映画館がやってきた! ドラマ鑑賞記

ホーム&アウェイ

DATA 2002.10〜12 , フジテレビ月9(全11回)
キャスト:中山美穂,西田尚美,小泉孝太郎,酒井若菜
スタッフ:脚本:君塚良一

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Story&感想

 フジ月9。妻主導でこの時間帯はわりと見る事が多いのだが、今回は妻は興味 が無いらしい。中山美穂に関しては金城と競演の『2000年の恋』が初回大ヒンシュク でボツになって以来、終わってしまったのか…。
 その後(2001年春)の『Love Story』(共演:豊川悦司)も私は面白かったが、妻は 不満だったらしい。まあ、ラストが納得いかないドラマは多いけれど。

■第1話[2002.10.]

 このドラマは「君塚脚本だ」ということでチェックしてみたのだが、 初回はずいぶん念入りに書かれているなぁと感心した。
 主人公は結婚間近で寿退社したOL(中山美穂)。最後に友達と美味しいもの食べようと 中国(香港?)に繰り出す。彼女はラッキーの塊で、結婚相手はパーフェクトだし、 どんなに食べても太らないし、友人は「人生どこかで良いことと悪いことのバランス が取れるものなんじゃないか。どうしてこの女にはこんなに良いことばかりが…」 と思う。
 山のようなご馳走を平らげて「あ〜帰りたくないな〜」と呟く彼女の声が 神様に届いたような…
 しかし、飛行機の時間ぎりぎりまで食べていても、何とか間に合うし、 婚約指輪をトイレに置き忘れた…と引き返して「そんなの絶対になくなっている」 と思わせて、でも見つかる。空港に引き返すと、三時間後の飛行機に何とか空席が 見つかってその日のうちに帰れる…と少々のアクシデントにもかかわらずラッキー は続く。
 でも、彼女のラッキーはそこで終わった(^^;
 帰りの飛行機が、悪天候で仙台空港に行き先変更になったのが悪夢の始まり だった。

 …と、このあと彼女は、数分毎に何かのトラブルに巻き込まれて、 仙台→東京→北海道と意に反して移動しまくり、全然家に帰れない。
 携帯電話は馬に食われるし、財布と手帳はヒッチハイクした車の中に 落としてしまうし、ついに行き倒れて拾われた親切な農家の電話を借りようと したところ、一つも電話番号を覚えていない…
 この辺は確かにある。彼女に押し寄せる怒濤のトラブルはバカバカしいもの だけれど、携帯電話ばかり使っていると本当に何一つ電話番号を覚えていない ということはある。
 「携帯電話が出来てから、待ち合わせのシーンが書きにくくなった」と言ったのは 三谷幸喜だが、「馬に携帯を食われた」という馬鹿げた偶然から、携帯が無ければ 原始時代に逆戻りみたいな笑える状況を作り出した君塚良一はなかなかのものだ。
 北海道の牧場農家に拾われるまでの、ハイペースな不条理コメディーから、 その先は家族の絆を考えさせる、ちょっとしっとりした人情話になる。でも、 やっぱり中々帰れないのだが。
 本人が北海道で右往左往している合間に、東京で彼女の帰りを心配する 「弟とOL仲間二人の留守番コメディー」が展開する。
 これは、北海道の人情話に対応する形で、留守番三人組の会話で、主人公の 性格や過去が分かる仕掛けになっていて、ドラマの展開上、中山美穂自身に 喋らせるよりずっと自然に、主人公がどんな女かが分かって面白い。
 まあ、今回の「牧場の主人の人生を巡る人情話」そのものは、それほど 凄く感動するって物でもなかったけれど、その人情話が「帰りたいのに帰れない」 というシチュエーションとかみ合って展開するというのは何だか凄い。
 立て続けのアクシデントは、前半では見ているほうも驚きの連続だが、 最後は「ここで帰れるわけ無いな」と 思ってしまう(笑)
 まぁ、最初に「帰りたくない」という声を空の神様が聞き届けてしまった ようなので、彼女が帰れないのは仕事熱心な神様のしわざなのであろう。
 空港に何時間放置しても、北海道に放り出されても、無人島に漂流しても 絶対無くならない変な模様のトランクも、きっと神様の おかげなんじゃないかな。
 しかし、このテンションで、なんとしても帰れない方法を考えながら ドタバタと10回以上のお話を作るのは、脚本家は物凄い冒険だと思う。
 とにかく、「ここで××しなければ帰れたのに」という場面は、

