えて 表示しますが、パソコンなんだから、複数表示しても良いんじゃないかという気がします。 使っていて結構頻繁に切り替えます。
 各曲のタイトルと時間がリスト表示されるのは大変便利です。

 編集精度は、本体では0.01秒なのですが、このソフトは0.06秒単位です。
 それでも、DATの0.3秒に比べると格段の精度で、生録の会場録音で曲の頭にノイズが かぶっているような状況でも、すっぱりと切り落として、クリーンな繋ぎが出来ます。
 そうやって、不要部分を切り出した部分は、ドラッグ・アンド・ドロップで削除したり、 ちょっと後ろにどけて置いて、戻したくなったら元に戻すなどが出来るので、パソコンを 使うことの威力はあります。

 最大の欠点は、本体にあるUNDO機能が無いことで、うっかり削除してしまったら 取り返しが尽きません。パソコンリンク中は"REMOTE"と表示されて一切本体のボタンは機能 しないので、本体にあるUNDO機能も何も使えません。
 このことと、本体の編集精度をフルに使えること、本体の他の機能(リピートなど)も コントロールできるように、今後のVer-UPに期待したいと思います。

MDデジタル編集機 MSP730

 編集機と言っても実体は単なる『SCMSのコピーガード信号外し機』です。
 電源SWさえ無い簡単な作りですが、2in-2outのセレクタにもなるし、原理的に 音質への影響はないし、生録派にはなかなか重宝な機械ではあります。
 99年現在、この手の装置は作るのも違法だと法制化されそうですが、今の機械が 壊れたらどうしようと思うと、実に困った話です。

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文:唐澤 清彦 映画館がやってきた!