 と、記憶に残るだけでも13個有る。この勢いだと、あと100個以上 家に帰れない理由を考えないといけないんだけれど、どうよ?
 「警察に行けば」なんて野暮なことを言う人は、このドラマ見られないけどね(笑)

■第2話[2002.10.14]

 北海道から青森の無人島まで流されて(凄く遠い(笑))、中国からの 密入国者に間違えられ、強制送還されそうになって、やっとの思いで 開放されて深夜バスに乗ろうとしたら、路面凍結で朝まで走らない。

 第一話の怒濤の展開が二話以降も続くのだろうかと思って見たが、 予想以上に面白かった。
 前半のエピソードは第一話よりだいぶ手短になっているが、 テンポ感バッチリだし、後半の人情話は、かえで(中山美穂)本人は、 元気でパキパキ行動しているけれど、結果的にしんみり良い話しに なっていて、コメディーとしてのバランスが良い。
 来週は大阪編らしい。楽しみ楽しみ。

■第3話[2002.10.22]

 大阪で降りて新幹線のチケットを買ってちょっとラーメンを食べていたら、トランクを 取り違えて帰れなくなった。(チケットをトランクの中に仕舞い込んでいたので)
 というわけでたこ焼き屋のおばちゃんと、そこの結婚式を明日に控えた娘に出会う。
 今は離婚しているおばちゃんが、娘の結婚式に出る/出ないで、中山美穂が奮闘。

 今回さらに人情路線が濃厚なのは、舞台が大阪だからなのか。たこ焼き、タイガース、 ビリケンさんetc.の大阪らしいあれこれもコッテリと出てきたし。
 今週のラストは、ついに新幹線に乗ってマンションに帰ってきたと思ったら 第一話の取り立て屋が張っていた…(^^;
 さて、次回はまさか取りたて屋が癒されるなんてことには…(笑)

■第4話[2002.10.29]

 やっと東京に帰ってきたのに、玄関で借金取りに出会って荷物を落としたときに 鍵を紛失。部屋に入れない。
 しかし、彼女がドアを叩く直前まで留守番三人組は部屋でシチューを作っており、 足りない食材を買いにたまたま留守にしていただけ。そして、彼女が親友を頼って 彼らの自宅のドアを叩くときには、三人組は彼女の家で食事中…。
 みごとなまでにトホホな展開。
 さらに隣の夜逃げ家族の小学生の娘がふらりと自宅に帰ってきたのを保護して 川崎のフェリー埠頭に送っていくと、そこで借金取りと鉢合わせ。
 あわてて近くのコンテナに潜り込んだとたん、船に積み込まれて…

 視聴率は強烈な裏番組に押されて、どっと下がったようだが、今回もかなり ややこしく、うまく出来た展開だった。

 どうやら、次回は九州まで運ばれるそうだ。
 東京に戻ってきて、今にも話が終わりそうだったのに、無一文で九州まで 行ったらまた当分帰れ無さそう。
 しかし、今回は「自宅には弟が留守番している」という情報が入ったので、 電話すれば解決してしまう。いったいどんな理由をつけて帰れなくするの だろうか?
 かえでは、今回の話の中で「旅をしながら人情に触れて、今までの価値観が 変わった」と宣言しているので、旅先での行動も変わってくるのかもしれない。

■第5話[2002.11.5]

かえで、天女になる

 だんだん現実離れが激しくなってきて、コンテナに積まれたまま何故か 山の中に置き去りにされているし、落っこちた洞窟から温泉がわいて、 天女様扱いされるし(^^;;
 「留守番組み」もますます無責任に勝手に盛り上がっているし。
 もう、漫画だと思って、最後にどこまで行くか見とどけるしかないな(^^;

■第6話[2002.11.11]

 警察で帰りの電車賃を借りて、かばんに入れようとしたところを掏られた(^^;
 犯人を追ってくれた旅役者の一座のバスに乗って移動。

 そこそこ面白いのだが、「一座を抜けて結婚したいの」という座長の娘が 女座長の監視をくらませるため、かえでに身代わりを頼むシーンが、ちと強引で同情 しかねる感じがあったな。
 これまでのように「善意があだとなって帰れない」という方がナススベガナイ 感じがして良い。
 結局身代わりの変装をしたまま舞台に出るハメになる。
 ついにばれた挙句に 一言も台詞が出ず、芝居が止まって大変なことになるのだが、「立ち尽くすかえで」の 演出は、ただ立ち尽くしているだけではマジに詰まらん。相手役も無能な役者の 設定で立ち尽くし。何かとんでもない事を しでかす方が面白いのに、最後の急展開までの間ただ無言で引っ張るとは、 工夫がなかったなぁ。
 ホーム三人組は、カッコいい弟を巡って二人の独身女が綱引き状態の ドタバタ。だんだん、 こちらが面白そうになってきた。一回くらいホーム三人組がメインの回があっても 面白いかも。

■第7話[2002.11.19]

 寝台列車で東京に向かうが、アクの強そうな顔ぞろいの周りの客がうるさく、 なかなか眠れない。開いている寝台を 探してウロウロするが車掌にしかられる。
 中年のカップルの女性が倒れたのを看病するが、その二人は女性が体が弱いことを 気にして、男性の結婚話が出たときに身を引いてしまったという過去があり、男性は 深く後悔している。
 かえでは 年月がたって独身同士に戻った二人のために結婚式を開いてあげようと思う。
 やかましい寝台車の乗客は、意外なことにそれぞれに特技の持ち主で、ドレス、ケーキ、 指輪、牧師、合唱隊などが次々と揃い、ささやかな結婚式を祝う。
 名古屋で降りる二人を見送ったかえでだが、なんと、列車は切り離されて、かえでは 松本行きの車両に取り残されてしまった。

 …電車に乗ってさえ居れば、こんどこそ東京に着く…と思ったら、行く先が二手に 分かれているとは盲点だった。しかも毎回ラストにとどろく雷鳴が電車の架線に落ちて スパークしたのに爆笑してしまった(笑)
 毎度のほのぼのストーリーで「中年カップルの結婚式」というのはありがちだが、 走る電車という一種の密室の中で…という毛色の変わった話で楽しかった。

■第8話「父の手がかりは立てこもり犯!?」[2002.11.]

 東京行きの夜行列車に乗ったはずのかえで(中山美穂)だったが、車両を間違えた ために長野県の松本まで来てしまった。
 持ち合わせの無いかえではキャロット銀行を探し松本駅前支店に駆け込むが、 カードも通帳も無く、「元社員」というだけでは埒が明かない。
 あきらめて街を歩き出したかえでの目に、写真館のウィンドウに飾られた 自分の写真。なんと、父が旅をした先でこの写真館に立ち寄り、写真館の弟に 見せて気に入られたものだという。
 もっと父の話を聞こうとしていた矢先、キャロット銀行で人質事件が発生。 なんと写真館の弟が犯人で。融資しないと毒を飲んで死ぬという。
 父のことを知る唯一の男に死なれては困るかえでは、何故か男を説得する羽目に。
 ようやく事件が解決して、かえでは「父は美術館に通っていた」という 話を聞く。
 かえでは、松本近郊の美術館を訪ねて歩き、そこで、彼女が生まれる前に 父と母が記した「鑑賞ノート」を見つけ、自分の名前の由来を知る。

 どうも、先週のエピソードから「父親探し」という旅の目的が出来て、 話が分かりやすくなったようだ。
 自分の名前の由来が分かるシーンでは、何故か「ワイド画面」になって 映画的気分で盛り上がり。

■第9話[放送日]

留守番三人組が車で迎えに来る。が、なぜか中央高速で車ごと怖いお兄さんに拉致されて 四国に行く羽目に。

■第10話[2002.12.9]

 かえではやっとお父さんに会う事ができ、ぎこちないながらも和解し、 結婚することを伝え、式に出てもらえるように言う。

 ところが、最終回直前で「次は結婚式だな」と思ってみていたら ラストでまたまた道に迷ったようだ。
 いったいどうなるのだ(^^;;;

■最終回[2002.12.16]

誘拐事件

 最後は結婚式前夜の誘拐事件(^^; 脚本家もひどいことする(笑)
 誘拐事件そのものはともかく、これまでの旅の名シーンが白黒で次々と 思い出される回想が、なんだか懐かしくて泣けてきた。
 一つ一つの回はびっくりするほど面白いと言うほどでもなかったのに、 まとめて思い出すと、旅の苦労と幸せが走馬燈現象だ。やられた。
 クレジットの後に、身代金を手に入れた誘拐犯が、家に帰れなくなる オチには爆笑。思い切りしんみりさせて笑わせる、脚本家の手のひらで 踊らされてしまう快感があった。
 『踊る大走査線 THE MOVIE』でも、「涙→爆笑」をやられたのに、 今回はノーマークだったなぁ…


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文:唐澤 清彦 映画館がやってきた!